とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
────わたしの罪は、
「どこなのよ……天芽!」
「仮面ライダーは見つかった? ユゥリザさん」
五十嵐家、そして天芽達はそれぞれ、とある探し人を探していた。
────それは偶然だった。地球に生命が生まれたのが奇跡だったと言われるように、彼らが出会ったのも、それは奇跡だったのかもしれない。
そこは熊本県熊本市の路上。人通りは少なく、静かな午後。だからこそ気づいた。
「天芽ッ!!!」
「こより……。────うわちょ!?」
カードにいるケミーが警告するのも聞かないまま、彼女は天芽に向かって走る。勢いのまま飛びついた身体を、彼は慌てて受け止めた。
「……はは、相変わらず唐突だよなぁこよりは」
そのまま、自然に頭を撫でる。
「……うん。だって、やっと会えたんだもん」
こよりの声は、どこまでも穏やかだった。これまでの張り詰めたものが嘘のように柔らかく。その様子を、後ろからじっと見ている視線があった。
「……天芽、さん?」
ケミーの警告が強まる。芽舞の声に、天芽は顔を上げる。
「あぁ、芽舞ちゃん。ちょっと待って」
言い終わる前に、こよりが腕をぎゅっと掴む。
「……離さないよ」
小さな声。だがはっきりとした意思。
「え、いや離すとかじゃなくて……」
苦笑しながら言う天芽。だが芽舞は、一歩、踏み出した。
「……その人、誰ですか?」
静かすぎる声だった。
「あー……えっと、こより。俺の────」
「幼馴染で、恋人候補」
即答だった。
「ちょっと待て!? こよりはまだそんな!?」
「まだって言った? 言質とったわよ?」
にやり、と笑うこより。それを見て芽舞の視線が、細くなる。
「……恋人候補?」
「うん。だってまだちゃんと告白されてないし」
「してないだけで、する予定はあるんですよね?」
「まぁね」
軽い。あまりにも軽い口調。それが逆に、確信めいていた。空気が、ほんの僅かに張り詰める。ユゥリザが小さく息を呑む。これは少し修羅場になるかもしれないな、と。一輝たちも状況を察し、口を挟めずにいる。いくら過去世界を救ったとはいえ、そういった方面では疎い彼ら。
「……天芽さん」
「はい」
「その人、本当に必要ですか?」
「何言ってるの芽舞ちゃん!?」
芽舞はにこり、と笑う。だがその笑みは、こよりのそれとは違う。底が見えない。
「私たち、一緒にいましたよね?」
「それは……そうだけど」
「じゃあ十分じゃないですか」
さらり、と。その言葉に、こよりの手に力がこもる。
「……十分じゃないよ」
ぽつり、とこよりが呟く。
「こいつは、私といないとダメだから」
「は?」
芽舞の目が、明確に細まる。
「逆でしょ」
即座に返された。
「天芽さんがいないとダメなの、あなたの方ですよね?」
「……」
「依存してるの、見れば分かります」
「っ……」
一瞬だけ、こよりの表情が歪む。
「ねぇ。貴方芽舞ちゃんっていうの?」
「そうですけど……」
「こよりちゃんはね、今まで助けてきたばかりじゃないの。天芽くんに助けられてきたこともある」
「さくらさんそれはっ……」
止めようとするこよりを、さくらは手で制す。
「好き同士がさ、一緒にいたらダメなんてことはないでしょ?」
「だったら私だって天芽さんのことがっ!」
「それなら好きにすればいい。でもね芽舞ちゃん。なんでそれで相手を傷つけようとするの?」
「今は天芽さんだって強い! 私の方が釣り合ってる! ……せっかくの……私を見てくれる人なのに」
「強さだけを見てたら、昔の私みたいになっちゃうよ。驕っちゃダメ」
「ごめん。芽舞ちゃんがそんなに考えてたなんて知らなかった。でもさ、僕はこよりが好きなんだ。今までも、これからも。明言してなくてごめん」
さくらの言葉は、芽舞には理解できなかった。彼女は強さにこだわる訳ではなかったから。ただ天芽の言葉は、深く突き刺さった。その言葉に、触腕が無意識に生えるる。
