最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「こ……国王陛下!!黙って聞いてないで、何とか……何とかして下さい!!」
クロスが無様に取り乱しながら、国王に懇願する。
しかしそんなクロスに、国王は苦虫を噛み潰したような顔をして答えた。
「クロス君……何とかしてあげたいのは山々なのだが……「ほう?何とかしてあげたいのですか?」っひぃ!?……あ……いえ!!……君の行動は目に余る!!私も……我慢の限界だったのだよ!」
国王の言葉の途中にエイシャが鋭い指摘をすると、国王は顔を青くしてクロスをなじった。
その国王の言葉にクロスの顔色は更に悪くなるが、そんなクロスを鼻で嗤うとエイシャは更に畳みかける様に言った。
「この俺を襲ったのは本当に愚かだったな。これを理由に俺の国はお前の国に攻め込む口実を得た訳だ。我が国と貴様の国……俺とお前……戦ったらどうなるか、頭がお花畑なお前でも少しは想像がつくだろう?」
「う……ぐ!!」
「お前は俺には勝てないと悟っていた。だからジャバウォッキーを俺に差し向けたのだろうが……俺が驚いたその不意を突かなければ、あの程度のドラゴンでは俺を殺せないとお前も解っているだろう?………それともそれも解らない程に、お前は耄碌したのか?……クロス……!」
「う……ああ!?」
その瞬間エイシャから発される殺気に、クロスは尻もちをついてしまう。つまり……もう格付けは終了しているのだ。エイシャとクロスの。
ちなみに……今まで存在感を消して、黙って部屋の端で立っていた市長は、エイシャの殺気に立ったまま気絶し、国王は腰が抜けた様にガタガタと震えており、クロスの使用人の人は白目向いて倒れてしまった。
かく言う俺も、ソフィアと両手を取り合いカタカタと震えてしまう。
ギーツとの一件以来のエイシャの殺気だけど……怖いんだよ!!殺気浴びせられた当事者じゃなくても、ちびっちゃいそうになる程怖いからね!!?
俺達がカタカタと震えていると、不意に部屋の扉が開かれる。
「勇者様。お戯れはそれまでに……。まずは事を進めませんと……。このまま話を続けても、最早意味はありませんわ……」
「マリィ様!!」
入って来たのは、相変わらずの綺麗な黒髪な超絶美人の聖女様、マリィだった!!
マリィは俺に気付くと、安心したように息をつき、涙を浮かべて言った。
「ああ。コウ様……!ご無事で何よりですわ……!……!!?コウ様!?なんて魅力的な……ゲフンゲフン。なんて愛らしい……ゲフンゲフン。なんて、破廉恥な格好を……!お可哀そうに!」
「ま……マリィ様……あんまり見ないで下さいぃ……」
感動的な再会になりそうだったのに、いきなり血走った目で俺を凝視してきたマリィに、流石に俺も体を隠しながら言う。
もーーー!!ほんとこの格好どうにかしてほしいよ!!まじで!!!
「ああ!!申し訳ありません!!でも……本当に大丈夫ですか!?コウ様!勇者クロスに……何もされていませんか!?」
「あ……大丈夫です!まだ……何もされていません!」
「まだ!!?ということは……危なかったという事ですわね?でしたら……間に合って良かったです……!」
本当にね!!
エイシャとマリィのお陰で何とか俺の貞操は守られそうだ!!
マリィは俺に近寄ると、俺を強く抱きしめて言った。
「本当に遅くなって申し訳ありません……!もっと早く、コウ様をお救いしたかったのですが……!私達が至らないばかりに……!」
「何言ってるんですか!?二人が無事で……こうして来てくれただけで、嬉しいです!!ありがとうございます!!」
「………………っち」
俺とマリィは、お互い少し涙を流しながら、互いの無事を喜ぶ!
………ん?今舌打ちしなかった?ソフィアが……。気のせいかな??
そんな抱き合っている俺達を、エイシャは優しい表情で見ている。そして……少し表情を暗くして言った。
「感動の再会のところ済まない、コウ。実はまだミリヤが見つかっていないんだ。……あいつの事だから無事だとは思うが……」
あ!!
それなら多分大丈夫!!ミリヤは多分無事だから!!
そう言おうと、マリィから離れエイシャに向きなおった時……突然クロスが高笑いをした。
「ふはあはああはあああっはあははああはははああ!!!!」
え……狂った……?
「クロス……貴様……」
「あああえへっへあああかかあははああははははは!!!ばばばばばははあっはははははああ!!!!!」
マジで狂ったように高笑いを始めるクロスに、部屋の人間達(気絶している人を除く)はドン引きする。
そんな俺達を無視して、しばらく狂ったように高笑いをしていたクロスだが、急に冷静になったのか、スンっと静かになる。
うわぁ!いきなり落ち着くな!
「エイシャ……聖女様……君達には……本当にやられたよ……」
「……勇者クロス。もう諦めになって下さい……。勝負はつきましたわ……」
諭す様に言うマリィに、クロスはカッと目を見開き言った。
「勝負はついた……??何を言ってるんだ!!?勝負は……これからだろう!!?」
そしてクロスは俺の方を見ると、手を差し出してちょっとした呪文?を唱える。
すると……突然俺の首輪から、大量の電気が俺に流れていた!!!
「あぐう!!!?」
「い……あ?」
「コウ様!!?」
「コウ!!」
俺とソフィアが突然の電流に倒れる。……気絶こそしなかったものの、滅茶苦茶痛い!!!首から体に掛けて、至る所まで……激痛が走って動けない!!!
「あははあぁぁあはああはは!!!奴隷が逆らった時用の電流さぁあ!!!流石に殺せはしないけど、死ぬほど痛いらしいよぉ!!!?しかもその首輪は黒王石で出来ている!!!簡単には壊せないよぉ!!?」
「クロス!!!貴様!!!」
「おっと!!!私なんかに構ってていいのかい!!?エイシャ!!!愛しのコウくんが……苦しんでるよ!!?それに……私の物にならないのならぁああああ!!!」
その言葉と共に、更に俺の体に電流が奔る!!!
痛い痛い痛いいいい!!?死ぬほど痛いよぉ!!!
涙を流しながらのたうち回る俺に、エイシャが気を取られた隙に……クロスは窓ガラスを突き破り外へと出ながら叫ぶ!
「はははははははああはははははっはあはは!!!勝負はこれからだと言っただろう!!!?エイシャぁああああ!!!こおおい!!ジャバウォッキーーーーーー!!!!」
次の瞬間雲が割れ、そこからあの黒いドラゴンが姿を現す。そして……!
「私の邪魔をするものは……皆纏めて死んじまえよぉ!!!つかえない国王も一緒にさぁあ!!殺れぇ!!!ジャバウォッキーーーーーーぃぃぃぃ!!!」
クロスの叫びと共に、ドラゴンの炎と雷を纏ったブレスが、市長の屋敷目掛けて吐き出される。
俺はそれを、床で倒れ伏して遠目に見ながら……意識を手放すのであった……。