アヴォリオンだ!   作:マイmk3

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現在、暑さと仕事の忙しさでだいぶやる気が削がれ、投稿ペースが遅れてます。



30話 勝利と狂信

ボーラトス沖――。

 

絶え間なく砲撃が吹き荒れる戦場。

その下方を、3隻のアイアンフレイム級強襲揚陸艦で構成された強襲艦隊が、ゆっくりと進んでいた。

 

1番艦『アイアンフレイム』を先頭に、2番艦『ボルケーノ』、3番艦『ブルーブレイズ』が続く。

 

コルゴラズ艦隊は、まだ彼らの存在に気付いていない。

各合同艦隊への対応に追われ、索敵は完全に後手へと回り、全長2kmを超える巨艦ですら見逃す程、周囲への警戒がおろそかになっていたのである。

 

「派手にやるねぇ、上の人らは」

 

アイアンフレイムのブリッジで、ペルマーノは呑気そうに呟いた。

 

「気を抜き過ぎは、よろしくありませんよ。ペルマーノ提督」

 

司令席に深くもたれ掛かり、大きく伸びをする彼を見て、アイアンフレイムの艦長が苦笑混じりに窘める。

 

「大丈夫、大丈夫。どこまで気を抜いていいかは、前の職場で嫌というほど覚えたからさ」

 

ひらひらと手を振って答える姿に、艦長は呆れたように息を吐き、小さく首を振った。

 

(そういや、前の部下にもこんな感じで呆れられてたっけなぁ)

 

ペルマーノは、ふとアシエムにいた頃、自分を補佐していた部下の顔を思い出す。

 

(国の為に尽くすとか何とか言って、最後まで真面目な奴だった。アシエムに残ると言い張ったアイツは、今頃どうしてるんだか……)

 

そこまで考えたところで、首を軽く振る。

 

(いかんいかん。戦闘中に昔を思い出すのは死亡フラグ!)

 

気持ちを切り替えるように、ペルマーノは戦術メインモニターへ視線を向けた。

 

コルゴラズ艦隊は4つの合同艦隊に包囲され、絶え間ない攻撃を受け続けている。

1000隻を超えていた艦隊は、わずか数時間で200隻以下にまで撃ち減らされ、もはや壊滅寸前だった。

 

「そろそろ、か」

 

ペルマーノがそう呟いた、その時だった。

 

「ペルマーノ提督!司令部より入電、『銛を撃て』です!」

 

通信士の報告を聞いた瞬間、だらけていた姿勢から勢いよく身を起こす。

ゆるんでいた表情を引き締め、軍人としての鋭い眼差しが戻る。

 

「よぉーし、出番が来たぞ! 全艦、作戦開始!」

 

艦橋へ張りのある声が響く。

 

「我々の任務は、上の連中みたいに派手じゃない。だが、その分重要な任務だ。気張って行けよ!」

 

その号令とともに、3隻の強襲揚陸艦が一斉に加速を開始。

上方で戦闘を続けるコルゴラズ艦隊の最後尾へ向け、一気に距離を詰めていく。

 

ようやく強襲艦隊の存在に気付いた数隻の巡洋艦が、慌てて迎撃を開始する。

しかし、散発的な砲撃程度では、彼らを止めることはできなかった。

 

「敵の攻撃は気にするな。進路上の邪魔な艦だけ排除しろ」

 

アイアンフレイム級の上部主砲群から陽電子ビームが放たれる。

橙色の光は前方の巡洋艦を薙ぎ払い、進路を切り開いた。

 

直撃を免れた艦も、分厚い前面装甲で弾き飛ばされ、宇宙の彼方へ吹き飛んでいく。

 

そのまま3隻は、目標の目前まで肉薄する。

 

「ボルケーノは左の戦艦。本艦は右の戦艦。ブルーブレイズは奥の空母を担当しろ」

 

強襲艦隊へ与えられた任務は、コルゴラズ艦隊最後尾に位置する2隻の戦艦と1隻の空母を拿捕すること。

 

