後、ピクシブ始めました。
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コルゴラズ遠征に参加する艦隊が、天陽系を出発してから17日。
各艦隊はそれぞれ、予め定められた目標へ向けて攻撃を開始していた。
「……何とも呆気ない」
守備戦力を全て排除され、丸裸となったコルゴラズの軍需生産惑星を前に、セカトンは呆気に取られながら、ぽつりと言葉を漏らした。
そう感じているのは、彼だけではない。
第1合同艦隊の将兵達もまた、余りにも簡単に陥落した敵の重要拠点を前に、困惑と拍子抜けを隠せずにいた。
作戦開始前、艦隊は何度も偵察を行い、捕虜から得た情報と照合。
その結果、軍需生産惑星には航空戦力を主軸とした守備隊に加え、多数の防衛設備が配備されている事が判明していた。
更に、戦闘が始まれば周辺宙域に展開する警備艦隊も、続々と集結して来ると想定。
激しい抵抗が予想される――。
そう判断していたセカトン達は十分に気を引き締め、軍需生産惑星の存在する星系へジャンプした。
しかし、蓋を開けてみればどうだ。
彼らが想定していた様な事態は、何一つとして起こらない。
惑星上の基地に配備されていた航空戦力は、第1合同艦隊が軌道上へ到達するまでに、発進準備すら終えていなかった。
惑星各地に設置されていた防衛設備に至っては、悠々と上空を航行する第1合同艦隊を見て、漸く敵襲である事を把握し、慌てて砲台を起動させる始末である。
無論、敵の準備が整うまで律儀に待ってやる程、彼らは優しくない。
砲撃やミサイルによる攻撃。
そして、艦載機の爆撃。
攻撃準備すら満足に整っていない基地や防衛施設へ、容赦の無い攻撃が次々と叩き込まれ、まともな反撃すら出来ないまま、基地と防衛施設は瞬く間に更地へと変わっていった。
そのあまりの呆気なさに、第1合同艦隊の面々は当初、何らかの罠ではないかと警戒する。
しかし、一向にそれらしき動きは無い。
時折、救難信号を聞き付けた小規模な敵艦隊が現れ、攻撃を仕掛けて来る程度。
ならば、輸送船団の方に何かあるのではないか。
そんな懸念も抱いたが、別働隊として行動していた突撃艦隊から、
『特筆すべき損害無し。敵輸送船団、全艦撃沈』
との報告が届く。
ここまで来ると、第1合同艦隊の殆どの者が拍子抜けしていた。
「セカトン提督。敵はそもそも、自分達が襲撃を受ける事など想定していなかったのではないでしょうか?」
「そんな馬鹿な話が……」
座乗艦である戦艦バトルウォリアーの艦長からそう言われ、セカトンは即座に否定しようとした。
だがふと、ある情報を思い出す。
捕虜から抽出した記憶の中に、神聖コルゴラズ選民国はこれまで、他国から本格的な侵攻を受けた経験が無い、と言う情報が含まれていた。
「…………」
その事を思い出したセカトンは口を噤み、改めて眼下の惑星を見下ろす。
(愚かだな。余りにも……)
自分達は皇帝に選ばれた民である。
自分達の国家は絶対である。
異星人など恐れるに値しない。
皇帝への信仰さえあれば、決して敗れる事など無い。
そんな思想を愚直に信じ、疑う事すらしなかったコルゴラズの民に、セカトンは僅かな哀れみを覚えながらも、直ぐに思考を切り替えた。
今は感傷に浸っている場合ではない。
与えられた任務を完遂しなければならないのだ。
「全艦、攻撃用意。目標は惑星上の重要施設!」
「しかし、提督! 造船所や工場には、未だ多数の非戦闘員が残っている事を確認しております!」
「退去勧告は?」
「……先程、3度目の勧告を出しました」
「愚かな狂信者共め……」
セカトンは、溜め息を吐きそうになるのをぐっと堪えた。
