羂索?ああ、さっき蟲の餌にしたよ。   作:童慈

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 まだ誰か残っているか? (社畜の)死体だけです。
 コマンドー部隊(歴戦の社畜)を再編したい。君さえ良ければ。
 今月で(80時間残業)最後です。
 残業に次ぐ残業。病み上がりには辛すぎる。
 遅くなり申し訳ありません。


蟲の蠢動

 やあ、みんな。更に1年経って中1になった蟲蔵創夜だよ。

 

 テンションが低い?いやいやそんな事はないですよ。後1年でメロンパンを抹殺できると思うと、ほとばしるパトスが身から溢れない様に必死なのです。

 

 メロンパンへの殺意が目標を直前にして高まりすぎたせいか呪力が練りに練られ呪力タンクになりそうなほどです。

 

 「ポッポ…ポッ!?」

 

 この1年は最後の戦力強化期間として意識しつつ、それ以上にメロンパンの情報の断絶に力を入れている。

 

 『ご報告いたします。我等が神よ。これまで手を替え品を替え続けた愚か者共、此度は伝書鳩なぞ使っておりました。はてさて次はどの様な手をこうじてくれるのやら。』

 

 俺の影から目を閉じた青年が現れる。背に3対の翅を持つドライが捕まえた伝書鳩をシメながら口元だけニコニコと屈託なく笑うその姿は猟奇的である。

 

 「総監部のシンパも情報送ろうと必死だよね。呪霊使って手紙送るのはわかるけど、この前のは笑ったな……。貴重な赤血操術で矢文送ろうとしたのは脳筋すぎでしょ。まあ、お陰で総監部のシンパをそこそこ片付けられたけど。」

 

 『あれは間抜けでしたな。まあ、保守的かつ伝統的なやり方と言えばそうでありますが、奴等伝統と因習を履き違えておりますゆえ。なんともまあ、見ているこちらが不快と申しましょうか。その上大した実力は無く、あるのは達者に回る口のみ。近頃はやれ自分は加茂家の重鎮やら総監部やら由緒ある血筋やら、力を誇るでもなく、努力を誇るでもなく、無言で殺しにも来ない意気地なしばかり。保守派で骨がありそうなのは我等が神が申した通り楽巌寺嘉伸殿ぐらいのもの。』

 

 ありとあらゆる情報をドライが封殺していた為何度かシンパの手下が調査しに来たが、全てドライにより爆殺又は忍殺されている。

 

 いや〜あれは酷かったな。真上の死角から翅を折りたたんで突っ込む様はバンカーバスターさながらであり、着弾と同時に命を懸けた縛りにより冥冥の神風(バードストライク)と同じ事を特級クラスのドライが行うそれは、呪術版バンカーバスター。相手は死ぬ。ヤング五条なら殺せそうな威力と言えばヤバさがわかるかな?

 

 鳩の脚から手紙を外し目を通す。え〜と何々?なんか呪霊を創る術式持ちがいるけど五条家が邪魔して拉致ができないと?へぇ〜。ドライに書いた奴の居場所を教えてもらうとちょうど良い位置だった為あの子の試運転相手になってもらおう。

 

 「ツェーン。お願いできるかな?」

 

 『了解!!汚物は消毒なり!!殲滅兵装(レッドライダー)展開!!』

 

 空間が歪み現れるのは全長50メートルにもなる超巨大百足。赤褐色の硬質な外骨格が展開され、伸長し形成される長大なバレル。青白い輝きを放ち、その力の解放を今か今かと待っている。

 

 『ツェーン。座標情報はここだ。上手く使え。』

 

 『座標軸確認!!目標補足!!呪力電磁投射砲(レールガン)発射(ファイア)!!』

 

 ボッ!!

 

 爆発音は無く、空気が押し出される小さな音が響く。

 

 『ヒット。標的は血煙になりました。良い腕です。ツェーン。』

 

 『弾道誤差−0.02mm!!エルフの協力があれば誤差は更に縮まると思われます!!』

 

 何が恐ろしいって約40kmの長長遠距離狙撃の誤差が僅か0.02mm。着弾まで大体20秒。最大射程は200km。総監部の位置さえわかれば1分足らずで殲滅できる。その上術式の都合上、残穢が残るのは発射地点のみ。その残穢も1日程度の時間経過で消滅する。窓の方々には悪いが完全犯罪が成立しているのだ。

 

 「ありがとうツェーン。エルフとの協働作戦は1年後にあるからそれを楽しみにしていてくれ。」

 

 『了解!!指揮官のご期待に沿える様奮闘いたします!!』

 