そして副次目標として、神聖コルゴラズ選民国の情報を得る為に、演説を行っていた敵司令官の捕縛。

 

「全艦、フォースレーザー照射用意!」

 

3隻は一度目標を追い越すと、その場で180度回頭。

急減速しながら、艦前方に配置された2基の4連装フォースレーザーを目標へ照射した。

 

「対象の牽引を確認!」

 

白いフォースレーザーに捕らえられた戦艦は、アイアンフレイムの目前へ強引に引き寄せられていく。

 

敵艦はエンジン出力を最大まで引き上げ、必死に逃れようともがくが、拘束から逃れることはできずじわじわと引き寄せられる。

 

「よし、そのまま本艦の前まで引きずれ。提督、敵艦の武装無力化は艦載機で行います。よろしいですな?」

「ああ。強襲揚陸艦の武装じゃ、やり過ぎるからな。航空隊には、撃沈を避けるため陽電子砲の使用は厳禁だと伝えろ」

 

艦長の言葉に頷きつつペルマーノは、さらに指示を付け加える。

 

「それと、移乗戦闘員は敵艦の無力化が完了するまで、輸送機に搭乗し待機だ」

 

各艦から120機のビックホークが一斉に発艦。

フォースレーザーで拘束された敵艦へ取り付き、30mmレーザー機関砲とマイクロミサイルで砲塔やエンジンノズルを狙い撃ちにしていく。

 

コルゴラズの戦艦も対空砲で濃密な弾幕を張り巡らせ、飛び回るビックホークを撃ち落とそうとする。

 

しかし、その弾幕を潜り抜けた機体が、お返しとばかりにマイクロミサイルを発射。

対空砲へ次々と着弾したミサイルが、砲座を派手に吹き飛ばしていく。

 

「目標の防空能力低下を確認」

「まずはタイタンパイロット部隊で突入ポイントを確保する。ツァンヒア大隊、発艦せよ!」

 

対空砲の排除を確認した艦長が、待機していたパイロット達へ命令を下す。

 

『了解。さあ、行くわよ!』

 

格納庫から6機のフロントランナーが飛び立ち、コルゴラズ戦艦へ向かう。

 

『オグナー中隊とノノト中隊は下方へ。上の突入ポイントは、私達だけで確保するわ』

『了解、ゲルザ隊長』

『1個中隊だけでやるのですか?』

『そうよ』

 

4機のフロントランナーが艦の下方へ回り込み、残る2機は艦橋の真上へ降り立った。

 

『だだっ広い艦橋だ。降りるにはちょうどいい』

『これだけ広けりゃ、タイタンで暴れ回れそうだな!』

『お前はそればかりだな、ニクム』

 

24名のパイロットが輸送機から飛び出し、艦橋後部のハッチへ向かう。

 

『正面に敵兵! 数は30!』

『フラグで吹き飛ばせ!』

 

ハッチを開放する前に数名のパイロットがパルスブレードで索敵を実施し、情報を即座に部隊全員へ共有する。

 

ハッチが開いた瞬間、内部から丸い緑色のエネルギー弾が放たれるが、投げ込まれたフラググレネードが炸裂すると、一瞬で静まり返った。

 

『突入!』

 

艦内には、黒色の分厚い宇宙服を着たコルゴラズ兵の死体が無重力空間を漂っていた。

 

かろうじて息のある兵士もいたが、パイロット達によって素早く排除されていく。

 

『情報通り、艦内に重力はない。……空気までないとは』

『ベキス、データナイフで隔壁を開けて。アイアンフレイムへ。上部艦橋の突入ポイントを確保しました』

「よくやってくれた。直ちに移乗部隊を送る」

 

ゲルザからの報告を受け、待機していた輸送機が次々と格納庫から発艦していく。

 

