とか言いましたが、おそらく30話以上行く事が確定しました!
ペルセウス腕辺境部。
コルマン星系第3惑星、アシエム。
この星は本来、乾燥した草原と疎林が広がるサバンナ型の惑星だった。
数多の動植物が息づく、命に溢れた世界。
だが、今は違う。
一面に広がるのは、荒れ果てた大地だけだ。
生い茂っていた草木も、草原を駆けていた動物たちも、すべて消えた。
ただ、“喰われ尽くされた痕跡”だけが残されている。
その死の惑星の一角に、異様な構造物が連なっていた。
巨大な壁と見紛う、地平線を断ち切るかのように築かれた要塞群。
トーチカ、重砲、機関砲、ありとあらゆる火力を詰め込んだその壁は、外から来る敵を拒絶するために存在していた。
「将軍!10km先にウォルゴルの群れを確認しました!数は不明、時速50キロで接近中!」
「もう来たのか。前回の襲撃から、まだ3日だぞ……」
わずかな苛立ちを押し殺し、将軍と呼ばれた女は即座に命じる。
「総員戦闘用意、持ち場につけ!後方の砲兵陣地へ連絡!」
要塞内部では茶髪にロップイヤー状の耳、ウサギのような尻尾と脚を有した者たちが忙しなく動き回っていた。
菱形の車体に丸い砲塔を備えた戦車に飛び乗る者。
砲座に付き、照準を合わせる者。
アシエム人。
惑星アシエムに住まう種族であり、この地で唯一生き残っている生命。
元は地球人と同じ姿をしていた彼らは、この星のあらゆる場所に住み、文明を築き、繁栄を謳歌していた。
だがその繁栄は、ある日を境に終わる。
「来るぞ……全車、砲撃用意!」
要塞前面に展開する戦車部隊の部隊長が、双眼鏡を覗きながら命令を下す。
彼の目には、地を這いながら要塞へ迫る黒い波が。
否。
無数の、黒く巨大なミミズに似た生物が、押し寄せて来ている様子が見えていた。
ウォルゴル。
アシエム人たちがそう呼ぶこの生物は、あらゆる生命を喰らい尽くし、この星を死の星に変えた存在。
本来、成体は宇宙空間に生息し、ガス惑星のヘリウムを主食とする存在だ。
だが、幼体の成長には大量の有機物が必要となる。
その為、産卵期になると卵を小惑星に付着させ、生物に満ちた惑星へと落下させる。
孵化した幼体は、惑星中の生命を貪り尽くす。
足りなければ共食いすら行い、やがて成体へと成長。
そして反重力器官と体内のガスによって宇宙へと飛び立ち、次の目的地へ向かうという、特異な生態を持つ宇宙生物だ。
20年前。
アシエムは、その産卵場に選ばれてしまった。
1億を超える卵を積んだ小惑星群が降り注ぎ、
孵化した幼体が、あらゆる生命を喰い荒らした。
さらに、ウォルゴルは毒性の体液を撒き散らす。
川は腐り、海は死に、土壌は汚染され、わずか数年で惑星は半死に至った。
生き残ったアシエム人は、一箇所に集まり、円を描くように要塞を築き、その内側で暮らし始める。
同時に、過酷な環境に適応する為に、強靭な生命力を持つ動物の遺伝子をその身に取り込み身体を変化させた。
そうして、長らく命を守り続けてきたアシエム人たちだったが、いくら要塞を築こうともウォルゴルの襲撃は絶える事はなかった。
年月と共に人口は削られ、今では5億人しか残っていない。
「将軍!南第7防衛陣地が突破されました!既に500匹が要塞内部に侵入!」
モニターに戦車に群がるウォルゴルが、装甲を齧り、穴を開け、内部の兵士に喰らい付く光景が映し出される。
「……そうか」
兵士から、将軍と呼ばれた左目に眼帯を掛けた女が覚悟を決め、銃を手に取る。
パルローナ・ソ・マルナス中将。
この要塞の司令官であり、長年ウォルゴルの侵攻を食い止めてきた歴戦の将官だ。
「総員、白兵戦用意!……諸君、すまんがここで死んでくれ」
周囲の兵士も、誰一人として臆する事なく各々が武器を手に取った。
ウォルゴルは小さな個体でも全長3m以上。
そんな生物が数百匹、新たに侵入してくる個体も入れれば千を超えるだろう。
白兵戦など行えば、生き残る事は不可能だ。
しかし、兵士たちは逃げない。
後方に住まう民を守る為、愛する者を守る為、命を捨てる覚悟など既にできていた。
兵士たちが、戦場へ向かう。
その時だ。
「しょ、将軍!援軍です!援軍が来ました!」
「……馬鹿な。要請からまだ5分だぞ」
「いえ、援軍は、あの方々です!」
「まさか!」
半年前、絶望的な状況に置かれていたアシエム人たちに転機が訪れる。
