最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「グゥオウウオオオオ!!!」
激しい叫び声と共に、炎と雷を纏ったブレスを吐き出すジャバウォッキー。
そのブレスは先ほどを超える圧倒的魔力を纏っており、辺りの空気すら燃やしながら俺達に迫ってきた。
だが……。
「……甘い……」
いつも以上に魔力を籠めず、只聖弓に威力を委ねた俺の一矢……。
「グウオオ!!?」
その矢はジャバウォッキーのブレスをかき消し、そのままジャバウォッキーの口を貫通して行った……。
これが……これが本来の
恐ろしいまでに強化されて聖弓は、何時もの倍以上の輝きを持って圧倒的存在感を示していた。
「何とも恐ろしいものだな……
「ええ……本当にそうですわ……」
いつの間にか俺の隣に立っていた聖女マリフィセントも、俺に同意する。
このまま彼女……
それ程までの圧倒的力を、彼女は秘めているのだ。……しかし……。
「それでも俺は……コウの方がいい……」
何とも自分勝手な話だが……俺が好きになった女の子はコウなのだ。
確かに先程の彼女は……俺がかつて惹かれた、先代
あれこそ本来の
しかし……やはり俺は普段のコウが好きだ。いつも大人しいが、意外と表情がコロコロと変わる見ていて飽きないコウが……優しい笑顔で俺を見るコウが……俺は好きなのだ。
「私も……勝手ながら、普段のコウ様が好きですわ……。コウ様が……私を救って下さったのですから……」
俺の言葉にマリフィセントも同意する。
ならば……彼女の言葉を信じて、俺はこの魔竜ジャバウォッキーを全力で倒す!!
「グウウオオオオォオ!!」
「……吠えるな……ジャバウォッキー……お前はここで俺が倒す……!」
俺は油断なく聖弓を構えると、ジャバウォッキーに向けて矢を撃ちだす。
そして俺から撃ちだされた全ての矢は、目標を違える事無く、全てジャバウォッキーに吸い込まれる様に刺さっていく。
「グウ……ウォオ……オオオオオ!!!」
恐らく……その矢一本一本に普段の数十倍に威力がある筈だ。
現にジャバウォッキーは俺の矢を浴びて、既に満身創痍になっているのだから……。
しかし……悪戯に苦しませるつもりなど無い。
次の一矢は……今度は俺も全力で魔力を籠め、ジャバウォッキーを終わらせて見せよう……!
その意気込みで、弓を構えて……。
「グル?グルル!?……グウォオオオオ!!!!」
ジャバウォッキーが突如、今まで以上の咆哮を上げる。
しかしそんな事を今更した所で、俺が竦む筈も無く……俺は弓に魔力を溜めて……!
「ゴ……ゴウザ……ン゛ダ……!オ゛デ……ダマサレデ……ダ……!!」
「………は??」
なんとジャバウォッキーが白旗を上げたのだ。しかも……騙されていただと……?
一体いきなりなにを……!?
「ホンドノ……オ゛レ゛ノ……ト゛モ゛……アラワデ……ダ……!!アイツ……チガッタ……!!エンジェ……ド……ドラゴ……ンノイウコド……タダジ……ガ……ダ……!!!」
片言だが……一応意味は通じる。
どうやらこのドラゴンは、誰かに……恐らくクロスだろうが……騙されていて、そして今それが解ったと言いたいのだろう。
そして……それが解った今、もう俺と戦う気が無いと言いたいのだろうが……どうしたものか……。
流石に戦意を失ったものに、止めを刺すほど俺も堕ちてはいない。かといってこいつをこのまま野放しにするのも何か違うきがするが……。
「オデニ……ノデ……!ト゛モ゛……アンナイ……ジデ……ヤ……ル゛……!!」
「………いいだろう。案内してもらおうか……」
「勇者様!!?何を仰って……!?」
俺の答えにマリフィセントが驚きの声を上げるが……このまま問答しても埒があかない。それよりもこいつの提案に乗ってやるのも一つの手だ。
何より、もしこいつが裏切っても、今の俺ならば何の問題も無く対処できる。
「ここは任せたぞ?マリフィセント。俺はジャバウォッキーと共に行くとしよう」
「……!!……はぁ……。止めても無駄なのでしょうね?……解りました。ここはお任せ下さいな?」
ため息をつき、あきれ顔で言うマレフィセントに苦笑いして、俺はジャバウォッキーに飛び乗る。
「では連れて行け!!ジャバウォッキー!!お前の友とやらの所に!!」
「グウォオオオオ!!!!」
俺を背に乗せ、方向を上げ羽ばたき始めるジャバウォッキー。
これが、吉と出るか凶と出るか……それは今はまだ解らないが……この一連の出来事は確実に、終わりへと向かっているのは間違い無いのであった……!
◆
我は今人間を背に乗せ、怒りと喜びの感情を胸に目的地へと急いでいた。
確かに可笑しいとは思っていたのだ。あの勇者が、あんなに簡単に同族を殺すような事をするのだろうか?……と。
最初は何か事情があるのだろうと思っていたが、奴が笑いながら同族たちをいたぶっているのを見て、こやつは随分と変わってしまったのか?っと疑問を持ってはいた。
だが……奴から発される聖剣の力は、奴が紛れもなくあの時の勇者だと物語っていたし、それだけは間違いなかった。
そう思っていた……しかし……!!!
あの時は、我が騙されているなどと思いたくなかったから否定してしまったが……彼女の言う事が正しかったのだ!!
今解った!!わが友が、偽物から剣を取り戻し、戻って来たのだ!!!
この気配!!発される力!!!……今度こそ間違いない!!!
そして我は、我を騙した人間への憤りと、友の帰還への喜びを胸に翼を羽ばたかせる!!
待っていろ!!我が友よ!!!
◆
結局のところ、やはりドラゴンに人間の判断など出来ないのである。
そして魔竜ジャバウォッキーは、かつての剣の勇者の面影を追い翼を広げ空を駆る。
その先に居るのは……新たなる剣の勇者だという事を知らずに……。