アヴォリオンだ!   作:マイmk3

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ネタが切れ始めたので、暫くステラリスをやりながらネタを溜めます。


12話 パイロットの戦い方

ナスカ級に突入した俺は、ツァンヒア隊にブリッジ制圧を任せ、20名の未知の異星人と思われる目標へ向かって艦内を進んでいる。

 

艦内は、無機質な金属の通路が続いていた。

重力は正常で、空気もある。

戦闘には都合がいい。

 

『サワミヤ船団長。少々、悪い知らせが』

 

ナビィから通信が入る。

 

「なんだ?」

 

返答しながら、パルスブレードを前方の壁へ投擲する。

クナイ型のブレードが突き刺さり、着弾地点から球状のソナーパルスが拡散。

ヘルメットのバイザーに、壁の向こう側の反応が立体表示される。

 

前方の十字路、左側に3人。

 

『目標が移動を開始しました』

 

嫌なタイミングだ。

 

「何処に向かってる?」

 

報告を聞きながら、十字路へ向けて一気に加速する。

減速せず、そのままスライディングで曲がり角へ滑り込み、物陰に隠れていたガトランティス兵へ奇襲を仕掛ける。

 

まさか、下から来るとは思っていなかったのか、3人とも反応が遅れる。

その隙にCARを突きつけ、引き金を引く。

 

1人目、頭に1発、ヘッドショット。

2人目、首元に2発。

3人目が武器を構える前に、胴体に4発。

 

流石はガトランティス人。

普通の人間なら、1発のエネルギー弾で体内を焼き尽くされ死亡するだろうに、4発も耐えた。

 

体勢を立て直し、死亡確認と周囲を警戒する。

 

『艦後方です。進路から推測するに、機関室へ向かっている可能性が高いです』

 

機関室か...。

この状況で向かう理由は限られる。

修理か、あるいは自爆。

 

どちらにせよ、放置すれば面倒な事になる。

 

「わかった。急いで向かう」

『ヘルメットに最短経路を表示します。ご武運を』

 

通信が切れると同時に、バイザーに青いラインが表示された。

機関室までの最短ルートだ。

 

CARのマガジンを変え、ジャンプキットの出力を確認する。

 

「ちょいと、本気で走るか」

 

呟きながら、壁に向かってジャンプキットで飛ぶ。

ナノマシンで強化された脚力で壁を蹴り、一気に加速した。

 

***

 

(今日はやけに船が揺れるなぁ)

 

牢獄のような部屋。

いや、実際に牢獄なのだろう。

 

金属製の壁。

外からしか開かない扉。

生活するための必要最低限の設備。

 

そんな部屋に6つのベッドが置かれ、その上に白い肌に尖った耳、2本の角、紫色の髪、と言った特徴を持つ者達が座っていた。

 

「チッ...ガトランティス共め。俺達が直した船を乱暴に扱いやがって」

 

その内の1人、まだ青年の男が吐き捨てるように不満を漏らす。

 

「やめなよ。聞かれたらまた、殴られるよ」

 

それを、向かいのベッドに座っている若い女性が咎める。

 

(ガトランティスに奴隷とされてから、この光景も何度目かな...)

 

その様子を、1番離れたベッドの上で見ていた長い髪の女性が憂鬱気味にベッドに倒れる。

 

ネステリア人。

彼女達は、そう呼ばれていた。

 

かつて、彼女達の先祖は、1つの惑星に住んでいた。

豊かな海と大地を持つ、生命に満ちた星。

 

だがその星は、多数の星間国家による戦争に巻き込まれた。

軌道上では艦隊が幾度となく激突し、地表は何度も焼かれ、惑星は見るも無惨な姿になってしまう。

海は汚染され尽くし、大地が割れた。

 

星間戦争は長きにわたって続いた。

終わらぬ戦争は、各国に文明を維持できないほどの損害を与え、やがて皆朽ちていった。

 