突然、空から現れた彼らは瞬く間に襲撃に来たウォルゴルの群れを殲滅し、アシエム人へ力を貸すと宣言した。
「上空よりミサイル多数飛来!」
轟音と共に100発以上のミサイルが、要塞前面の群れへと降り注ぐ。
爆炎が黒い肉塊を吹き飛ばし、引き裂き、消し飛ばす。
「ゼクトル船団、来てくれたのか」
空に広がる分厚い雲を切り裂き、ダークグレーにオレンジのラインを走らせた巨船が現れた。
***
「アイアンフレイムの建造を急がせて正解だったな」
格納庫内で、俺はバンガード級タイタンのコックピットから、地上の様子を確認し自分の判断が間違っていなかった事を確認する。
今までの艦では、居住区付近での大規模な地上支援は出来なかったからな。
【アイアンフレイム級強襲揚陸艦】
全長2363m / 全幅1380m / 全高565m
居住区50760名分
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運用人員数
技術者1916名
整備士1910名
操縦士240名
移乗戦闘員40000名
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主機関
アヴォリオンジェネレータ
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防御
シールド発生装置
維持フィールド発生装置
10m厚のトリニウム装甲
前面部のみ10m厚のオゴナイト装甲
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武装
200cm連装陽電子砲 × 14門
16連装反物質ミサイル発射管 × 4基
200mm連装対空レーザーガトリング砲 × 42基
60cm4連装速射砲×12門
36連装対地ミサイル発射管×4基
特殊兵装
4連装フォースレーザー×2
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艦載機
戦闘用航空機120機
輸送機120機
タイタン144機
歩兵用降下ポッド800機
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本艦は、惑星、ステーション、宇宙要塞への直接侵攻を目的として設計された強襲揚陸艦である。
全長2kmを超える巨体は、単なる輸送艦の域を超え、1つの基地として機能する能力を持つ。
艦内には最大4万人の移乗戦闘員を輸送可能な居住区画と武器工場区画を有し、揚陸戦に必要な戦力を単艦で完結させることが出来る。
本艦の最大の特徴は、圧倒的な戦力投射能力であり、多数の輸送機、戦闘機に加え、タイタンを144機――2個大隊規模を同時降下可能。
さらに、歩兵用降下ポッドを最大200基同時に投下することで、敵防衛網を飽和させ、一気に橋頭堡を確保する。
艦下部には対地支援専用の火器群を集中配置。
支援には陽電子砲や反物質ミサイルでは、過剰となるため、専用兵装が新たに開発された。
一方で、艦自体の戦闘能力も極めて高く、重装甲とシールドに守られた船体は、前線での被弾を前提とした設計となっている。
艦首には要塞やステーションへのラムアタックを想定し、オゴナイト製の装甲を採用。
また、本艦は特殊兵装として4連装フォースレーザーを2基装備。
このレーザーは照射対象を強制的に自艦へ引き寄せる能力を持ち、敵艦を捕縛することが可能である。
捕縛後は移乗戦闘員を突入させ、内部制圧を行うのだ。
偵察機が撮影している光景が、モニターに映された。
アイアンフレイムの下部に装備された60cm4連装速射砲が、1秒に1発の速度でウォルゴルの群へ砲弾を浴びせる。
36連装ミサイル発射管から通常弾頭ミサイルが雨のように降り注ぐ。
良し。
これで、着陸地点が確保できた。
「艦長!タイタンを降下させろ。要塞に取り付いたミミズ共を蹴散らして来る」
『了解しました。しかし、船団長自ら出撃なされなくとも…』
モニターに困った顔をするアイアンフレイムの艦長が映る。
「急な出撃で人手が足りてないんだ。許せ」
モニターを戦闘用に切り替え、MTを降下ハッチへ移動させる。
「MT、久々の出撃だが、腕は錆びていないだろうな?」
「問題ありませんパイロット。腕部に錆びは確認できません」
「あぁ、まあ、それで良い」
MTの返答に適当に答えつつ周囲を見渡す。
