最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第102話 魔竜ジャバウォッキー(勇者エイシャ視点)

 最初の襲撃の時、クロスが召喚したジャバウォッキーに、不覚にも驚いて硬直してしまった。

 

 それは何故か?

 

 まずドラゴンというのは、基本的に孤高でプライドの高い存在で、ワイバーンなどといった少し小さな飛竜でもない限り、人間の指示に従ったりはしない。

 

 そしてドラゴンは非常に希少種なのだ。

 世界中探しても、簡単に見つかる存在ではないし、ましてや人間に友好的な訳でもない。

 

 千年前の魔族と人間との戦争でも、ドラゴンは白銀の(エンシェント)ドラゴンとその一派を除き、基本的に魔族側に立っていた。

 だが、それは決して魔族に下ったという訳ではなく、人間と魔族ならばまだ魔族の方がマシ……という理由だったらしい。……この話は先代白銀の(エンシェント)ドラゴンから聞いた。

 

 基本的にドラゴンは人間側の存在ではない。かと言って魔族側かと言われるとそういう訳でもなく、今のドラゴン達は少し魔族よりの中立を保っているらしい。

 

 そして……そんなドラゴンの中でも有名なドラゴンの一体が、魔竜ジャバウォッキーだ……。

 

 千年前の剣の勇者と死闘を繰り広げて、結局決着が付かずに終わったと言われる伝説のドラゴン。

 千年前は自分と互角に戦い抜いた剣の勇者を称えて、戦争からその身を引いたと言われているが……なぜそのドラゴンが今更現れたのか。

 

 魔竜ジャバウォッキーの特徴は、黒く大きなドラゴンであったとしか伝承に残っていないので、正直はっきりとは解らない。

 故にクロスが適当なドラゴンをジャバウォッキーと呼び従えている可能性は十分にあるが……どちらにしろ、ドラゴンを従えていることに他ならない事が本来あり得ないのだ。

 

 だから驚きのあまり……あの瞬間完全に不覚を取ってしまったのだ……!!

 

 

 あの時俺は魔竜のブレスから逃れる為に、一時的に瞬間移動をして難を逃れた。

 そして直ぐにコウを連れ去ったクロスを追おうとして……俺と同じように魔竜のブレスを食らい、何とか結界を張って耐えたが、ブレスの勢いで大きく弾き飛ばされてしまっていたマリフィセントを見つけた。

 

 マリフィセントは酷く遠くまで吹き飛ばされた勢いで、強く樹に体を打ち気絶してしまっていたので、流石に放っていく訳にもいかず、俺は彼女が目を覚ますまで介抱した。

 

 マリフィセントが目を覚ますと、今度は俺はミリヤを探す為奔走したが……終ぞミリヤを見つけ出す事は出来なかった……。

 

 一晩探しても見つける事が出来なかった為、ミリヤの捜索を諦めたが……まぁ彼女もああ見えて逞しい。コウを置いて簡単に死ぬことは無いだろうと、無理やり納得してミリヤの捜索を打ち切る。

 

 そして直ぐにでもコウの元へ行こうとして……マリフィセントに止められてしまった。

 

 マリフィセント曰く、クロスはこの国で名を馳せた貴族、エンデヴァ伯爵家の長男であり、尚且つこの国が誇る勇者でもある。

 奴は王族との繋がりも強く、今自分たちがあの男の所に行けば、俺達が逆族としてこの国に追われてしまう事になるかもしれない。

そうすればコウを助ける所か、益々コウから遠ざかってしまう可能性すらある。

 

 だからまずは、奴がぐうの音も出ない程に外堀を埋めてから、奴と公式に面と向かって相対する必要があるのだと言った。

 幸い自分たちは被害者で、しかも俺は隣の国の王族、そしてマリフィセントは聖女教会の聖女だ。

 外堀さえ埋めてしまえば、この国の王も動かざるを得ないし、公式に奴を没落させれば結果コウを助ける事も出来るだろう……と、マリフィセントは言った。

 

 正直そんな事をしている暇があるのなら、今すぐにでもコウを救いに行きたいが……マリフィセントの言う事も一理ある。

 このまま考えなしの行動をすれば、最悪コウから離れてしまう可能性も……確かにあるのだ。

 

 そして……マリフィセントが言うには、考えなしに猪突猛進でコウを救いに行くのは……恐らくミリヤも一緒だろうと言った。

 ミリヤがこれを聞いていれば怒るかもしれないが……ともかくマリフィセントはミリヤは必ず生きており、そしてコウを救う為に行動している筈だと、気休めでもなく信じ切った目で言ってのけたのだ。

 

 もし俺達の計画が駄目でも、その隙をついてミリヤがコウを助け出せれば……それもまた良し!っという事らしい。

 

 この女……本当に悪知恵が働く。

 コウの前では理想的な聖女を演じているマリフィセントだが……こいつの正体はこっちなのだと知っているものは少ないだろう。まぁ……そうなってしまうだけ、こいつの人生も大変だったのだろうが……。

 

 ともかく俺達は直ぐに行動を開始した。

 

 俺は瞬間移動で一時的に国に戻り、父にクロスもといエルセリオ王国の現状を話して、父からエルセリオ王国の国王に口を聞いてもらう為。

 

 マリフィセントはエルセリオ王国の王都の聖女教会へ赴き、聖女教会経由で王族に圧力をかける為。

 それぞれ迅速に動く必要がある。

 

 もしかしたらそれを察知した、クロスの配下のマフィア達の殺し屋達に命を狙われるかもしれないが……俺もマリフィセントも殺し屋如きに遅れを取る筈もない。

 

 しかし意外にも話はとんとん拍子に進み、俺達はたった二日でエルセリオ王国の国王と面会する事が出来た。思った以上に上出来だ!

 コウの現状が心配だが……無事なのを信じて俺達は国王と面会した。

 

 国王は意外にも俺達に協力的だった。っというのも、最近更に増したクロスの横暴に流石の王も辟易しているらしかった。

 だが相手は勇者。この国の国王とて、勇者を捌くことは簡単では無かったのだ。

 

 こうして俺達は王を連れて、このラグノアシティの市長の元へ赴き、早急にクロスを呼び出した訳なのだが……呼び出されたクロスは、なんとコウともう一人奴隷の子を連れて現れたのだ!!

 

 酷く目のやり場に困る服を着させられてコウに、俺らしくもなく慌てふためいてしまったが……何はともあれ無事でよかった……!!

 

 コウも思ったより元気そうで、これなら……言い方は悪いがまだ何もされていないのではないかと、内心安心する。

 

 そして予定通りこの国の王と、そしてマリフィセントと共にクロスを追い詰めた訳なのだが……あの男、土壇場に来てとんでもない事をしでかした!!

 

 何とコウを奴隷の首輪で痛めつけ……そしてその隙に逃げ出し、挙句の果てに魔竜ジャバウォッキーを召喚してきたのだ!!

 

 魔竜ジャバウォッキーと相対するのは二度目だが……その圧倒的雰囲気に、流石の俺も吞まれそうになる……!

 先程クロスにあの程度のドラゴンと言ってのけたが、実際また目の前にするとそう簡単な相手では無いのがはっきりと解る。

 

 そして魔竜ジャバウォッキーはクロスの掛け声と共に、初めて相対した時と同じように炎と雷を纏ったブレスを、俺達目掛けて吐き出して来たのであった……!!

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