とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第55章 抗え! 戦え! 叫べ! 自由を掲げた少女たち

 

 ────わたしは、あなたも救う。この世界の、理に反するとしても、

 

「だ、大丈夫ですの……?」

「安心してくれ綴……ガフッ……」

 

 連戦に継ぐ連戦。賢人は血反吐を吐き、再度倒れ込んだ。

 

「賢人様! 賢人様ッ!!!」

 

 綴は一度、ポートラルの一室に戻った。彼の療養の為に。

 

「幸いまだ攻めては来ない……ってこの紙は────」

 

 賢人の懐に入っていた紙。そこには日付、場所、そして妃崎傘子の判子が押されていた。

 

「一体何がしてぇんだあの猫耳殺しは」

「……さぁな。まぁおおかた責任感に押し潰されてると言ったところだろう」

「? どういうことだ礼姉ぇ」

 

 姫片の呟きに、礼音がため息を吐きながら答える。そんな中、呼び鈴が鳴りアドが対応する。

 

「? 誰だろう……ってサンちゃん!?」

「久しぶり。賢人のヤツ、重症なんだろ? 僕に任せてくれないか?」

「え、それどういう────」

 

 サンは賢人の元に一直線で向かう。そして自分の指を切り、血を飲ませるのであった。

 

「嘘……」

「サンさん!? ちょっ、賢人様に何をっ!?」

 

 ────回復はした。が、後からこれを知った賢人はこう言ったという。『喉交換して』と。

 

「あ、あとこれ……この前あの危険な本と一緒に落ちてた……」

 

 そう言って瑠奏が取り出したのは無地の本。何も書かれておらず、開いてもうんともすんとも言わない。

 

「わからない……けど長官との戦いには持っていくよ。何かあるかもしれないから」

 

 その日は妃崎との決戦前夜。

 

「こういう日こそ、普通の料理……ってなんでこんな豪華なんだよフラグかよ!!」

 

 机に並ぶのは沢山の寿司。鮮度抜群で、大きく乗った脂が光り輝いている。

 

「あらあら、わたくしが連れ去られてる時とびっきりの贅沢したと聞いたので」

「それ今やるべきかなぁ!?」

「ひぐぅ……わたくしだけ食べられなかった……」

 

 明らかに嘘泣きだが、こういうときの賢人は弱い。彼は綴を抱き締める。

 

「なんかいつにも増して積極的じゃない。何? サン(コイツ)の血ってマムシなの?」

「いつもこうですわよ? 来栖崎さん。2人きりの時は♡」

「うおっ」

「ヒサギン冷笑はなしっ!!」

「ちょっと皆! 早く食べないとお寿司冷めちゃうわよ! こういうのは鮮度が命なんだから!」

 

 やいとが催促し、彼女たちはようやく食べ始める。

 

「すげぇ……美味すぎだろこれぇ!」

「なんたって醤油も最高のものだからね!!」

 

 宴も佳境に入った。最後の〆はもちろん最高級茶。

 

「……さてと」

「これは……!」

 

 綴は一冊のノートを手に取り、懐にしまう。そして彼らは翌日の妃崎との決戦に備えるのであった。

 

「長官! 今でもまだ間に合います! そんなベルトは捨てて太陽機関に戻りましょう!!」

 

 決戦の場、瓦礫に包まれたそこはポートラルが本州に渡った際、妃崎と初めて会った場所。しかし、妃崎は答えない。彼女自身好きでやっているわけではない。ただの義務感でグラナトファを絶滅させようとしていたわけではないから。それは人類を救済するため、一人で突っ走った結果だった。

 

「……うるさい」

「理由は分かりませんがさっきコールサイレンの奴らが人間に戻ったって報告がありました! ……つまり各地のグラナトファも人間に戻せるかもしれない!」

「……確証がない上に戻した張本人はもういない! ────だから私が滅ぼすしかない。変身……!」

『グラナトファ!』

 

「だったら俺が勝って諦めさせます。……1人じゃ何やっても失敗しますからね」

『スペリオルユニコーン! 波癒抜刀!!』

「変身!!」

 

 グラナトファを殺す為の負の癒エネルギー、エクスト。そして全てを癒す為の正の癒エネルギー、ヴァルキュア。2つの爆発が拮抗する。

 

「間違ってるなんて言いません!! でも1人じゃ出来ないことでも!!」

「それは綺麗事だッ! 私だってルティアを頼ろうとした。でもそのせいであいつは!」

「綺麗事を本当にするのが仮面ライダーなんですよ!!」

 

 言葉の応酬、仮面の下で涙を浮かべる妃崎。

 

「それにルティアさんは確かに生きています!」

「……なんだと?」

 

 あの日、竜瀧が彼女の殺害を決意した日、密かにダイナモが保護していたのだ。しかし……それだけでは妃崎は揺るがない。

 

「だとしてもだ! グラナトファがいる限り、この悲劇は続く!! それにどうだ! もしもそのグラナトファを人間に戻すなんてことが出来ても、失った者は戻ってこない!」

 

