とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第45章 誓いの名前、エイリアンがやってくる。

 

 ────わたしはただ、人を守りたいだけ。そのためなら、正義すらも捨てていい。

 

 広島市の浄化を完了させた太陽機関。しかし続けて大都市の浄化……にするほど局長は鬼ではなかった。

 まずは作戦成功祝いだと、ポートラルとジムペインの面々は、高級料亭に集まっていた。

 

「今日は神川の奢りらしいからな。私たちも来たぞ」

 

 ひょこっと顔を出したのは妃崎とルティア。なにトップ格2人がバカしてるんですか、と言いそうになるのを堪えて賢人は苦笑いする。

 場所は個室制の百味楼《ひゃくみろう》。あらゆるジャンルの食の最高峰が集まった店。食材を確保するのにも一苦労な2120年現在の、最高級料亭である。店の名前は『凛』。

 

「おぉ……」

 

 ゾンビ災害が起こるまでは注文した瞬間に産地から直ぐに届けられていた料理だったが、今は賢人の時代のように少し待たなければならなかった。しかしその待ち時間こそが、最高の薬味であった。

 

 賢人が注文したのは超高級魚介を使った寿司の大皿。来栖崎はA5ランク霜降り牛。百喰は高級料理といえばこれだろうということで芸術作品のようなフレンチ料理を頼み、やいとはまさかの最高級の材料を使った家系ラーメンを頼んでいき、各々が好き勝手に頼んでいく。

 

 一方のジムペインはと言うと、ゆっこはよく家族と食べていたオムライスを、水守はすき焼きを、トルペードはピザを、そして管理者の鮫鱧(さめはも)曲南(まがみ)は未だに悩んでいた。

 

「いいんでしょうか。前線に立っていないあてがこんな贅沢をしても」

「ええてええて。せっかくの奢りなんやしさ まがみん! ていうか普段は作戦終わっても飄々してるやん。どうしたんや今日に限って」

 

 もちろん、"血"の適性があった自分が管理者になるのは自明。しかし参謀として知識の適性も、戦闘員としての適性もなかった曲南は拠点でただ仲間の無事を祈るしかできない。そう割り切ってはいたのだが、それでもこの厚遇はあまりにも……。彼女は腹を鳴らしながらも躊躇っていた。

 

「気にするな、と夏色部隊長も言っているだろう?」

 

 ルティアは部下の奢りだというのにお構いなしに肉、寿司、アヒージョとまるで貪るように注文していた。それは妃崎も同じ……いやそれよりも大量に頼んでいた。

 

「……あのお言葉ですが食べられますか?」

 

 そう言って心配そうに見つめるのは水守。いくら局長とはいえ、立場と胃袋の量が比例するわけが無い。しかし澄ました顔で妃崎は気にするな、と言い放ったのだった。

 

「じゃああてはこれで」

 

 少し申し訳なさそうに曲南が指さしたのはレバニラとモツ煮。内蔵が好きなのだろうか。

 

「鉄分の補給ってか? こういうのぁ気にしなくていいんだぜェ?」

 

 各ジャンルの頂点に立つ料理人たちが手間暇をかけて作った料理。それを配膳ロボットが慎重に運んでくる。

 

「ちょっとは遠慮があっていいと思うんだけどね……」

「ギャハハ!! なにその料理!? 食べるのないじゃん!!」

「なッ……」

 

 いくら最高峰とはいえ、見た目自体はそこまで変わらないものも多い中、百喰だけは別だった。格好つけのために注文したフレンチは量も少なくただ凝った見た目だけが取り柄のただの"映え"だった。

 

「ふふ、なんだかゆっこさんは可愛らしいですね。オムライスとは」

「か、可愛いてなんやねん! ってうわ!? すご!? 広がったで!? 切ったら!」

 

 そして水守とゆっこはオムライスの頂点にナイフを入れる。すると とろりと卵が溢れ出す。ただ巻くだけではないシェフの遊び心が炸裂する。トルペードはピザのチーズを伸ばして曲南に近づけ、曲南は小さな口でモッ、モッ、と頑張ってモツを噛み切っていた。

 

「どうだァ? 動物たちの内蔵はよォ……?」

「もちろん美味しおす。動物はんの命を頂いてるんどすさかい」

 

 そう毅然と言ってのけた曲南に、トルペードは見直す。

 宴も進み、テーブルの上の皿が少しずつ減っていく中────局長は苦戦していた。思ったよりも多かった量に、少しだけ涙目になってしまっている。

 

