神聖コルゴラズ選民国に行くのは、次回辺りになります。
次回『コルゴラズ死す』
ハイキャッスル総司令部――作戦会議室。
室内中央に設置された巨大な立体映像装置には、天の川銀河の一部が映し出されている。
その中心に存在するのは、ゼクトル船団が本拠地としている天陽系。
そして、そこから約2万光年離れた場所には、幾つもの赤い光点が密集していた。
幾度となく艦隊を送り込み、ゼクトル船団を滅ぼそうとして来た連中――神聖コルゴラズ選民国が支配する星系である。
「全員揃ったな? これより、作戦会議を始める」
俺の言葉に、集められた面々が一斉に立体映像へ視線を向ける。
第1合同艦隊提督、セカトン・ゾルグ中将。
第2合同艦隊提督、ラティ・ヴェッティア少将。
第3合同艦隊提督、リカーナ・ルルナ少将。
強襲打撃艦隊提督、ペルマーノ・オ・ラグドム少将。
この4名の提督に加え、各艦隊の参謀達と移乗戦闘師団長達が顔を揃えていた。
「今回の作戦目標は、神聖コルゴラズ選民国の国家機能及び軍事力の壊滅だ」
今までとは違う。
敵艦隊を迎え撃つ防衛戦でもなければ、襲撃して来た艦隊への報復攻撃でもない。
こちらから敵領へ乗り込み、神聖コルゴラズ選民国そのものを再起不能へ追い込む為の作戦だ。
室内の空気が僅かに張り詰め、殆どの者が緊張した面持ちとなる。
……一部、凄え凶悪な笑みを浮かべてる奴も居るけど。
「まず、目的地までの距離ですが、本星系からコルゴラズ領まで直線距離で約2万光年となります!」
ナビィが立体映像を操作すると、天陽系からコルゴラズ領までの航路が、青い線となって浮かび上がった。
「超空間ジャンプは、一度のジャンプで最大7200光年まで跳躍可能です。その為、3回の長距離ジャンプでコルゴラズ領へ到達出来るでしょう!」
「超空間内では1時間当たり100光年進むから、凡そ200時間。日数にすれば、8日半程でコルゴラズ領内へ到達出来る訳でありますか」
ナビィの説明に、ペルマーノが付け足す。
「ああ。何も無ければな」
俺は航路を眺めながら続ける。
「コルゴラズから回収した航路図を利用出来るとは言え、未知の宙域へ向かう事に変わりはない。途中である程度の偵察や調査も必要になるだろう」
「更に付け足しますと、最大距離でのジャンプ後は、機関の点検及び整備が必要となります!」
未知へ挑む時は、万全でなければならない。
多少慎重なくらいで丁度良い。
「以上を踏まえ、コルゴラズ領への到着は12日前後を予定している」
往復で24日。
更に、コルゴラズ領へ到達してから目標の偵察や情報収集に4日程掛かると考えれば、約1ヶ月の遠征になる。
まあ、コルゴラズの連中に比べれば遥かにマシだ。
何せ奴らは、毎回2、3ヶ月も掛けてこちらへ来ている。
しかも、艦内の居住環境は劣悪そのもの。
俺は何があっても、連中の船だけには乗りたくない。
「ワープは使用せんのですか?」
セカトンが、立体映像に表示されたコルゴラズ領を鋭い眼差しで見つめながら口を開く。
「ああ。緊急時に何時でも使える様、基本的にワープは温存する」
現在、我々が使用している時空間歪曲型ワープ装置は、1日に3回程度の使用が限界。
更に、一度の跳躍距離は最大200光年程しかない。
それならば、いざという時の退避手段として残しておくべきだろう。
「次に、各艦隊の攻撃目標を説明する」
立体映像が切り替わり、コルゴラズ領内に存在する3つの惑星が映し出された。
「この3つの惑星には、それぞれ神聖コルゴラズ選民国の国家基盤を支える上で、最重要となる施設や工場が存在している」
映像を操作し、1つ目の惑星を大きく表示する。
「この惑星には、兵器工廠、艦艇用部品を生産する工業地帯、大規模造船所等、コルゴラズの軍事力を支える巨大な軍需生産拠点が集中している」
何千というドックが立ち並び、その内部では何百隻もの紫色に塗られた艦艇が、抜錨の時を待っている。
「ありがたい事に、連中は1つの惑星を何かしらの産業へ特化させているらしい。その為、この軍需生産拠点を潰せば、数十年はまともな艦艇建造が不可能となる」
「加えて、星系内には多数の輸送船団を確認しております! この輸送船団も撃破出来れば、コルゴラズの物流へ大きな打撃を与えられます!」
