とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第48章 カノジョは、必ず救い出す。

 

 ────わたしはあなたが好きだ。一片の恥もなく、わたしはあなたを抱きしめたい。だから今、わたしはあなたに会いにゆく。

 わたしはあなたが好きだ。でもわたしにあなたを抱きしめることは出来ない。だから、わたしはあなたに会いたくない。

 

 そこは、竜瀧のアジトの前。妃崎は扉の前に立っていた。

 

「頼む。分かってくれ……神川賢人」

『マギア機動隊』

 

 彼女はブックを開く。人工知能搭載人型ロボ、ヒューマギア。何か意図を込めたのだろう、バスガイドのアンナ、結婚相談所のマッチ、そして滅亡迅雷.netのアズ。

 

 三体が、怪人と化したマギアと共に街に繰り出した。

 

 

 

 

 

 警報は突然だった。

 

『新東響 福岡市Z01に人間が怪人を引き連れる事案が発生!!』

「今度はなんだよ……!」

「とにかくッ! 賢人!」

 

 賢人は師匠と共に、現場までトライクで急行した。そこにいたのは人間の外見のロボット。そして絶滅種の力を宿した怪人達。

 

「ヒューマギアか……!」

「滅亡迅雷.netの、意志のままに」

 

 戦闘員である三葉虫のマギア達が呟く。ハッキングされた彼らの思想は、人類の絶滅。賢人の聖剣、そして来栖崎の楸刀(しゅうとう)がその頭部を貫く。

 

「へぇ……怪人(こいつら)にもあーしらみたいなのいたんだ」

「お前はグラナトファ……!」

「はぁ? 名前で呼んでくれる? ま、人間には教えないけどねん」

「なんだよお前は……!」

 

 らぶぱが、毒液を撒き散らししながら戦場に飛来する。

 

「あーしらも加勢するよ。ロボットちゃん」

「やっぱりな!! 師匠はマギアを!」

「分かってるわよ……!」

「変身!!」

『スピニングユニコーン!』

 

 白い炎が晴れ、3冊の本の力が身に纏われる。波癒の力が、グラナトファの身を焦がす。

 

「こんなんじゃ人類絶滅は果たせない……!!」

「なぜ人類絶滅なんて!!」

「人間の悪意に触れたから〜みたいな? てかさぁ、そっちが好き勝手やりすぎなんよね。うちらのこと解剖したり見世物にしたりさ〜」

「そんなことはありえないだろ! お前らは……感染源なんだからよ!!」

「ったく、騙されちゃくれないよね〜」

 

 毒針と聖剣の鍔迫り合い。飛び散る毒液は、白い炎が焼き尽くす。そして針を押し切り、ヴァルキュアはらぶぱの身体を断ち切るのだった。

 

「ふぅ……だる、もう帰るわ」

「……帰ったのか?」

「そんでこいつら、もう襲ってこないけどどういうこと?」

 

 らぶぱは撤退した。しかしその間、人間の姿をしたヒューマギアが戦闘行為を停止していたのだ。

 

「こいつらは……」

 

 変身を解除した賢人は、ヒューマギアを見つめる。全て賢人が知っている個体。

 

「何か意図があるのか……?」

 

 結婚相談所=想い人 滅亡迅雷.net=悪の組織のアジト バスガイド=道案内。妃崎の意図はそれだったが、賢人は気づかない。しかし……。

 

「こいつ機械なんでしょ? だったら敵のアジト……っていうか、バカガミの場所もわかるんじゃない? なんか逆探知みたいなのドラマで見たし」

 

 僅かな希望。しかし可能性が少しでもあるなら、それに縋りたかった。賢人はすぐさまヒューマギアの耳に付けられたモジュールを解析、黒幕のアジトを突き止めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 示された座標に辿り着いた先は、廃神殿だった。鉄臭さと、腐臭が漂う空間。

 

「間違いない。ここだ」

 

 扉を蹴破り、中へ踏み込む。その瞬間だった。視界の奥。無数の甘噛綴が、腐っていた。同じ格好、同じ背丈の少女が、何人も────。

 

