20名のネステリア人を救出した我々は、鹵獲したナスカ級を曳航し、一度トラベラーへ帰投した。
彼女達から、ガトランティスの奴隷にされた経緯、そして居住ステーションの事情を聞き取った。
さらに、鹵獲したナスカ級のデータベースを徹底的に洗い直した結果。
連中はやはり、ガトランティス本隊から離反した集団であることが判明した。
思い返せば、これまでの戦闘でも違和感はあったのだ。
今のガトランティス兵は、感情を排した統率された戦闘を行うはず。
だが、奴らの中には明らかに感情的な動きを見せる者が混じっていた。
さらに決定的なのは、ネステリア人の扱いだ。
本来、ガトランティスは技術を持った者を科学奴隷にする。
だが奴らは、ネステリア人を単なる労働力として酷使していた。
この時点で、2202で確認されているガトランティスとは、性質が明らかに異なる。
ゴラン・ダガームと同じく、失敗作。
あるいは、前ズォーダー大帝時代に生み出された旧世代の兵士。
それが、俺の結論だ。
また、更にナスカ級のデータベースを漁った結果、航路図を見つけ、はぐれガトランティスの本拠地を突き止めることに成功した。
今、俺たちは奴等が占拠しているステーションを攻略し、ネステリア人を解放する作戦を詰めている。
「既に知っているとは思うが、今回の作戦目標について説明する」
トラベラーのブリーフィングルーム。
丸い机を囲むように、各艦の艦長と副官、各部署のリーダー、タイタンパイロットなど、本作戦に参加する要員が揃って座っている。
ネステリア人代表として、イシェ・クロッゼルにも同席してもらった。
ステーションの構造や、はぐれガトランティスの戦力、彼女の情報が鍵になる。
「我々の目的は二つ。ネステリア居住ステーションを占拠している“はぐれガトランティス”の排除。そして、奴隷として酷使されているネステリア人の解放だ」
そう言って、机の中央にステーションの立体映像を展開する。
約10kmの四角い階段状巨大構造物から一本の支柱が突き出し、そこから水平に伸びた棒状構造物が生えている。
下部には宇宙船ドックがいくつも並んでいた。
「このドック以外に、一度に大人数が通れる入口はありません」
クロッゼルが続ける。
「ただし、ここは3年前に増設された区画です。外壁が薄く、艦の攻撃なら簡単に穴が空きます」
つまり、穴を開けるのは簡単。
だが、その穴が最悪の引き金にもなりうる。
「ステーション解放には、移乗部隊による制圧が不可欠だ。故に、残存艦隊との艦隊戦は、ステーションから離れた場所でやる必要がある」
ここでルオコスが手を挙げる。
「残存艦隊の総数は、何隻なのでしょうか?」
「彼女の話だと襲撃時が約300隻。そのうち約150隻は、俺たちが既に沈めた。残りは半数程度ってところだ。新造艦を作っては、いないようだしな」
クロッゼルに視線を向けると、彼女は大きく頷いた。
「ドック内部では修理と整備が中心でした。船を作れと命じられた事もありますが、戦闘艦を造れる技術はなく...」
「そう聞くと、ドローンがあったとはいえ、900mの艦を現場で作った船団長の異常さがよく分かりますね」
リカーナが畏怖混じりの目を向けてくる。
あの時は、色々と噛み合ったんだよ。
色々と。
「ステーションから引き剥がすなら、また囮を使うのか?」
セカトン少将の言葉に、俺は頷く。
「その通り。今回も、採掘艦隊には囮になってもらう」
作戦の骨子を口にする。
「まず、全艦で該当星系の外縁部へ超空間ジャンプで侵入。次に、ピッケル級4隻で構成した採掘艦隊を、ステーションから20万km離れた位置にワープさせる。そして、こちらは気付いていませんって顔で、採掘作業を行い敵艦隊を誘引する」
「そう簡単に上手くいくかい?」
セカトンが訝しむが、俺はニヤリと笑う。
「いくとも。そのための準備はもう済ませてある」
連中は何度も我々に艦を沈められ、かなり苛立っている。
そこへ、鹵獲したナスカ級の通信設備で、ピッケル級の武装はハリボテなど、奴等に都合の良い偽情報を流した。
感情豊かな連中だ。
報復に来ない方がおかしい。
「誘引が完了したら、新造艦によるミサイル飽和攻撃を実施。その後、第1・第2突撃艦隊はワープで敵艦隊へ接近し、掻き乱せ」
「了解だ。だが第2はどうする? まだ人員を載せてないんだろ」
「基本は第1に追随。状況次第では砲撃に専念させてくれ」
...早いとこ、人材を確保しないとな。
艦だけ増えても意味がない。