「……すまない神川。私の分と、あとお前の分も出す。だから食べてくれないか?」

 

 そんな言葉に、賢人は仲間と顔を見合せてニヤニヤと笑う。

 

「それならしょうがないですねぇ〜」

「……すまない。助かる」

 

 そして、先程から食事が喉を通らない瑠奏を案じて来栖崎が声をかける。

 

「食べないなら貰っちゃうわよ」

 

 出身地の沖縄とは真逆の物を食べたくなったのだろう。瑠奏の席にあったのはラム肉。来栖崎はそれを横からひょいと箸で掴む。

 

「あっ」

「綴の事なら賢人(アイツ)に任せときなさい。それに、どうせ助け出したらまた来るでしょ。今はアンタが贅沢すればいいの。いただきまーす。────って結構味違うわね」

 

 羊の独特な味に少し顔を顰める来栖崎。彼女は自らの牛肉で口を直すのだった。

 

「……ふふっ」

 

 瑠奏は微笑み、未来を想起する。姉が幸せに過ごしている世界を。広島作戦で神川賢人(姉が認めた男)の強さは理解した。だから彼女は、その男に甘えてみることにした。今日はその財布に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 賢人の財布が軽くなった翌日、局長室で思案を張り巡らせていたのは妃崎。

 

「次は岡山市の浄化。……いや」

 

 しかし躊躇いがある。私兵を使わなければ、広島作戦でも死者が出ていたことは間違いない。それよりも大規模な岡山市。はっきり言ってまだ時期尚早と言わざるを得なかった。

 ────そんな時。

 

『緊急事態発生! 新東響 福岡市にて原因不明の大規模破壊が発生した模様!!』

「何故今なんだ……!! クソッ!」

 

 アラートが、局長室にまで鳴り響いた。ただちにポートラルに通信をかける妃崎。

 なんの文句もなく出動した賢人とアドと百喰だったが、そこにいた怪人の姿を見て空いた口が塞がらなくなってしまう。

 

「……あれは」

「見た目の特徴としてはアレに似通っていますね……」

 

 百喰は治癒射器(シリンジ)を起動、目の前にいる怪人をスキャンする。その姿はまるで星を食い尽くさんばかりの野心と獰猛性を秘めた臙脂色の体表。そしてその腰には同じ色のベルトが巻かれていた。

 

「フェーズ4かよ……!」

「神川さん! やはりアレはブラッド族です! ボトルはダイナソー!」

「ふーん……確かケンティーが前に言ってた没アイテムだっけ」

「そうです! 玩具の不具合かなんかで……って、まさか存在するとは!」

「……この星は食いごたえがありそうだ」

 

 ────ブラッド族。別名星狩り族とも呼ばれる彼は、周囲の人間にガスを吸わせ、スマッシュと呼ばれる怪人に変異させる。

 

「相変わらずスケールが巨大特撮だな。アドさん百喰さん、奴の相手は任せてください。2人はスマッシュを」

「モチのロンだよ。サポートは任せたよモグッチ!」

「えぇ!!」

 

 するとアドと百喰は治癒射器(シリンジ)を起動、賢人は変身する。

 

『スペリオルユニコーン!!』

「まずは前菜だろ? ブラッド族さん」

「ウィットに富んだジョーク、兄ちゃんの真似でもしてるのか?」

 

 ダイナソーエボルボトル、それは物質を過去に戻す能力。彼はそれをヴァルキュアのブックに使用する。

 

「兄……お前エボルトの弟か!?」

「その通り、俺はカニバリス。そしてお前のその力は今、巻き戻ったァ!!」

 

 みるみるうちにスペリオルユニコーンライドブックが小さく、そしてベルトから外れる。

 

「お前は……!」

 

 ブックは小さく薄く、しかし確かな存在感を放っていた。そこからページが積み重なるように生まれたのは一体の怪人。

 

「そのブックは私そのもの。遡れば私になるのは道理、ですよ? 白の剣士」

 

 そう、ストボロスである。その姿を見て、ヴァルキュアは小さく微笑む。

 

「だから癒の剣士だって……いや、いい。今はお前がいるだけで安心だ」

「これは想定外だが……いや想定外こそ面白い!! これだけで腹いっぱいになるかもなァ!!」

「奴は興奮しているようですねぇ……」

 

「ま、少し冷やしてやってもいいかもな」

『スピニングユニコーン!』

 

