アヴォリオンだ!   作:マイmk3

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ども。
未だに、今後の展開をどうするか決められていませんが、とりあえずアシエムの話は無理にでも終わらせる事にしました。

またしばらく、投稿が先になると思われますが気長にお待ち下さい。


第26話 未来への進宙

「北部方面の爆撃、68%完了」

「東部方面の爆撃が完了。第2合同艦隊、帰投します」

 

オペレーターたちの報告が、薄暗い司令室に次々と響く。

俺は司令席へ深く身を沈めながら、メインモニターに映る燃え盛る惑星アシエムを見つめていた。

 

アシエム協同盟約国へ移民船を引き渡してから2ヶ月。

全ての人間が、惑星を離れた。

 

ゼクトル船団へ加入した人員は、一旦シティキャリヤ級を改装した人員輸送艦へ収容。

天陽星系へ移送後、新たなステーションや移民船の建造を始める予定だ。

 

協同盟約国側は、本当に1年で移民船が完成するとは思っていなかったらしく多少の混乱も見られたが、生き残った国民を全て移民船へ移し早々にこの星系を去ってしまった。

 

一応、惑星爆撃の件は事前に最高議長へ説明してある。

しかし、あの男は気にも留めなかった。

本当に、自分が生まれ育った惑星に一切の情を抱いていないらしい。

 

去り際に見せた、野心に満ちた表情を思い出していると、司令室の扉が開いた。

 

「船団長。こちらへ寝返らなかった工作員の拘束、並びに排除が完了いたしました」

 

入ってきたルオコスとパルローナが報告する。

 

「ご苦労。……損な役を頼んですまないな」

「いえ、お気になさらず。我々がゼクトル船団への忠誠を示す良い機会でしたから」

 

彼女たちには申し訳ないと思う。

だが必要な事だ。

身内の始末を自ら行う事で、自分たちの潔白を証明できる。

これでアシエム人以外の船団員も、彼女らが上位職へ就く事を受け入れてくれれば良いのだが。

 

「……船団長、ずっとこちらにいらしたのですか?」

 

ルオコスが尋ねる。

その視線の先には、司令席へ沈み込む俺と、燃え続けるアシエムの姿があった。

 

「ああ。この星を焼けと命じたのは俺だからな。最後まで見届けなければならない」

 

我々が安心して生きていく為とはいえ、誰かの故郷を焼き払うのだ。

せめて最後まで見届けるくらいはしなければならない。

 

「……あまり背負い過ぎるのは良くありませんよ」

「分かっているさ。引き際は見誤らないさ」

 

そう答えると、2人は困ったように顔を見合わせた。

 

「なるほど。副船団長が仰っていた意味が、ようやく分かりました」

「注意してください、パルローナ中将。この方は一度降ろしても、気付けばまた背負っていますから」

 

しゃあないやろがい。

誰かが背負わなきゃならんのだから。

 

「そういえば、アシエム出身の船団員たちの様子はどうだ?」

「事前説明を十分に行いましたので、皆落ち着いています」

 

よしよし。

暴動でも起こされたら大変だからな。

 

ウォルゴルを残した場合の危険性や、新天地での生活環境について時間をかけて説明した甲斐があった。

 

「船団長。惑星アシエムへの爆撃が完了しました」

 

オペレーターから報告が上がる。

 

「そうか。では予定通り黙祷を行う。全艦、全ステーションへの放送準備を」

「了解しました」

 

俺は服装を整え、ゆっくりと立ち上がった。

後方にいたルオコスとパルローナも、それぞれ指定位置へ移動する。

深く息を吸い込み、通信回線が開かれるのを待つ。

 

そして――。

 

「ゼクトル船団に所属する全船団員へ通達する」

 

司令室に静寂が訪れた。

 

「先程、ウォルゴル駆除を目的とした惑星アシエムへの爆撃が完了した」

 

俺は未だ燃える星を見つめる。

 

「これにより、長らくアシエムを蝕んでいた侵略者の脅威は完全に排除された」

 

視界の端で、パルローナが静かに目を伏せる。

何を考え感じているかまではわからなかったが、安堵の色を浮かべている事だけは分かった。

 

「あの星には確かに、人々の暮らしがあった。歴史があった。愛する者たちの営みがあった。

我々は、その事を決して忘れてはならない。故郷を失う悲しみを忘れてはならない」

 

