とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第56章 さようなら、私たちの英雄。……予定調和を打ち壊せ! 虹の剣士よ!

 英雄、神川賢人がいなくなって2ヶ月が経った。竜瀧が引き起こした悪魔騒動もすっかり落ち着き、彼らは日常を取り戻していた。

 崩れた街は復旧が進み、瓦礫だった場所には新しい建物が建ち始める。まるで何事も無かったかのように、人々は日々を過ごしている。

 

「……後ちょっとで完成するんだけど」

 

 研究室の机の上には、無数の試験管と資料が広がっている。医療局 れいちぇると天才医師 やいと。そしてダイナモの整備士 パルフェ。3人は黙々と研究を続けていた。目的は一つ。

 グラナトファを人間へ戻す薬の完成。

 

「グラナトファ細胞との契約を断ち切る……」

 

 れいちぇるはため息をつく。最後のピースが足りなかったのだ。契約を破棄する為の元本であるグラナトファバイスタンプは妃崎が持っていたから。この世界に来ていたというリバイスなら無条件で人に戻せる、しかし彼らももういない。

 

「……八方塞がりね」

「賢人くん……」

 

 彼はいつでも、誰かを救ってきた。そんな彼なら妃崎すらも救ってくれると、そう信じざるを得ない。唯一の救いの糸は、細くても確かにそこにあるから。しかし遺されたポートラルユニコーンワンダーライドブックは、日に日に色が薄くなっている。

 

「ケンティー……」

 

 しかし、ポートラル拠点にある『とあるライダーオタクがヴァルキュアになった件』ライドブックは日に日に大きく、厚くなっていく。

 

「賢人様は生きています……これがその証拠です!!」

 

 彼自身の記録、それが絶えず続いている以上、神川賢人は生きている。カタカタと震え出す本。その揺れは次第に大きくなり、窓を突き破って飛び出す。

 

「!?」

「!! 行きましょう!!」

 

 皆が顔を見合わせ、言葉を交わす必要もなくその本を追いかけた。同時刻、開発班の持つポートラルユニコーンも動き出す。

 

「あれは……!」

「まさか……!!」

 

 長い道のり、辿り着いたのはとある港だった。それは渚輪区と本州を繋ぐ唯一の海路。

 

「賢人様……!!」

「賢人!!」

「ケンティー!!」

「神川さん!!」

「神川くん!!」

 

 ────帰ってきた仮面ライダーヴァルキュア。神川賢人は、妃崎傘子を抱え、天から舞い降りる。

 

「先輩……!」

 

 密かに尾行していたルティアが妃崎の顔を見て走りよる。それは賢人を見た彼女たちも同じで、彼に向かって押し寄せる。

 

「見ての通り妃崎さんも無事です。……まぁ、ちょっと疲労で寝ちゃってますが」

「先輩は私の方で」

 

 ルティアは妃崎をおぶる。彼女自身に巻かれたベルト、そしてスタンプは開発班が回収する。

 

「……バカ」

「すみません師匠」

 

 彼は頬をかき、少し微笑む。

 

「……一日千秋の想いで、待ち焦がれていましたの。賢人様」

「ごめん綴。待たせて」

「というか神川君、君はどこに行っていたんだい?」

「話すとややこしいんですけど……まぁ、1つの世界を救ったってところですかね……」

「は!?」

「……ふふっ、はははははは!!」

「ど、どしたのアヤネル!?」

「神川君らしい。……そう思ってな。おかえり。神川君」

「……はい。ただいま!!」

 

 突然笑いだした礼音。少し涙ぐんだ目で、彼女は賢人に手を差し出す。迷いなく手を取り、彼らは走り出した。

 

 

 

「ん、行ってきますのキス」

「はいはい。それじゃあ行ってくる、弓歌」

 

 あれから狗飼セカイは婚約者と結婚。太陽機関は解体され、永世中立国・日本の新政府となった中、旧太陽機関はその功績が称えられ、国民栄誉賞を受賞、更に再試験を希望する者は政府直属の職を得ていた。セカイはその参謀能力を買われ、警察機構の教官となり今も元治癒姫を率いていた。