 ヴァルキュアは今の"最強"に変わる。その姿はストボロスに勝利した際の姿。

 

「その姿で私を……救ってくれたんでしたねぇ……。では私の能力で奴を冷やしましょうか」

 

 ストボロスが手をかざすと辺りが真っ暗に、そしてどこかから水滴音と冷たい風が吹きさす。

 

「ヒッ……」

「貴方まで怖がってどうするんです?」

 

 薄暗く湿った空気、カニバリスの肩に小さな手が置かれる。それはかつて滅ぼした星の民。その顔はいびつに歪んでいる。

 

「俺がこんなのに怯えるとでも?」

「まだ序の口ですよぉ?」

 

 周囲に黒い染みが浮き出す。それはブラッド族の僅かな生き残りであった。

 ひたり、ひたりと静かに、しかし踊り狂うように迫る赤い服の女。

 

『あなたを許しません。なので死んでください』

 

 何人も、何人もの星の民がカニバリスに迫る。忌々しくもどこか美しい空気が、奴の体を纏う。

 一方のアドと百喰は、スマッシュの中でも最上位、ロストスマッシュに手を出せずにいた。今の彼女達なら倒すなんてわけない。しかし……。

 

「これが仮面ライダービルドと一緒なら、消えちゃうよね中の人……倒したら」

「……アド! やいとさんがそのワクチン作るまで、耐えてください!」

「まさか! 作れるの!?」

「調合書だけだそうです! 作るのはアドの毒手で!!」

 

 空虚な身体、スマッシュたちの攻撃はアドの体をすり抜ける。キャッスルロストスマッシュのレーザーを手で掴み、捏ねる。物体と化したそれを相手に投げつけた。相手は強靭な防壁でそれを防ぐが、頭部が分離したアドにバアッ! っと驚かされる。

 

「アド! 調合書を送ります!! 後は任せました!!」

 

 彼女は毒手に新たな毒を纏わせる。薬を飲みすぎれば毒になる。ならばその逆だってありえる。毒を薬に、アドは毒手を何本も、そしてそれぞれをスマッシュ達に繰り出す。

 

「治す、元に戻すって意味の〜? リビルドだよ!!」

 

 鈍い音を立て、突き刺さる手達。そこにガス中和剤が注入される。まるで光になるように消える怪人の外皮。中から人間とライドブックが排出される。

 そして、ヴァルキュアの方はというと……。

 

「さぁ、トドメといきましょうか白の剣士」

「あぁ、ストボロス!」

 

 かつての敵は今日の友。恐怖の"感情"に支配され尽くしたカニバリスの身体を、2人の剣が貫く。

 

『必殺読破! 3冊斬り!!』

「波癒友情・十字斬り!」

 

 まるでブラックホールに飲まれたように、爆発は収束する。その中からいい声でチャオ、と聞こえたような気がしたのだった。

 

「楽しかったですよ? 久しぶりにあなたに会えて。流石私の……主人公(ヒーロー)です」

 

 そしてダイナソーボトルの能力が切れて消滅のときを迎えるストボロス。

 

「……あぁ、またな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故奴は……! 共に世界を、ゾンビの、グラナトファの魔の手から守ろうと……。クソ、アレだけは奪われるわけにはいかない……!」

「……これで私は、ギフすらも超える」

 

 そして、妃崎は知る。甘噛綴が竜瀧の元に幽閉されていることを。彼女は急いで竜瀧の元に向かった。一方の竜瀧の新たな力は完成間近というところまできていたのだった。

 

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 12/12

 そういえば局長のご飯食べてる時ルティアさん羨ましそうに見てたな。面白かった。




『ファウスト あるいは地球外生命体』
『目を覚ませ 人の世に潜みしズーメギド』
元ネタはフランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス

カニバリス
自称・エボルトの弟。ネビュラガスを生成する能力を持っている。

仮面ライダービルド本編ではキルバスにブラッド星を滅ぼされ既に死んでいた。そのネビュラガス生成能力はエボルトにパンドラボックスと共に奪われてしまっていた。スカイウォール周辺に漂うガスはそれによって生成されたもの。新世界でのファントムリキッドはカニバリスの残渣によって生まれたもの。

本来、この回がジムペインの初登場の予定でしたが、キャラ描写の都合で前倒しになりました。結果的にはこれでよかったかと思います。ジムペイン、好きになって貰えましたか? もしよければ感想ください
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