「あの……」
「……なに?」
「そのぉ……もう1時間は僕の膝の上に居ますよ?」
「文句あるの?自由にしていいって言ったのはあんたじゃない」
「それはまぁ、そうなんですけど……」
今僕の膝の上に座って本を読んでいるのは、桐生キキョウさん。百鬼夜行連合学院の百花繚乱紛争調停委員会参謀です。肩書が長すぎる。ぱっと見中国語かと思いましたね。そしてね、僕の腕に尻尾巻きつけるのやめてくれませんかね。心臓に悪いんですが。ちなみに僕の上に座っているキキョウさんの膝の上にルカが乗っています。あ、なんか耳がピコピコ動いてる……触りたい
「……」サワサワ
「──ッ!?」
「あ……」
「……あんた、急に何をしてるの?」
「いや、目の前で耳が動いてたからつい触りたく……」
「……」
キキョウさんはいつもよりも鋭い視線で睨みつけてくる。そんなに嫌だったんですか……?なんかちょっとショックですね。キキョウさんは耳を触られた瞬間すごい勢いで僕の上から飛び退いた。その拍子にルカも飛んでいってしまったけどそこは猫らしく華麗な着地を魅せてくれた
「はぁ……もういい」
「そんな事言いながらなぜ膝の上に乗るんです……」
「肌寒いから、体温の伝わる距離にいて」
「ン゛ン゛ッ゛!!」
体温の伝わる距離ってそれもう密着状態では?ていうかそんな事言わないでください。心臓に悪い。でもやっぱり魅力的な耳と尻尾だな。ルカといい勝負だ。他にも猫耳生徒はいるけどみんな魅力的だ。というかケモ耳が最高。まず大前提キヴォトスの人たちは美人だ。そこにさらにケモ耳という要素が加わることによってさらに魅力を引き出している。まあ欲を言えば犬や猫の姿をしている街の住民の方たちをモフりたいんですが。全身モッフモフですよ?まあ失礼だからしませんが
「ふ、ふふふ……」
「ちょっと、なに気持ち悪い笑い方してるのよ」
「気持ち悪い……」
「頭に吐息がかかって鬱陶しい」
「じゃあどいてくださいよ」
「それは無理」
なぜなんだ。家主は僕なのに僕の意見が通ったことないんですが。大抵押し切られてしまう。ちょっと強情過ぎやしませんかね。ていうか寒いなら毛布被りましょうよ
「キキョウさん、寒いなら毛布を持ってきましょうか?それなら僕の膝のうえに座る必要も……」
「は?」
「いえ、何でもないです」
「これは休息に必要なことなの。あんたや先生が言ったんでしょ?休息は仕事以上に大切だって」
「いいましたね」
「だったら黙って私の言ってる通りにして。いい?」
「はい……」
──────────────────
「あちゃ〜、雨降ってますね……しかも結構強めの」
「そう、なら今日はここに泊まっていく」
「えっ」
「なにその反応。もしかしてこんな雨の中帰らせる気?」
「いや、すぐ止むかもしれないし……」
「今日は夕方以降はずっと雨よ」
「嘘ぉ……」
夕方になって、そろそろ帰る時間だから玄関まではついて行ったんですけど、ドアを空けたら強めの雨が降ってました。キキョウさんが言うには夕方からはこの状態がずっと続くらしい。それ知っててなんで今日来たんですか?いや、今スマホで確認しただけか。ダメだな、今の考えだとまるで──キキョウさんが雨を利用して家に泊まろうとしているみたいじゃないか。キキョウさんに限ってそんな事ありえないでしょう。今日の行動だって、僕を利用しているだけに過ぎないだろうし。だがもしこの仮説が本当なのだとしたら、僕は恐らく尊死してしまう。まあ、この仮説をキキョウさんに伝えることはありませんが。もし違ったときの僕のメンタルへのダメージが凄まじいことになりそうなので
「何してるの?早くリビングに戻るわよ」
「え?ああ、はい」
僕達は一旦リビングに戻る。僕はソファに座り、キキョウさんは膝の上……ではなく隣に座った。相変わらず距離は近いですが。それにしても休息が目的ならなんで家に来たんでしょうか?シャーレでもよかったんじゃないですかね。聞いてみるか
「キキョウさん、今日は休息として家に来てたみたいですけど、別にシャーレでもよかったのでは?」
「別に、今日はあんたの家で休もうと思ったから来ただけ。まあ、シャーレはここよりも人が来るから、休むならここのほうがいい」
「確かにシャーレは人が来ますね。その点で言えば、家には基本的に僕とルカしかいないので静かではありますね。でも前はシャーレに行ってたじゃないですか」
「さっきから、シャーレシャーレって。何なの?私には来てほしくなかったとか、そういう事?」
「そういうわけじゃないんですけど……」
「じゃあなに?」
「いや、キキョウさんずっと距離近いから心臓によくないんですよ。簡単に言えばすごく恥ずかしいです」
「……そう」
あの、恥ずかしいって言ってますよね?なんでもっと近づいてくるんですか?少しはあった隙間がなくなったじゃないですか。あっちょっ、腕に尻尾巻きつけないでください。さっきもやってましたよねそれ?待って!ホントに僕の事殺す気ですか!?
「キキョウさん!待って!?それ以上何かしたら僕はおかしくなってしまいます!」
「別になってもいいんじゃない?それであんたが私をどうこうできるわけじゃないし」
「それはそう!」
「じゃあ、今から読書を再開するからおとなしく座ってて」
そう言いながらキキョウさんは読書を始めてしまった。僕は尻尾を腕から外そうとしたけど、なぜか異常に強く締められたので外すのは諦めた。まあ、どうせ動けないならこのままボーッとしておくか
──────────────────
あれから1時間ほど経った。僕は未だに読書をやめないキキョウさんの隣でスマホをいじっていた。でもなんかちょっと湿度が高いような気がする。雨のせいかな?心なしかスマホの画面が曇ってる気がする。除湿機は置いてないしどうするかなぁ……まあ、別に困るほどでもないしいいか
「キキョウさん、今日は休めましたか?」
「……そうね、まあそれなりには休めたと思う」
「ならよかった。別に僕も来てほしくないわけじゃないので、今日以降も気が向いたら来てください」
「……ええ」
「でも、流石に距離感は大切にしてほしいかなぁって」
「残念だけどそれはできない。私にはこの距離が適切だから」
「本気で言ってます?」
「逆に聞くけど、冗談に見える?」
「その目は本気ですね……」
ヒエッ獲物を狩る獣の目だ。その視線を向けるのは僕ではなく先生であってほしかった。怖い……いつか僕は逃げなければならないかもしれない
「逃げようなんて考えないことね。私から逃げられると思ってるなら、それは大間違いだから」
「別に、思ってませんよ……?」
「今はその言葉を信じてあげる。でも、もし私の前から居なくなろうなんて考えたときは……覚悟しておいてね、シンヤ?」
「ひぃん……」
この日の湿度はいつもの倍はあったと思う。うん、雨のせいですこれは。それ以外考えられません。ていうかそう思わないとやってられません
この世界のキキョウはね、シンヤに対して遠慮というものが存在してないんですよね。なのでデレ強めで書かせてもらっています
そして、シンヤ君は特定の生徒に対してキモくなることはないといったな。あれは嘘だ。ケモ耳とか尻尾が生えてる生徒に対しては結構趣味が出ます。まあシロコとかにそれしたら問答無用で喰われそうなので抑えてますけどね
各話の長さをどうするか
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今のままでも十分
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もう少し長くてもいい