とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第52章 我ら完璧なる一心同体、五十嵐三兄妹。沸かせろFloor!

 

 ────陰日向、わたしたちであなたを救う。なればこそ、力を合わせてハイライト。

 

「ここがコールサイレンの本拠地……」

 

 失楽園 広島の夜は、不気味なほど静かだった。瓦礫の街。崩れたビルの影が月明かりに伸び、かつて人が生きていた街の面影は、もはや残骸の中にしかない。その中心に、ひとつの巨大な影が立っていた。それは人ではない。怪物でもない。

 無数の肉体が重なり合い、絡み合い、融合した歪な存在。コールサイレン幹部をすべて取り込んだ存在、騎獅道柩。

 

「あぁ……静かですねぇ」

 

 巨大な影の中心から、柩の声が響く。

 

「舞台の幕が上がる前って、どうしてこんなに静かなんでしょう」

 

 その身体の内部で、無数の声が蠢いていた。ネメ、雪蚕、そして他の幹部たち、そしてそこに住まう子供のグラナトファ達。家族のように繋がり、一つの肉体を共有している。

 まさに一心同体。柩は笑う。

 

「ゲームの時間です」

 

 その瞬間、瓦礫の街に三つの影が降り立った。

 

「そこまでだッ!」

 

 一輝だった。その隣に、大二、さくら。そしてバイス。

 

「もう好きにはさせないから」

 

 さくらが言う。柩は楽しそうに目を細めた。

 

「あぁ、貴方たちですか。さっきの戦場でも見ましたよ。仲良し兄妹さん」

 

 その言葉に、一輝は静かに構えた。

 

「あぁ、五十嵐一家は最強家族だ」

 

 柩はくすりと笑った。

 

「家族、ですか。それなら、私たちも同じですよ」

 

 その巨大な身体が蠢き、無数の腕が広がる。

 

「見てください。全員が一つの身体を共有しているんです」

「これこそ完全な家族でしょう?」

 

 ネメの声、雪蚕の声、幹部たちの声が重なって響く。

 

「……気持ち悪いこと言うなよ」

 

 バイスが顔をしかめる。

 

「それは家族じゃねぇ」

 

 一輝が一歩前に出た。

 

「ただの寄生だ」

 

 空気が張り詰める。次の瞬間、怪物が動いた。巨大な腕が振り下ろされる。地面が砕け、瓦礫が吹き飛ぶ。

 

「来るぞ!」

 

 大二が叫ぶ。三人は同時に散開した。

 

「オラァ!!」

 

 バイスが拳を叩き込む。しかし巨大な肉体はびくともしない。

 

「かってぇ……! イタタタ!!」

 

 その瞬間、雪蚕の刃が飛ぶ。

 

「邪魔なんですよォ!!」

 

 大二が飛び込み、カゲロウの羽で弾き飛ばす。

 

「さくら!」

「分かってる!」

 

 さくらは走る。巨大な身体の中心へ。だがネメの衝撃波が炸裂した。

 

「ッ!!」

 

 彼女は吹き飛ばされる。

 

「無駄ですよ」

 

 柩が微笑む。

 

「私たちは一心同体なんです。誰かが倒れても、誰かが補う。それが完璧な家族」

 

 沈黙。やがて一輝は立ち上がった。

 

「違う」

 

 低く呟く。

 

「家族ってのはな。そういうもんじゃない!」

 

 ヒツジバイスタンプ。ライダーレリーフは、ギーツ。そのスタンプには、奇妙な力が宿っていた。ギーツのワンネスの力。

 流れのままそれを自分の体に押印すると、3つのバイスタンプが生まれた。それは悪魔と一体化するバイスタンプ。サンダーゲイル、パーフェクトウイング、キングコブラ。それらの力が混ざり合い新たなスタンプが完成する。

 

『フィフティゲイル!』

 

 一輝はスタンプを握りしめる。

 