「やめろ芽舞。ここで争えば被害を出す。それとお前らはなんだ」
「ッ……」
「俺たちは五十嵐家です。俺が一輝、んで大二とさくら」
「まったく……そこの女に頼まれて天芽を探しに来たと、そういうことだな?」
「はい!」
その瞬間、こよりの持つカードの中のケミーが、激しく警告音を鳴らす。
「……!」
さくらの首筋に、透明な牙が迫る。武道家ゆえの反射神経で彼女は間一髪で躱すが、そこに"人間"が現れた。
その後ろにいるのはステンドガラスのような怪人、バットファンガイア。それは竜瀧が召喚した怪人である。怪人に気づいた通行人は悲鳴を上げ、逃げ惑う。
「また怪人……?」
「おい芽舞。今は恋のことは置いておけ」
「……はい」
ユゥリザは芽舞の肩に手を置く。奇しくも怪人のおかげで一触即発を逃れた彼ら。
『レックス! バット! コブラ!』
三兄妹に迷いは無い。4人の戦士が現れた。彼らは、一直線にファンガイアに向かっていく。しかし天芽は動けない。こよりに、あの姿を見せたくない。そう思ってしまったから。
三兄妹の息のあった連携、瞬く間に相手がまるでガラスのように砕け散る。
「俺は敵じゃない! 俺を封印しろ!」
「……え?」
残ったのは人間だけ。彼は無抵抗を態度と言葉で示す。それはまさに、人間そのものの姿。彼はヒューマンアンデッド。彼は妃崎によって呼び出されていたのだ。
「こよりちゃん。カードをこっちに」
『ローズローズ!!』
ケミーがカードから飛び出す。空の状態となった器は、その人間を受け入れるのだった。しかしその直後、上空を黒い影が覆う。
「……!! おい五十嵐!! 早く人を避難させろ!!」
「え!? もう逃げましたよ?」
「もっと遠くにだ!!」
ユゥリザのヒステリックとも取られかねない怒声が、街中に響く。それほどまでに彼女は焦っていた。
「クソッ、なんでこんなときに……!」
「あらあらぁ。くふっ。これはこれは、また会いましたねぇ天芽さん」
影の正体は柩……ではない。
「……」
無口な巨影。その名は
「とっととしろ五十嵐!!!」
『バリッドレックス!!』
仮面ライダーリバイス バリッドレックスゲノム。その氷が、街一帯を覆う。避難している人も巻き込んで。
氷に包まれた街、何者も動けない氷点下。しかしリバイは巻き込まれた人達には一切の凍傷がないよう、細心の注意を払っていた。
「なぁんだ。人殺せないじゃないですか」
「お前たちはグラナトファだな。色んな人から聞いたぞ。感染源だってな!」
「あっさい知識ご苦労さまでぇす。私たちコールサイレンには、崇高な目的があるんですよ。知らないですか?」
「人類絶滅でしょ。ユゥリザさん、芽舞ちゃん。……こより、ごめん。この姿は見せたくなかった」
怪人との戦闘に手を出さなかった天芽は、ようやくその姿を変える。白い羽が弾けるように広がり、彼の体を覆う。
「……けど。こいつらだけは、許せない」
「天芽くん……?」
「もしかして天芽……グラナトファ?」
「あの日、僕は死んだ。でも2度目の生を得た。こより、嫌いになってくれてもいい。……それでも僕は、君が好きだ」
凍りつき、鋭さと強度を増した羽が死心と柩を囲む。切っ先が喉元に向く。寒さも相まって、久しく立っていなかった鳥肌まで立つ始末。
「あらあら、これで脅しているつもりですかぁ? さ、死心さん、やっちゃってください♪」
『ヒツジ!!』
「なんだあのバイスタンプはッ!」
竜瀧に渡されたバイスタンプ。死心の大きな手が、米粒のようなサイズの判子を持つ。
押印され、生まれた怪人はヒツジデッドマン。大きさは人間大であった。彼女は謎の白い粉を撒き散らす。
「へっ、小さくなってるぜぇ?」
「油断するなよバイス。あの大きさのフィジカルがそのまま小さく……なっ────」
「おやすみなさい♪ 仮面ライダーさん」
「兄ちゃんに何を────」
「大ちゃん!? あんたらもう許さないん────」
「クソ────」
次々と、仮面ライダーも天芽達も、眠らされていく。ユゥリザは、久しく感じていなかった死への恐怖が蘇る。しかし、こよりだけには効かなかった。それが幸か不幸かは……。