司令室に沈黙が広がる。

 

「そして、その悲しみの上に築かれる未来の重さを胸に刻まなければならない。あの地で生まれ育った全ての人々と、その命を育み続けてきた星――アシエムへ敬意を捧げよ」

 

「諸君、黙祷」

 

***

 

ゼクトル船団がコルマン星系を離れ、天陽星系の本格的な拠点化に着手してから半年。

新たなステーションや仮設居住地として運用する移民船の建造が進められ、船団はかつてないほど慌ただしい日々を送っていた。

 

そんな中、船団に新たな力をもたらす2隻の大型艦が竣工。

今まさに、その進宙式が執り行われている。

 

全長2kmを超える巨大な艦影が、オニキス造船所のドックからゆっくりと宇宙へ姿を現した。

重厚な装甲に覆われた船体は、まるで鋼鉄の要塞そのもの。

静かに、されど威風堂々と前進するその姿は、見る者すべてを圧倒する。

 

その光景を一目見ようと集まっていた船団員たちは、思わず息を呑んだ。

新たな時代を切り開く主力艦の誕生を、誰もがその目に焼き付けていた。

 

 

 

【バトルウォリアー級戦艦】

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

全長2,490m / 全幅920m / 全高375m

居住区7,377名分

運用人員数

・技術者612名

・整備士471名

主機関 

・アヴォリオンジェネレータ

防御 

・シールド発生装置

・維持フィールド発生装置

・10m厚のトリニウム装甲

武装

・200cm連装陽電子砲 × 30門

・16連装反物質ミサイル発射管 × 3基

・5連装大型反物質ミサイル発射基×4基

・200mm連装対空レーザーガトリング砲 × 70基

 

本艦は、複雑化しつつある艦隊運用に対応する指揮能力と、敵艦を寄せ付けない長距離砲撃能力を両立させるべく建造された戦艦である。

 

艦内には高度な通信設備をはじめ、広範囲を探知可能な高性能レーダー、ステーション並みの情報処理能力を有する大型演算装置を搭載。

艦隊全体の情報を統合・分析し、各艦へ迅速かつ的確な指示を下すことが可能であり、艦隊司令部として申し分ない性能を誇る。

 

また、堅牢な装甲と各種防御設備に加え、濃密な迎撃網を形成できる多数の対空レーザーガトリング砲、遠距離からの火力投射を重視した武装群を装備。

艦隊の中核打撃戦力としても、高い能力を有している。

 

一方で、主兵装の多くが艦首方向へ集中配置されているため、後方への攻撃能力は限定的である。

しかし、本艦は単独行動を想定しておらず、多数の護衛艦を伴う艦隊運用を前提としていることから、この欠点が問題視されることはなかった。

 

 

 

【5連装大型反物質ミサイル発射機】

 

【挿絵表示】

 

 

バトルウォリアー級戦艦が搭載する直径8m、全長60mの大型反物質ミサイルを発射可能な発射機。

再装填時間は60秒。

 

発射される大型反物質ミサイルは、ゼクトル船団が運用する誘導兵器の中でも最大級の破壊力を誇る。

(クロスボウ級フリゲート艦を12発で轟沈。同艦は200cm連装陽電子砲の直撃を60発耐えられる)

 

一方で、その巨大さ故に機動性は低く、対空兵器を備えた艦艇には迎撃されやすいという欠点を持つ。

その為、事前に飽和攻撃によって敵防空網を弱体化させた後の運用や、回避能力を持たない要塞・宇宙ステーション・惑星への攻撃を主な用途としている。

 

また、発射機本体には1m厚のオゴナイト装甲が施されており、被弾時の誘爆や損傷を防ぐための高い防御性能を備える。

しかし、その代償として兵装自体が非常に大型かつ重量級となり、搭載できるのは全長2kmを超える大型艦級に限られてしまった。

 

 

 

【ヴィクトリーロード級空母ヴィクトリーロード】

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

全長2,110m / 全幅680m / 全高560m

居住区11,393名分

運用人員数

・技術者681名

・整備士560名

・操縦士1500名

主機関 

・アヴォリオンジェネレータ

防御 

・シールド発生装置

・維持フィールド発生装置

・10m厚のトリニウム装甲

武装

・200cm連装陽電子砲 × 10門

・16連装反物質ミサイル発射管 × 4基

・200mm連装対空レーザーガトリング砲 × 64基

艦載機

・戦闘用航空機1,400機

・輸送機100機

航空機製造ライン5

 

