最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第106話 降臨(ミリヤ視点)

 ダンに教えて貰った秘密の坑道は、彼が言う通り本当にクロスの屋敷から少しだけ離れた場所に繋がっていた。

 

 私はそこから急いでクロスの屋敷へと走る。

 

「ミリヤさん……!!はぁ……はぁ……!!待ってくれよ……!!」

 

 私の後を、息も絶え絶えになってついてくるダンには悪いが……彼を待ってゆっくり走るつもりなどない。

 

「ダン!!私は今からクロスの屋敷を襲撃するから……中にいる人たちを逃がしてあげて!!奴隷の子とか……無関係な使用人とか!!……あ!!攻撃してきた奴は無視でいいわ!!私が……纏めて片付けてあげるから!!」

「ええ!!?ちょ……襲撃って……!!ミリヤさん!!?」

 

 驚くダンを無視して私は進む。

 目指すはクロスの屋敷……そこにいる筈のコウを……救う為だ!!

 

 そして……私はクロスの屋敷に辿り着いたわけなのだが、そこでアクシデントが起こる。

 

「もう一回いいなさいよ……死にたくなければね……」

「ひぃ!!?で……ですから……クロス様は現在、奴隷を二匹連れて外出中ですぅ……!いつ戻られるかは……分かりませぇんん!!」

 

 この屋敷の使用人の代表?の男を脅して吐かせれば、なんとクロスは今外出中だと言う。

 

 しかも……奴隷を二人……あ?今こいつ二匹って言ったか?……まぁいい。奴隷を二人連れてだ……。

 そして恐らく、その二人の一人はコウなのだろう……。

 

「分かった。じゃあアンタももう行って?」

「え??」

「この屋敷……ぶっ壊すからもう行けっつってんのよ……!」

「ひぃいいいい!!?」

 

 男は慌てて、わき目もそれず逃げ出していく。

 

 もしかしたら、このまま警備隊を呼んでくるつもりかもしれないが……望むところだ。こんな腐った勇者を見て見ぬふりしているこの街の警備隊など、纏めて叩き潰してやる!!

 

 その想いも籠めて……私は魔力を解き放つ。

 

稲妻(サンダル)……!!!」

 

 その言葉と共に、私の剣から雷を纏った魔力が、屋敷に降り注ぎ建物を破壊していく。

 

 他の使用人や奴隷の子達はダンに任せて逃がしているので……恐らくこの建屋にはもう誰も残っていない筈だ。

 

 私は躊躇なく屋敷を破壊しつくしていく。……そして……

 

「随分と遅かったのね?ああ……安心して?屋敷の人間は皆、避難させたから……。さあ……勇者クロス……コウはどこ?コウを……返してもらうわよ……!!」

 

 屋敷に戻って来た、勇者クロスを出迎えたのであった……!

 

 

「こ……これは何とまぁ……酷い事を…!!!?」

 

 勇者クロスの言葉が終わるのを待つ気など毛頭ないので、言葉の途中で斬りかかる。

 

 その斬撃を、クロスは慌てて腰の聖剣を抜き出し止めるが……こいつ、本当に勇者なのかしら。

 

 エイシャの側にいたからだろうか?勇者とはもっと超人的な、圧倒的オーラと魔力を秘めた、言わば普通の戦士達とは一線を画す存在だと思っていた。

 

 ギーツの実力は見ていないからはっきりとは言えないが、あの変態も間違いなく私を大きく上回る実力者に違い無かった。

 

 だというのに……この剣の勇者はどうだ?

 斬り結びながらはっきりとこの男の実力を理解する。この男の剣の実力は……私と同等かそれ以下だ。

 

 私程度と同等の実力など……それこそ、かつて王都で私に稽古をつけてくれた騎士団の団長にも劣る!!そんな奴が勇者などと呼べるのだろうか!?だとしたら団長の方が何倍も勇者に相応しい!!

