最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第五章 温泉旅館殺人事件編
第118話


「皆さん、わざわざ遅い時間に集まって頂きありがとうございます」

 

 旅館のエントランスに、名探偵……ホズムさんの声が響き渡った。

 

「まず初めに、今回の一連の事件からおさらいしていきましょう。まず……第一の事件。シャーロットさんが自室で殺害され、シャーロットさんを殺害した犯人は、被害者から金品を盗んで逃走しました」

 

 ホズムさんは集まった俺達を見渡す様にすると、続けて口を開いた。

 

「そして……第二の事件。シャーロットさんと共にこの旅館を訪れていたホランさんが、自室で首をつって自殺していました……そして……遺書には愛するシャーロットさんが亡くなり、生きる希望が無くなったと書いてありました……」

「まてよ!ホランは自殺だろ!?遺書もあったし……!間違いねぇよ!!」

 

 ホズムさんの言葉に、エントランスに集められていた旅館の客の一人……スティーブさんが口を挟む。ホズムさんはそんなスティーブさんを一瞥すると、首を振り言葉を続けた。

 

「いいえ、あの遺書はフェイク。これは……他殺なのです。そして……この二つの事件を起こした犯人は同一人物なのです!」

 

 な……なんだってーーー!!

「な……なんだってーーー!!」

 

 あ!スティーブさんの叫びと、俺の心の叫びが被っちゃった!

 

「そして、この旅館のオーナー・リュウロウさんが自室で殺害されていた第三の事件!!この犯人もまた、同一人物なのです!!そして!!その犯人は今!!このエントランスの中にいるのです!!!」

 

 そ……そんな!!

 一連の事件を起こした凶悪犯が……このエントランスに!!?

 

 俺は恐ろしくなり、隣で興味がなさそうにホズムさんの話を聞いていたミリヤの手を握る。俺に手を握られるとミリヤは、一瞬驚いた顔をした後に笑顔で握り返してくれた。

 すると俺の後ろから、ソフィアが俺に覆いかぶさるように抱き着く。恐らく……ソフィアも恐ろしくなったんだろう!

 

 なんでこんな事になってしまったんだろう?俺達はただ……温泉を楽しみに、この旅館に来ただけなのに……!!

 

 そんな俺達を無視するかのように、ホズムさんは目を瞑り口を開いた。

 

「はっきり申し上げましょう……!この一連の事件の犯人は……勇者クロスを殺害し、この旅館へと逃げ込んだ凶悪犯……黒騎士です!!!」

 

 ……………んん??

 く……くろきし???

 

「黒騎士だって!!?あ……あの、エルセリオ王国始まって以来最恐の犯罪者の……!?」

 

 スティーブさんが若干震えながら言うが……悪かったな!!最恐の犯罪者でさ!!

 てゆーかなんで犯人が黒騎士なんだよ!!俺は三人を殺してなんて無いんですけど!?

 

 そんな俺の内心などお構いなしに、ホズムさんは更に言葉を続ける。

 

「左様……。そして私は当然その黒騎士の正体も見抜いています……!」

 

 な……なんだってーーー!!

「な……なんだってーーー!!」

 

 あ!スティーブさんの叫びと、俺の心の叫びがまた被っちゃった!

 

 そんな事より!まさか……この名探偵は黒騎士の正体が俺だと……見抜いていたのか!!?

 ど……どうしよう!!どうしたらいいんだろ!!?

 

 動揺する俺を無視するかのように、カッと目を見開き名探偵ホズムさんは黒騎士を指さした!!

 

 お……終わった……!こんな所で……俺が黒騎士だとバレちゃうなんて……!!

 俺はホズムさんに指さされたと思い、ぎゅっと目を瞑る。

 

 そして……!!

 

「勇者クロスを殺害し、さらにこの旅館で三人を殺害した犯人黒騎士!!その正体は……貴方です!!勇者エイシャ!!!」

 

 ……………は??

 

「は?」←エイシャ

「はぁ!?」←ミリヤ

「は……?」←マリィ

「え……??」←俺

「ふわぁ……」←欠伸したソフィア

 

「「「「な……なんだってーーー!!」」」」←スティーブさん及び、旅館の他の客の皆さんとか従業員の人とか

 

 と……突然何言い始めたんだ?この迷探偵は……??

 驚いて目を見開いちゃったよ……。

 

「そう!!貴方こそ黒騎士なのです!!勇者エイシャ!!何故なら貴方しか出来ないのですよ!!この一連の事件も!!勇者クロスの殺害も!!……ではこの事件がどうやって行われたのか!!それを説明しましょう!!」

 

 俺達が呆然とするのを余所に、迷探偵ホズムは自身の的外れな推理をペラペラと披露し始めるが……俺達はそれをめっちゃ冷めた目で見ているのであった……。

 

 てゆーかなんでこうなった??俺達は只温泉に来ただけだったのに……。

 あとここまでやっといてなんだけど、冒頭長すぎない??

 

 とにかく俺はなぜ事になってしまったのか、迷探偵の迷推理に頭痛を感じながらも思い返していた……。

 

 

「うわーー!!」

 

 俺は今、目の前に広がる光景にめっちゃ興奮していた!!

 なぜなら俺の目の前には……めっちゃお洒落な風景が広がっていたからだ!!

 

 街から離れた山奥にあるこの温泉旅館……『癒し』は自然との調和を大切にした旅館だそうで、周りの自然の中にポツンと佇むように建っている。

 少し小ぢんまりとした旅館は、なんだろ……その外観を崩してないというのだろうか??……なんと言うか、前世の日本を思わせる旅館なのだ!

 

 それもその筈、この旅館のオーナーさんは遥か東にある和の国出身の人らしく、自分の故郷を思わせる風景に仕上げたかったそうだ。

 

 だからここだけめっちゃ和風なのだ!

 異世界に転生した俺だけど、二年以上この世界に居ると周りの風景とかにも慣れてきたけど……逆にまた元の世界に戻ってきた様でなんだか落ち着く!!……まぁ今落ち着きなくはしゃいでるけど!!

 

「ふふふ。とっても素敵な外観ですわね。なんだか……落ち着きますわ」

 

 馬車から身を乗り出しはしゃいでいる俺を、微笑んで見ているマリィが口を開いた。

 俺はマリィに向きなおり、笑顔で答える。

 

「はい!すごいです!!マリィ様、こんな所に連れて来てくれてありがとうございます!!」

「喜んで貰えて良かったですわ。ここにはコウ様の療養で来ましたけど……ゆっくり疲れと体を癒して、楽しみましょうね?」

「はい!!」

 

 色々すったもんだがあったけど、こうして無事に温泉旅館に辿り着くことが出来たのだ!

 今回は……魔族とか戦いとか忘れて、マジでゆっくりと温泉や食事とか楽しみたい!!

 ……エイシャとミリヤは、この旅館のオーナーに頼まれて仕事とかあるらしいので、俺ばっかり浮かれて申し訳ないけど……!

 

 マリィが予め人数が増えると旅館に連絡してくれたおかげで、ソフィアも一緒に旅館に泊まれる事になっているみたいだし、特に問題も無い!!

 

 今回は……全力で楽しむぞ!!

 

 

 ……そう思っていたんだ……この時は……。

 だからこの旅館であんな事件が起きるなんて……夢にも思っていなかったのである……。……勘弁してよ!!!

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