最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第105話 全てを奪う者(エンシェントドラゴン&勇者クロス視点)

 勇者エイシャが頷いたのを確認して、直ぐに私は左手を自分の首輪に添える。

 そして……少し神力を流し込んでやれば、コウを縛っていた首輪は塵となり消えて行った。

 

 そもそもこんな首輪で私を縛ろうとするなど、お粗末が過ぎる。この首輪は魔力を制御する物であって、私の様に神力を扱う者には何の意味もないのだから。

 

「コウ…いや、白銀の(エンシェント)ドラゴン……!それは……!?」

 

 塵となって消えた首輪を見て勇者エイシャが驚きの声を上げるが……懇切丁寧に教えてやってもいいが、今はそんな時間は無い。

 

 ジャバウォッキーが次のブレスを撃つために、口に魔力を溜め始めている。

 

 ……そういえばクロスの姿が見えない。……大方逃げて、自分の屋敷へ向かったのだろうが……奴を逃がす訳にはいかない。

 奴はやりすぎた。勇者という立場に胡坐をかいて、多くの人間を傷つけ、あまつさえコウを傷つけたのだ。奴は万死に値する。そして……奴からは()()を奪う……。そう全てだ……!

 

 私は勇者エイシャの聖弓ウルスタッドに手を添える。そして……

 

「!!!!」

「こ……これは……なんと……なんと神々しいのでしょうか……!!」

 

 神力を聖弓ウルスタッドに籠める。

 

 神力を更に得た聖弓ウルスタッドは今まで以上の輝きを放っており、それに勇者エイシャの実力が合わされば、正に鬼に金棒の筈だ。こんな堕竜に負ける筈などない。

 

「エイシャ様。ここはお任せしてもよろしいですか?私は……クロスを追います。あの男を、許すわけにはいきません」

「それは……「時間がありません。ジャバウォッキーが臨戦態勢に入っています。では……お任せしますね?」……く!!」

 

 ここで問答するつもりなどない。勇者エイシャには悪いが、ジャバウォッキーはエイシャに任せて私は先を急ぐとしよう。

 

「マリィ様、申し訳ありませんが、ここにいる方々を任せてもよろしいですか?ソフィアや国王陛下達を……」

白銀の(エンシェント)ドラゴン様……承知いたしました。ここの方々はこのマリフィセントにお任せくださいませ……白銀の(エンシェント)ドラゴン様もお気をつけて……」

「ありがとうございます。では……エイシャ様、マリィ様……次に会うときは、恐らく何時ものコウですので……あの子の事、これからもよろしくお願いしますね?」

 

 私は信頼できる人間である二人に別れの挨拶をすると、体に神力を溜めながら窓から飛び出す。

 

「!!?……なにを!!?」

白銀の(エンシェント)ドラゴン様!!?」

 

 驚く二人を余所に、私は体をドラゴンへと変化させる。

 

白銀の(エンシェント)ドラゴン!!我と……戦うつもりかぁ!!?』

 

 私がドラゴンへと変身した事で、私が臨戦態勢に入ったと勘違いしたジャバウォッキーが吠え立てるが……最早この堕竜と話す事などない。

 

 私はジャバウォッキーを完全に無視すると、翼を羽ばたかせクロスの元へと急ぐ。

 

 あの男から……()()を奪う為に……!

 

 

 私は間違ってない、私は間違ってない!私は!!間違ってなんて……!!無いのだ!!

 

 

 聖剣エックスキャリバーに選ばれる前から私は特別だった。

 

 元々エンデヴァ家の長男として生まれた私は、何をするにも才能の塊で、勉学、運動そして……剣において誰にも負ける事は無かった。

 

 下民たちは私達貴族の為に働き、私達貴族はそれに応え彼らを守る。

 ノブレスオブリージュの精神の元、私は誰よりも正しい貴族として振舞っていた。

 

 そして……そんな天才で貴族の鏡の様な私は、当然聖剣に選ばれた訳なのである。

 

 私が勇者に選ばれると、家族を含め全ての者たちが私を祝福した。それは国王陛下も同じで、今まで椅子でふんぞり返っていた陛下が、私の所まで降りてきて、まるで媚び諂う様に態度を取っていた。

 

 その時から……私は少し違和感を感じていたのだ。

 

「そりゃお前……お前は誰よりも特別だからだよ!」

 

 ラザロ・ディ・モルテ……父の弟にして、余りの素行の悪さに家を追われた男。だが、彼の口から出た言葉は、私に真実を教えてくれた。

 

「お前は誰よりも特別だ!!世界最強で、お前は何をしても許されるんだよ!!クロス!!現に見ろ!今まではお前の上の様に振舞ってた国王も、お前の前では今や借りてきた猫だろ!?それだけお前は特別なんだ!!そんなお前が……何を小さく生きてんだ!!!お前はもっと自由でいいんだよ!!さっきも言ったが、何をしても……誰もお前を捌けやしねぇ!!つまり、この世は強い奴が正しいんだよ!!!」

 

 その言葉は私の今までの人生を一変させる言葉だった。

 

 最初は本当にいいのかと思っていた行動も……例えば気に入った女性を手籠めにして、奴隷にするとか……気に入らない男を、意味もなく殺してみるとか……そんな事をしても、誰も私を咎めなかった。

 

 そして……ついに私は悟ったのだ!!

 私は正しい!!私は……なにをしても許されるのだ!!っと!!

 

 今までは下々の為に魔族と戦っていたが、今やその魔族も鳴りを潜めている。

 

 魔族すら私を恐れて最早かかって来ない……それ所か……何時の間にか私の前に現れて、付き従う様になった魔竜ジャバウォッキー。

 なぜこの魔竜が私に従うのかは定かでは無いが……その理由はやはり、世界は私の為に動いているのだろう!!!

 

 何も怖くない!!誰も私に逆らえない!!!私は……私こそが正しいのだ!!!

 

 ……そう。私こそが全ての覇者となるに相応しい男なのだと……そう思っていたのに……!!

 

 

 今私は無様に逃げていた。

 

 何からか??それは……勇者エイシャと聖女マリフィセントからだ。

 あの二人、小賢しくも生き残り、あろうことか国王を味方にしてこの私を断罪しようとしてきた!!

 

 許せないが……今は耐える!!

 

 取り合えずあいつらの相手はジャバウォッキーに任せた。ジャバウォッキーならあの二人に後れを取る事もないだろうし……もし奴らが生き残っても次の手がある!!

 

 私は一度屋敷に戻り、私の武具を取りに行く!!そして叔父上の所へ赴き、ラ・ローザ・ネーラの最強の暗殺部隊『陽炎』を借りて、奴らの息の根を止めてやる!!

 

 前回のセントラルステージのせいで半分以上構成員を失った『陽炎』だが……その中でも最強の三人衆は残っているので、問題は無い!!!

 

 そして奴らの息の根を止めた後にまだコウくんが生きていれば……その時はもう容赦はしない!!ドラッグ漬けにして、私に依存させて、骨の髄まで犯しつくしてやる!!!!

 

 私は希望を胸に屋敷に戻る。

 

 

 しかし……そんな私を出迎えたのは燃え盛る私の屋敷と、そんな燃え盛る屋敷の上に仁王立ちし、私を見下ろす怒りに燃えた赤き雷神であった……。

 

「随分と遅かったのね?ああ……安心して?屋敷の人間は皆、避難させたから……。さあ……勇者クロス……コウはどこ?コウを……返してもらうわよ……!!」

 

 そう言って怒りに満ちた目で私を射抜く雷神に、私は初めて同じ勇者以外で恐怖を感じた……。

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