ネステリア人の故郷もまた、同じ運命を辿る。

美しい惑星は生命が育つことのない死の星へ変わり、地表に住んでいた全ての命が失われた。

 

だが、種族そのものは滅んではいなかった。

一部の生存者達は戦火から逃れ、軌道上に放棄されていた建造途中の大型宇宙ステーションへと移住していたのだ。

 

未完成、不完全、脆弱な避難先。

それでも、先祖達はそこに留まることを選んだ。

生きることを選んだのだ。

息を潜め、静かに。

ただ、種を繋ぐために。

 

それから、約300年の月日が流れた。

他の星々へ探索船を送り、生き残っていた家畜や植物を持ち帰った。

 

ステーションに畑を作り、植物を育て、生命を循環させた。

宇宙船で資源を集め、ステーションを増築し、居住区を広げていった。

 

やがて、1万人にも満たなかった人口は、100万人を超えた。

 

ステーションの区画増築か。

あるいは、別の星への移住。

彼女達は、新しい未来を考え始めていた。

 

その時だった。

 

突如、悪魔達が現れた。

 

300隻を超える未知の艦隊が、虚空から出現しステーションへ攻撃を開始したのだ。

外壁は焼き裂かれ、居住区は爆炎に包まれた。

 

だが、ネステリア人は抵抗せずに降伏した。

彼女達の先祖が戦争の恐ろしさを伝え、戦いは忌むべきと教えられてきたからだ。

 

それが、間違いだった。

 

緑色の悪魔達は、降伏した彼女達を奴隷にした。

 

船の整備。

資源の採掘。

食料の生産。

 

あらゆる労働を、衰弱し、倒れ、死ぬまで強いられた。

代わりはいくらでもいる、消耗品として彼女達は使われたのだ。

 

彼女もまた、その一人だった。

遠征艦隊に乗せられた整備士。

自由を失い、未来を失った者。

生きているだけの存在。

 

イシェ・クロッゼル。

 

 

【挿絵表示】

 

 

整備士としてこの艦に乗せられているネスティア人達のリーダーだ。

彼女は、未だに言い争いを続けている仲間達へ、静かに声を掛けた。

 

「皆、落ち着いて。これ以上騒ぐと、ガトランティス兵が確認に来るかもしれないから」

 

不安なのは、彼女も同じだ。

だが、混乱すれば状況は悪化するだけだと理解していた。

 

その瞬間だった。

 

艦全体を揺さぶるような、凄まじい衝撃が襲った。

まるで、巨大な何かが船体に激突したかのような振動が起こり、床が跳ね、壁が軋む。

 

「なんだ!?」

「何かが、船にぶつかった!?」

 

悲鳴に近い声が上がる。

 

続けざまに、2度、3度と衝撃が走り、鈍い爆発音が響く。

一つではない。

複数だ。

船のあちこちで、何かが起きている。

 

(この揺れ方、間違いない)

 

クロッゼルの背筋に、冷たいものが走る。

 

(戦闘が行われている!?)

 

考を巡らせながらも、再び騒ぎ始めた仲間達を落ち着かせようとする。

 

「皆、静かに」

 

しかし、その言葉は途中で止まった。

 

重い駆動音と共に自動ドアが開き、数名のガトランティス兵が部屋へ入ってくる。

全員が武装していた。

腰の剣。

手に持つ銃。

そして、明らかに余裕のない表情。

 

その異様な雰囲気に、ネステリア人達は一瞬で押し黙る。

兵士の一人が、短く言った。

 

「出ろ」

 

その言葉を聞くや否や、クロッゼル達は慌てて立ち上がり、部屋を出る。

通路には、同じように別の部屋から連れ出されたネスティア人の整備士達が並ばされていた。

 

誰もが怯えた表情をしている。

 

兵士が続けて命じる。

 

「機関室に行け」

 

その言葉を聞いた瞬間、クロッゼルの心臓が強く脈打った。

 

(機関室...?)

