アヴォリオンだ!   作:マイmk3

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距離と時間の関係で、まだ6章見れてません!


28話 侵略者の使者

「各システム異常なし」

「船体に損傷なし」

「機関始動。出力、安定しています」

「各艦異常なし。出港準備、完了しました!」

「よろしい。全艦、出港せよ!」

 

号令とともに、カーネリアン修理ドックからボラー連邦の軍艦が次々と星々の海へ漕ぎ出していく。

 

彼らがここへ来てから2週間。

 

全艦の修理を終えた辺境巡視艦隊第225は、ゼクトル船団へ別れを告げ、母国への帰路につこうとしていた。

 

「ハイキャッスル総司令部より入電。途中まで、第1合同艦隊が護衛に就くとのことです」

 

その報告どおり、合計147隻もの艦隊が、辺境巡視艦隊第225を取り囲むように航行し始める。

 

「何度見ても、この巨艦の群れには圧倒されますな」

「クロスボウ級で、我が国の戦艦に匹敵する性能。それがフリゲート艦とは……」

「ゼクトルの連中に聞いたが、あの艦は3日で建造できるらしい」

「ははは……無茶苦茶だ」

 

周囲を飛ぶ艦隊を眺めながら、艦橋のクルーたちは皆、半ば呆れたように笑う。

 

(……無理もないか)

 

ベルザム少将自身も、艦隊中央を悠然と航行する全長2km級の巨艦を見つめ、思わず冷や汗を流していた。

 

「観測データは可能な限り取っておけ」

「しかし、彼らは我々の恩人ですよ?」

 

部下の言葉に、ベルザム少将は眉をひそめながら答える。

 

「サワミヤ船団長のことだ。第1合同艦隊を護衛に付けた理由は、噂のコルゴラズへの警戒だけではあるまい」

 

少将はゆっくりと窓の外へ視線を向ける。

 

「我々……いや、ボラー連邦へ、この艦隊を見せるためでもある。気にせず記録しろ」

 

その言葉に、艦長は小さく頷いた。

 

(この短期間で、部下たちの信頼まで勝ち取るとは……。サワミヤ・ケイ、やはり侮れん男だ)

 

ベルザム少将は、自らを救った男への警戒を改めて強めた。

 

その横で、艦長が小声で尋ねる。

 

「……無事に帰還できたとして、我々への処分は免れるでしょうか」

「どうだろうな……。少なくとも機密情報は漏らしていない。しかし、それ以外の情報は随分と流れてしまった」

 

ベルザム少将は苦笑する。

 

(先ほど”仲良くなった”と言っていたクルーも、世間話の中で知らず知らずのうちに、様々な情報を話しているだろうしな)

 

「まあ、ここで得た情報と、サワミヤ船団長からの”土産”で、上層部の機嫌を取るしかあるまい」

 

別れ際、ゼクトル船団はボラー連邦への贈り物として、数種類のマテリアルを提供していた。

 

チタニウムより軽く頑丈なトリニウム。

 

技術的な特性に優れたザニオン。

 

あらゆる金属を凌ぐ強度と重量を誇るオゴナイト。

 

そして、ゼクトル船団の全艦艇に用いられている最重要素材――アヴォリオン。

 

さらに、それらを「必要であれば、販売する用意もある」という言葉まで添えられていた。

 

(これは、「敵対するより、友好的な関係を築いた方が利益が大きい」という、サワミヤ船団長からの明確なメッセージだ)

 

ベルザム少将は護衛の艦隊を改めて見渡す。

 

(観測データを取りやすいよう、ここまで接近させていることも含めてな)

 

ゼクトル船団は、自らの力を隠そうとはしない。

 

観測データだけでも、ゼクトル船団の艦艇が異常な性能を誇っているのは一目瞭然だった。

 

フリゲート艦であるクロスボウ級ですら、船体全体を覆う強力なエネルギーシールドを展開し、100cmを超える陽電子砲を8門搭載。全長300mを超える艦体でありながら、高い機動力まで備えている。

 

他の艦も同様だった。

 

どの艦も当然のようにシールドを展開し、大口径砲や反物質ミサイル、魚雷を装備している。

 

中でも、艦隊中央を航行する全長2km級の戦艦と空母は、もはや化物と呼ぶほかなかった。

しかも、それほどの艦を、わずか半年足らずで建造してしまう生産力まで有している。

 

常軌を逸している。

 

軍事力も、生産能力も、そのすべてが。

 

(もし……もしもゼクトル船団と争うことになったら、ボラーはどうなる?)

