とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第51章 咲き誇れ、走り出す命。

 

 ────人を救わば穴ふたつ。わたしはあなたを、救いたい。例えそれが、あなたの望まぬ事だとしても。

 

 翌日、英寿が作戦を立て、現場指揮をセカイが務めるのは真・岡山浄化作戦。行きずりの五十嵐三兄妹、そして天芽達も参加していた。しかしそれは作戦と呼ぶには、あまりにも苛烈な戦場だった。

 瓦礫に覆われた市街地。崩れ落ちたビルの骨組みが空へ突き出し、道路はひび割れ、かつて人が暮らしていた街の面影はほとんど残っていない。

 その廃墟の隙間から、這い出すように姿を現す怪人たち。改造人間、ゾンビ、歪んだグラナトファ。数は一体や二体ではない。街そのものが怪物の巣になっているかのようだった。

 

「来るぞ!」

 

 セカイの声が響く。その直後、怪人の群れが雪崩のように襲いかかってきた。

 

「うおおおおッ!!!」

 

 トルペードが突撃する。巨大な斧を振り抜き、改造人間の群れをまとめて薙ぎ払う。鈍い衝撃音。肉体が砕け、怪人の身体が霧のように消えていく。

 

「左からも来とる!!」

 

 ゆっこがバットを振り抜く。骨の砕ける音。怪人の頭部が吹き飛んだ。水守のメイスが怪人の腹部へ叩き込まれ、内部で炸裂する。

 

 だが敵は減らない。

 

「多すぎる……!」

 

 セカイが歯を食いしばる。倒しても倒しても、怪人の群れは尽きる気配がない。それでも少女たちは戦い続けた。ここで止まれば、街は完全に終わる。

 だから。

 

「押し返すぞ!!」

 

 狗飼の声に応えるように、部隊が再び突撃する。

 その時だった。空気が変わる。戦場の奥怪人の群れがまるで道を開けるように左右へ分かれていく。

 

「……クソもう気づかれたか」

 

 セカイが呟く。現れたのはコールサイレン幹部。白と黒の髪を揺らしながら歩く少女 柩。その背後には、他の幹部たちの姿もあった。ネメ。その他、特記個体と呼ばれる怪物たち。

 それだけで、戦場の空気は完全に塗り替えられた。

 

「あぁもう……また大集合ですかぁ」

 

 雪蚕が顔を歪める。

 

「ほんと、うんざりするんだけど。なんであたしまで来ないといけないの?」

 

 だが柩は楽しそうに笑った。

 

「だって決戦ですから♪」

 

 彼女は両手を広げる。

 

「ここで人類を終わらせるんですよ? こんな楽しい舞台、皆で共有しないと損じゃないですか」

「……相変わらず狂ってるな」

 

 雪蚕が舌打ちする。

 

「さて」

 

 柩は指を鳴らすと、怪人の群れが一斉に動き出す。

 

「チェックメイトです♪」

 

 次の瞬間、戦場は再び怪物の津波に飲み込まれた。その中へ、ひとりの少女が飛び込む。ユゥリザだった。

 

「……ここだ」

 

 彼女は雄叫びをあげる。目の前にいるのは、コールサイレン幹部。この世界を終わらせようとしている怪物たち。そして、故郷の仇。

 ここが、私の死に場所だと、彼女はそう確信していた。長く続いた戦い。数え切れない犠牲。それらすべての終着点が、ここだと。

 

「来い」

 

 ユゥリザは静かに構える。次の瞬間、怪人の群れへ突っ込んだ。

 

「はぁぁッ!!!」

 

 噛みつきが肉を引き裂く、雄叫びに反応したゾンビをコールサイレンに襲わせる。噛みちぎった血肉を目眩しに使い、その隙に新しく殺し続ける。

 だが敵は多すぎた。四方八方から襲いかかる怪人。幹部の攻撃も飛ぶ。ネメの衝撃波。雪蚕の斬撃。

 

「ッ!!」

 

 ユゥリザは吹き飛ばされる。地面を転がり、瓦礫へ叩きつけられる。

 

「……はぁ……」

 

 立ち上がる。だが体はもう限界に近い。

 

「無理ですよぉ」

 

 雪蚕が笑う。

 

「一人で幹部全員相手とか。自殺志願者ですか?」

 

 ユゥリザは剣を構えたまま、息を整える。

 

「……そうかもしれないな」

 

 その瞬間だった。

 

「そうはならない!!」

 

 声が響いた。次の瞬間、怪人が吹き飛ぶ。

 

「ッ!?」

 

 ユゥリザの前に立ったのは、天芽だった。羽を纏った彼は、それを全てユゥリザの防御に回す。

 

「……どうして」

 

 ユゥリザが呟く。天芽は振り向かない。

 

「僕が守るって言ったでしょ?」

 

 次の瞬間。

 

「行くよ!!」

 

 天芽が突撃する。ユゥリザも立ち上がる。二人は背中を合わせた。

 

「……馬鹿だなお前は」

「よく言われる」

 

 そして再び戦場へ。同じ頃、別の場所では、五十嵐三兄妹が戦っていた。

 

「大ちゃん大丈夫!?」

「さくらこそ!!」

「一気にいくぜ!!」

 

 変身は出来ない。だがそれでも生身で戦うことは出来る。ギフの細胞を宿した彼らに限っては。

 その時だった。地面に転がる奇妙なスタンプに、英寿が気付く。

 

「これは……」

 

 死心が落としたヒツジプロトスタンプ。英寿はそれを拾う。

 

「試してみるか」

 

 彼が触るとそれは形を変え、完成されたスタンプへと変わる。

 

「へぇ……」

 

 英寿はにやりと笑う。

 

「……そろそろですかね」

 

 柩が呟く。彼女は両腕を広げた。

 

「皆さん、集まってください♪」

 

 次の瞬間。コールサイレン幹部たちの身体が光に包まれる。

 

「な……!?」

 

 ユゥリザが目を見開く。幹部たちの身体が融合していく。

 

「また遊びましょう♪」

 

 柩の声が響く。仲間を、家族を取り込み巨大な影となった彼女は、そのまま闇の中へ消えた。戦場に静寂が戻る。岡山浄化作戦は、ひとまず終わった。

 数時間後、生存部隊の拠点の円卓の周りに、全員が集まっていた。事情の共有が行われる。コールサイレン。幹部の能力。そして世界の状況。

 

「……つまりそこの狼は────」

「ユゥリザだよ姉さん」

「ユゥリザによる岡山壊滅は絢爛たる瘴気(ゴージャスティス)単騎によるもの。彼女は被害者だと、そう言いたいのだな?」

「……被害者だとは思っていない。家族や友人は……私の手で」

 

 通常、オリジナルのグラナトファは初変異時は気を失い、その場に倒れ込む。だが運の悪いことにその日は満月の夜だった。

 そう、月光鬼(げっこうき)だったのだ。彼女は暴走してしまった。

 

「……そうか。さぞ辛かっただろう」

 

 礼音自身、それを身に持って味わっていた。だからもう、ユゥリザを色眼鏡で見るのをやめたのだ。

 沈黙が流れる。その時、一輝が口を開いた。

 

「コールサイレンは俺たちに任せてくれないかな。英寿、そのスタンプくれないか?」

「もちろん。お前たちの力だからな」

 

 ベルトはない。スタンプもひとつだけ。しかし彼らには算段があった。戦いはまだ終わっていない。だが希望は確かに、ここにあった。

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