「リカーナ中佐率いる第1航空機動艦隊は、ワープ後一時待機。敵陣形が乱れた瞬間に、航空隊を突入させろ」
「了解です!」
この度、シドカム製の“時空間歪曲型ワープ”を改良し、全艦に搭載した。
超空間ジャンプでは不得手だった、1光年未満の短距離ワープが可能になったのだ。
超空間ジャンプは、超空間(ハイパースペースとも呼ばれる)へ潜って星間距離を移動する方式。
構造上、星系内の短距離は苦手で、近すぎると通り過ぎる。
今は、50光年しか飛べないが、改良すればガミラスのゲシュダムジャンプ並みの性能に近づけるはずだ。
「船団長。新造艦の指揮は誰が取るのですか?」
ルオコスの質問に、間髪入れずナビィが浮き上がる。
「その任、ぜひとも私にお任せください!」
「お前は俺のサポートロボットだろ。座ってろ!」
即座に叩き落とす。
「代わりが見つかるまで、新造艦グレイゼファーには俺が乗る」
【グレイゼファー級巡洋戦艦】
全長1,300m / 全幅450m / 全高388m
居住区2,069名分
運用人員数
技術者185名
整備士137名
主機関
アヴォリオンジェネレータ
防御
シールド発生装置
維持フィールド発生装置
5m厚のトリニウム装甲
武装
200cm連装陽電子砲 × 12門
16連装反物質ミサイル発射管 × 14基
200mm連装対空レーザーガトリング砲 × 30基
魚雷発射管×10門
この艦は見ての通り、ミサイル攻撃能力をこれでもかと詰め込んだミサイル巡洋戦艦だ。
16連装のミサイル発射管を14基、合計224発の反物質ミサイルを一斉発射できる。
10門の魚雷発射管と合わせ、遠距離からのミサイル飽和攻撃を前提として設計した。
もし、接近されたとしても12門の200cm連装陽電子砲で砲撃戦にも対応可能となっている。
正直、メダルーサ級がいない150隻程度の艦隊なら、これ一隻で壊滅させられる。
が、今回は時間を掛ける余裕がない。
追い詰められた獣は、何をしでかすかわからん。
...最近、速度勝負の戦闘ばかりしてる気がするな。
「敵艦隊への攻撃と同時に、ステーションへの移乗攻撃も行う。使用する艦は支援艦隊、そして、トラベラーだ」
「トラベラーは移民船ですよ!? それに、武装は一切積まれていません!」
ルオコスが立ち上がる。
そんな彼を俺は、手で制する。
「考えなしで選んだわけじゃない。船団所属の船で、一番頑丈かつ大量の人員を運べるのがトラベラーだったからだ」
トラベラーのシールド量は2.15B。
つまり、21億5千万。
ちなみにクロスボウ級は239万で、200cm陽電子砲を60発ほど耐える。
「最悪の場合、ステーションの住民を全員脱出させなきゃいけない展開もあり得る」
それだけで察したのか、ルオコスの顔が青くなった。
「だからこそ、迅速に発電室とコントロール室を制圧する!」
立体映像に、発電室とコントロール室の位置を表示する。
「発電室は上部構造の中央。ここはナイトフォー部隊に任せる」
「お任せを」
部隊の隊長、ホロパイロット装備の男が、シドカム式敬礼で応じる。
ナイトフォーは訓練を終えたタイタンパイロット4名で構成された部隊だ。
「コントロール室はツァンヒア部隊だ」
「了解、船団長」
グラップル装備の女性隊長も同じく敬礼する。
「この作戦はネステリア人の解放だけじゃない。勢力拡大の邪魔になる障害、はぐれガトランティスの芽を摘む意味もある。野放しにすれば、間違いなく我々の脅威に育つ」
改めて全員の顔を見渡す。
皆、やる気に満ちた表情だ。
士気は十分。
「作戦開始は12時間後。それまでに準備を進めろ。各員の健闘を期待する!」
現在のゼクトル船団所属艦艇
第1突撃艦隊
センエイ級駆逐艦×2
クロスボウ級フリゲート艦×10
指揮官:セカトン・ゾルグ少将(駆逐艦センエイ艦長兼任)
第2突撃艦隊
センエイ級駆逐艦×2
クロスボウ級フリゲート艦×10
指揮官:未定
第1航空機動艦隊
ホシカゼ級巡洋艦×2
クロスボウ級フリゲート艦×10
指揮官:リカーナ・ルルナ中佐(巡洋艦ホシカゼ艦長兼任)
第1遠戦艦隊
グレイゼファー級巡洋戦艦×1
クロスボウ級フリゲート艦×4
指揮官:サワミヤ・ケイ船団長(グレイゼファー艦長、技術開発部リーダー、移乗部隊司令、船団長兼任)
支援艦隊
ハードボックス級補給艦×2
クロスボウ級フリゲート艦×6
指揮官:未定
採掘艦隊
ピッケル級武装採掘艦×4
指揮官:未定
移民船
トラベラー級移民船
指揮官or艦長:ルオコス・レナン副船団長(管理部リーダー、保安部隊司令、副船団長兼任)
合計54隻