最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第116話 最悪な別れ(ダン&ソフィア視点)

 ミリヤさん達の活躍のお陰で俺は今、恋焦がれたソフィアと再会する事が出来た。

 

 まさかミリヤさん達が、勇者クロスを倒してしまうのは完全に想像してなかったし、何よりクロスが討たれた後に、ラ・ローザ・ネーラのボスであるラザロまでもが殺されたらしい。

 

 今この街は頂点のマフィアを失った事で国の警備隊が入り込み、多くのマフィア関係者達が捕まっていっていた。

 

 これでこの街も……少しは平和になるかもしれない!!

 そしたら今度こそ、ソフィアと二人で安全に、この街で過ごしていける筈だ!!

 

 そう思っていた!そう……思っていたのに……!

 

 

「………え?」

「ダン……申し訳ないけど、私は彼方と暮らすことはできない。私は……エルフとしての使命を全うしなければいけないの」

 

 クロスから救い出され、奴隷から解放されたソフィアが、俺に言った一言に俺は固まってしまった。

 

「エ……エルフとしての使命って……!い……いったいなんだよ!?そのせいで……そのせいで、俺とは一緒に居られないのか!!?」

「………その通りだよ。私は生き残りのエルフとして最後まで白銀の(エンシェント)ドラゴンに仕えなければいけない……。それが私の一族の……エルフの使命なんだよ」

 

 なんだよ……なんなんだよ!!それ!!

 

 それじゃソフィアを助けた意味が無い!!そんな……そんな事の為に、俺はミリヤさん達に手助けした訳じゃない!!!

 

「使命なんてどうでもいいだろ!!?なんで……そんなんに囚われてたら、奴隷になってるのと一緒じゃないか!!!」

 

 喉が引き裂けるんじゃないかって程叫ぶ。

 俺の叫び声に、ソフィアと一緒に奴隷になってたっていう銀髪の少女が驚いてこっちを見る。

 

 彼女はミリヤさんの妹らしく、今ソフィアと一緒に俺の所まで来ていたのだ。

 

 俺とソフィアに積もる話もあるだろうと、少し離れた所でミリヤさんと居たみたいだが……まぁそんな事今はどうでもいい。

 

「お願いだ!!ソフィア!!目を覚ましてくれ!!そして……また俺と暮らそうよ!!」

 

 俺の渾身の魂の叫びを聞いてソフィアは少し悲しそうに答えた。

 

「ごめんね?ダンとの生活は楽しかった。でも……私は行くよ。……さよなら……ダン……」

「あああ!!嫌だぁ!!ソフィア……待ってくれソフィアぁ!!」

 

 俺に背を向け、悲しそうに去っていくソフィアに俺の心はズタズタに引き裂かれる。

 

 どうして……なんでぇ……!!

 

 そのまま平伏するような格好で蹲った俺を、ソフィアは振り返りもせずに去っていく。

 

「……ソフィ?ほんとに……いいの?」

「??全然いいよ?コウ。ダンとの別れの挨拶はすんだから」

「ええ!?いや……ダン君……うずくまっちゃって……」

「そう?……じゃあ行こうか。コウ」

「えええぇ……」

 

 その時俺は見た……。

 俺と一緒に居る時には見た事も無いほどの……優しい笑顔をしているソフィアを。

 

 それは……まるで……操られている様で………。

 その時俺の頭に電流が奔った。

 

 ……………お前か……。

 

 お前がソフィアを………俺の女を…………奪った奴なのか………!

 

 お前が……ソフィアと俺の運命を引き裂いた白銀の(エンシェント)ドラゴンなのかぁ!!!!!

 

 今全てがはっきりと解った。

 あの女は俺が殺さなきゃいけない。

 囚われて自由を失い、俺の元から悲しく去るしかなくなったソフィアを……俺の女を開放しなければいけない!!

 

 今はまだ無理だ。

 あいつには付き従う様にミリヤがいる。

 

 ミリヤには……どうやっても俺は勝つ事なんて出来ない……でも!!!

 何れ必ず……この街で力をつけて俺は……!!必ずソフィアを取り戻す!!!必ずだ!!!

 

 俺はもう野良犬じゃいられない……。負け犬じゃ……いられない……!!

 

 ソフィア……!!待っていてくれ!!何年かかっても……俺は必ず君を取り戻す!!!

 その薄汚い白銀の(エンシェント)ドラゴンを八つ裂きにして!!!!その首を片手に君を迎えに行く!!!

 

 

 ダン?という名の少年と別れの挨拶を済ませ、私はコウの隣を歩く。

 

 勇者エイシャや勇者ミリヤ、聖女マリフィセントにも同じ説明をしたエルフとしての使命だが……あれは全くの嘘っぱちだ。

 

 コウの側を離れたくない私が咄嗟についた嘘だが、意外とそれっぽくはないだろうか?

 

 彼らはエルフの使命など知りもしないだろうし、それを疑う術はない。故にこれからも私はコウと一緒に居る事が出来る訳だ。

 

 私はコウの為にも私の為にも、彼らには死んで欲しかったが……それはもう諦めた。だって彼ら、強すぎるから。

 だから……もう彼らの寿命を待つことにしたのだ。

 どうせ後百年もしないうちに彼らは死ぬ。それは避けては通れない。

 

 その間にコウとの関係を育んでおけば、彼らの死で悲しむコウを慰める事によって……二度と別れる事のない私にコウは依存する筈だ。

 

 コウを私に依存させる為に、私達を奴隷にした奴らから貰ったドラッグを使おうかとも考えたが……あれは大事に枕元にしまいこんでしまったせいで、勇者ミリヤに塵にされてしまった。勇者ミリヤが屋敷を燃やした時に……。

 

 まぁいい。

 私はこれからもコウと……私の伴侶となる彼女と一緒に旅をしよう。

 

 嗚呼……本当に楽しみだ。

 コウ達はこれから温泉に行くと言っていた。

 お湯につかり頬を赤らめるコウを想像して……おっといけない。よだれが零れそうになってしまった。

 

 ともかく何も問題は無い。

 

 ダン?ともちゃんとお別れできた。

 あれ程ちゃんとお別れ出来たのは久々じゃないか?まさに……最高の別れというやつだ。

 

 正直勇者ミリヤに紹介してもらうまで、ダン?の顔を忘れていたので、彼がスラムでちょっと一緒に過ごしたダン?なのかは定かではないが……まぁどうでもいいか。

 

 多分彼の事など、明日には忘れているのだから……。

 

 

 こうしてスラムの少年は、出会ってしまった最悪のエルフによって、儚くも想っていた初恋を………極大に拗らせることになる。

 

 そして彼はこの先数十年で、衰退していたマフィアを纏め上げ、ラ・ローザ・ネーラをも超える歴史上最強最悪のマフィア、B・A・Kを設立するのだが……それはまだ遠い先の話……。

 

 ……ちなみにB・A・Kとはバッド・エンシェントドラゴン・キル……の略である……。

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