既に3度も退去を勧告している。
それでも彼らは、造船所や工場から離れようとしなかった。
「船団長からは、手段を問わず徹底的に潰せと指示を受けている。既に退去する機会も十分に与えた。これ以上、奴らの茶番に付き合ってやる必要は無い」
セカトンは眼前の惑星を睨み付けながら、命令を下した。
「――攻撃を開始せよ」
命令が発せられた瞬間、第1合同艦隊の全艦が一斉に動き出した。
艦首が僅かに傾き、惑星上に存在する無数の軍事施設へ砲が向けられる。
その砲口から放たれた幾筋もの橙色の閃光が、漆黒の宇宙を切り裂きながら惑星へ向かう。
無数の陽電子ビームが大気圏を貫き、地表に立ち並ぶ巨大造船所へ次々と突き刺さる。
建造途中だった艦艇がドックごと吹き飛び、巨大なクレーンや建造設備が赤熱しながら崩れ落ちていく。
続いて放たれた大量の反物質ミサイルが、大気圏へ次々と突入。
工業地帯へ着弾した瞬間、凄まじい閃光と共に巨大な爆発が巻き起こった。
工場群が地面ごと抉り取られ、巨大な火球が次々と地表へ膨れ上がる。
神聖コルゴラズ選民国の大艦隊を生み出し、維持し続けて来た軍需生産拠点が今、猛烈な砲爆撃によって破壊され始めていた。
「セカトン提督! 第3合同艦隊のリカーナ少将から通信が入っています」
「分かった。メインスクリーンに繋げ」
通信士からの報告を受け、セカトンは僅かに眉を上げ指示を出した。
(この様子なら、向こうも似たような事になっているんだろうな)
程なくして通信が繋がり、メインスクリーンに敬礼するリカーナの姿が映し出される。
『お疲れ様です、セカトン中将。そちらの作戦遂行状況を確認したく、ご連絡しました』
「こちらは今、惑星への攻撃を開始した所だ。ああ、輸送船団の方は1隻残らず沈めておいた。そちらは?」
『既に作戦目標を達成し、現在は残敵の掃討を行っている真っ最中です』
「と言う事は、第3合同艦隊も大した抵抗を受けなかった訳か」
予想が当たった事に、セカトンは僅かに笑みを浮かべる。
『「も」と言う事は……そちらも同じでしたか』
「拍子抜けする程にな」
それから2人は、互いの戦況について情報を共有し始める。
第3合同艦隊も第1合同艦隊と同様、まともな妨害や迎撃を受ける事なく、目標としていた鉱山惑星への爆撃を完遂していた。
『こちらでは、爆撃が始まってから漸く迎撃機が上がり始める有様でした。こういうのを、平和ボケと言うのでしょうか』
「それも有るだろうが……一番の原因は、連中の信仰かもしれんな」
セカトンは、メインスクリーンに映るリカーナから視線を外し、攻撃によって燃え上がる軍需生産惑星を見つめながら続ける。
「自分達は皇帝に選ばれた民であり、絶対に敗北しない。異星人如きが、自分達の領域へ攻め込んで来る筈が無い。本気でそう信じていたのだとすれば、この有様にも納得がいく」
『信仰によって、敵から攻め込まれる可能性そのものを考えなくなった、と?』
「恐らくな。今まで一度も本格的な侵攻を受けた経験が無い事も、それに拍車を掛けたんだろう」
自分達は攻める側。
異星人は滅ぼされる側。
その関係が覆される可能性など、最初から考えてすらいなかったのだ。
その傲慢とも言える思い込みの代償を、神聖コルゴラズ選民国は支払う事となった。
***
『全機、タイタンフォールスタンバイ!』
強襲揚陸艦アイアンフレイムの格納庫に、ペルマーノの声が響き渡る。
直後、艦底のハッチが開放。
降下カタパルトに吊り下げられていたタイタンが、眼下に広がる惑星コルゴラズへ向け、次々と射出されていった。
彼らの真下に存在するのは、今回の破壊目標である巨大な黒いピラミッド状施設。