「行くぞ、バイス」

「おうよ相棒」

「カゲロウ、行くぞ!!」

「命令すんじゃねぇ。俺はあいつが気に食わねぇ、それで十分だ」

「ラブちゃん、行くよ!」

「ラブ〜!!」

 

 次の瞬間。一輝は自分の胸にスタンプを押し付けた。

 

「え?」

 

 バイスが目を丸くする。赤い紋章が浮かび上がり、空間が歪む。

 そこに現れたのはリバイスドライバー。

 

「セルフ変身かよ!」

 

 一輝はベルトを腰に巻く。押印されるとそこに現れたのは五十嵐一家の母の悪魔。天使のような美しいそれは、3人の人間と3人の悪魔を包む。

 

「変身!!」

『トルネードアップ! 三位一体 俺たち兄妹! 沸き上がる嵐は無限大!! 仮面ライダー! 五十嵐!!』

 

 三兄妹は融合、暴風が吹き荒れる。翼が広がり、雷が走る。そして現れたのは仮面ライダー五十嵐。

 

「行くぞ!」

 

 その瞬間、五十嵐は消えた。雷のような速度で突撃する。

 

「速ッ!?」

 

 雪蚕の斬撃を回避。ネメの衝撃波を突破。そして巨大な肉体へ拳を叩き込む。衝撃が走る。

 

「まだまだ!!」

 

 連続攻撃。風と雷が暴れる。だが柩は笑っていた。

 

「それでも……一心同体ですよ? いいんですかぁ? ただの子供もいますよぉ?」

「……だったら!!」

『悪魔との分離? 出来るよ! ライダーキックさ!』

 

 3人は狩崎の言葉を思い出す。五十嵐は跳んだ。空高く。

 

「まとめてぶっ飛ばすだけだ!」

 

 脚にエネルギーが集まる。風。雷。悪魔の力。

 

「一気にサクッと大事に決めるぜ!!」

『必殺! スタンピング! ジャスティス! リベラル! フィニッシュ!』

「ライダーキック!!」

 

 悪魔との分離はリバイスドライバーの標準搭載機能。閃光と巨大な爆発。そして肉体が分離する。

 

「な……!?」

 

 ネメ、雪蚕、幹部たちが地面へ落ちる。柩もまた、膝をついた。

 

「そんな……」

 

 一輝はカードを取り出す。

 

「これで終わりだ」

 

 こよりが持っていたヒューマンアンデッドのカード。光が広がる。その光に触れた幹部たちの身体が変化していく。怪物の姿が崩れ、人間の姿へ戻っていく。

 

「……あれ」

 

 雪蚕が呟く。

 

「私……人間……?」

 

 柩は静かに笑った。

 

「なるほど……。そういうゲームでしたか」

 

 その時だった。空間が歪む。五十嵐三兄妹の身体が光に包まれる。

 

「え……? 兄ちゃん!」

 

 ギフの遺伝子が薄れていく。代わりに、母の悪魔の力が強くなり、世界が彼らを拒絶する。

 

「……やっぱ母ちゃんは強ぇや」

 

 一輝は笑う。

 

「まぁいいか」

「世界は守れたしな」

 

 バイスが笑った。

 

「じゃあな!」

 

 光が弾ける。そして三人の姿は取り戻したバイスタンプとベルトと共に消えた。拠点は静まり返る。瓦礫の街に残されたのは、生き残った者たちだけだった。戦いは、まだ終わらない。

 だが確かに新しい命は走り出していた。

 

「……そうか、ありがとう天芽。この情報は確かにアイツらに伝える。お前たちは元の生活に戻れ」

「え。英寿はどうするんだよ!」

「もうすぐ時間切れだ。グラナトファの情報を伝えたらこの世界からは……おさらばだろうな」

 

 一方、因縁との戦闘を終えたユゥリザ達と英寿。英寿はポートラルの拠点へと向かうのだった。





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