 

ベルザム少将は、無意識に拳を握り締めた。

 

(勝てはする……勝てはするだろう。国力では、まだボラーが上だ。だが、必ず甚大な損害を被る)

 

問題は、その後だ。

 

(寒冷化現象によって国力に余裕のない今のボラーに、その傷を癒やすだけの体力が残っているのか……)

 

彼の脳裏に、疲弊しきったボラー連邦の未来がよぎる。

 

「司令、どうかなさいましたか?」

 

艦長の声で、ベルザム少将は我に返った。

 

「……いや。もし、あの艦隊と戦うとすれば、どれほどの戦力が必要になるのか考えていただけだ」

 

艦長は苦笑を浮かべ、艦隊中央を航行する巨大戦艦へ視線を向けた。

 

「そうですな……。少なくとも100隻や200隻では足りないでしょう。ボラー砲が当たれば話は別でしょうが、そう簡単に撃たせてくれるとは思えません」

「だろうな。すでに、艦の形状から艦首に何かしらの武装が搭載されている事には、気が付かれている。正直に真正面からは、戦ってくれんだろう」

 

***

 

「ボーラトス方面に多数のワープアウト反応を確認!」

「艦種識別。巡洋艦800隻、戦艦120隻、空母80隻。合計1000隻! 2日前に確認された艦隊と一致します!」

「総員、戦闘配置に付け! 繰り返す、総員、戦闘配置に付け!」

「全ステーション、移民船内の民間人の避難を開始します!」

 

……ついに、この日が来たか。

 

辺境巡視艦隊第225を見送ってから、およそ1年ちょっと。

 

近頃、神聖コルゴラズ選民国の偵察と思われる艦隊が周辺宙域を頻繁にうろつき始め、そろそろ大規模な攻勢が来るだろうとは思っていたが、案の定だった。

 

もっとも、ハイキャッスル総司令部ステーションの広域レーダーが、天陽星系から約2000光年離れた地点で敵艦隊を捕捉した時点で、その動きは把握済み。

敵がここへ到達するまでの2日間で、出迎え準備はすべて整えてある。

 

「各艦隊は所定の配置へ移動。各ステーションは航空隊の発進準備に掛かれ」

 

俺の命令と同時に、船団全体が一斉に動き始めた。

各艦隊は戦闘陣形へ移行し、ステーション各所からビックホークが次々と飛び立つ。

数千機に及ぶ艦載機が瞬く間に編隊を組み、宇宙を埋め尽くす。

 

「楽しそうですね、サワミヤ船団長」

 

警備艦隊から送られてくる情報を処理していたナビィが、不意にそんなことを口にする。

 

「顔には出していないつもりだったんだが?」

 

思わず顎へ手をやり、自分の表情を確かめた。

 

「もう4年のお付き合いですよ? それくらいは何となく分かります」

「相変わらず、変なところだけ人間臭いな、お前は」

 

苦笑しながら、俺は正面スクリーンへ視線を戻した。

 

「……戦争を楽しんでいるわけじゃない」

 

スクリーンには、戦闘配置へ就く艦隊が映し出されている。

 

「ただ、俺が設計した艦が、戦場で実力を発揮する。その瞬間を、この目で見届けられるのが楽しみで仕方がないんだ」

 

どの艦も、これまで設計してきた中で最高傑作だと胸を張って言える。

そして、その艦を操るのは、幾度もの訓練を潜り抜けた精鋭のクルー。

 

これまでにも艦隊戦は何度もあった。

だが、俺自身が最前線でその戦いを見届ける機会は、ほとんどなかった。

 

強いて言えば、ネステリア居住ステーション攻略戦くらいだろう。

 

ようやく、この時が来た。

 

しかも今回は、ゼクトル船団の全艦隊が揃った状態で挑む、最大規模の艦隊決戦。

 

これほど胸が高鳴る状況で、平静でいろと言われても無理な話である。

 

「敵艦隊、移動開始。密集隊形のまま接近してきます」

「やはり、真っ直ぐ向かってくるか」

 

何か狙いがあるのか。

それとも、それしか戦い方を知らないのか。

 

「船団長、敵艦隊の旗艦と思われる艦より通信が入っています」

「何?珍しいな。今までなら、問答無用で撃ってきたのに」

 

数秒だけ考えた後、俺はオペレーターへ指示を出した。

 