その周囲には、施設を取り囲むように無数の円錐状の巨塔が建ち並んでいた。
しかし、その大半は既に原形を留めていない。
降下作戦に先立って行われた3隻のアイアンフレイム級による艦砲射撃によって、巨塔の多くが砕かれ、周囲一帯は瓦礫の山と化していた。
施設周辺に展開していたコルゴラズ兵も、その殆どが砲撃によって吹き飛ばされるか、崩れ落ちた瓦礫の下敷きとなっている。
中には運良く砲撃と瓦礫の雨を生き延びた兵士も居た。
だが――。
彼らの目の前へ、凄まじい衝撃と共に鋼鉄の巨人達が次々と降り立つ。
コルゴラズの兵士達は、生き残った事を喜ぶ暇すら与えられぬまま、タイタンによって無惨な肉片へと変えられていった。
「クソッ! 俺たちゃ移乗戦闘員だろ! 何で惑星に降りて戦わなきゃならねぇんだ!!」
「ぼやくな、二等兵。行く先が惑星だろうと、敵の船やステーションへ乗り込んで、ぶちのめしに行くのと大して変わらん」
タイタン達が暴れ回る地上へ向け、今度は各強襲揚陸艦から歩兵用降下ポッドが次々と射出される。
その内部に乗っているのは、ロボット兵ではなく生身の兵士達だ。
ゼクトル船団の主力歩兵は、スペクターを始めとするロボット兵が大半を占めている。
だが、生身の兵士が存在しない訳ではない。
タイタンパイロットは勿論の事、敵艦やステーションへの突入を主任務とする移乗戦闘員もまた、その全てが生身の兵士によって構成されていた。
ロボット兵は非常に使い勝手が良い。
製造も維持も容易で、個体差も殆ど無く、製造された時点から一定以上の戦闘能力を確実に発揮する。
疲労する事も無ければ、恐怖で動けなくなる事も無い。
命令された作戦を、命令された通りに遂行する。
兵士として考えれば、これ程便利な存在も無いだろう。
しかし、臨機応変な対応が求められる状況では、ロボット兵だけでは対応し切れない場面も多々存在していた。
高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する。
愚かな考えかも知れないが、何が起こるか分からない戦場では、そうした柔軟性が何より重要となる。
完璧な作戦を立てようとも、十分な補給を用意しようとも、優れた装備を揃えようとも、たった1つの想定外によって、戦況が一変する事など幾らでも有り得る。
そんな時、予め組まれたプログラムと命令に従って行動する機械だけでは、十分に対応し切れない。
だが、人間は違う。
目の前で何が起きているのかを自ら考え、判断し、時には与えられた命令から外れてでも、その場に適した行動を取る事が出来る。
無論、全ての人間が常に正しい判断を下せる訳ではない。
それでも想定外の事態に直面した時、自ら考えて対応する能力において、人間は未だ機械を上回っていた。
故に。
どれ程ロボット兵が発達しようとも。
どれ程戦場の無人化が進もうとも。
戦場から、人が完全に消える事は無い。
「着地まで10秒!」
多数の4人乗り歩兵用降下ポッドが大気圏を突破し、轟音を響かせながら降下。
次々と瓦礫に覆われた地表へ突き刺さった。
「ハッチを開けろ! 行け! 行け! 行け!!」
「隊列を崩すな! 前方に注意!」
ハッチが勢い良く開き、白灰色を基調とした戦闘服に身を包む兵士達が一斉に飛び出す。
瓦礫や建造物の残骸を遮蔽物にしながら、素早く周囲の状況を確認していく。
「粗方くたばってるが、まだ残ってるな。輸送機が降りられるよう、さっさと片付けるぞ!」
周囲では、先行して降下したタイタン達が暴れ回っている。
コルゴラズ兵の多くは、その巨体へ攻撃を集中させており、背後へ降下した移乗戦闘員達の存在に気付いていない。
