・Dreadnaught Rotation Assist
旋回性能を向上させるサブシステムを追加するmod
会議から2ヶ月。
ついに、俺が転生してから1年が経過しようとしていた。
造船所の建造は順調そのもので、あと1ヶ月もあれば完成するだろう。
だが、問題も出ていた。
「サワミヤ船団長!造船所の完成後の詳細が出来上がりました!」
執務室で採掘艦隊の報告書を読んでいると、ナビィが勢いよく入ってくる。
どうやら、頼んでいた仕事が終わったらしい。
「ありがとう。それで、どうだった?」
「やはり懸念していた通りです!現在の設計では、シティキャリヤでは牽引できません!」
「…やはり、やり過ぎだったか」
問題はシンプル。
建造中の造船所が、想定よりも遥かに巨大になりすぎたのだ。
【オニキス造船所ステーション】
全長51,440m / 全幅24,100m / 全高9,880m
居住区収容人数 13,035,795名
運用人員数
技術者 211,200名
整備士 942,639名
操縦士 600名
保安員 2,000名
主機関
アヴォリオンジェネレータ
防御
シールド発生装置
維持フィールド発生装置
40m厚のオゴナイト装甲
艦載機
戦闘用航空機 480機
輸送機 120機
航空機製造ライン 5
最大4km級の艦を建造可能なドックが16基。
さらに、シティキャリヤ級のような10km級艦に対応した超大型ドックを2基備える、超大型造船所だ。
大量の作業用ドローンと格納式大型アームにより、クロスボウ級のような400m級艦なら、わずか3日で建造可能という異常な生産能力を誇る。
本ステーションも武装こそ持たないが、艦載機による防衛に加え、189.45Bという膨大なシールドと40m装甲によって守られている。
更に、3万機のスペクターと5千基の防御兵器、そして2千人の保安員による守備隊を配置。
決して、容易に落とされるような作りではない。
内部には工場区画や生活区画も整備され、1000万人以上が居住可能。
ただし、造船能力を優先した結果、イシオキのような大規模食料生産区画は存在しない。
全長50km超。
うむ、どう考えてもやり過ぎだ。
今後、さらにステーションを増やしていく。
当然、それらを運搬する輸送艦も必要になる。
ここまで巨大化した原因は単純で、シティキャリア級を量産するための超大型ドックを優先した結果である。
「オニキス専用の輸送艦を設計しますか?」
そう、ナビィが提案してくるが、一応の解決策はあったりする。
「いや、開発中のサブシステムを使う」
俺は端末を操作し、ある装置の設計データを表示した。
「回転アシストシステムだ」
ジャイロアレイを強化し、艦の姿勢制御、回転や方向転換性能を大幅に向上させるサブシステムだ。
「これでどうにか牽引可能になる。加速度は諦めて、短距離ワープ主体で運用しよう」
オニキスを牽引した場合、通常の5分の1程度しか加速できない。
エンジン出力を強化するサブシステムも試したが、効果は誤差レベルだった。
「確かに、これなら何とかなりそうですね!ですが、新たな問題も発生しています」
「ああ、分かってる。護衛戦力不足だろ?」
「はい。現在の船団所属艦艇は120隻。そのうち半数は無人運用です。前回のような作戦を行う場合、ステーションの護衛に不安が残ります」
戦力不足。
これもまた、深刻な問題だった。
各ステーションには格納庫を設け、艦載機を大量配備している。
だが、それでも万全とは言い難い。
何より問題なのは、人員だ。
艦を増やしても、それを扱う人間が足りない。
無人艦は柔軟性に欠け、防衛戦では対応が遅れる。
「もうすぐ第2突撃艦隊の訓練が終わる。多少はマシになるとは思うが……」
呟きながら、天井を見上げる。
拠点は増えた。
資源も増えた。
生産力も、桁違いになった。
それを守る力が、まだ足りない。
必要なのは、戦力か。
それとも、別の何かか。
***
第1突撃艦隊旗艦センエイ。
俺は、そのブリッジへ遠慮もなく入り込んだ。
「邪魔するよぉー」
「ッ!?船団長!?総員、敬礼!」
新たにセンエイの艦長となったシドカム人の中佐が号令を飛ばし、ブリッジ要員全員が一斉にシドカム式敬礼で俺を迎えた。
「結構結構。突然お偉いさんが来ても、ちゃんと対応できてるじゃないか」