大隊規模となったツァンヒア、ナイトフォー両部は、既に全機が降下ハッチに移動していた。
準備は出来ているようだ。
「ツァンヒア大隊は北第4防衛陣地に合流し、要塞防衛に当たれ。ナイトフォー大隊は俺と共に、要塞へ張り付いているウォルゴルの排除だ」
『『了解!』』
「行くぞ!全機タイタンフォールスタンバイ!」
足元のハッチが開き、地上へ向かってタイタンが射出された。
未だに数万規模の黒ミミズ共が蠢いている。
あまり長く見ていたい光景じゃないな。
さっさと終わらせるとしよう。
要塞前面に着地と同時に、両肩のミサイルポッドを起動し前方に固まっているウォルゴルへばら撒く。
続け様に、XO-16チェーンガンを乱射。
全長5m前後の個体を穴だらけにする。
『こちら153号車、噛み付かれた!助けてくれ!?』
『待っていろ、そのまま動くな』
背後ではナイトフォー大隊の隊長、ザキアス大佐が戦車に取り付いたウォルゴルをチェーンガンで的確に排除していた。
動きに無駄がない。
流石だ。
ザキアス大佐の動きに感心しながら、近付いてきた8m級の個体を右腕で殴り付ける。
そのまま、地面に倒れ込んだ瞬間に踏み付け、息の根を止めた。
「アイアンフレイム、降下ポイントを確保した。ストーカーを投入しろ」
アイアンフレイムから輸送機が飛び立ち、地上へ新しいロボット兵が投入される。
スペクターより更に重装甲。
角張ったボディが特徴的な機械の兵士。
「ストーカー(Stalker)」
『タイタンフォール2』では、機動力を捨て耐久性に特化した性能で、小銃しか持たない生身の歩兵を苦しめていた存在だ。
無論、本機にも独自の強化をしてある。
「シールド発生装置」と「維持フィールド発生装置」を内蔵しているのは当然として、装甲にはオゴナイトを採用。
まあ、そのせいで非常に重く、機動力が完全に死んでしまった訳だが。
ストーカーには耐久性以外にも特徴がある。
それが、自爆である。
自機が損傷すると、背中のバッテリーを起爆させるのだ。
先程、8m級のウォルゴルに飲まれたストーカーが自爆し、肉片を大量に降らせたから、威力も十分。
味方であっても、あまり近づきたくない存在だ。
「ストーカー隊は、要塞内のウォルゴルを排除しろ!」
「「「「リョウカイ、着剣!!!」」」」
「お前らにブレードを持たせた覚えはねぇ、さっさと行け!」
ストーカーたちが強力なエネルギー弾を発射するライトマシンガン、Lスターを片手にウォルゴルの群れへ突入して行った。
これで、要塞は持つ。
後は、追加で迫り来るミミズを片づければここの戦力で守り切れる。
いやしかし、アイアンフレイムがドカドカ撃ちまくっているのに、1万前後が要塞前面に辿り着くとは。
この生物の食欲は恐ろしい。
普通の生物なら生きる為に逃げ出す筈だ。
「バーストコア、レディ」
MTがコアの準備完了を知らせる。
コアとは、時間をかけてコンデンサを充電し、蓄えられたエネルギーで強力な攻撃を放つタイタンの必殺技だ。
俺は、迫り来る群へバーストコアを起動する。
「バーストコア、起動」
MTの言葉と同時に、特殊なマガジンに切り替えトリガーを引く。
威力と連射速度が大幅に上がったエネルギー弾が、嵐の如き弾幕でウォルゴルたちへ放たれた。
1発で10m級の半身をひき肉にし、3m級の小型個体を跡形もなく消し飛ばす。
そのまま、XO-16の銃口を横へスライドさせ薙ぎ払う。
辺り一面を黒い肉片まみれにした所で、バーストコアが終了する。
ふむ。
相変わらず、凄い威力だ。
人間相手に使えば、間違いなくエライ事になるな。
そんな事を考えながら残敵を掃討していると、1両の戦車がこちらへ向かって来ているのに気が付く。
よく見れば、車体の上にこの要塞の司令官であるパルローナ中将が乗っているのがわかった。
……要塞の司令官が最前線で何やっとんねん。
……そう言えば、俺も船団長だから人の事言えんわ。
「船団長殿!支援感謝いたします!」
「パルローナ将軍、要塞の指揮はよろしいのですか?」
「ええ、指揮は副官に任せてきました。本官が居なくとも大丈夫でしょう。それに、ゼクトル船団の船団長殿自ら戦っているのに、穴蔵で縮こまっている事なんぞ出来ませぬ!」
はっはっはっ。
ムッチャ血気盛んじゃん。
戦車長の顔見ろよ、凄い困った顔してるぞ。
アイアンフレイムの艦長に、同じような顔させてたから人の事言えんけど。