 

ありえない。

整備は、2日前に完了している。

異常など、報告されていないはずだ。

 

だが。

 

(まさか...破壊されたの!?)

 

最悪の想像が脳裏をよぎる。

血の気が引くのを感じながら、彼女達は機関室へと連れて行かれた。

 

広い部屋の中央に円筒型の主機関が置かれ、その周囲に大小様々なコンソールが並んだ機関室に到着した彼女達はそれぞれの持ち場へ散り、点検を開始した。

 

主機関は正常。

出力も安定している。

 

しかし、推進器を確認した瞬間、クロッゼルは息を呑んだ。

 

(何これ!?)

 

推進器の中枢部分だけが、正確に破壊されていた。

重要な制御部位だけが、綺麗に撃ち抜かれていたのだ。

まるで、「動けなくするためだけ」に破壊されたかのように。

 

(こんなの、専用の設備がなければ、修理なんて無理!?)

 

ここにある工具では、どうにもならない。

そう判断し、クロッゼルは恐る恐るガトランティス兵へ報告する。

 

「げ、現状では...修理は、不可能です」

「ならば」

 

一拍の間。

 

「機関を暴走させろ」

 

意味を理解するのに、数秒かかった。

機関の暴走、それは爆発させろという意味だ。

クロッゼルの思考が、止まる。

 

そんな事をすれば、皆死ぬ。

せっかく、生きるために服従したと言うのに。

 

「モタモタするな! 早くやれ!」

 

目の前のガトランティス兵が怒鳴る。

だが、クロッゼルは動かなかった。

 

否。

 

動けなかった。

恐怖が、彼女の身体を縛り付けていた。

足は床に張り付いたように動かず。

手は制御できないほど震え。

思考は霧の中に沈んでいく。

 

何も、決められない。

何も、選べない。

 

(お父さん...お母さん...)

 

脳裏に、懐かしい光景が浮かぶ。

 

ステーションの居住区。

小さな食卓。

仕事を終え、帰りを待っていてくれた家族の顔。

 

奴隷になる前の、未来が、明日があった頃の記憶。

そのすべてが、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

 

「役立たずがぁ!!」

 

怒声が響き渡る。

ガトランティス兵の苛立ちが、頂点に達し腰の剣を抜き放つ。

金属の擦れる音が、やけに大きく響いた。

 

剣が、振り上げられる。

クロッゼルの視界の中で、その動きはひどく緩やかに見えた。

まるで、時間そのものが引き伸ばされたかのように。

 

逃げられない。

分かっていた。

 

(...ごめんね)

 

家族へ。

仲間へ。

心の中で、静かに謝る。

 

迫り来る刃を、ただ見つめた。

 

 

 

だが、剣が振り下ろされることはなかった。

 

鈍い衝撃音と共に、ガトランティス兵の身体が、宙を舞った。

横殴りに吹き飛ばされ、錐揉み回転しながら機関室の壁へ激突する。

 

何が起きたのか、彼女には理解が追いつかない。

 

目の前に現れた砂色の戦闘服、無機質なフルフェイス型ヘルメットを装着したその何者か。

明らかに、この艦の乗員ではなかった。

 

***

 

ほーん、なるほどねぇ。

今の俺が本気で人を殴ったら、ああなるのか。

 

先程ぶん殴ったガトランティス兵が、凄まじい勢いで回転しながら壁にめり込み、そのまま動かなくなっているのを見て、自分の力が予想以上に強化されている事に驚く。

 

いや、驚いてる場合じゃないな。

やらかした。

 

剣を振りかぶっていたから、ビックリして反射的に殴ってしまった。

 

機関室に入った時点で射撃に切り替えるべきだったと後悔しながら、周囲の状況を確認する。

 

未知の種族が20人。

各コンソールの前で、怯えた様子でこちらを見ている。

 

