アヴォリオンだ!   作:マイmk3

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今の所、惑星シドカムはペルセウス腕の先端の方に存在していたと考えてます。
もし、原作で新たな星間国家がペルセウス腕先端に登場した場合は、別の場所に移転します。


20話 招かれざる来訪者

「シドカム第6移民船フィルデアル、聞こえているか?こちら、ゼクトル船団所属第1突撃艦隊提督のセカトン・ゾルグ中将だ。元シドカム第26移民船護衛艦隊の司令官と言えばわかるか?」

『セカトン!?あのセカトンか!』

 

ゼクトル船団が滞在している星系から約200光年。

周囲に何も無い空間で、1隻のシドカム移民船と第1突撃艦隊が向かい合い、情報交換をしていた。

 

「現在、こちらの輸送艦が本宙域に向かっている。フィルデアルはドッキング後、我々のステーションに向かってくれ」

『助かった。前の宙域から妙な連中に付け回されていてな』

「妙な連中?」

 

フィルデアル艦長の言葉に、センエイのブリッジに緊張が走る。

クルーは互いに目配せをすると、言葉を交わすことなく自らの持ち場に付く。

 

「馬鹿者が!何故それを早く言わなかった!全艦戦闘準備!司令部へ連絡を入れろ。他の艦隊への注意喚起と救援の呼び掛けも忘れるな!」

『あ、まあ待て、大丈夫だ!ワープで撒いたはずだから!』

「そんな訳が無いだろ。この近辺の星系に、宇宙船を持てるような文明は存在しない。そいつらは、間違いなく別の星系から来ている。ワープも可能な筈だ。何より、フィルデアルを付け回していたのなら、間違いなく狙いはお前たちだ」

 

セカトンの言葉に、フィルデアルのクルーたちは顔を青ざめさせる。

4隻のセンエイ級と20隻のクロスボウ級が、移民船を中心に陣形を組み、周囲への警戒を強める。

 

(厳しいな、移民船を守るには艦の数が足りん。せめて、40隻は欲しいとこだ)

 

ステーションに帰り次第、船団長に護衛用の無人艦隊の建造を進言しようか。

セカトンがそう思った時だった。

 

「3時方向、距離10光秒にワープアウト反応!」

 

即座にモニターに、報告のあった宙域が映し出される。

何も無かった空間が歪む。

 

黒い裂け目が開き、紫色の平たい船体に段上の構造物を備えた200m級と、大量に砲を載せた500m級の船が飛び出す。

どの船も武装が搭載されていた。

明らかに戦闘艦だ。 

 

【挿絵表示】

 

 

「反応20、40、60……まだ増える!?」

 

レーダー手が悲鳴を上げ、セカトンの顔に驚愕の表情が浮かぶ。

第1突撃艦隊の目前に、120隻の艦がワープアウトしたのだ。

 

「提督、いかがなさいますか?」

 

センエイ艦長がセカトンへ指示を仰ぐ。

その問いかけで、わずかに思考が止まっていたセカトンは、すぐに冷静さを取り戻した。

 

「…通信手、司令部はなんと?」

「可能な限り、戦闘は避けろと」

 

(可能な限りか。つまり、撃たれたら撃ち返せということだな)

 

「まずは、こちらに敵意が無い事を伝える。言語データの送信を―」

「所属不明艦、急速に近づく!」

 

紫色の艦隊は、速度を上げ移民船と艦隊へ一直線に近づく。

 

「射程圏内まで、残り約22分」

「こちらからは撃つな、殴られてから殴り返すぞ。フィルデアルは全速力で退避しろ。救援はどうだ?」

「どの艦隊も到着まで、1時間は掛かるそうです」

 

移民船を探す為に、広範囲に広がって捜索をしていたのが仇となった。

 

「我が艦隊も、フィルデアルを中心に後退。少しでも時間を稼ぐ」

 

第1突撃艦隊とフィルデアルは紫色の艦隊から、距離を取る。

しかし、移民船の足は遅く、すぐに追いつかれてしまう。

 

「所属不明艦、射程圏内に入ります!」

「センエイ級、反転!クロスボウ級は半数は移民船の護衛、もう半数は我が艦に続け!」

 

センエイ級4隻とクロスボウ級10隻が、所属不明艦の前に立ちはだかる。

 

「敵艦より、高エネルギー反応!」

「警告や宣戦布告も無しか!」

 

何かしら通信を入れてくると思っていた艦長が、驚きの声を上げた。

 

120隻の艦から緑色の光線が、第1突撃艦隊へ放たれる。

まだ距離が遠く、ほとんどは艦には当たらず逸れて行く。

何発かは命中したものの、ほんの少しシールドを削っただけだった。 

 