「各艦、そちらの状況はどうだ?」

『こちらボルケーノ。現在、突入ポイントへ移乗部隊を輸送中です』

『こちらブルーブレイズ。突入ポイントは確保しましたが、敵の自爆特攻兵による攻撃で、パイロット3名が重傷、6名が負傷しました』

「自爆特攻!? 随分と狂気的な戦い方だ……」

『身体に爆弾を括り付けた兵士が、小隊単位で突撃してきたとのことです。また、自暴自棄の特攻というより、そうした戦法を前提とした訓練を受けているような動きだった、と報告を受けています』

 

ブルーブレイズからの報告を聞いたペルマーノは、大きく顔をしかめた。

 

(やだねぇ……。まるでテロリストを相手に戦っている気分になる)

 

***

 

「敵残存艦艇、100隻を切りました」

「強襲艦隊の作戦成功を確認! 制圧した艦艇と捕虜をスターナレッジへ輸送中です!」

「味方艦隊の被害は軽微。轟沈した艦は確認されていません!」

 

司令部へ次々と上がる報告を聞き、思わず笑みが込み上げる。

 

「ふっふっふ。圧倒じゃないか、我が軍は!」

「サワミヤ船団長! そのセリフは死亡フラグですよ!」

「でぇじょうぶだ。俺に妹は居ねえ!」

 

あの艦隊を囮にし、別働隊でステーションを叩く作戦かと思い警戒していたが、その気配は一切無い。

 

少々急ぎ目で用意した例の兵器も、使わずに終わりそうだ。

 

まぁ、使わないに越した事はないんだが。

 

「神聖コルゴラズ選民国の情報をまとめ終わりました。いつも通り、そちらへ送りますね!」

 

ナビィが仕事を終え、情報を直接俺の脳内へ送ってくる。

 

「あんがと。ふむ……こりゃあ国家と言うより、皇帝とやらを崇拝する巨大なカルト組織だな……」

 

何なん、コイツら?

 

国家の発展も、国民の豊かな生活も一切考慮せず、ただ皇帝の言葉を実現する為だけに存在し、活動している国家?

 

しかも、その皇帝は数十年前に行方不明?

 

こんな40Kの、なんちゃって人類帝国みたいな連中と戦わなあかんの?

 

「宗教……宗教かぁ……」

 

敵司令官を見た時に感じた嫌な予感が的中していた事に軽く絶望しながら、情報を読み進める。

 

総人口は5000億人?

そりゃあ、あんな風に命を雑に扱える訳だよ。

 

「どうするかねぇ。多少損害を与えた程度じゃ、諦めてくれんだろうし」

 

当初の予定では、戦争継続が不可能な程の損害を与えれば、相手も手を出して来なくなると考えていた。

 

だが、相手は狂信者。

 

これ、本気で叩かないと戦争は終わらないかもしれんなぁ。

 

少なくとも、軍事施設や造船所、軍需工場、各種資源採掘施設。

そして、宗教関連施設全般を破壊するくらいはしないと、信仰を糧に延々と戦い続けて来る気がする。

 

「出来るっちゃ出来るが、大量虐殺は市民感情がなぁ……」

 

虐殺は嫌だとか、四の五の言っている場合じゃない。

 

しかし、現状では神聖コルゴラズ選民国に対して、そこまでの憎悪を抱いている訳ではない。

そんな状態で実行すれば、反戦運動に繋がりかねない。

 

「頭だけ吹っ飛ばしたら、勝手に滅びてくれないかなぁ……」

 

現在のコルゴラズを取りまとめているのは、『皇帝の代弁者』を名乗る者達。

 

いや、代弁者を幾ら吹っ飛ばした所で、新しい奴が出て来るだけか……。

 

「マジでどうすっかなぁ……」

 

 

ボーラトス沖海戦から数日後。

 

「船団長、世論調査の集計が終わりました」

「お、どうだった?」

 

戦闘の後処理に追われながらも、今後のコルゴラズへの対応を決める為、ルオコスに調査を頼んでいた。

 

「結果ですが、大半の人々が神聖コルゴラズ選民国への徹底攻撃に賛同しています」

「わぁ、グラフが真っ赤だ」

 