そして、ガトランティス兵が21人。

突然現れた俺に驚きながらも、すでに包囲するように動き始めている。

 

このまま撃ち合えば、後ろの彼女達を巻き込む。

 

ならば、パイロットの得意技の出番だな。

 

俺は床を蹴り、壁へ向かって走る。

正面にいた兵士へCARを連射しながら、ジャンプキットを噴射。

空中へ跳躍し、そのまま壁面を横方向へ駆ける。

 

ウォールランと呼ばれる技だ。

 

「撃て!殺せ!」

 

ガトランティス兵が一斉に銃を向ける。

だが、構わない。 

多少の攻撃は、シールドに弾かれる。

何より、高速で移動する俺を捉える事はできない。

 

壁を走りながら部屋の奥へ移動する。

こうすれば、流れ弾が彼女達に当たる可能性は低くなる筈だ。

とは言え、長引けば危険度は上がる一方。

最速で終わらせる。

 

壁走りのまま、銃を構えていた敵を2人撃ち抜く。

そのまま、4人の兵士が密集している場所へ電気スモークグレネードを投擲。

 

「ゴホッ...なんだ、この煙は!?」

「こんな物で!」

 

炸裂音と同時に、白煙が一気に膨張し兵士達を包み込む。

次の瞬間、煙の内部に高圧電流が流れ、身体が痙攣し焼け焦げた4人が崩れ落ちる。

 

残り14。

 

壁から跳躍し、床へ降下。

着地点にいた敵の首へ蹴りを叩き込み、へし折る。

鈍い音が鳴り、動かなくなる。

 

そのままスライディングで、次の敵の懐へ滑り込む。

真下から跳ね上がり、全力のアッパーカット。

 

あ、天井に突き刺さった。

...加減、難しいな。

 

「よくも同胞を!」

 

剣を構えた兵士が突進してくる。

その軌道を読み、背後へ回り込みながら回避。

 

お。

こいつ、女のガトランティス人じゃん。

珍し。

 

CARを背中へ突きつけ、トリガーを引く。

エネルギー弾が体を貫通し崩れ落ちる。

 

感情的な奴といい、女のガトランティス人。

2202の連中じゃないな?

ダガームと同じで方舟から捨てられたか、家出したタイプか。

 

剣を抜き突撃してきた4人へフルオート射撃。

弾が肉体を引き裂き、敵を沈黙させた。

 

残り7。

 

その時、ヘルメット内のミニマップに、援軍が到着したのを確認する。

 

「ガトランティス人以外には当てるなよ」

 

直後、スペクター部隊が機関室へ突入。

無駄のない動きで、正確無慈悲な射撃をおこない、残りのガトランティス兵を瞬時に排除していく。

 

『こちら、ツァンヒア隊。ブリッジの制圧が完了しました』

 

向こうも終わったらしい。

 

「了解。ツァンヒア隊はそのまま待機してくれ」

 

これで、この艦は完全に制圧した。

俺はCARを腰に下げ、周囲を見渡す。

 

俺が大暴れしていたので、ネステリア人達は部屋の隅で縮こまっていた。

 

戦闘中にナビィから送られてきた文化データを確認しながら、ゆっくりとヘルメットを脱ぐ。

両手を握り、顔の横まで持ち上げる。

ネステリアの文化で、危害を加える意思はないことを示す仕草だ。

 

「安心してくれ」

 

ネステリア語で話しかける。

突然、現れて暴れ回った異星人が目の前に居るからか皆、恐怖で顔が強張っている。

まあ、無理もない。

 

やり過ぎたな、これは。

 

「助けに来た」

「たす...けに...?」

 

1人が、震える声で繰り返す。

その表情にほんの僅かだが、安堵が浮かぶ。

 

それを見て、俺は心の中で決めた。

 

次からは、ツァンヒア隊に任せよう。

さすがに、第一印象が悪すぎる。




ネステリア人の名前は、ファーストネームが前につくタイプです。
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