だが、敵艦の投射力は圧倒的だ。

シールドや分厚い装甲のない移民船では、到底耐えられないだろう。

 

「応戦しながら後退する。全艦、魚雷斉射!」

 

セカトンの号令の元、壁になっていた全ての艦からホーク級反物質魚雷が発射され、巨大な火球が不明艦隊の前衛を削る。

 

「命中確認!200m級21隻撃沈、8隻大破、4隻中破!」

「砲撃用意。移民船に近づかせるな!」

 

密集陣形をとっていた敵艦隊は、魚雷の威力を恐れたのか上下に分散し第1突撃艦隊へ迫る。

そこへ、橙色の陽電子ビームと小型反物質ミサイルが殺到。

ビームに貫かれ、あるいはミサイルが直撃した艦が次々と爆散する。

 

しかし、200m級の艦は機動力が高い。

第1突撃艦隊の攻撃をかわした30隻が、移民船に喰らい付く。

緑色のビームがフィルデアルに着弾し、幾つもの爆発が起こった。

 

「フィルデアル損傷拡大!」

 

護衛に付いていた10隻のクロスボウ級が、120cm連装陽電子砲や小型反物質ミサイルで反撃するが、敵の数が多すぎた。

 

セカトンの顔に、汗が一筋垂れる。

 

決して、勝てない相手ではない。

事実、すでに半数の敵艦を撃沈している。

 

だがしかし。

 

守らなければならない移民船が、足を引っ張っていた。

 

突撃艦隊はその名の通り、機動戦を得意とする艦隊だ。

本来であれば高速で戦場を駆け、敵を翻弄しながら各個撃破が定石。

 

移民船を庇う為に足を止め、砲撃戦を強いられている状況では、満足な戦闘など出来る筈がなかった。

 

前衛の14隻は、30隻の500m級を抑え込むので精一杯。

あの重武装艦を1隻でも通せば、移民船は瞬く間に穴だらけになる。

 

護衛の10隻も同様。

移民船の重要区画を庇いながらでは、高機動で襲い掛かる200m級の迎撃は困難を極める。

 

(このままでは、どの道フィルデアルが保たんか……)

 

セカトンが思考を巡らせた、その刹那。

 

「敵艦隊後方に新たなワープアウト反応!」

 

上下に分かれ、第1突撃艦隊へ猛攻を浴びせていた敵艦隊の後方に、空間の歪みが生じる。

 

歪みはやがて、金色の輪へと変わる。

そこから、セカトンの見知った艦影が飛び出した。

 

「第2突撃艦隊です!ですが、どうやって!?」

 

救援を呼び掛けてから、まだ1時間は経っていない。

通常のワープや超空間ジャンプでは、到底間に合う距離ではない筈だ。

セカトンはそう考えていたが、第2突撃艦隊の異様な姿を見た瞬間、理解した。

 

「トランスワープか!?無茶をやる!」

 

3隻の艦が、重力アンカーで互いを固定している。

2202でアンドロメダが、土星沖海戦で使用したワープと同一の技術。

船団長が緊急時の手段として研究していたが、安全性を保証できないとして、使用を禁止していた。

 

そのワープを、ヴェッティアは土壇場で無理矢理使い、短時間でこの宙域に到達したのだ。

 

『遅くなり申し訳ありません、セカトン中将。第2突撃艦隊、これより前方敵艦隊を対処します。こちらはお任せを』

 

「ふん……少し見ない間に一丁前になりやがって。そちらは任せる!」

 

前衛を務めていた14隻は反転し、フィルデアルに群がる敵艦へと突撃していく。

 

「全艦、自由攻撃!各個に撃て!」

 

鎖に繋がれていた獣が、解き放たれた。

今まで守りに徹していた艦隊が、一斉に散開する。

 

クロスボウ級は機動力を活かし、敵を翻弄。

ドッグファイトじみた戦闘で200m級を追い回す。

センエイ級は正面から突貫。

防御力に物を言わせ、200cm連装陽電子砲を敵艦の腹へ叩き込む。

 

一方で、第2突撃艦隊は。

 

「突撃!」

 

ヴェッティアの号令と共に、艦隊はセンエイ級を先頭に敵中へ突っ込む。

突撃艦隊が得意とするゼクトル流突撃戦法だ。

 

500m級艦が密集するその内部へ、強引に割って入る。

整然とした敵陣形は一瞬で崩れ、大混乱に陥った。

 

「遠慮は要らない!全て噛み砕け!」

 

侵入された敵艦隊は、もはや統制を失っている。

味方同士で射線が重なり動きが鈍り、そこへ容赦の無い砲撃とミサイルが叩き込まれる。

 