「ッ!?」

 

 悲鳴をあげそうになる賢人の口を、来栖崎は抑える。彼女は僅かに少女達から漏れ出ている血液を指さす。色は緑。

 

「理由は分からないけど、ワームじゃないの? ……ていうか、あいつがそう簡単にやられるわけないでしょ」

「……そ、そうですよね」

 

 未だ希望は潰えない。しかしそんなものは、呆気なく崩れ去った。

 

「つ……綴……?」

 

 神殿の奥深く、無数のマギアが壊れていた。倒れているのではない。切断され、潰され、焼かれ、原型を留めていない。

 

 そしてその中心にいたのが────。

 

「綴っ!!」

 

 確かに、彼女はいた。本物の甘噛綴。しかし姿は違った。肩からは腕ではなく、棘に包まれた羽のような前脚。脚は刃に覆われ、その先からは刀。

 

 血と殺人衝動が生み出した、愛の『感殲少女(かんせんしょうじょ)』。

 

「……なんで」

「想定外ですが……まぁいい。"これ"は作れましたから」

 

 竜瀧は、作り出されたスタンプとベルトを手に持ち、その場から立ち去る。

 

 

 

 ────ただ貴方に、好きと抱きしめて欲しかった。なのにこの"手"では、抱きしめ返すことはできない。貴方に合わせようと背伸びしようものなら、徒に足を傷つけてしまう。何処にでも行けるのに、何処にも行けない。

 

 竜瀧が逃げてすぐ、その言葉を合図にしたかのように、残っていたマギアたちが一斉に襲いかかる。次の瞬間、音が消えた。いや、違う。速すぎて、知覚が追いついていないだけだ。

 

 気付いた時にはマギアの胴が、斜めに滑り落ちていた。別の個体は、頭部ごと握り潰される。さらに別の個体は、胸を貫かれたまま持ち上げられ──叩きつけられる。まるで作業。躊躇などいざ知らず、ただ殲滅するためだけの動き。

 

「綴!! ────綴!!!」

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ!!」

「一体どうしたっていうんだよ!!」

「目ェ覚ませバカガミ!!!」

「おかしいなぁ……あれ? 今日、何日? ねぇ、ねぇあああああああ"!!!」

「まずい変身!!」

 

 その四肢から、幾多もの刃が無差別に放たれる。一角獣の装甲がそれを受け止めるが、しかし防ぎ切ることはできず内部にまで刃が届く。

 

「ぐッ!?」

 

 久方ぶりの生身への傷。しかしヴァルキュアは1歩も引かない。引いたら、想いが届かないから。刃が、装甲を削ぐ。一撃ごとに、火花と共に白い装甲が砕け散る。肩、腕、胸部。守りが剥がれ、その下の生身が露出していく。

 

 だがそれでも、ヴァルキュアは、前へ出た。

 

「綴……ッ!!」

 

 踏み込むたびに、刃が身体を裂く。血が飛ぶ。それでも足は止まらない。

 

「近寄るな……ッ!!」

 

 綴の声が、初めて揺れる。刃の嵐が、さらに激しさを増す。

 

「近寄ったら……壊しちゃう……ッ!!」

 

 振るわれる刃は、もはや防御ではない。拒絶でもない。恐怖だ。

 

「それでもいい」

 

 ヴァルキュアは呟く。一歩、また一歩。距離を詰める。刃が腹を裂く。膝が揺れる。それでも、倒れない。

 

「お前が攫われて、俺は塞いだよ」

 

 その言葉に、綴の動きが一瞬だけ止まる。

 

「……なんで」

 

 掠れた声。その隙を、ヴァルキュアは見逃さない。一気に距離を詰める。

 

「来ないでって言ってるでしょォォォォッ!!」

 

 刃が、直撃する。胸部装甲が完全に砕け散る。衝撃でベルトが弾け飛び、変身が解除される。それでも賢人は立っていた。血を流しながら。生身で。

 

「なぁ、綴」

「……なん、ですの」

 

