ガトランティスとの戦闘から2週間。
我々は、天の川銀河ペルセウス腕にて、勢力拡大のための資源調達と、拠点となる星系の探索をしようとしていた。
たが探索に入る前に、前回の戦闘を経て、単艦行動はリスクが高すぎると判断した。
そのため、新たに4隻の新型艦を建造。
今は、その新造艦の試運転している真っ最中だ。
クロスボウ級フリゲート艦
全長396m、全幅150m、全高104m。
この世界ではヤマトを越す大型艦だが、Avorionでは小型艦に分類される。
居住区は252名分用意。
が、この艦は整備士4名、技術者4名の計8名で運用可能なので、ほぼ使われる事はない。
...もしかしたら、人を乗せるかもしれないと考え増設した。
それに、使い道は色々と有るし無駄にはならない筈だ。
主機関は勿論「アヴォリオンジェネレータ」を搭載。
武装はピッケル級の物を小型化した。
* 120cm連装陽電子砲 ×8門
* 18連装小型反物質ミサイル発射機 ×2基
* 100mm連装対空レーザーガトリング砲 ×8基
* 魚雷発射管 ×6門
主砲の120cm陽電子砲はガトランティス相手なら大体の艦は一撃で撃沈可能、奇襲されない限り負ける様なことはない。
機動力もピッケル以上だ、量子魚雷が飛んできても容易に回避できる。
シールド発生装置と維持フィールド発生を搭載し、2mのトリニウム製の装甲を施した。
被弾したとしても簡単には沈まない。
それぞれ、
1番艦クロスボウ、
2番艦ブロードソード
3番艦スピア
4番艦アックス
と名付けた。
拠点を作り終えたら大量建造する予定なので、艦名は番号で呼称する事になるかもしれない。
俺は一番艦のクロスボウに乗り込み、4隻による艦隊行動試験を行っていたのだが。
「やはり、ロボットだけの艦隊は動きが硬いな」
「仕方がありません。彼らは『優秀な道具』であっても『指揮官』ではありませんから」
ナビィの言う通りだ。
随伴する3隻のクロスボウ級は、お世辞にも柔軟とは言えない動きを見せていた。
全艦がまったく同じ動きで主砲の照準を合わせ、一糸乱れぬ射撃で標的の小惑星を破壊。
それから、まったく同じ動きで主砲を下ろし、まったく同じ動きで艦を回頭し、まったく同じタイミングで標的撃破の報告を行ってくる。
ナムアビダブツ!
何という統率力か!
その統率力も統率する者が居なければ意味が無い。
これじゃただの精密機械だ。
戦う船じゃない。
横並びの砲撃戦なら無敵だろうが、乱戦になれば脆いだろう。
「指揮官タイプのマーヴィンは作らないのですか?」
「技術的には可能だが、あまりに高度な自我を持たせて、このブラックな労働環境に反乱を起こされても困るからな」
マーヴィン達を休み無く働かせている現状に間違いなくブチギレるだろう。
「はぁ、どっかに野生の艦長でも落ちてないかなぁ」
「宇宙に落ちてたら、初期の我々見たく漂流中ですよそれ」
心の奥底へ仕舞い込んだ嫌な記憶を呼び出すんじゃないよ。
***
一通りの試運転を終え、本格的な拠点探しの旅に出た。
しかし、非常に困難な旅となるだろう。
「水・酸素・食料の確保が可能」「鉱物資源が豊富」「他文明から500光年以上離れている」この3つの条件が揃った星系。
つまり、第二の太陽系を探すようなものだ。
せめて一ヶ月で見つかってほしい物だと、味のしない栄養バーを握りながら切実に願う。
しかし、難航するかと思われたが、幸運は意外なほど早く訪れた。
見つかったのは、地球とほぼ同等の酸素濃度を持つ熱帯型惑星。
大陸一面に深い緑が広がり、スキャン結果では水や食用可能な植物も多数確認された。
文明の痕跡も皆無。
「ついに、あの味のしない栄養バーから解放されるのか!」
喜びのあまり小一時間ほど舞い上がった後、俺は即座に調査を命じた。
「ナビィ、探査型マーヴィンをドロップポッドで降下させろ! 地上にトランスポーターを設置次第、ドローンと追加人員を送り込むぞ!」
「了解です! 探査型マーヴィン12機を惑星に送ります!降下準備完了。降下開始!」
ピッケルとクロスボウには着陸脚がないため、軌道上で待機する。
俺は艦長席に深く座り、一面緑の地上からの吉報を待った。
だが、3分も経たずに。
「探査型マーヴィン隊、全滅シマシタ」
オペレーター担当のマーヴィンの無慈悲な報告に、俺は椅子からずり落ちた。
「ぜ、全滅!?12機のマーヴィンが全滅!?3分経たずにか!?」
「ドロップポッドから出た瞬間に、やられた様です」
「探索用に装甲を厚めにして、生身の人間なら一撃で殺せる武装を装備させたマーヴィンが3分で全滅!?」
ふざけんな!