 10番目の呪蟲にして、最新の呪蟲。その術式は呪力による兵器の創造。ただの兵器ではない。文字通り呪力だけで製造される兵器群は全てが呪具であり当然呪霊にも通じる。構築術式の亜種に近いこの術式は兵器に対象を絞る事と呪力による強化で本来あり得ない性能の兵器を生産、展開する。

 

 先ほどのレールガンも本来なら砲身寿命が120発程度なのが呪力強化により10000発まで拡張されており、毎秒100発の連射が可能なのだが、こんなふざけた性能をしている故か、ツェーンはメチャクチャリソースを喰う。

 

 呪霊操術と違い、俺の術式は蟲達の維持にも多少のリソースを必要とする。呪蟲達は自ら呪力を生成できないが呪力を溜め込む事はできる。そして、呪蟲達が発動する術式には必ずリソースが必要となる。

 

 アインの術式は単発範囲型。一度の発動で全てを破壊する術式は必要最低限のリソースで最高効率の効果を生む。だが、天逆鉾や黒縄などで、術式を阻害されるとアインの術式は弱い。術式の性質上発動し、破壊するモノを視認、指定する手間がある以上、その間に術式を阻害されれば不発となる。

 

 だがツェーンの術式殲滅兵装(レッドライダー)はその兵装を、弾丸を、炸薬を、電力を、全て術式で生成し、それらを組み合わせる事で地獄を展開する。故に、一度術式を阻害された程度では、弾が1発減るだけ。炸薬のない空薬莢ができるだけ。秒間で数万にも及ぶ多重並列同時起動される術式を阻害する事は不可能に近いが、リソースの消費速度は手持ちの中で最大の大飯食らいのグラに並ぶ。

 

 ツェーンが本気で殲滅を行う場合、1分で特級呪霊に匹敵するリソースを消費する。今現在俺のリソースの貯蓄は特級呪霊100体分に相当するが、1〜10番の子達を総動員すればもって30分。

 

 メロンパンを仕留め、その後に出てくる呪霊共を滅殺する事を考えると40〜50分は欲しいのだ。

 

 「ドライ、悪いけどいつも通り呪霊を探してきてくれ。東京も入れていいから。」

 

 『なんと。東京も探索するのですか?………我等が神よ。貴方様が避けていた東京に行く理由、お察しいたしました。このドライ全力をもって神に捧げる贄を見つけて参ります。』

 

 今まで東京に行く事をしなかった俺が東京を探索範囲に入れた理由と覚悟を察したドライは恭しく頭を下げる。

 

 後一年、たった一年しか準備できない。原作を知っている身としても過剰と言える戦略を揃えた。だがそれでも安心できないのだ。

 

 「後、五条にこの手紙を渡して欲しいんだ。」

 

 『御意に。』

 

 手紙を受け取り影に溶け消えるドライ。正直この手は使いたくなかった。だが奴を殺さねばより多くの被害が出る。何より、俺が、俺自身がメロンパンに絶望を味わわせてやらねば気が済まない。

 

 「ごめんなぁ、五条。子供達。俺の我儘に付き合わせて。」

 

 『マスター。我等は貴方より生まれた存在。親の我儘に付き合うのも子の役目。何よりマスターは我等の我儘を許容してくれている。お互い様と言う事だ。』

 

 音も無く気配も無く、俺の後ろに立っていた誰か。年老いた老人の声が呪蟲達の代表として答える。

 

 「それでも、俺はお前達を子供と呼びながらお前達を自由にさせず、自らの願いのために消費しようとしている。罪悪感を抱かない方が難しい。」

 

 転生を認識し、術式に目覚めてから思い続けてきた。呪霊操術の様に野良の呪霊を使役するならば気兼ねなく使い潰せた。だが、だがだ、俺の呪蟲創術はこうあれかしと俺が望んだ形で呪蟲達が生まれる。

 

 自らが望み生んだ子供達をどうして使い潰せようか、どうして愛さずにいられようか。ましてや相手は羂索、どれほどの犠牲が出るかわからないことにつき合わせるのだ。下手を打てば皆死ぬ未来がまっている。

 

 『ふむ。認識の違いだなマスター。我等は元より戦い死ぬ為に生み出させる式神の様なモノ。それが自我を持つ自由を与えられ、子供の様に大事に扱われる。道具として生まれた我等としては、望外の喜びと言うモノ。私達を大切にしてくれるパパを、私達も大切にしたいの。』

 

 老人の声が、一瞬少女の声に変わる。そこに込められた感情は親愛。

 

