最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない訳・前編

「私の前であいつの話はしないで……」

 

 ミリアの綺麗な顔が嫌悪で歪んだ。

 何時も俺にとても優しくしてくれる彼女からは想像できない表情だ。

 

 その言葉に俺は内心、滝のような涙を流した。

 

 

 

「彼の事は……あまり口にしたくはないな……」

 

 アレックスは渋い顔をして目を閉じた。

 どんな時でも朗らかに笑い、皆を安心させてくれるギルドのエースである彼からは想像できない表情だ。

 

 その言葉に俺は内心、滝のような涙を流した。

 

 

 どうしてこうなった!!

 何故こうもこの二人に嫌われているのだろうか!?

 

 否!!

 

 この二人だけではない。

 街の人たちにリサーチした所、約八割方に色よい返事は貰えなかった!

 

 なんでこんなに嫌われてるんだ!!

 

───黒騎士(おれ)は!!!

 

 

 俺がこのファンタジーな世界に転生したのは、今から約二年前の事だ。

 

 学校からの下校途中、暴走したトラックに轢かれそうになっている子供を助けて死ぬという滅茶苦茶ベタな死に方をした俺は、目が覚めたら知らない湖にいた。

 

 そこで出会った湖の女神さまに、貴方が落とした命は金の命?銀の命?それとも普通の命?と言う訳の分からない質問をされ咄嗟に普通の命です、と答えると女神さまは大層感動して金と銀の命をくれた。

 

 いや普通の命くれよ。

 

 その後、俺はもう普通の命を持たないため元の世界には戻せないと女神様に言われ、その命に合う強大な世界に飛ばされる事となった。

 

 文句を言う暇もなくこの世界に飛ばされた俺は、右も左も分からず途方に暮れていたのだが突如モンスターに襲われるというハプニングに見舞われる事となる。

 

 その時、いつの間にか授かった力の使い方を直感で理解した俺は、黒いフルプレートの鎧とランスと盾を召喚しモンスターを一網打尽にした。

 

 圧倒的な力を得て調子に乗った俺は、恐れることなく向かってくるモンスターを狩りながら進んでいると、白銀のドラゴンと戦っている一団を見つけた。

 

 一団は白銀のドラゴン相手にかなりの劣勢を強いられている様だ。

俺は彼らに助太刀すべく白銀のドラゴンと戦った訳だがこのドラゴン、滅茶苦茶に強かった。

最強の力を得たと調子に乗っていた俺の鼻っ柱をへし折る様に猛攻を仕掛けてくるドラゴンに、俺は何度も死にかけた。

 

 激戦の末ドラゴンを打ち倒した俺だが、此処でドラゴンのいたちっぺを喰らう事になる。

 俺にテレパシーで何やら語り掛けてきたドラゴンだが、俺はドラゴン語が分からない為何を言ってるのか分からなかった。

 テレパシーが終わり頭に?が飛んでいる俺だったが、次の瞬間全身焼ける様な激痛が走った。

 

 居ても立っても居られない激痛に、俺は急いでその場から走り去った。

 何故だが直感で湖に入ればこの激痛から逃れられると思った俺は、急いで湖を探し出し鎧も衣服も脱ぎ捨て飛び込んだ。

 

 そこで俺は意識を失ってしまった……。

 

 

 彼女と出会った日の事は今でも鮮明に思い出せる。

 

 この世界の守り神でもある白銀の(エンシェント)ドラゴンが魔王によって操られているという情報を得て、ギルド仲間でありエースでもあるアレックス率いる「赤き戦団」と共に白銀の(エンシェント)ドラゴンを助けるべく聖なる森に入った私達。

 

 白銀の(エンシェント)ドラゴンを見つけ出し彼女を助けるべく戦っていた私達だったが、想定以上の抵抗に呪いを解除するための魔術師が戦闘不能になってしまった。

 

 撤退すらさせてくれない白銀の(エンシェント)ドラゴンの猛攻に、あわや壊滅まで追い込まれていた私達だが、そこで謎の漆黒の騎士に助けられた。

 

 漆黒のフルプレートの鎧を身に纏い、ランスと盾を持った黒い騎士は私達を守る様に白銀の(エンシェント)ドラゴンと戦った。

 

 そして私達では手の出しようの無い激しい戦いの末、黒騎士が止めを刺さんとランスをドラゴンに向ける。

 

「だめ!!!」

 

 咄嗟に止めようと声を上げるが、黒騎士は私の静止に耳を傾けることなくランスをドラゴンの心臓に突き立てた。

 そして白銀の(エンシェント)ドラゴンを殺されて呆然としている私達を一瞥する事もなくその場を走り去って行ったのだ。

 

 その後の事はあまり覚えていない。

 呆然とアレックス達と分かれ私はなぜか、聖なる森の湖のほとりに立っていた。

 

 暫く何をするわけでもなく湖を眺めていると、湖に揺られてほとりに流れ着いた少女を見つけた。

 

 その少女を見た時私は雷に打たれたかのような衝撃を受けた。

 

 白銀の長く美しい髪に人形の様に作りこまれた繊細な顔立ち。

 一糸まとわぬ白い体は見たことのないほど綺麗で美しい体つきだった。

 

 言葉を失い暫く動けなかったが、少女が少し震えて体を丸めたのを見て我に返った。

 急いで少女に近づき自身の上着を掛けてあげる。すると少女が目を覚ました。

 

「大丈夫?」

「───?」

 

 声をかけると少女は聞いたことのない言葉で私に語りかけた。

 鈴を鳴らすような美しい声色に一瞬また動けなくなるが、私はその時確信を得た。

 

