最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第97話 勇者の魔の手(ミリヤ&ダン視点)

 勇者クロス率いるマフィア、ラ・ローザ・ネーラの攻撃は私が思っていた以上に激しかった。

 恐らくメンツを潰されない為なのだろうが……そんなクソみたいなメンツ、私には関係ない。

 

 そんな事より、早くコウを助けてあげないと……!!

 

 ダンの話では、クロスに捕まった奴隷たちは……調教と言う名の、酷い仕打ちを受けるらしい。

 

 何より恐ろしいのが……このスラムでも流行っているドラッグみたいだが、キャンディ型ドラッグ『ハッピー』。これを奴隷に摂取させて、クロスに依存させるらしい!!そんな事……コウにさせる訳には絶対にいかない!!!

 

 だから私は焦っていた。スラムの少年に助力を乞うほどに……!

 

 このスラム所か、この街の連中を私は信じてなんていない。間違いなくこの街はマフィアに掌握されているし、街の連中も皆、クロスに逆らう事なんて出来ないだろう。

 

 それはこの少年……ダンも同じ筈だ。

 だから私はダンの事も別に信じちゃいない。

 

 もしダンが裏切って、クロスの屋敷では無く別の所に案内して私を殺すつもりでも……逆に全員返り討ちにして、新たな情報を得ればいいだけの事なのだから……。

 

 でも……ダンは他の連中とは違う気もする。

 彼は共に暮らしていた、ソフィアという少女をクロスに連れ去られたと言った。

 あの時の目は……とても嘘をついている目には見えなかったからだ。

 

 だから……信頼はしないが、信用はしてみようと少し思った。

 

「キー……」

「……ふふ。大丈夫よ……キーちゃん」

 

 私の肩に止まり、私を心配して鳴くキーちゃんを撫でながら、私は軋む体に鞭を打って戦う。

 

 クロス達に襲われて、あのドラゴンに食べられそうになった時、私はキーちゃんの煙幕のお陰で難を逃れたのだが……そのまま崖から落ちてしまっていた。

 一応魔力で体は強化していたが……その時あちらこちら体を打ったみたいだ。もしかしたら骨とか折れてる所もあるかも知れないが……そんな事今の私に気にする暇はなかった。

 

 怪我なんてマリィと合流できれば治して貰えるし、何より怪我の回復を待っている間にコウにもしもの事があったら……そう思うと、体の痛みなど何の苦でもなかった。

 

 それに……エイシャとマリィは必ず生きている!!

 私が生き残れたんだ。あの二人が死んでるなんて……あり得ない!!

 

 そしてあの二人も、コウを救う為にクロスの元へ向かう筈だ!だから……私も彼らと合流する為にも、どれだけ体が痛もうと、クロスの元へ急ぐのである!!

 

 

「なあ!!ちょっと待ってくれ、ミリヤさん!!」

 

 私がマフィアの構成員をなぎ倒しながら進んでいると、後ろから追いかけて来ていたダンが私に待ったをかける。

 

「……なに?」

「急ぐのは解るけど……あんまりにも目立ちすぎだ!このままじゃ余計な戦いで体力消費しちまって、ソフィア達を助ける所じゃなくなるぞ!!」

 

 ……痛い所を突いてくる。

 

 確かに私の鬱憤晴らしも兼ねてマフィア達と戦っていたが、そろそろ無駄な体力を使っているんじゃないかと思っていた頃だった。

 

 だが……次々襲い掛かってくるマフィアを無視して素通りなんて出来ないし、結局のところどうしようも無い気がするのだが……。

 

「じゃあ……どうしろって言うのよ?」

 

 痛い所を突かれ、拗ねた様に言ってしまった私に、ダンは気にする様子もなく頷いて答えた。

 

「こっちに来てくれ!秘密の通路があるんだ!」

「……秘密の通路……?」

「ああ!……怪しいと思うかもしれねぇけど、絶対にそっちの方が安全だし……頼む!」

 

 どうしようかと少し迷っていると、少し遠くの方から喧しい声が響いてくる。

 恐らく……また私達を殺す為に、マフィアの連中が人数を集めて来たのだろう。

 

 奴らの相手を延々とするなんて、ダンの言う通りこれ以上は体力の無駄だ。

 

「はあ……。解ったわ。案内して」

「!!……ああ!!こっちだ!!」

 

 ため息をつき、私はダンを促す。

 ダンは大きく頷くと、私の先を走り始める。

 

 私はそれに……取り合えず黙ってついて行く。

 この先に待ち受けるのが、本当に秘密の道なのか、それとも罠なのかは解らないが……ともかく私は前に進むしかない……!

 

 コウ……待っててね……!お姉ちゃんがすぐに助けてあげるからね……!!

 

 その想いを胸に、私は唯々前に進むのである……!

 

 

 ミリヤさんを何とか説得して、俺は秘密の道へ急ぐ。

 

 正直どうミリヤさんを説得しようかと思っていたが……ミリヤさんが案外すんなり納得してくれて良かった。

 

 この人は怒りの雷だ。全てを震え上がらせる怒れる雷鳴……!!

 正直勇者クロスも恐ろしいが、このミリヤさんも十分それに匹敵するぐらい恐ろしい……! 

 

 そんなミリヤさんだが、物わかりが悪い訳でも頭が悪い訳でもない為、説明したらちゃんと解ってくれるのが救いだ。

 

 そして俺達は、俺と俺の友達しかしらない秘密の通路へと辿り着いた。

 

 ここはかつて坑道として使われていた通路なのだが、今は使われておらず、立ち入り禁止となっている通路だ。

 もちろんこんな場所、マフィアが知らない筈が無い。

 

 だが……マフィアの連中はここには寄り付かない。……それは何故か……。

 それは……この坑道を抜けた先に、勇者クロスの屋敷があるからだ。

 

 都心から少し離れた所にある勇者クロスの屋敷は、この坑道を抜けてすぐにあった。つまりこの坑道を通れば、スラムから直ぐに屋敷に行けるのだが……クロスはそれを大層嫌がり、一度この坑道を取り壊した。

 埋め戻しをさせて、更にはここを閉鎖した訳なのだが……実は頑張ればまだこの坑道は通れない訳ではないのだ。

 

 勿論行き先は完全に勇者クロスの屋敷という訳ではなくなっているどころか、ゴールは埋め立てられて無くなっているのだが……勇者クロスは知らなかったが、この坑道はいくつも行先が枝分かれしており、その行先の一つは、都心の外れ……つまり勇者クロスの屋敷から少し離れた場所になっていた。

 

 昔からこのスラムに住んでいるガキで、しかもマフィアとの関わりは殆ど無い連中しか知らない秘密の抜け道……。

 

 マフィアの連中はここに近づいたとバレるだけで、勇者クロスに殺される為、あえてこの場所に近づいたりはしない!だから……!!

 

「ミリヤさん……この先の道がかなり狭くなってるし、通りにくい所があるけど……ついて来てくれよ!」

「当たり前よ!さ!行くわよ!」

 

 俺達は勇者クロスの魔の手から逃れつつ屋敷に近づく為、埋め立てられて非常に狭くなっている坑道を進む。

 外からの明かりは無いのが、松明などを焚いても狭すぎて煙で危ないので……途中で拾った光石という、かつて坑道で使われていた光る石を片手に進む。

 

 全ては……ソフィア……!!君を助ける為……!!その想いを胸に、俺はひたすら狭い坑道を唯々前へ進むのであった……!

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