 「お前は俺を恨む理由があるだろう。ツヴォルフ。」

 

 『我等を混ぜ合わせた事については別段恨んでいない。そも我等が明確な自我を持ったのは我等が我等になった時。生んでもらった事に感謝こそあれ、恨む理由にはならないぞマスター。ウジウジと何を悩んでやがる?俺らがいいって言ってんだから気にすんなや親父。』

 

 老人の声から今度はグレた青年の声。

 

 「ははは。そうやってはっきり言ってくれるお前が生まれたのは本当に運が良かったよ。ツヴォルフ。」

 

 『我等は上の兄弟姉妹程強くはないが、人が相手なら負ける事はないだろう。呪霊にもそう簡単に遅れはとらないさ。マスター、我等家族は貴方に使われることが皆幸せなのだ。故に気に病むな。何か不満があれば我等が家族の窓口として伝えよう。貴方は貴方の好きな様に生きなさいな、坊や。』

 

 最後に女性の声で一言告げて、誰かは消えた。優しく気遣いのできるツヴォルフが全力で呪霊の回収に向かったのだろう。ドライとは別ベクトルで数の暴力を誇るあの子は呪霊に対してそこまで強くない。特級と1級の間くらいの力があるから大丈夫だろうが心配だ。決して死ぬ事はないだろうが家族のために辛い事を率先してやる子だからな。

 

 「さて、親の俺も頑張るか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーside五条ー

 

 「はぁー。あの老害どもまとめて殺せねぇかな。ネチネチネチネチと蟲王の事について突っついてきやがって。」

 

 『その意見には同意する。』

 

 影が蠢き蟲王の配下のドライとか言う呪蟲が現れる。コイツの術式もかなりの無法。ありとあらゆる影を自らとする術式。初見でやり合った時は影から同一存在の分身を数百体同時に顕現させ、命を懸けた縛りで自爆特攻してきた時は本気で焦った。無限をあんなゴリ押しで突破されたのは初めての経験だったぜ。

 

 「んで、今日は何のよう?約束の日にはまだ早いけど。」

 

 『我等が神より手紙を渡すよう言われたのでな。有り難く受け取るがいい。』

 

 「はいはい、ありがとうございます。」

 

 形だけだが感謝を口にする。コイツ蟲王が関わる事で馬鹿にしたり笑ったりするとガチで殺しにくるから軽く流すのが会話のコツだと最近気づいた。

 

 渡された手紙に目を通す。その内容を見た俺は思わず口を歪めて笑う。

 

 「くく、やっぱりアイツ、イカれてんな。」

 

 『そうか死にたくなったのか。おとなしくていろ、一撃で粉砕してやる。』

 

 「おいおい、俺を殺すとお前の主人に返答が返せないぞ?」

 

 『チッ。それで、お前はなんと返すのだ?』

 

 「分かったって伝えといて。後楽しみにしてるとも。」

 

 『了解した。後日アインとツヴォルフを連れてお礼参りに来てやるから感謝しろ小僧。』

 

 「ちょっと待て!?その組み合わせは俺を殺す気……ってもういねぇ。」

 

 部屋の中で仰向けになりながらくつくつと笑う。

 

 「1年後に標的殺すから見に来るかなんて聞くやつはイカれてんだろ。ほんと退屈させない奴だよ。」

 

 その後謎にツボって爆笑していると親父が心配して見に来たのは予想外だった。




 術式紹介『悪魔と踊る影法師』(アケディア)
 人間の一生は彷徨い歩く影法師。哀れな道化に過ぎぬ。
 ありとあらゆるモノの影を自らとする術式。影から影へ移動する事も、影自体を武器にする事も、影から同一存在を生み出す事も可能。
 ありとあらゆる場所に潜み、隠れ、影と共に生きる。
 術式使用上のデメリットとして、相手に術式効果を見抜かれ、答え合わせを行われると術式が使用不可になる為、ドライ本人は派手に動き回り、分身の術式と偽っている。術式の開示による強化はできないが、相手が術式の効果を勘違いして答え合わせを行い、答えが違う時は術式が強化される。
 その性質上、人目につかないところでの長期間潜伏などに無類の強さを発揮するのだが本人の性格上、神の為なら潜伏やら暗殺は喜んでやるが、自ら飛び回っている方が好きなタイプ。そのせいか総監部からは分身の術式と勘違いされている。
 術式が使用不可になってもその段階で出している分身達は消えるわけではないので空から特級クラス神風が術式を見抜いたモノを殺すまで降り注ぎ続ける。
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