渡された資料の一番上に、赤一色に染まった円グラフが載っていた。

赤の意味は『慈悲など不要。ぶち殺せ』である。

 

「何だ、市民感情がどうこうって迷っていた俺が馬鹿みたいじゃないか」

「そもそもゼクトル船団の住民は、異星人や異星生命体に滅ぼされる寸前だった者達ばかりですから」

「その経験から、外敵に対して強烈な敵対心を最初から抱いている訳か」

 

いかんな。

 

これは割と盲点だった。

 

そりゃそうだ。

 

一度滅びかけた者達が、「お前達を滅ぼしてやる」と言って来る相手に情けを掛ける訳がない。

 

あまり表面化していなかったから問題視していなかったが、2202の頃の地球と同じような過激思想が蔓延する可能性も有るのか。

 

「どうしたもんか。変な平和主義へ傾倒するよりはマシだが、超過激思想を持たれても困るし……」

「失う恐怖と怒りに満ちた心を落ち着かせるには、時間が必要です。焦らず対処していきましょう」

 

その時間が、有れば良いんだが……。

 

この世界へ来てから4年。

 

恐らく、あと数年で銀河情勢は大きくうねり始める。

 

『宇宙戦艦ヤマト』の時代が、幕を開けるのだ。

 

――備えなくてはならない。

 




天の川銀河の地図更新版です。

【挿絵表示】


ボラー連邦の版図が小さい気がしたので修正したのと、神聖コルゴラズ選民国を追加しました。
割と適当に作っていますので、「へーこんな感じなんだ」みたいな軽い気持ちでご覧下さい。


・神聖コルゴラズ選民国の設定

元ネタ

『Warhammer 40,000』の人類帝国、『Kenshi』のホーリーネーション、『HALO』のコヴナントなど、宗教国家のダメな部分を煮詰め、まとめたような国家。



神聖コルゴラズ選民国

天の川銀河外縁部の腕内側に版図を広げる星間勢力。

国を名乗ってはいるものの、その実態は「皇帝」と呼ばれる人物を絶対的に崇拝する巨大カルト組織。

彼らは、皇帝が行方不明となる前に残した言葉を実現する為だけに存在しており、その目的は全異星人の撲滅である。

数多くの星系を支配し、各地の惑星から膨大な資源を採掘しているが、それらは全て異星人殲滅の為だけに投入され、国家の発展や国民の生活向上に使われる事は一切無い。

また、居住可能惑星を幾つも保有しているにもかかわらず、「皇帝自らが制圧した惑星以外に住んではならない」という宗教上の教義により、人が居住している惑星は僅か5つのみとなっている。

総人口は約5000億人。

この膨大な人口を生かした圧倒的な生産力を誇り、戦場では数の力を最大限に生かす大量突撃ドクトリンを得意としている。

しかし、上流階級を除く国民の人権や人命は極めて軽視されている。

どれほど危険な作業や任務であっても、
「命を顧みぬ行為こそ、皇帝への信仰を示す最良の証である」
という教義が浸透している為、労働環境や兵士の生存率が改善される事は無い。

兵器開発においても、生産性を最優先とする思想から徹底したコスト削減が行われており、人命を軽視した設計思想が貫かれている。

宇宙艦艇には、重力発生装置や生命維持装置、脱出ポッド、高価な誘導兵器などを搭載せず、戦闘に必要最低限の装備のみを備える事で、大量生産を実現している。



皇帝

年齢、性別、人種、出自──その全てが謎に包まれた人物。
コルゴラズ人と同じ黒い肌を持ち、男女を問わず人々を惹き付ける圧倒的な魅力を備えていたと伝えられている。

古代の惑星コルゴラズへ突如として現れ、人間離れしたカリスマ性と圧倒的な身体能力を駆使して、瞬く間に文明を統一。

その後、数千年の歳月を掛けて神聖コルゴラズ選民国を建国し、文明を星間国家へと発展させた。

しかし約100年前、何の前触れもなく姿を消し、現在に至るまで消息は一切判明していない。
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