最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第121話

「いやああああああああ!!!?」

 

 癒しの湯へ向かう為、俺とソフィアが隣の部屋のマリィを呼びに行こうと部屋を出た瞬間、甲高い悲鳴が廊下に響いた。

 

 な……なんだ!!?

 

 俺は驚いて固まってしまうと、隣の部屋から慌ててマリィが飛び出してきた。

 

「コウ様!?大丈夫ですか!!?」

「マリィ様……。私は大丈夫です……でも……」

 

 慌てているマリィに返事をしつつ、俺は声が響いた方へ顔を向ける。

 恐らく女性の悲鳴なんだろうけど……一体何があったんだろう?

 

「マリィ様!悲鳴があった所へ……行ってみましょう!」

 

 正直……ここで野次馬根性出さない方がいいんだろうけど、かといって無視するのも違う気がする。今はエイシャとミリヤはいないので、俺達三人(と一匹)で行くしかない!

 

 そんな俺の視線の意味を感じ取ったのか、マリィは少し思案した後に答えた。

 

「……分かりました。ですが……コウ様は、私かソフィアさんから絶対に離れない様にしてくださいな?」

「はい!!……ソフィアもいい?温泉……後になっちゃうけど……」

「ぜんぜんいいよ?コウが気になるなら行こ?」

 

 そう言ってくれるソフィアに頷くと、俺達は急いで悲鳴の現場へと向かうのであった。

 

 

 悲鳴があった場所へたどり着いた俺達だが……そこで目にした光景に息を飲んだ。

 

 俺達と同じように、悲鳴聞き駆けつけた人たちが見つめるその先の部屋に……血だまりの中で目を見開いて、仰向けに倒れている女性の姿があったからだ……!

 

「皆さん離れて下さい!私は聖女教会の者です!」

 

 その現場を目撃して、すぐさまマリィは周りの人間をかき分けて女性の元に急ぐ。

 だが……

 

「残念ながらもう亡くなっていますよ……」

「……!!……その……様ですわね……」

 

 歯噛みする様にマリィは声を絞り出すと、マリィに声を掛けた主へと向きなおった。

 

「……失礼ですが……貴方は……?」

「おっと!これは失礼しました!私はしがない名探偵、ホズム・エドワードと申します。以後お見知りおきを、美しいお方」

 

 そう言ってウインクするホズムさんを、マリィは訝しげ見ると口を開いた。

 

「探偵さんでしたか……。では……貴方が第一発見者ということですか?」

「いえいえ、私は只の野次馬ですよ!……第一発見者はそこの女性です」

 

 そう言ってホズムさんが手を差し伸べた先には、蹲って震えている女性がいた。

 

「先ほどの悲鳴は彼女のものの様ですな……。さて!私は直ぐにこの事を支配人に言って、警備隊を呼ぶよう要請しましょう!……聖女教会の……聖女様はどうされますかな?」

「……!!私は聖女などと、名乗っておりませんが……」

「ふっ!なに……ただの感と言う奴ですよ!探偵の……ね……!」

 

 そう言ってウインクをするホズムさんにうさん臭さを感じつつも、俺は被害にあった女性を見ようと身を乗り出して……慌ててマリィに止められた!

 

「だめですわ!コウ様!!あまり見てはいけません!!」

「そうですよ?貴女の様な若い女性が見る者ではありません」

 

 そう言って止めてくるマリィとホズムだが、正直マリィだってそこまで俺と歳かわんないだろ!?

 

 と、思うけどわざわざ口にはしない。

 だって余計な事で場を混乱させる訳にはいかないしな!

 

「さて!ではお集りの皆さんは、一旦エントランスへ集まっていただけますかな?私は支配人にこの事を「何があったのですか!?」……おっと、ナイスタイミング」

 

 ホズムさんの言葉に被る様に言った男性……この人は……。

 

「いい所に登場しましたね?支配人……。丁度今貴方に会いに行こうと思っていたのですよ!……実は……」

 

 どうやらこの旅館の支配人さんだった様で、ホズムさんは事の顛末を支配人に伝える。

 ホズムさんからの説明を受けた支配人は、顔を青くして頷くと急いで警備隊を呼ぶために小走りで自室へと向かって行った。

 おそらく……そこに通信用の魔道具があるのだろう。

 

「コウさま……エントランスへ向かいましょうか?」

「え!?ここはいいんですか!?マリィ様!!」

 

 正直マリィはここに残って現場の調査とかをするのかと思ってた!

 そんな想いを籠めた視線に、マリィは苦笑いして答える。

 

「私の様な素人が、現場を荒らす訳にはいきません。支配人がすぐに警備隊の人を呼んでくれるでしょうし、余計な事はせずに私達もエントランスで大人しくしておきましょう……。残念ながら……私に出来ることはもう無い様ですし……」

 

 そう言って目を伏せるマリィの手を俺はぎゅっと握る。

 恐らく……少しでも息があれば、マリィは彼女を癒す事が出来たのだろう。それだけの力を持った聖女なのだ……マリィは……。

 

 だが死者を蘇らす事など出来はしないのだ。

 それこそ……神の様な力を持った存在しか、そんな事は無理なのだろう。

 

 俺が白銀の(エンシェント)ドラゴンの力を全て使えるのなら何とかなったかもしれないが、残念ながら俺にもそんな力は無い。正直他者を癒す力だってマリィの方が全然上だしな……。

 

 マリィは多分……自分がもっと早く現場に辿り着いていれば、彼女が救えたかもしれないのに……と、後悔しているのだろう。

 

「わかりました!マリィ様!エントランス……行きましょ?」

 

 わざと明るく言ってマリィの手を引く。

 マリィ様は一瞬驚いた顔をして……すぐに優しい笑顔を作り、俺に手を引かれてエントランスまで向かう。

 

 そんな俺達を、キーちゃんのケージを持ってくれているソフィアは黙ってついてくるのであった。

 

 

 俺達がエントランスへ辿り着くと……既に何人かの人たちがエントランスに集まっていた。さっきの野次馬仲間の人達かな?

 

 それと……さっき悲鳴を上げたと思われる女性もいた。

 流石にもう蹲ってはいない様だが、両手で顔を塞ぎ涙を流している。

 

 うーーん。

 あの人はさっき亡くなっていた人の知り合いなのかな?

 死体を見たショックで泣いてるんじゃなくて……大切な人を失ったショックで泣いてる様に見えるし……。俺の感だけど……。

 

 今はそっとしておいた方がいいんだろうか?

 それともこういう時って慰めた方がいいんだろうか?余計なお世話かなぁ……?

 

「コウ!!?なんでここにいるの!!?」

 

 どうしようかと悩んでいると、玄関から勢いよく旅館へと飛び込んできたミリヤが驚いた声を上げる。

 

「お姉ちゃん!!?ど……どうしたんですか!!?」

 

 そんなミリヤに、俺も飛び上がりながら答える!

 何でミリヤがここに居るんだ!?地竜はどうしたんだろ!?

 

「ちょっとトラブルがね……。ていうか大変な事になっちゃって……。で?コウはなんでエントランスにいるの?ていうか……なんで皆エントランスに集まってるの?」

 

 うえええ。

 まさかミリヤ達の方でもトラブル発生したわけ!?

 

 俺は楽しみにしていた温泉旅行が最悪の方向へと向かっている事に気が付き、その場で気絶してしまいそうになるのだった……。

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