神聖ゴルゴラス選民国が採用する「艦載機による大量突撃ドクトリン」に対抗するため開発された大型空母。

艦載機による制宙権の確保と艦隊防空を主任務としており、合同艦隊における航空戦力の中核を担う存在である。

 

艦内には広大な格納庫と整備・工作区画が設けられており、1,500機もの艦載機を継続的に運用可能。

艦橋後方には大型通信塔を備え、高性能な通信設備と情報処理装置を搭載。

戦場各所で活動する艦載機からリアルタイムで情報を収集し、迅速かつ的確な指示を送ることができる。

 

また、艦載機の展開能力にも優れており、発進口は上部前方に4箇所、下部に2箇所、さらに左右舷にそれぞれ8箇所の計22箇所。

これにより、大量の艦載機を短時間で発艦させる事が可能となった。

一方で、多数の発進口を持つ構造上、それらの区画へ十分な装甲を施すことが難しく、防御面には弱点を抱えている。

また、対空兵器以外の武装も自衛用に留められており、単艦での正面戦闘には向かない。

 

本艦は、ホシカゼ級のように最前線で敵艦隊と撃ち合う艦ではなく、護衛艦の後方から航空戦力を展開する「移動航空基地」として運用される。

 

 

 

大いに盛り上がる進宙式の光景を、1人の男と1機のロボットがオニキス造船所最上部の展望室から見下ろしていた。

 

「バトルウォリアー並びにヴィクトリーロードは第1合同艦隊へ合流後、各種試験を実施します! 各艦隊への配備は、その後になる予定です!」

 

トライポッド型サポートロボットのナビィは、操作していたタブレットを隣の男へ差し出した。

 

「ん、まあ大した問題は出ないだろう。それ相応に時間を掛けて設計した艦だからな」

 

ゼクトル船団の船団長であり、これまで建造された全ての艦艇を設計してきた男――サワミヤは、タブレットに映し出された2隻の設計図へ視線を落とし、満足そうに頷いた。

 

そんな2人の後ろ姿を、パルローナは直立不動のまま静かに見つめていた。

 

(執務室ではなく展望室に呼び出された時は何事かと思ったが……この雰囲気、恐らく政治の話だな)

 

アシエム協同盟約国から引き続き軍人としてゼクトル船団へ参加した彼女たちは、日々船団流の軍事訓練に励んでいる。

 

そんな中、アシエム防衛軍出身の将官として船団へ加わったパルローナとペルマーノの2人だけが、サワミヤから直接呼び出されていた。

 

(国が変わろうと、種族が変わろうと、こういう空気だけは変わらんか)

 

かつて最高議長から度々政治的な仕事を押し付けられていた日々を思い出し、パルローナは僅かに眉をひそめた。

 

「ありゃ? 遅れましたか?」

 

その時、展望室のドアが開いた。

 

茶褐色の髪を肩まで伸ばしたアシエム人の男が、慌てた様子で入室する。

 

ペルマーノ・オ・ラグドム少将。

 

【挿絵表示】

 

 

パルローナと共にゼクトル船団へ加入した軍人の1人であり、防衛軍時代は彼女の副官を務めていた人物だ。

 

「いや、我々が早く来過ぎただけだよ。進宙式の様子を見たかったのでな」

 

サワミヤが振り返る。

その瞬間、彼の纏う空気が先ほどまでの気楽なものから、わずかに張り詰めたものへと変化した。

 

それを察したパルローナとペルマーノは、自然と背筋を伸ばす。

 

「さて、君たちを呼んだ理由だが……まだ決定事項ではない。だからこそ、あまり他人には聞かれたくない話をする為だ」

 

サワミヤはそう前置きすると、2人を見据えた。

 

「君たちには、新たに編成される艦隊の提督になってもらいたい」

「提督、ですか?」

 

ペルマーノは怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「お言葉ですが船団長。自分は宇宙艦隊どころか、宇宙船の指揮すら執った経験はありません」

「だが、兵を率いた経験はあるだろう?」

 

ペルマーノの疑問に、サワミヤは即座に返した。

 

「心配はいらんよ。提督育成用の教育プログラムを用意してある。今まで指揮経験の無かったリカーナ少将やヴェッティア少佐、クロッゼル少佐を一人前の提督へ育て上げた実績もある」

