とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
────誰も彼も、ただ仲良くなりたい訳じゃない。でもわたしは、あなたに憧れるの。
同年 6月11日
「えー!? 食糧の在庫が合わないー!?」
明け方。まだ空気の冷えた食料管理室に、賢人の叫び声が響いた。その声に、来栖崎が眉を寄せ耳を押さえた。
「うっさい。今何時だと思ってるの」
「ごめんなさい……ってそうじゃなくて。豹藤さん、それっていつからですかね?」
息のあった小気味いいやり取りの前で、やちるは記録簿を抱え小さく頷いた。
「ここ数日なんですけど、屋上菜園で採れた野菜も、地下倉庫に保管してある食材も……何故か記帳と実際の数が合わないんです」
「泥棒か……? いや怪盗か……?」
「あんたじゃないの? 」
「違いますよ?!」
賢人の即答に、やちるはおずおずと口を開く。
「違うと思います……神川さんが来る前ですので。それに……泥棒は言い過ぎかと」
「と言いますと?」
「減ってるのは大した量じゃないんです。スナック菓子1個とか、苺1房とかの可愛い量……だから勝手に食べちゃった人も出来心だと思うんです。配給も多くないですし、つい」
しかし、苺という単語を出した瞬間、賢人の眉がぴくっと動く。賢人の“2021年基準”では、苺はほぼご馳走だ。
「いいや、豹藤さん。果物の恨みは、恐ろしいですよ」
「はい?」
「来栖崎さん、やってやりましょう。その摘み食い犯に……」
賢人の考えを読んだように彼女は淡々と告げる。
「いやアンタが思ってるよりも苺って貴重じゃないわよ」
「え? いやいやいや……だって安いのでも1パック500円は……章姫とか!」
逆にリンゴはよく食べていたな、と過去を思いふける賢人。
「いや世界が滅ぶ前は量り売りで1キロ1000円とかよ? 確か2053年に効率的な栽培方法が確立されたとか何とかで、個人でも簡単に……」
「よく知ってますね。まるでいちご博士です!」
「普通にフルーツとか誰でも好きでしょ。……親にも制限されなかったし」
「え?」
「なんでもない。で、私たちにどうして欲しいわけ?」
「その……できるだけ穏便に済ませたいんです。アドさんだと、その子にも自分の分分け与えちゃいそうで……迷惑かけたくないんです」
「それ私たちになら迷惑かけていいってことになるんだけど」
「……い、いえそういうことではないです」
「あ〜ちょっと師匠は言葉足らずな気が有るので。まぁ苺が貴重じゃないなら……要望通り穏便に済ませます。任せてください豹藤さん」
こうして賢人と来栖崎は、地下倉庫で張り込むことになった。扉には『みんなの倉庫』と手書きの紙。その前で賢人はやる気満々に腕を組む。
「で、地下倉庫前張り込むとか単純すぎワロタ」
「バカで悪かったですね。単細胞がトップギアなんですよ」
「てかなんで私まで付き合わせられなきゃなんないわけ」
「いや離れられないんですから仕方ないでしょ!」
そこへ、物音。
「シッ……誰か来た」
「え?」
来栖崎が賢人の口を抑える。
倉庫に入る影がひとつ。ライトで棚を照らしながら、何かを探している。
────そして。
「……ジュウジュウ ショリショリッ フワッ トットットッ……ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
「いや何食ってるの!?」
「きめぇよ 〇ね」
「いやどうやって発音してるの!?」
賢人のツッコミに驚いた犯人は、ライトを落としてしまう。
「アドさん!?」
照らされたのはアドの顔。口の周りにチョコが着いている。
「食べ方汚っ」
「じゃないですよ来栖崎さん! あのアホとっちめてぶち殺さないと気がすみませんよ!」
「へっへっへ、バレちまったもんは仕方ない……逃ぃげるんだよぉ〜!」
「あっ、逃げやがった! くッ、師匠追えますか!?」
「もちろん」
来栖崎は口元に笑みを浮かべ、軽やかに追う。逃げた先は食料管理室。
「まずい! 豹藤さんが──」
賢人が駆け込むと、やちるが震えていた。首元に突きつけられているのは……ペロペロチョコの棒、持ち手の先端にキャラクターの造形があった。
「ひ、ひゃひゃ、助けてくだしゃい……神川さん……」
「さぁ! このヤチルンの命が惜しくば、あたしゃあポテトチップを要求する!」
「腐りきってるわね」
茶番。確信した。しかし……。
「食べ物の恨みぃ!!」
「ひぇ〜危にゃい危にゃい〜!」
アドはまたもや逃走を選択。窓を開け、蜘蛛のように壁を伝い屋上に向かった。
「怪奇 にも程があるだろ!」
来栖崎が先に屋上へ到着したが、アドの姿が見えない。
「どこいったのかしら」
丁度、シャワールームにも人がいたようで来栖崎はそのカーテンを勢いよく開ける。
「ッ……って、うお。甘噛か」
「うお。ってなんですの!」
となれば菜園の影辺りか、考えてみた来栖崎。
「フッハハハハハハハハ!!!」
「いたわねあのアバズレ」
貯水タンクの上で、アドは高笑いをしていた。
「ここまで追ってきたことは褒めてやるぞYOU!! だが! 最高のショーはここからだぜぃ!」
「は? 何あのスイッチ」
「今ツヅリンがつけているバスローブに爆弾を仕掛けさせてもらったぜぃ! そう! バスローブだけがはだけるように調整したなぁ!!」
(嘘つけぇ!)
「さぁさぁ動くなよ〜? 動いたらBOM! だよ〜?」
「いや、いいわ別に甘噛に恩も借りもないし」
来栖崎はワイヤーアクションもかくやという勢いで跳んだ。助走などせずとも、ひとっ飛びで10mだ。
(○本監督かよ!?)
「ヘーヘヘヘヘヘ!!! おしりぺーんぺー……え?」
「はい、ゲームオーバー」
「……。……ごめん」
「遅い」
罪人、樽神名アドは、徹底的正義の名の元に、今ようやく裁きが下された。
「……きゅー」
来栖崎は思った。我ながらよく1人でこれ程のものを完成させられたものだと。
その結果────。菜園の近くに新たなカカシが立った。名は樽神名アド。かの聖人のように全裸で十字架に縛られ、背中には十字架のペンキ。
「……ってあれ? アイツは?」
「無事に解決した事件。犯人には罰。見事だねぇ。でも、見事すぎてつまらない」
突然、拍手と賢人の声が響く。屋上にある高台から、賢人が現れた。
「何高台立ってんのよ」
「アドさん、貴方は自分の為に共有財産を浪費した。僕は食べ物とやらに興味は無いが、君にもその心の痛み、味合わせてやろう」
彼は大袈裟に宣言し、片手にリンゴ、もう片手にはフォークを掲げる。
「一人称変わってるわよ」
直後、フォークをリンゴに突き刺し、皮ごと食べる賢人。
「バカね」
瞬間、来栖崎にのされてアドに次いでカカシにされる賢人。
「賢人様!? 大丈夫ですの?!」
「うぅ……禁断の果実が……。……!?」
一瞬目を開けた先にいたのは裸体にバスローブ1枚の甘噛。────鼻血が噴水のように吹き上がり、賢人は再度気絶した。貴重な果物であったリンゴの件は鹿狩の作戦の立案で埋め合わせることとなった賢人だった……。
感染×少女 第一部 第八章 章タイトル『摘み食い狂想曲』より
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そういえば賢人特オタやったね
海東大樹やめろw
イチゴ偏愛ぶりよ
来栖崎雑に強いな
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