 

「ジョーロ。さったと昼ごはん買ってきて」

「だから自分で買いに行けって。なんで教官が顎で使われんだよ」

 

 そして史上最悪の問題児 キルレート・アーに手を焼かれていたのだった。

 

 

 

「みんな〜!! We are 仮面ライダーSISTERS!! 初めましての人ははじめまして!! ヨスガだよ!!」

「リーダーのワダチだ。今日は存分にこの空気に酔え」

 

 旧シルヴァニア 仮面ライダーSISTERSは遂に世界進出。未だグラナトファ被害の傷が癒えない被災地に慰問ライブを通して音楽の力、そして彼女達の遺伝子の能力で支えているのだった。

 

 

 

「ちょっと芽舞ちゃん。もうちょっと真面目にっ」

「天芽さんが教えてくれたらぁ〜、真面目になれるかな〜」

「なに? 内容じゃなくて私が嫌って言いたいの?」

「落ち着けお前ら。天芽ももっとガツンと言え」

 

 こよりは芽舞は喧嘩しながら、虎視眈々と天芽とのチャンスを狙っていた。それをユゥリザが諌める日常。オリジナルのグラナトファは元には戻らなかったが、しかし人に危害はないと分かると全面的に受け入れられた。その甲斐あって、彼らは試験的な人との同棲生活を許されていたのだった。

 

 

 

「ネメ様はどこにいるの?」

「んー。ネメ様はねぇ、ちょっと今長期休暇貰ってるんだ」

 

 コールサイレン拠点に住んでいたオリジナルのグラナトファ少女たち。彼女たちは洗脳教育など受けていなかった。むしろ高等教育のような一般教養を教えていたということもあり、彼女たちは一旦孤児院に預けられた後、社会に出ていくのだった。

 

 

 

「……なぜ裏切ったのか、聞かないでおこう。だが柩、私はお前に感謝している。お前に出会えたおかげで、雪蚕達に会えたのだからな」

「ネメやめな〜? (コイツ)ん事調子乗らせたらまた暴れるよ?」

「……私のことはほっといてください」

「はッ。随分と萎れてしまって」

「……そういえばヴァルキュアさん、帰ってきたのでしょうか?」

「柩、私らに関係ないことだ。……柩?」

 

 一方、スタンプ産のグラナトファ、コールサイレン達は人間に戻った後、治癒姫たちに見つかり、刑務所に入れられていた。いくら人間でなかったとはいえ罪は罪。しかし同じ牢屋では無いものの、彼女達は隣合っていた。柩だけは以前のような飄々さを失い、しかし何故か仮面ライダーヴァルキュアの事を気にかけていたのだった。

 

 

 

「……悪かった。ルティア」

「ちゃんと謝ってください」

「すまない」

「違います。……ごめんなさいを、してください」

「……ごめん、なさい」

 

 そして、妃崎はルティアの必死の弁護もあり、執行猶予付き、監視付きの身ながらも日々を謳歌していた。これは彼女による実質的な人的被害がゼロだったことが大きいだろう。

 

「それじゃあ俺の1年間を聞いてくれ。俺が異世界に行き、世界を救った物語を」

「待ってください賢人様!! 怪人が、現れたようです!!」

 

 彼らの物語は終わらない。1年に1度自然発生するアルターブックを回収するために出動するのだった。

 

 ────暗雲晴れて、来たる平穏。希望が叶い、溢るる涙。されど世界の、天災晴れず。しかし臆さず、我らの魂。




めでたしめでたし! これにて完結です! 長かったですね! 終盤、もっとみんなのやり取り書きたかったです! なので加筆するかもです。
賢人が帰ってくるまでの異世界生活、書き始めます。これは書き終えてから投稿し始めますね。
ヒントは『反転』『オリジン』『百合』『救済』です。

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