「繋いでくれ」

「了解」

 

実のところ、コルゴラズ人を目にするのは、これが初めてだ。

これまで幾度となく交戦してきたが、捕虜どころか遺体すら回収できた事がない。

 

原因は、コルゴラズ艦の異常なまでの脆さ。

 

陽電子砲やミサイル、どんな攻撃を受けても大抵は一撃で爆散する。

掠めただけで誘爆し、跡形もなく吹き飛ぶ事さえあった。

 

そのため、戦闘後に回収できるのは、わずかな残骸と断片的なデータだけ。

敵の実態は、未だ厚い謎に包まれていた。

 

「映像、来ます!」

 

オペレーターの声と同時に、メインスクリーンへ相手の映像が映し出される。

 

全身を黒を基調とし、金色の刺繍が幾何学模様を描くように施された法衣のような衣装。

深く被ったフードと口元を覆う仮面によって素顔はほとんど隠されていたが、僅かに見える袖口や目元から肌の色が真っ黒である事がわかった。

 

そして異様な目。

黄色い瞳には、狂気にも似た揺るぎない”信仰”だけが宿っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

軍服も階級章も無い。

その佇まいは軍人というより、神官。

いや、自らの命すら惜しまない狂信者。

 

……何だ、こいつ。

 

背筋を冷たいものが這い上がり、本能が警告を鳴らす。

 

「聞けぇ! 穢れた血を持つ異星人どもよ!!」

 

狂信者が両腕を大きく掲げ、叫ぶ。

 

「これから語る御言葉は、偉大なる皇帝陛下より賜った神聖なる勅命である!!」

 

……クソったれ。

こいつら、浄化主義者かよ。

 

 

「――故に、偉大なる皇帝陛下は、穢れた血を持つ異星人どもを根絶やしにし、この宇宙へ永遠の安寧をもたらすことを決定なされたのである!!」

 

スクリーンの向こうで、狂信者は延々と演説を続けていた。

気付けば、すでに10分が経過している。

 

……こいつ、同じ話しかしてねぇな

 

皇帝は偉大だ。

皇帝は絶対だ。

皇帝が異星人を滅ぼせと言った。

だから、お前たちを殺す。

 

その話を、言い回しだけ変えながら5回ほど聞かされた気がする。

 

司令室のオペレーターたちも、どう反応していいのか分からず、ちらちらとこちらを見ている。

 

ナビィに至っては、あまりにも暇になったのか、体に備え付けられた3Dプリンターで反物質ミサイルのフィギュアを作り始めていた。

 

「船団長。セカトン中将とパルローナ中将から、『攻撃開始はまだか』と」

「ん〜、10分も付き合ってやったんだ。そろそろ始めるか」

「了解です。全艦隊へ通達、攻撃を開始せよ!」

 

コルゴラズ艦隊を包囲するようにU字陣形を敷いていた各合同艦隊から、一斉に反物質ミサイルと反物質魚雷が放たれた。

 

3000発を超える反物質ミサイルが降り注ぎ、艦隊側面へ回り込んだ魚雷が突き刺さる。

 

次の瞬間、無数の閃光が宇宙を染め上げた。

爆発が連鎖し、艦影が砕ける。

 

コルゴラズ側は演説が終わるまでは攻撃されないとでも思っていたのか、迎撃は著しく遅れ、最初の一斉射だけで甚大な被害を受けていた。

 

「なっ!? この穢れた血を持つ異星人どもが! 偉大なる皇帝陛下のお言葉を最後まで――」

「切れ」

「はい」

 

通信は強制的に遮断され、スクリーンには再び戦況図だけが映し出された。

 

狂信者がまだ何か叫んでいたようだが、これ以上付き合う気はない。

 

戦争は、とっくに始まっている。

 

俺は燃え上がる敵艦隊を見つめ、呟く。

 

「卑怯だとか、騙し討ちだとか言うなよ?先に戦争を始めたのは、そっちなんだからな」




ナオナイトは今後も出てきません。
ある程度宇宙に出ている星間国家なら、ナオナイトぐらいの性能のマテリアルを当たり前に使っているだろうと考え、売りに出しても買い手が居らず、使うにしてもアヴォリオンで良い。
以上の理由から、おそらく出ません。

ちな、鉄とチタニウムは、マテリアル変換器で別のマテリアルにしてるので、見えない所でじゃんじゃか使ってたりします。
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