「天芽……天芽ぇ……なんで……ひっ……」
デッドマンが迫る。一方の柩は、三兄妹の腰からベルトを奪っていた。
「た……助けて……」
『ローズローズ!!』
レプリケミー ヒーケスローズもこの極低温環境では本領を発揮できない。ただほんのりと彼女の周囲を温めることしか出来なかった。
「天芽……助けてぇ……」
「……」
「あ、死心さん。死んでグラナトファになられても厄介なので直接感染させてくださいね」
「分かったぁ……よっと」
手だけが元に戻り、ウイルスが周囲に纏われる。いくら治癒姫候補といえど、適合手術を受けない限り接触感染はしてしまう。
「やらせません!!」
突如響く謎の声。デッドマンとこよりの間に、小型のワームホールが出現する。飛び出してきたのは戦士 オーバーデモンズ。彼の名前は牛島光。かつての戦いでギフの遺伝子が付着し、その作用で一時的ながらこの世界に現着したのだ。
「誰ですかぁ?」
『バッタ! スコーピオン! コンドル! デモンズレクイエム!』
彼らを抱え、オーバーデモンズは空へと飛び立つ。
「……逃げられましたか。まぁ、これさえ手に入れられればよかったので、良しとしましょう」
「ありがとう光。助けてくれて」
「……もう、家族を失いたくないので」
牛島光。彼は2度、両親を失っている。1度目は血の繋がった、2度目は偽装の。でも2度ともが同じほど悲しかった。だから一輝達、そして現地の人々をリバイス世界から見て、いてもたってもいられなくなったのだ。
「お易い御用ですよ。……でも僕、あまり長くはいられないんです。ギフの遺伝子を体内に持ってる訳じゃないので」
彼は頬をかき、苦笑する。家族、それは血の繋がりがなくても成立する。現に一般的な夫婦だってそうだ。光はあの1年間の戦いで彼らを家族と思えるようになっていた。だから来た。ほんの少しでも助けになればいい、その一心で。
「仕方ないよ。……でもベルト、奪われちゃったね」
「スタンプも……ね」
変身が出来なくなってしまい、更に追い打ちかのように光のタイムリミットまで来てしまった三兄妹。戦えない彼らは、しかしそれでも元の世界に戻るなんて、考えもしなかった。
「こより……ごめん。言ってなくて」
「気にしてないよ! どんな姿だって天芽は天芽でしょ? ……てかそもそも会えてなかったんだから隠してたもクソもないでしょ」
「そう……だけど」
「天芽さん……。ごめんなさい!!」
「え!? ど、どうしたの〜芽舞ちゃん!」
「私、まだまだ釣り合ってなかったです。心とか、そういう面で。だから天芽さん、これからも私の事、見ててくださいっ」
「私には謝らないのね」
「恋敵ですから。こよりさん、私負けませんから」
そして天芽はこよりに頭を下げた。隠していたことの罪悪感からか、それとも彼女の危機に何も出来なかったことの負い目からか。そして芽舞は考えを改め、しかしそれでも天芽への恋心は変わらないのであった。
「……すまない。父さん、母さん」
一方のユゥリザ。死心に眠らされる直前のことだった。彼女は卑しくも生に縋りついてしまったのだ。もう、死ぬ覚悟など出来ていたはずなのに。故郷とともに自ら手にかけてしまった両親の顔が頭に浮かぶ。
「……もう、腹は括ったさ。心配しないでくれ、すぐにそっちに行く」
更に死んでいったかつての友人。誰も彼も浮かぶのは最期の苦しむ顔だけ。もう、限界だった。早く死にたい。楽になりたかった。だから早急にコールサイレンを殺し、自分も死ななければ、それが償いだと本気で信じて。
『アンデッドゲームブック』
『目を覚ませ 闘争の果てのレジェンドメギド』
元ネタなし。ゲームブックみたいな感じ。
『キング・オブ・ザ・ファンガイア』
『目を覚ませ 魔を統べるレジェンドメギド』
元ネタは指輪物語 ロード・オブ・ザ・リング。
Tips.絶頂兵装 未だに実装されていない武器郡だぞ。強化素材だけ手に入れることができるぞ。
最終回まで突っ走ります。ノンストップで!!