ヴェッティアは初の実戦に興奮しつつも、1隻たりとも逃さぬように戦場を見渡す。

背を向けた艦には、容赦の無い攻撃が飛ぶ。

 

「荒らすだけ荒らして、帰るのは許されないぞ!」

 

無理にワープを敢行しようとしていた艦に、10発の小型反物質ミサイルが飛来。

爆発が船体を包む。

 

冷静さを取り戻し、反撃をしていた艦は上部構造物を橙色のビームに、全て吹き飛ばされた。

 

――蹂躙だった。

 

第2突撃艦隊が参戦してから、わずか数分。

 

120隻は居た敵艦隊は、すべて宇宙を漂うスクラップへと変わっていた。

 

***

 

「はぃえ〜。なんじゃこの国家は……」

 

第1と第2突撃艦隊が遭遇した謎の敵。

そのスクラップを研究室で調べていた俺は、あまりにも危険な気配を感じる国家の存在を知り、思わず呆然とした。

 

開いた口が、塞がらないぜ。

 

「神聖コルゴラズ選民国……ですかぁ。なんともまあ……」

 

隣で解析をしていたナビィも、流石に引いている。

 

神のように尊く、穢れなきコルゴラズの選ばれた民の国。

そんな名前を堂々と名乗る国家が、まともなはずがない。

 

「ナビィ、名前だけでお前の能力は使えそうか?」

「ダメですね。情報は一切開示されません」

 

ですよね。

 

第1、第2突撃艦隊が派手に暴れたせいで、現場にはスクラップしか残っていなかった。

おかげで、コルゴラズについての調査はほとんど進んでいない。

 

「ここまで調べて分かったのは、国家名と200m級が巡洋艦、500m級が戦艦って事だけか〜」

「それでも、何も分からないよりは遥かにマシかと!何より、国家名だけで非常に危険な思想を持つ星間文明の存在が判明しました!」

 

まあ、それはそうだ。

 

シドカム移民船の支援と受け入れが終わり次第、この星系は離れた方が良さそうだな。

120隻もの艦が帰還していないのだ。

 

奴らは間違いなく、また来る。

 

『船団長、シドカム移民船の全艦長がお越しになりました』

「わかった。すぐ向かう」

 

ルオコスからの通信が入る。

どうやら、次の会議の準備が整ったらしい。

 

これから、集まった移民船の面々と今後の方針を決めることになる。

 

「じゃあナビィ、後の処理は任せた」

「承知いたしました!」

 

ナビィにスクラップ処理を任せ、俺はトランスポーターへと向かう。

 

しかしまあ…。

ウルリドラを含めて、移民船が10隻。

いやほんと、よくこれだけ見つけたもんだ。

 




船団長による、コルゴラズ艦の調査レポート

コルゴラズ巡洋艦

【挿絵表示】

武装
・矩形型陽電子砲塔×6門
・連装レーザー対空機銃×14基
防御
・1m厚のチタニウム装甲

紫色の平たい船体に、段階的に積み上げられた上部構造物。
無駄を徹底的に削ぎ落としたその外見は、機能と量産性を優先した設計思想を如実に物語っている。
艦首は鈍く切り落とされたような形状をしており、装甲ブロックを重ねた単純な構造。
側面はほぼ直線で構成され、装飾の一切を排した無機質な板状装甲が並ぶ。

武装には、誘導兵器が搭載せれていない。
高い機動力で近づき、砲撃する事だけを考えられた設計だ。
この艦の形状は洗練とは程遠く、ただ「撃つ為だけ」に存在する武器の塊のように思える。



【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】

後ろ

【挿絵表示】




コルゴラズ戦艦

【挿絵表示】

武装
・大型矩形型陽電子砲塔×11門
・矩形型陽電子砲塔×12門
・連装レーザー対空機銃×42基
防御
・2m厚のチタニウム装甲

巡洋艦と同じく、平坦で角張った構造をしている。
だが、その規模と密度は比較にならない。
段階的に積み上げられた上部構造はさらに肥大化。
指揮能力の向上や、艦首から艦尾にかけて隙間なく並ぶ砲塔を制御するためのものと思われる。

配置された火器群は異様な投射力を持ち、
複数の同型艦で艦隊を編成し、圧倒的火力で敵を制圧する運用が想定されているのだろう。
また、船体各所に配置された対空砲により、高い対空能力も有している。

その姿はもはや軍艦というより、移動する砲台と呼ぶべき存在だ。



【挿絵表示】



【挿絵表示】



【挿絵表示】

後ろ

【挿絵表示】
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