 彼女は白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘なのだと。

 白銀の(エンシェント)ドラゴンは死期を悟ると命の湖に自身の分身として、新たな生命を生み出すという。そうして新たに生まれたのが彼女なのだろう。

 ドラゴンたちはドラゴンにしか分からない言語で会話をするというし、まず間違いないだろう。

 

 気が付くと私は彼女を強く抱きしめていた。

 腕の中で驚いて硬直する彼女を無視して更に強く抱きしめる。

 

 少女の親である白銀の(エンシェント)ドラゴンが魔王に操られた悲劇。

 そしてその彼女を助けることが出来なかった自分たちの無力さ。

 そんな彼女の命を、私達を守るためとはいえ奪った黒騎士への理不尽な怒り。

 そしてたった一人で残されてしまった少女への深い悲しみ。

 

 気が付くと私は少女を抱きしめながら涙を流していた。

 

 始めは硬直していた少女だが私が涙を流していることに気付いたのか、おずおずと優しく私の背を撫でる。

 その優しさに触れ、私は声を上げて泣いてしまったのだった。

 

 その後、私は彼女を保護する事を決めた。

 このままこの聖なる森で過ごすのが彼女にとって最適なのかもしれないが、事実彼女の親はこの森で魔王の手にかかったのだ。

 

 それに運命を感じた。

 自惚れかもしれないが、彼女の親である白銀の(エンシェント)ドラゴンの導きで私は命の湖に辿り着いた様に思えた。

 だからこのまま彼女を此処で放置するという選択肢は私には無かった。

 

「私についてきてくれる?」

「──────……」

 

 手をつなぎ、少女に確認を取る。

 知能が非常に高いドラゴンは人間の言葉を理解しているというが、どうやら彼女は生まれたばかりの様で人間の言葉をよく理解してはいなかった。

 

 それでも私の言っている意味が少し分かったのだろう。

 少し考えた後、こくりと可愛らしく頷くと私の手を握り返してくれた。

 

 そして彼女を街まで連れ出し、教会に保護を頼んだ。

 本当は私が保護したかったのだが、仕事柄彼女と四六時中共にいる事は出来ないし、何より彼女はこれからこの街に住むのだ。

 人間の言葉などを学ばなければいけない。

 

 それに私は戦争孤児で幼い頃はこの教会で過ごした。

 だから神父様とシスターの人柄はよく理解していた。

 

 神父様は元凄腕の冒険者で、今でも非常に屈強の戦士だ。だがその体格からは想像もできない程優しい人で、私も今でも父の様に慕っている。

 シスターはそんな神父様のよき理解者で、彼女もとても優しく大らかな女性だ。

 

 私は二人に他言無用で事情を説明し彼女の保護を頼んだ。

 二人は快く少女を受け入れてくれて新しい家族として迎え入れてくれた。

 

 その後、私は頻繁に彼女に会いに行った。

 私にとって彼女(コウ)は可愛い可愛い妹の様な存在になった。

 

 コウと言う名前は、彼女が自分を指さして初めてこちらに分かる言葉で名乗った時の名だ。

 コウはとても勉強熱心で、直ぐにたどたどしいが人間の言葉を理解し喋ることが出来た。

 他の孤児の子供たちとも直ぐに打ち解けて、皆に愛されているコウを見て私はここに連れてきて正解だったと強く思った。

 そして私に優しく微笑みかけてくれるコウを見るだけで、私は仕事の疲れなどいつも吹き飛んでいた。

 

 そんな穏やかな生活が何時までも続くと思っていた。

 

 

 

 彼女がこの街へ来て一年ほどたった時、私が普段使っている宿で寝ているとドアが慌ただしく叩かれた。

 

「ミリア!!大変だ!!コウちゃんが誘拐された!!!」

 

 全身の血の気が引くとはまさにこの事だろう。

 

 慌てて飛び起きコウを探すも、誘拐犯の足取りを掴むことは出来なかった。

 結局ギルドの仲間たちも協力してくれて、アレックスの指揮のもと皆でコウを探す。

 

 ようやく街の外れの港で人攫い達が、夜明けと共に船を出すという情報を入手した私達は急いで港へ向かった。

 

 そんな時だ。

 一年ぶりに奴に出会ったのは。

 

 闇に溶ける漆黒のフルプレートの鎧を身に纏った騎士は、コウを必死で探す私たちを嘲笑うかの様に私たちに語りかけた。

 

「あんな小娘一匹の為に随分と必死だな……」

 

 低くくぐもった声で私たちにそう言うと黒騎士は続けた。

 

「人攫い共は小娘一匹しか攫っていなかった様だ……随分とまぁ大した人攫いどもだったよ……」

「あんた!!コウは無事なんでしょうね!!?」

「コウ?ああ…あのつまらない小娘の事か。運のいい事に怪我一つしてない……」

「!!!───つまらない……?あの()の親を殺しといてよくも……!!!」

「………ほう?……覚えにないなぁ……」

 

 これ程の強さを持っている騎士ならば、コウが一年前殺害した白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘だということぐらい知っているだろう。

 

 だと言うのにこいつは……!!!

 

「この!!」

「ミリア!!今はコウちゃんが先決だろう!?」

 

 殴りかかろうとした私をアレックスが止める。

 そうだ、今はこんな奴に構っている暇などないのだ。

 

 気が付くと黒騎士は消えていた。

 私はそれを無視してコウの下へと急ぐ。

 

 でもはっきり分かったことがある。

 

 この先どんな事が起きようとも、私は絶対に黒騎士と分かり合うことは無いという事だ!!

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