V-47フラットラインとスピットファイアLMGから放たれたエネルギー弾が、無防備な背中へ次々と突き刺さった。
「今更気付いたのか? 何もかも遅過ぎる。来世からやり直せ」
銃声に気付き、慌てて振り返ったコルゴラズ兵。
しかし、その時には既に遅い。
放たれた1発のエネルギー弾が頭部を撃ち抜き、その兵士は力なく地面へ崩れ落ちた。
「戦車だ! まだ何両か生きてる奴が居るぞ!」
兵士の叫びと同時に、瓦礫の山が大きく動く。
大量の瓦礫を押し退け、黒ずんだ紫色の巨体が姿を現した。
幅広く重厚な車体。
その中央には、丸みを帯びた巨大な主砲塔。
更に車体前後には、合計4基の小型副砲塔が配置されている。
各砲塔が一斉に旋回し、緑色に輝くプラズマ弾を移乗戦闘員達へ吐き出した。
「散開!!」
「チャージライフルだ! チャージライフルを使え!」
聖地を侵す外敵を排除すべく、コルゴラズ戦車が巨体を震わせながら瓦礫の中を突き進む。
それに対し、移乗戦闘員達も即座に反撃。
チャージライフルを構えた兵士達が一斉に照準を合わせ、エネルギーを溜める。
「食いやがれ!」
数十本もの橙色に輝く荷電ビームが放たれ、戦車の正面装甲へ集中して突き刺さった。
数秒の間を置いて、爆発。
巨大な主砲塔が根元から吹き飛び、回転しながら瓦礫の向こうへ落下し、残された車体から炎が噴き上がった。
「流石は対タイタン用に作られた武器だ。シールドを張ってない戦車なら余裕だぜ!」
チャージライフルを担いだ兵士達は、未だ動きを止めていない別の敵戦車へ再び狙いを定める。
他の移乗戦闘員達は周囲に散らばるコルゴラズ兵を次々と排除していく。
戦闘開始から数分も経たない内に、周辺一帯の掃討が完了した。
「着陸地点の安全を確保! 輸送機が来るぞ。周囲の警戒を怠るな!」
兵士達が警戒態勢を取る中、上空から重低音が響き始める。
軌道上に待機していた強襲揚陸艦から、フロントランナー兵員輸送機が次々と降下し始めたのだ。
その腹部には、牽引ビームによって吊り下げられた、戦車や装甲車の姿が見えた。
「へっへっへ…漸く、こっちの戦車部隊のご登場だぜ」
輸送機が高度を落とし、地表すれすれまで接近。
牽引ビームが解除され、巨大な車体が重々しい音を響かせながら地面へ降ろされていく。
ゼクトル船団の新型主力戦車――チェンラルノ3型戦車が、惑星コルゴラズの大地を踏み締める。
『待たせたな。敵の戦車は残っているか? 全部吹き飛ばしてやる!』
「随分とやる気だな。瓦礫の山になった市街地から、数両が接近中のようだ。対処を頼む」
『了解! こっちに任せろ!』
チェンラルノ3型の砲塔が旋回し、170mmプラズマレールガンの砲身を敵戦車が接近している方角へ向ける。
重力制御装置により、重厚な車体からは想像出来ないほど軽快に加速し、瓦礫の散乱する市街地へと走り出した。
それに続き、兵員輸送用のヴァロサウ2型6輪装甲車も次々と展開していく。
「よし、俺達も行くぞ! 装甲車に乗り込め!」
「「「了解!」」」
移乗戦闘員達がヴァロサウ2型へ駆け寄り、後部兵員室へ次々と乗り込んでいく。
先行するタイタン。
その後を追うチェンラルノ3型戦車。
更に、歩兵を満載したヴァロサウ2型装甲車。
戦力を整えたゼクトル船団の地上部隊は、惑星コルゴラズの中枢――黒き王宮へ向け、本格的な進撃を開始した。
移乗戦闘員の服装は、タイタンフォール2のIMC海兵隊みたいなのを想像してます。
ちな、携帯型シールド発生装置やらエグゾスーツ、ナノマシンに脳内インプラント等で強化され、戦闘力はスペクターと同等程度にはなってます。