 

 エイシャは自分以外の勇者は堕落して弱くなったと言っていたが……それは本当だった様だ。どうせこいつは最近、自分より大きく劣る者達だけに剣を振るい、言わば弱い者虐めにしか剣を抜かなかったに違いない。

 現に奴はエイシャや私達を奇襲した際、戦闘の全てをドラゴンに任せ、自分は最初の奇襲以外は特に手を出したりはしなかった!!

 

 そんなプライドもないゴミの様な男に……私は絶対に負けたりしたくない!!!

 

 その想いで強く踏み込み、奴に雷を籠めた剣を振り下ろそうとした時、奴は指を鳴らす。……これは!!!

 

「!!!」

「なに!!?」

 

 慌てて後ろに飛びのくと、元々私はいた場所が爆発する。

 

 これは……最初の奇襲の時に、私達の馬車の車輪を破壊した爆発!!やはり……この男が指を鳴らすのに合わせて爆発していたのだ!

 

 しかし指を鳴らしてから、少しの間があって爆発するこの魔法は、ネタさえ分かってしまえば左程怖くは無い。むしろ……勇者ともあろうものが、こんな奇襲にしか使えない魔法をこの場で頼るなんて……。

 

「手品はおしまい!?なら……このまま勝たせて貰うわ!!」

「……!!わ……私を舐めるなぁ!!貴様みたいなテロリスト!!この私がすぐに!!」

 

 語るに落ちたな勇者クロス!!このまま……本当に勝たせて貰うわ!!

 

 その想いで強く踏み出した瞬間、クロスの屋敷の周りが騒がしくなる。

 

「止まれ!!放火魔!!そこまでだァ!!!」

「クロス様……クロス・エンデヴァ様!!ご無事ですか!!?」

 

 それは、恐らく逃げた使用人達が呼んできたであろう、警備隊の人達だった。

 来るとは思っていたが……思ったより早い到着に流石に私も冷や汗が落ちる。

 

 そんな警備隊の人間達を見て余裕を取り戻したのか、クロスが口を開いた。

 

「ふ……ふはあっははは!!!やはり私は正しい!!間違っていない!!!女ぁあ!!貴様の負けだ!!確かにお前は強い!!!だが……私と警備隊を纏めて相手出来るかなぁ!!?」

「っち!!あんた!!」

「さらぁにぃ!!!この騒ぎを聞きつけた叔父上が、直ぐに部下を連れてこの場にくるだろぉお!!つまぁりぃ!!!お前の短慮な行動がぁ!!!!裏目に出たなぁ!!!!馬ぁ鹿があああ!!!!私の……勝ちだぁあはああははあははははああふぁははは!!!!」

 

 確かにいつも私は短気で短慮だ。

 

 考えなしの行動をして、何時も後悔する事になる。自分でも解ってる!!……でも!!!

 

 

『馬鹿は貴様だ……クロス・エンデヴァ。まだ自分が勝てるとでも思っているのか?』

 

 その瞬間全てが静まり返った。……そう感じた。

 

 馬鹿笑いをしていたクロスも、私に向かって突撃しようと構えていた警備隊の人達も……そして当然私も……。

 

 それ程までに……神秘的な光景だったのだ。

 

 この場に相応しくない程の神秘的なオーラを纏って、見る者全ての目を引く、余りにも美しい白銀のドラゴンは空から降臨したのだ。

 

 あれは……白銀の(エンシェント)ドラゴン!!?

 

 そんな……!!白銀の(エンシェント)ドラゴンは確かに黒騎士に討たれた!!だとすると……あの白銀の(エンシェント)ドラゴンは……!!!

 

 私達含む皆が、白銀の(エンシェント)ドラゴンに目を奪われ、反らすことが出来ない中、白銀の(エンシェント)ドラゴンは静かに降り立ち、そして光り輝く姿を変える。

 

 眩い光が辺りを照らし、そして光が止みそこに立っていたのは……!!!

 

「お前は終わりだ……。クロス・エンデヴァ。私が……お前の終わりを告げに来た……」

 

 見たことも無い冷たい瞳で、クロスを睨みつける、私の愛しの可愛い妹……コウであった……!!

 

 ……ていうかコウってばなんて格好させられてんの!!?可愛すぎない!!?

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