ナビィが惑星と星系内へ幾つもの赤い点を表示し、重要目標の位置を正確に周知していく。
「セカトン中将。ここは第1合同艦隊に任せる。手段は問わん。徹底的に潰せ」
「俺らと同じく、船団を名乗ってる連中を潰すのは、気が乗らねえなぁ」
おう。
その獰猛な笑みを隠してから言えや。
続いて、茶褐色の惑星が表示される。
「こっちは鉱山惑星だ。艦隊運用から工場建設、艦艇修理に至るまで、あらゆる用途で必要となる資源の供給源になっている」
惑星表面を拡大すると、その殆どが採掘施設や精製工場で埋め尽くされていた。
「資源採掘施設、精製工場、備蓄拠点、輸送施設といった重要目標を破壊して貰う。ただし、こちらは惑星全土に広く分布している。惑星ごと吹っ飛ばすという手も有るんだが……連中と同じ事をするのは品が無い」
下手にコルゴラズの真似事をすれば、こちらの市民から反感を買いかねない。
わざとらしく肩をすくめると、周囲から小さな笑い声が漏れた。
「と言う事で、航空機による精密爆撃で目標を破壊する。ここはリカーナ少将率いる第3合同艦隊に任せる。君の得意分野だ、頼んだぞ」
「了解です! あ、フロントランナーを爆装させて、爆撃機として運用しても宜しいでしょうか?」
「大いに結構。ただし、制空権はしっかり確保しておけ」
輸送機であるフロントランナー。
アシエムでの戦いを通して、少々改造すれば爆撃機としても十分運用出来る事が判明していた。
そして最後。
巨大な惑星が、立体映像の中央へ表示された。
他の惑星とは違い、大規模な工場群は存在しない。
その代わり、円錐状の巨大な塔が所狭しと乱立している。
「この惑星こそが、神聖コルゴラズ選民国発祥の地にして、彼らにとって最大の聖地が存在する場所」
その言葉だけで、何処なのか察した者達が息を呑む。
「惑星コルゴラズだ」
この場に居る全員の表情が険しくなる。
敵の総本山。
そして、今回の最重要目標が存在する場所だ。
そういう顔になるのも無理はない。
「目標は2つ。1つ目は、聖地となっている宗教施設の破壊だ」
立体映像に、巨大な黒いピラミッド状の建造物が映し出される。
「高さ2km、底辺一辺4km。この黒いピラミッド状施設は、コルゴラズの皇帝が健在だった頃に居住していた王宮だ。現在は皇帝を祀る聖堂であると同時に、政治の中枢施設として利用されている」
巨大な王宮を示しながら説明を続ける。
「この王宮を破壊すれば、コルゴラズを支えている皇帝信仰にも大きな打撃を与えられるだろう」
信仰によって成り立つ神聖コルゴラズ選民国には、致命的とも言える一撃になる。
絶対的な存在である皇帝の王宮を、彼らが蔑む異星人に破壊された。
そうなれば、国民は王宮を守れなかった軍や指導者へ、怒りと失望を抱くだろう。
そこから国家への不信が生まれ、上手く転べば内乱へ発展する可能性すら有る。
「2つ目の目標は、『皇帝の代弁者』を名乗る10人のコルゴラズ人だ」
行方不明となった皇帝に代わり、現在の神聖コルゴラズ選民国を統治している10人の最高指導者。
「これまた運の良い事に、目標全員が王宮内に居住している事を確認した」
10人の顔を立体映像へ表示する。
全員が豪勢な金と黒のローブに身を包み、目元以外をマスクで覆っている。
見るからに、
『私は偉いのだ』
と言わんばかりの服装だ。
「では、王宮を艦砲射撃等で破壊すれば、2つの目標を一度に排除出来る訳ですか」
「いえ、そう簡単ではありません!」
ヴェッティアの言葉を遮り、ナビィが施設内部の詳細を立体映像へ映し出す。
「この施設なのですが、地上から見えている部分の殆どは、飾りと言っても過言ではありません!」
ピラミッド状施設の地下に、蟻の巣を思わせる巨大な地下構造が現れた。
かなり深部まで広がっており、最深部は地表から3km近くに達している。
「王宮地下には広大な政務区画が存在しておりまして、皇帝の代弁者達は、この地下施設からコルゴラズ全土を統治しております!」
代弁者達は、決して地下から出ようとはしないらしい。
常に皇帝の玉座の近くに居るべき、とでも考えているのか。