軽く手を振りながら笑う俺を見て、セカトンが深いため息を吐く。
「船団長ともあろうお方が、訓練中の駆逐艦、それもブリッジに突然現れるのは、いかがなものかと思われますが?」
「そう言うな、セカトン中将。今は戦時中じゃないし、こっちの仕事は全部終わらせてある」
俺はブリッジを見渡しながら、少しだけ肩をすくめた。
「それにセンエイは元々、俺が乗ってた船だ。たまには帰ってきたくなるってもんだろ?」
その言葉に、セカトンは額に手を当てて呆れたように目を閉じる。
俺は構わず、ブリッジ内のクルーへ視線を巡らせた。
若いネステリア人の姿が、ちらほらと混じっている。
その誰もが、真剣な表情で任務に取り組んでいた。
戦闘職には就かないとされていたネステリア人だが、若い世代を中心に考えが変わり始めている。
「自分たちも戦わなければ、自由と平和は守れない」
そう考える者が現れ、志願者が増加。
その結果、軍事部門の人員も拡充され、艦隊への配備も行われた。
艦隊規模の拡大に伴い、セカトンやリカーナも昇進。
リカーナは、専門教育を終えた後、二階級特進(別に戦死した訳ではない)で少将に昇格した。
あまりに急な昇進だったため、昇進式では顔が引き攣っていたのが印象的だったな。
「で、どうだね。第2の様子は」
俺が尋ねると、セカトンはわずかに言葉を選びながら答えた。
「動きも、狙いも、まだまだ若いですな」
部下の前だからか、遠慮がちな言い方になっている。
現在、第1突撃艦隊は第2突撃艦隊の訓練に付き合っていた。
視線の先では、4隻のセンエイ級と20隻のクロスボウ級が複縦陣を組み、ぎこちない動きで飛行している。
無人運用よりは遥かにマシだが確かに、動きは洗練されていない。
だが、若いということは、成長するということだ。
いずれ彼らも、第1突撃艦隊と同等の練度に到達する。
そう確信しているからこそ、セカトンも熱心に鍛えているのだろう。
「雛鳥の成長が楽しみだな」
俺の言葉に、セカトンがニヤリと笑った。
「ええ、育て甲斐がありますよ」
はっはっは。
中々に怖い笑みをしてやがる。
目が笑ってないぞお前。
***
「センフよりセンテンへ。遅れているぞ、陣形を乱すな!」
第2突撃艦隊旗艦センフ。
そのブリッジで、鋭い眼差しを持つ若きネステリア人の男が艦隊の指揮を執っていた。
ラティ・ヴェッティア少佐。
指揮の才能を見出され、第2突撃艦隊の指揮官に抜擢された青年だ。
(ただ縮こまって、ガトランティス人のいない所で不満を垂らしていた俺が……ずいぶんと出世したもんだ)
ヴェッティアはふと、船団長と出会った日を思い出す。
ククルカン級の機関室。
クロッゼルへ剣が振り下ろされる、その瞬間。
砂色の戦闘服を纏った戦士が現れ、恐怖の象徴だったガトランティス兵を一方的に屠り、蹴散らしていったあの光景。
あの背中が、全ての始まりだった。
(本当は、タイタンパイロットになりたかったんだがな……)
憧れに突き動かされ、真っ先に軍事部門へ志願。
最前線を駆ける兵士になることを望んだ。
だが、彼にその才能は無かった。
しかし。
全体を見渡す俯瞰的な視野。
勇猛でありながら、自身を制御できる精神。
それらを評価したセカトン中将が、彼を第2突撃艦隊の指揮官に推薦。
さらにサワミヤ船団長もそれに同意し、気付けば駆逐艦センフの指揮官席に座っていた。
「各艦、陣形を駆逐艦中心の輪形陣へ変更!」
彼の口から命令が飛ぶ。
センエイ級が中心へ集まり、その周囲をクロスボウ級が取り囲む。
まだぎこちなさはあるが、確実に形になりつつある陣形だった。
「艦長、陣形変更に要した時間は?」
「12秒!俺らの艦隊の新記録だ、ヴェッティア!」
軽い調子で返す声。
ヴェッティアはすぐに眉をひそめた。
「少佐を付けろ、イッサル艦長!またセカトン中将に怒鳴られるぞ!」
叱責しながらも、その声音にはどこか仲間意識が滲んでいる。
まだ未熟な同胞たち。
だが、それでも前に進もうとしている。
ヴェッティアは静かに息を吐き、言葉を続けた。
「我々は、ゼクトル船団の敵を穿ち、脅威から市民を守る槍だ」
その言葉に、ブリッジの空気が引き締まる。
もう、かつての自分ではない。
守られる側から、守る側へ。
ラティ・ヴェッティアは、確かにその一歩を踏み出していた。