最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第119話

 温泉旅館『癒し』は、客室が八部屋しかない小ぢんまりとした旅館だ。

 その代わり一部屋一部屋が非常に広く豪華な作りになっていて、なんとお部屋に温泉までついているらしい!

 

 そして全ての客室から、オーナー自慢の日本庭園(?)っぽいお庭が見えて非常にお洒落な作りになっているのだ。

 

 あ!因みに俺の腕を治せるかもしれない『癒しの湯』は大浴場らしく、部屋についている温泉とはまた別らしい。

 

 同じ旅館なのに温泉が違うのなんでろ?って思うけど、『癒しの湯』は自然に湧き出た温泉で、部屋の温泉は違う所から引っ張ってきたお湯だから、正確には温泉ではないそうだ。

 正直説明されても俺の乏しい頭では理解出来なかったので良くは分からないけど、とにかく違うらしい!!

 

 前も言ったがこの旅館、滅茶苦茶人気らしく予約を取るのがすごく大変だそうだ。

 そんな旅館の部屋を三部屋(男子部屋と女子部屋×2)も抑えるなんて……マリィの権力すごい!!って思ってたけど、どうやらそれだけではないらしい。

 

「俺達を招き入れてくれたのにはちょっとした理由があってな。本当は黙っていようと思っていたが、俺達が不審な動きをしてコウに心配をかけてもしょうがないので言うが……。実は最近この山に火山を根城にした大型の魔物が住み着いたらしくてな……。それの退治を頼まれたんだ」

 

 エイシャは旅館へ向かう途中の馬車でそう言っていた。

 なんでもその魔物は地竜と呼ばれる非常に大型で獰猛な魔物らしく、一度国の警備隊に頼んで駆除して貰おうとしたらしいのだが、返り討ちにあってしまったらしい。

 あと剣の勇者……クロスにも頼んだそうなのだが、断られてしまったそうだ。

 

 ……あいつホントに碌なもんじゃなかったな……。

 

 今の所、旅館への直接な被害は出ていないらしいので、まだ大丈夫らしいのだが……いつ地竜が足を延ばしてこの辺りまでくるか解らないので、早めに駆除してほしいそうだ。……まぁ地竜の噂のせいで、実際旅館をキャンセルする人も多いらしく……間接的な被害はもう受けてるそうだ。

 

 それで、宿泊日までちょっと時間があったので、先に近くの街に滞在して地竜を駆除しようと思っていたらしいのだが……まぁ余計な時間を取られた訳だ!!クロスに!!!ホントに碌なもんじゃないな!!

 

「クロスのせいで結局宿泊時期になってしまった。故に……この旅館では二泊三日の宿泊の予定だが、その間俺はちょっと地竜の退治に行かなければならん」

「私も同行するわ!マリィは悪いんだけど……」

「ええ。私はコウ様とソフィア様をお守り致しますわ」

 

 別に私は守ってもらう必要なんて無い……っていうソフィアを無視して話はとんとん拍子に進む。

 

 うーーーん。

 エイシャとミリヤなら大丈夫だろうけど、俺が万全ならこっそり黒騎士に変身してついていったのにー!!って思うけどまぁそれはしゃーないか……。

 

『ぐはは!心配するな!!我もついて行くからな!!我が居れば百人力だろうよ!!それに竜などと名前についているが、あれは実際は我らとは全くの別物!!故に……地竜などただの雑魚よ!!』

 

 と、小さな体で頼もしい事を言ってくれるジャバ君もいるし……本当に大丈夫だろう!!

 

 まぁエイシャも地竜は普通の一般兵士達にとっては脅威だろうが、自分達勇者からしたら大した事は無いとはっきり言っていたので、余計な心配はしない事にした!

 

「コウは只、体を癒してこの旅館を楽しんでくれ。そっちの方が俺としては嬉しい」

 

 と、優しく笑って言ってくれたエイシャに……久々にめっちゃ意識して頬を朱くしてしまったけど……とにかくそのエイシャの言葉にミリヤも大きく頷いてるし、俺は傷を癒すのと同時に全力で楽しもう!!

 

 ってな感じで俺達は無事に旅館に辿り着いた訳なのである。

 

 

 旅館のエントランスに入ると、そこはまるで別世界の様だった。

 少し広めのエントランスは当然和風の作りで、この中に入っただけでも俺は元の世界に戻ってしまったかのように錯覚してしまう。

 まぁこんな高級旅館なんて前世じゃ行ったことないけどな!

 

 エイシャ達が受付に行ってくれている間に、俺とソフィアは旅館のエントランスをぐるりと見渡す。

 何と言うか……ともかくすごく落ち着いた作りで、とても落ち着いた空間なのだ。……なんだろこのめっちゃ阿保っぽい感想……。

 

「コウ?大丈夫?疲れた?」

 

 俺が自分のボキャブラリーの無さに落ち込んでいると、ソフィアが心配そうにのぞき込んでくる。

 

「ううん。ごめんねソフィ。ちょっと自分の表現力?の無さに……落ち込んでただけだよ……」

「???よく分からないけど……無理はしないでね?」

 

 そう言って頭を撫でてくれるソフィアに、俺はお礼を言おうとして……

 

「感動的ですな!身目麗しい少女二人の友情。いやはや……これぞ目の保養です。すみませんお嬢さん方、そのまま抱き合ってもらってもいいですかな?」

 

 いきなり意味わからない事言い出した変質者が現れて呆然としてしまった。

 ソフィアも驚いた様に呆然としており、そんな俺達を無視するかのように変質者は話を続ける。

 

「おっと、これは失礼!お嬢さん方警戒なさらないで。私は怪しいものではありません」

 

 いやめっちゃ怪しいよ!?今の言動のどこが怪しく無いの!?

 

 この世界には珍しい……シャーロックホームズみたいな衣装を身に纏った、ひょろりと背が高いおじさんは、帽子を手に取るとお辞儀をして言った。

 

「私はしがない名探偵……ホズム・エドワードと申します。以後お見知りおきを……美しいお嬢さん方……」

 

 そう言ってウインクする……ホズムさんに、俺とソフィアは目を白黒させるのであった……。……てゆーか、シャーロックホームズみたいな衣装だなって思ってたら、本当に探偵だったよ……。

 

 

 この変質者、ホズム・エドワードに出会った時から……恐らく今回の事件は始まっていたんだと思う。こうして俺の傷を癒すための温泉旅館は……血塗られた殺人現場へと変貌を遂げていくのである……。

 

 あと……どうでもいいけど自分の事()探偵って言っちゃうんだ……この人……。

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