それとも、単純に外へ出るのが怖いだけか。
「軌道上から艦砲射撃や反物質ミサイルを撃ち込めば、王宮そのものは破壊出来る。だが、地下施設の最深部まで破壊し切るには時間が掛かる」
その間に、目標が別の地下通路等を使って逃亡する可能性が出て来る。
もし1人でも仕留め損なえば、隠れ潜みながら我々への復讐を唱え続けるだろう。
何年掛かろうが戦力を整え、再びこちらへ牙を剥く。
そんな未来は容易に想像出来た。
「残しても面倒な事にしかならないのは明白だ。絶対に全員排除する」
立体映像が再び切り替わる。
「そこで、地上戦力を王宮地下へ直接侵入させ、目標を排除する。更に各所へ爆弾を設置し、地下施設そのものを徹底的に破壊。コルゴラズの政務能力を完全に奪う」
映像には、今回投入する地上戦力の詳細が表示される。
「未だ不確定な情報だが、王宮周辺には100万人前後の守備隊が展開していると予想されている。艦砲射撃や航空爆撃で大部分は排除出来るだろうが、それでもアイアンフレイム級に搭乗させている戦力だけでは心許ない」
立体映像には、これまで運用して来たスペクターやストーカーに混じり、新型の戦闘用ロボットが映し出された。
「そこで、こちらも数を用意した。これらの戦力は、作戦開始まで各艦の貨物室へ格納しておける。その為、遠征艦隊への負担も比較的少ない」
スペクター60万機。
ストーカー20万機。
そして、新型戦闘用ロボット――リーパー2万機。
逆三角形状の胴体に埋め込まれた小型頭部。
独特な形状の脚部と、ロケット砲を内蔵した3本指の腕。
全高3m弱の完全戦闘用ロボット。
リーパー(Reaper)。
『タイタンフォール2』では、条件さえ揃えばタイタンすら撃破可能な人型戦闘兵器だ。
両腕には、着弾地点でエネルギー爆発を引き起こすリーパー・ロケットを装備。
更に、その腕自体を格闘武器として使用可能であり、近距離戦闘にも対応出来る。
大きな逆三角形の胴体背部には、円盤状に折り畳まれた自走式自爆ドローン『ティック』を多数搭載。
脚部とスラスターを用いて高所へ飛び移り、広範囲へティックを散布する事も出来る。
通常の歩兵にとっては、極めて重大な脅威となるだろう。
「更に、戦車100両、装甲車200両で構成された機甲旅団を3個投入する。数と質の両方で、敵守備隊を正面から押し込むぞ」
「おぉ、どうにか訓練が間に合いましたか」
ペルマーノが満足そうに頷く。
機甲旅団の結成には、彼も深く関わっていたから、感慨深いのだろう。
「さて、既に分かっているとは思うが、惑星コルゴラズへは第2合同艦隊及び強襲打撃艦隊に向かって貰う」
ヴェッティアとペルマーノへ視線を向ける。
「ヴェッティア少将、ペルマーノ少将。この任務では両艦隊の連携が極めて重要になる」
「了解です!」
「了解であります!」
2人は力強く敬礼しながら答えた。
軍事力。
生産力。
資源。
そして、信仰を束ねる象徴と指導者。
その全てを同時に叩く。
「これだけやれば、神聖コルゴラズ選民国は再起不能になる」
国民がどれだけ狂信的であろうと関係無い。
信仰だけで宇宙船は造れない。
信仰だけで陽電子砲は撃てない。
信仰だけで数千隻もの艦隊を維持する事など出来ない。
例え国家そのものが存続したとしても、今までの様な大艦隊を送り込める星間国家へ戻るには、途方もない年月を必要とするだろう。
「そう言えば、敵の残存戦力はどれ程で?」
セカトンの問いに、ナビィが新たな情報を表示する。
「現在確認出来ているコルゴラズ艦艇は、約4000隻です! ただし、一箇所へ集結している訳ではなく、領内各地へ分散しています!」
4000隻。
数字だけ見れば多い。
とは言え――。
「纏まって来るならともかく、分散しているなら怖くないな」
「はい! 本作戦を阻止出来る程の戦力ではないと判断いたします!」
惑星防衛へ急行しようにも、全艦が直ぐに集結出来る距離へ居る訳ではない。
こちらが3箇所を同時に襲撃すれば、敵戦力を更に分散させる事も出来る。
そして、分散した小規模な戦力では、合同艦隊を打ち破る事など不可能だ。
「船団長。コルゴラズには食料生産惑星が有ると資料に記載されています。この惑星も襲撃出来れば、更なる弱体化を狙えるのではないでしょうか?」