 

そう言いながら、サワミヤは教育プログラムの説明を始めようとした。

しかし、その前にパルローナが口を開く。

 

「船団長。この人事には、政治的な意図も含まれているのですか?」

「……まあ、あるにはあるな」

 

サワミヤは素直に認めた。

 

「君たちも知っての通り、船団は宇宙戦力――特に艦隊戦力を重要視している。理由は説明しなくても分かるな?」

 

2人は黙って頷く。

 

ゼクトル船団は生活の全てを艦艇やステーションに依存している。

故に、それらを守る宇宙艦隊は船団の存続そのものを支える存在だった。

 

「その艦隊を指揮する提督に選ばれることは、船団内では非常に名誉なことだ。選ばれた者の種族全体が誇りに思うほどにな」

 

サワミヤはそこで言葉を区切った。

 

「だからこそ、パルローナ中将とペルマーノ少将を選んだ。下手に暴走せず、ゼクトル船団への忠誠を示している君たちなら適任だと判断した」

 

説明のために動かしていた手が止まる。

次の瞬間、サワミヤの鋭い視線が2人を射抜く。

展望室の空気が、更に張り詰めた。

 

「とはいえ――」

 

低く、重い声が響く。

 

「我が船団に、神輿として担がれるだけの提督は必要ない。そんな無駄な飾りを用意する余裕も時間も無い」

 

2人は思わず息を呑んだ。

 

「今までの経験、才能、性格、そして技量。それら全てを考慮した上で、私は君たちなら艦隊の指揮を執れると確信した」

 

その言葉には、試すような響きではなく、確かな信頼が込められていた。

 

しばしの沈黙が流れ、ペルマーノが口を開く。

 

「……買い被り過ぎではありませんか?」

 

サワミヤは肩を竦める。

 

「そうかもしれん。だが、人材なんてものは大抵そうやって育てるものだ」

「失敗する可能性もあります」

「当然だな」

 

即答だった。

ペルマーノは思わず言葉に詰まる。

 

「失敗しない人間なんて居ない。私だってそうだ。今まで建造した艦も、作戦も、全部が上手く行った訳じゃない」

 

そう言いながら、サワミヤは再び窓の向こうへ視線を向けた。

進宙を終えた『バトルウォリアー』と『ヴィクトリーロード』が、第1合同艦隊所属のクロスボウ級に導かれながらゆっくりと航路へ乗っていく。

 

「重要なのは失敗しない事じゃない。失敗した時に立て直せる事だ」

 

静かな声だった。

しかし、その言葉には妙な重みがあった。

 

「それに、私は君たちを信頼している」

 

パルローナが僅かに目を見開く。

 

「君たちはアシエム防衛軍の将官だった。正直に言えば、当初の我々から見れば警戒すべき立場の人間だった」

 

2人の表情が固くなる。

 

「だが、それでも船団へ来た」

 

サワミヤは続けた。

 

「権力も地位も捨て、祖国も捨てた。将来の保証も無い船団へ身を投じ、亡命後も責務を果たし続けてきた」

 

その言葉に、パルローナは僅かに視線を伏せた。

 

「だからこそ、信じて任せられる」

 

かつての祖国を思い出す。

外敵によって崩壊し、腐敗し、最後には故郷の惑星すら捨て去った国家。

 

「船団長」

 

パルローナが口を開く。

 

「もし提督を拝命した場合、我々の指揮下にはアシエム人以外の船団員も配属されるのですか?」

「無論だ」

 

その答えを聞き、パルローナは小さく息を吐く。

彼女の心の中で、覚悟が決まった。

 

「でしたら、お受けします」

 

隣でペルマーノが驚いた顔を向け、サワミヤの口元に笑みが浮かぶ。

 

「そう言うと思った」

 

その様子を見ていたペルマーノも苦笑する。

 

「参りましたね。ここで、自分だけ断れば部下たちに笑われてしまう」

 

展望室の外では、新たな主力艦が静かに加速を始めていた。

 

それはゼクトル船団にとって新たな時代の始まりであり。

同時に、パルローナとペルマーノが新たな責任を背負い、ゼクトル船団の未来を担う者として歩み始める瞬間でもあった。




ちな、黙祷とかの地球文化はゼクトル船団唯一の地球人が広めまくってます。
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