 その答えを、賢人は知らない。テレビの中の言葉を受け売りに返すことはできるがそれでは意味が無い。

 

「……そうだよ。コールサイレンは悪いヤツだよ! でもいいやつだっている。天芽もユゥリザさんも、知り合って間も無いけど、でもいい奴だった!」

「その為に……少数の良いグラナトファとやらの為にクズを見逃せと!?」

「人間だってそうだよ。良いやつもいれば馬鹿もいる。賢いやつもいれば腹黒いやつもいる。でも誰だって生きてていいんだよ!」

 

「人間とグラナトファは違うと言っているだろう!」

 

「……あぁもう!! 俺が言いたいのは少し猶予をくれってことです! グラナトファを戻すために、そのベルトを渡してください!」

「それは出来ない……! これで奴らを殲滅するのだから」

「長官! 確かに私らを拾ってくれたことは感謝するけどよぉ、それとこれとは話は別だ」

「あぁ、妃崎君、君は少し1人で背負い過ぎだ。少しは私たちを頼れ」

「猫殺しはさ、考えすぎなんだよ」

「虐殺は人倫に反します。……それは彼らも認めないでしょう」

 

 先程まで、見ているしか出来ずにいたポートラルの面々も妃崎に対して諭し始める。

 

「あぁもううるさいうるさいんだよ!! ……ただ私は人類を救いたいだけなのに、どうして邪魔をするんだ!!」

 

 妃崎はベルトに取り込まれてしまったギフとディアボロに、精神が汚染されていく。

 

「俺は1人で破滅する人は見たくない。俺はポートラルの皆がいたから変身できた。皆がいたから渚輪区を救えた。皆が俺を救ってくれたんだッ!!」

 

 2人の装甲が崩れていく。しかし諦めない心と、綴の持つ本、そして日記が共鳴する。

 

『ポートラルユニコーン』

 

 無地だったその本、ライドブックに色が宿り始める。

 

「……これは、まさか!!」

「賢人様、貴方の本ですわ。使ってください」

「あぁ……!!」

『波癒抜刀!! 自由の港 繋がる生命 今こそ目覚めよ ポートラル!! それこそが、最高潮!!』

 

 今まで無彩色だったその装甲に、色が宿る。仮面ライダーヴァルキュア ポートラルユニコーン。それは賢人だけの本。彼自身が作り出した本。

 

「仲間がいるって意味、教えてあげますよ!!」

「いくらいた所で仲間が死んでしまえば……!!」

 

 妃崎(エクスト)は錯乱し、ポートラルメンバーに狙いを定める。

 

『Add-Full-Sparking!!』

『紫電一閃の眼識』

「どんな力だろうと、俺は仮面ライダーだ。だから誰も死なせないッ!!」

 

 アドの毒霧が発動、視界が遮られた戦場を百喰のサーチ能力で打破する。かつてアドはPAL研究所で非道な実験をしていた。その力を使った治癒射器(シリンジ)であろうと、人を救えばそれはヒーロー。

 

『∞マカブル-カルぺ・ディエム!!』

「誰だって間違いを犯す。小さなことも、大きなことも!! それでも俺たちはまた立ち上がる!!」

「戯言をッ!!」

 

 宙を滑り、火を纏った鎌がエクストの周囲を包む。もう、逃げ場はない。

 

『月景・婀娜秘咲き!!』

 

 来栖崎の一閃、光を超え、今まさにエクストのベルトのスタンプが弾かれる。

 

「この一撃に全てを懸ける……!! 長官! もう一度やり直してくださいッ!」

『必殺読破! ポートラル必殺撃!!』

『甘噛戦魂・ティーダ=ア・ヴァルキュア!!』

「お前がいたから……仮面ライダーヴァルキュアアアアァ!!」

 

 大規模な爆発の予兆。それは周囲の、ポートラルまで巻き込むほど。しかし……。

 

「貴様らが死ぬことは無いだろう……!!」

 

 全てを体内に押さえ込み、妃崎は人気のない、そう、失楽園へと飛ぼうとする。

 

「……ふざけるな!!!」

 

 しかしその足を掴んだのはヴァルキュア。

 

「誰も死なせない……!!」

「なっ……はっ、お前はそういう奴だったな」

 

 次の瞬間、視界が歪む。世界が、いやヴァルキュアと妃崎だけが反転したのだ。仲間も、瓦礫だらけの街も、全てが消え去る。ヴァルキュアは空中で宙を舞っている感覚を覚える。仲間の声も、もう存在しない。

 空は血のように赤く、幾度もの世界のリセットを体現するように何度も何度も捻れ、壊れ、そして再生する。

 

「長官……!」

 

 何とか掴んだ妃崎の手。まだ脈はある、しかし目は覚まさない。無限にも思えた異空間は、突如として景色を変える。

 

「ここは……なんだ? うッ────」

 

 ヴァルキュアの意識は、そこで途切れた。

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