何が居んねんこの惑星!
「どうされますか、サワミヤ艦長。……諦めますか?」
「今更、諦められるか! 飯と水がかかってるんだ!」
下にいるのが何者だろうと知ったことか。
俺の技術チートを舐めるなよ。
***
地上に降り立った探査隊が瞬殺された理由――その正体を確認した俺は、思わず納得の声を漏らした。
「なるほど。これは確かに、マーヴィンでは荷が重いわけだ」
モニターに映し出されているのは、緑色の地獄のような光景だ。
人の腕ほどもある太い蔓がのたうち回り、牛を丸呑みにできそうな巨大なハエトリグサが口を広げ、ウツボカズラに似た植物が猛烈な酸を吹き出している。
まさに、B級モンスターパニック映画の世界そのもの。
「スペクター隊、前進。降下地点の脅威を排除せよ」
俺の命令と共に、ドロップポッドのハッチが跳ね上がる。
中から飛び出したのは、製造されたばかりの戦闘用ロボット兵。
マーヴィンよりも一回り大きく、無機質な白い装甲と角張った頭部が特徴的な、新たな金属の兵士。
BRD-01 自動歩兵
「スペクター(Spectre)」
『タイタンフォール2』で、多彩な武装を使いこなし、10メートル以上の崖を軽々と踏破する跳躍力を見せつけた、あのモブ敵の精鋭兵をモデルにしている。
もちろん、中身は俺が独自に強化した別物だ。
基本フレームはマーヴィンと共通だが、装甲を大幅に増強。
さらに小型の「シールド発生装置」と「維持フィールド発生装置」を内蔵し、植物たちの酸や物理攻撃をものともしない、鉄壁の耐久性を与えた。
武装にもこだわり。
ブルパップ式アサルトライフル『V-47 フラットライン』の外見を模しつつ、中身は実弾ではなく、高火力のエネルギー弾を連射できるよう改造した特注品を配備。
「さあ行け、スペクター隊! 探査型マーヴィンたちの無念を晴らしてこい!」
俺は高笑いと共に、追加のドロップポッドを次々と投下する。
地上に展開したスペクターは、瞬く間に40機に達した。
植物共に教えてやる。
圧倒的な「質」と「物量」がもたらす、真の恐怖という物を。
ドロップポッドが地表に激突し、爆風と共にハッチが吹き飛ぶ。
その瞬間、獲物の到来を待ち構えていた無数の蔓が、ポッドへと殺到する。
だが、そこから飛び出したのは餌ではない。
「ターゲット確認。掃討ヲ開始」
先頭のスペクターが、迫りくる蔓を空中で掴み取り、改造されたフラットラインの銃口を蔓の根元へ突きつけ発砲。
放たれた橙色のエネルギー弾が、植物を焼き切り、切断面からは緑色の体液が噴き出す。
「凄まじい戦闘力だ」
笑みを浮かべながらモニターを凝視する。
巨大なウツボカズラがスペクターの一団に向けて、岩をも溶かす強酸の奔流を浴びせるが、酸性の液体はシールドに触れた瞬間に蒸発し、装甲には傷一つ付かない。
スペクター隊は機械的な正確さで散開し、それぞれの敵へ向かう。
ある機体は、牛をも呑み込む巨大ハエトリグサの口内へ、走り抜けざまにプラズマグレネードを放り込む。
内部から爆発した植物が、無残な肉片となって周囲に飛び散った。
またある機体は、脅威的な跳躍力を発揮。
30メートルは有る巨木の枝から襲いかかる食人植物に対し、垂直に跳躍。
空中でフラットラインを連射し、着地する頃にはその植物を木片に変えていた。
「サワミヤ艦長、降下地点周辺のスキャンが完了いたしました!」
「よろしい、地上のスペクター隊とデータリンク。邪魔な植物を一掃しろ」
40機のスペクターが円陣を組み、外側に向けてエネルギー弾の嵐を叩きつけた。
地獄のような森にフラットラインの演奏が響き渡る。
蠢いていた蔓は細切れにされ、酸を吐く花々は焼き払われ、巨大な食人植物は根こそぎ粉砕されていく。
数分前まで緑色の地獄だったその場所は、今やスペクターたちが冷徹に管理する安全圏へと変貌していた。
「...さて、ナビィ。更地になったところにトランスポーターを設置してくれ」
モニター越しに見える、焦げた植物の山と、その中心で銃を構え直す白い機械の兵士たち。
その光景に俺は、顔を引きつらせ、完全にやり過ぎたなぁと思いつつ調査を命じた。
何で俺は宇宙戦艦ヤマトの世界で植物相手に無双する話しを書いてるの?