 声が震えている。殺人衝動でも、怒りでもない。ただの恐怖。

 

「今思い返したらさ、俺言ってなかったよ」

「……は?」

 

 1枚、1枚と、やがてその"仮面"にもヒビが入る。

 

「恥ずかしくってさ。その2文字が言えなかった。でもさ、恥ずかしがることが1番恥ずかしいんだよな」

 

 賢人は、血まみれのまま笑う。

 

「……そんなこと、今更!!」

「あぁ、遅かったよな。ごめん、2年も待たせて。好きって思われてる状況に甘んじてた」

 

 遂に、ベルトが弾き飛ばされて賢人の変身が解かれる。しかし、歩みは1歩も止めない。

 

「好きだよ。一生変わらない」

 

 傷つくと、いやそんな軽い言葉じゃ言い表せないほどの怪我を負うことなんて分かっているはずなのに。

 

「……なんで」

 

 拒絶も、攻撃も、できない。その身体を賢人は、力いっぱい抱きしめた。棘が、刃が、肉を裂く。血が流れる。それでも絶対、離さない。

 

「俺は弱いよ」

「……何、言ってるんですの」

「けど、お前になら壊されてもいい。待たせたお詫び……いやごめん。また誤魔化した。好きな子になら俺は、壊されたっていい」

「……触っても……いいんですの……?」

 

 頷いた賢人。

 

「……遅いですわ……ほんとに……」

 

 小さな拳が、彼の胸を叩く。弱く、何度も。

 

「ずっと……待ってたのに……」

「ごめんな」

「……ばか……」

 

 その一言と共に、綴は賢人の胸に顔を埋めた。ようやく。ようやくその手で、抱きしめ返すことができた。

 

「さ、帰ろうか」

 

 少女は、少年の想いを知った。少年は、ようやく想いを吐露できた。それだけ。でも今はそれだけで十分だった。

 

「あの、私のこと忘れてない?」

「あ、すみません師匠。あと明日」

 

 

 

 

 

 

 一方、退避していた竜瀧は、外にいた妃崎とその私兵に囲まれていた。

 

「ようやく出てきたか竜瀧友輔!」

「あぁ、妃崎さんじゃないですか。なんですか? あ、もしかして分かっちゃいました?」

「……何がだ」

「私がグラナトファを生み出したってことですよ」

「……なんだとッ!?」

「まだ知らなかったんですか傘子さん。いやぁ滑稽でしたよ? 私の横でグラナトファの殲滅を掲げてる姿は」

「今はそんなことじゃない! 今日という今日は看過できん! ……それに、人を救う気はないようだな」

「いつそんなこと言いました? 私はただ、協力する、と言っただけです。そのアルターブックづくりに、ね。────変身」

 

 瞬間、妃崎の体が吹き飛ぶ。変身した竜瀧はゆっくりと歩み寄り、しゃがみこんで語りかける。

 

「あぁ、もうヴァルキュアは必要ありませんから。次はあの子たちがどうなるか、保証はできませんよ?」

「……なんの、つもりだ」

「くふっ、太陽機関長官がなんとみっともない。さぁ、行きましょう? 竜瀧友輔さん」

「えぇ、騎獅道柩さん。あ、それとこれ、貰っていきますね?」

 

 突如現れたグラナトファと共に血煙に包まれて2人は消え去った。バイスタンプを持って。

 

 

 ──────────────────────

 

 12/16

 

 綴が戻ってきた。でも俺たちポートラルは解雇された。

 

 ……なんでだよ長官。なのになんで金だけ入れてるんだよ。餞別のつもりかよ。

でも、解雇通知の長官の辛そうな顔で、俺たちは何も言えなかった。今日から俺たち、家なしってこと?

 

 




『マギア機動隊』
『目を覚ませ 悪意に飲まれしストーリーメギド』
元ネタは攻殻機動隊

書き溜め、無くなりました。なので少し滞りますが、プロットは全話分あるのでそこまで待たなくても大丈夫かもしれません。ですが、感想いただければより早まります。
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