タブレットでコルゴラズの情報を確認していたリカーナが、提案を口にする。
「ああ。確かに潰せば弱体化は進むだろう。ただ、その惑星では『異端者』と呼ばれる者達が活動しているという情報を得ていてな」
「異端者……反政府組織でしょうか?」
「恐らくな。この異端者達が、どう動くのか見ておきたい」
我々へ関与せず過ごすなら、それで良し。
話し合いを求めて来るなら、席を用意する。
敵になるなら――一切の容赦はしない。
「まあ、どうせ輸送船団を潰してしまえば、食料が他の惑星へ届く事は無い」
「輸送船を新たに建造しようにも、造船所が破壊されているからな」
「更に修理用資源も、採掘・精錬施設が壊滅すれば殆ど確保出来ない」
「そこへ、自分達の聖地が破壊され、国家指導者も全滅」
ペルマーノが肩を揺らして笑う。
「はっはっは。改めて聞かされると、えげつない作戦でありますな」
俺は、立体映像に浮かぶ惑星コルゴラズを見詰める。
「散々好き勝手やってくれたんだ。そろそろ、ツケを払って貰おうじゃないか」
自然と、口元に笑みが浮かぶ。
「抜錨は3日後」
椅子から立ち上がり、集まった者達を見渡す。
「各艦隊、出撃準備に掛かれ!」
「「「「了解!」」」」
――こうして。
ゼクトル船団初となる、大規模な敵国領土への侵攻作戦が開始される事となった。
何となくで考えた、ゼクトル船団の戦車と装甲車の設定です。
【チェンラルノ3型戦車】
全長12m / 全幅8m / 全高7m
乗員
・2名
武装
・170mmプラズマレールガン ×1門
・33mm3連装レーザー機関砲 ×1基
見た目は『機動戦士ガンダムMS IGLOO』に登場した、マゼラ・アタックの砲塔後部推進ノズルを無くした感じ。
分離飛行機能は搭載されておらず、砲塔がちゃんと回る。
アシエムからゼクトル船団へ合流した、戦車設計者達によって開発された主力戦車。
『チェンラルノ』は、アシエム語で「一角竜」を意味する。
シールド発生装置や維持フィールド発生装置、重力制御装置等、多数の装置を搭載した結果、非常に大型の車両となってしまった。
強固な装甲とシールドによる高い耐久性を活かした運用を得意とする。
主砲には、タイタン用プラズマレールガンを大型化した170mmプラズマレールガンを採用。
歩兵と共同で行動する機会が多い事から、同口径の陽電子砲ではなく、周辺への放射線被害を抑えられる本砲が選ばれた。
陽電子砲と比較すると射程では多少劣るものの、威力そのものは遜色無く、中量級タイタンであれば一撃で撃破可能な火力を有する。
⸻
【ヴァロサウ2型6輪装甲車】
全長7m / 全幅4m / 全高3m
乗員
・乗員2名
・兵員10名
武装
・33mmレーザー機関砲 ×1門
見た目は『機動戦士ガンダムMS IGLOO』に登場した、ヴィーゼルを少し大きくした感じ。
水上走行装置が無くなった代わりに、タイヤを横に傾けてホバー走行が出来る様になった。
チェンラルノ3型と同じく、アシエムから合流した車両設計者達によって開発された6輪装甲車。
『ヴァロサウ』とは、アシエム語で「馬」を意味する。
兵員輸送が主任務だが、偵察、哨戒、後方支援、火力支援等、幅広い任務へ対応出来る汎用性の高い車両として設計されてた。
通常時は6輪によって走行するが、必要に応じてタイヤを横方向へ傾けた、ホバー走行形態へ移行可能。
車体各所へ配置されたスラスターによって、高い機動性を発揮する。
防御面でもシールド発生装置や維持フィールド発生装置等を搭載しており、装甲車としては極めて頑丈。
武装は33mmレーザー機関砲のみと比較的軽装だが、歩兵や軽装甲車両への攻撃には十分な火力を持ち、輸送した歩兵部隊をそのまま後方から支援する事も可能となっている。
本当は、タイタンフォールの方から引っ張ってこようと思っていたのですが、良い感じの資料が見つからなかった為、ジオンのビックリドッキリメカにご登場頂きました。
まあ、ビックリドッキリ要素たる飛行能力有りませんけど。
え?
だったら61式戦車で良かっただろて?
……皆んな好きだろ、ああ言う変わった形の戦車。