最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第122話 地竜退治(ミリヤ視点)

「旅の疲れも癒えぬ間に、急に呼び出して本当に申し訳ない……」

 

 私達と旅館のオーナー・リュウロウさんとの面会は、まずリュウロウさんの謝罪から始まった。

 

 旅館に到着するなり、私とエイシャは旅館のスタッフに呼び出され、オーナーの部屋へと案内された。

 エントランスで受付をしていた私達は、マリィにコウ達を頼み急いでオーナーの部屋まで行った訳だが……部屋に入った後、オーナーは私達を見るなり冒頭の謝罪をして頭を下げた訳なのである。

 

 そんなオーナーをエイシャは手で制して言った。

 

「いや……こちらこそ申し訳ない。トラブルがあったとはいえ、予定より随分と遅れてしまった。だから頭を上げて欲しい」

「……そう言って貰えるとありがたい……。私は、この旅館『癒し』のオーナー、リュウロウ・クロフジです。どうぞこの度は地竜の退治……よろしくお願い致します」

 

 そう言ってまた深く頭を下げるオーナーのリュウロウさん。

 

 そんなリュウロウさんに私は慌てて口を開いた。

 

「いえ!こちらこそ……よろしくお願いします!私はミリヤ……冒険者をやっていまして……今は勇者エイシャのパーティに加入しています!で……こちらが……」

「知っているとは思うが、勇者のエイシャだ。……先程も言ったが、遅れて申し訳ない」

 

 そう言って私達も頭を下げる。

 

「いえいえ。ご無理を言っているのは私達の方です。では……早速で本当に申し訳ないのですが、今回の依頼内容を説明させて頂きます」

 

 こうして私達はリュウロウさんから今回の依頼について説明を受けるのだった。

 

 とはいえ、事前にある程度の依頼内容は解っているし、さっきエントランスでも受け付けの人に少し説明を受けた。

 様は旅館の近くにまで出没する様になった地竜を、早く退治してほしいということだろう。

 

 そう思っていた私なのだが、事態はそんなに簡単な事では無かった。

 

「実は……先日この辺りで見つかった地竜なのですが……私達が最初に依頼した地竜とは別個体かもしれないのです」

「何だと……?」

 

 リュウロウさんの話によれば、何でも最初に彼らが発見して警備隊に駆除を頼んだ地竜は、赤い鱗で全身が覆われてたらしい。

 しかし先日この旅館の周りで発見された地竜は、鱗が黒く最初の個体より体が大きかったらしいのだ。

 

「……もしかしたら……番いかもしれんな」

「え!?だったらこの辺りを根城にしてる地竜は二匹いるって事!?」

 

 だとすると非常に面倒だ。

 私としては罪のない魔物の命を取るのは余りしたくはないのだが、危険な魔物を駆除する仕事は当然必要なので割り切るしかない。

 

 しかし番いとなると、もしかしたら今回の地竜には子供もいるかもしれない。

 だとすると……私達はその地竜の一家丸ごと皆殺しにしなければいけなくなる。

 

 例え子供だけ生かしておいてあげようとしても……そんな偽善は間違いなく後で厄介事として返ってくるし、そんな三流な仕事出来る訳がない。

 

 かといって地竜の子供を私達の旅に連れて行けるかというと……それも不可能だ。

 

 私の肩にいるジャバ君の様に高い知能を持ったものか、コウのキーちゃんの様に人畜無害な魔物でもない限り人のペットになど出来ないのだ……魔物というものは。

 

 私はリュウロウさんの話を聞きながら、気持ちがどんどん重くなっていくのであった……。

 

 

「気が乗らないなら俺一人で行くが?」

 

 リュウロウさんからの話を聞き終わり、エイシャと二人で現場に向かう途中に呆れた様にエイシャは言った。

 

「い……いきなり何言うのよ!」

「ふん……その顔を見ていれば嫌でも解る。大方番いと聞いて、気乗りがしなくなったのだろう?」

「ぐう……!」

「まぁお前はコウと同じで優しいからな。気が乗らないのは解らんでもない」

 

 特に表情を変えずにそう言ったエイシャを、私は少し意外に思った。

 正直……もっと罵倒されると思っていたのだ。そんな事で気持ちが落ち込むなど、三流もいいとこだ。よくもまぁそんなもので剣の勇者など出来ると思ったな?この無能が!!……ぐらい言われると思っていた。

 

 そんな私の考えを察したのか、エイシャが呆れた様に言う。

 

「お前は俺を何だと思っているんだ?地竜の子供もいるかもしれないからそれを殺すのは忍びない

……などと思っているのだろう?」

「……ごめんね……不甲斐なくて…………偽善者で……」

「だから気が乗らないなら俺一人で行くと言っているんだ。何もお前を馬鹿にしている訳でも、役立たずとも偽善者とも思っている訳でもない。俺は人に害をなすものを一切容赦しないが、だからと言って全ての魔物を殺してしまえばいいなどと思っている訳ではない。たまたまここを根城にしてしまった地竜達には当然同情もある」

「………」

「だが俺はそれを仕事と割り切れる。だが……お前やコウみたいな心が優しい者はそう簡単に割り切れんだろう?だから……適材適所というやつだ。俺一人で地竜を狩りにいくから、お前はその阿保竜と帰ってコウ達を守る……そのほうがいいいだろうと言っているんだ」

 

 ……エイシャの言う通りなのかもしれない。

 正直こんな揺れる感情になっている私では、エイシャの足手まといになりかねない。

 

「グギャギャ?」

 

 肩に乗っているジャバ君が、心配そうに私に鳴きかけ頭を甘噛みしてくる。

 

 そんなジャバ君の頭を撫で、私はやはり旅館に戻るとエイシャに伝えようとして……そのエイシャの後ろに居る魔物に目を取られた。

 

 黒い鎧の様な鱗を全身に纏った地を這う巨体。

 目算に三~四メートルはあるであろう体に、体と同じぐらいの長さを持った尻尾。

 そして……その長い尻尾の先には……鎌の様になった鋭い鋭利な刃があった。

 

 あれは……あれは……地竜……なんかじゃない!!

 

「エイシャ!!ここに巣食っているのは地竜なんかじゃないわ!!」

「!!!」

 

 私の言葉にエイシャは瞬時に臨戦態勢に入り、私の目線の先の魔物を見据えて……目を見開く!

 

「あれは……!!」

「ええ……あれは……巨獣(ギガント)刃竜(サーベルドラゴン)の幼体よ……!」

 

 

 巨獣(ギガント)刃竜(サーベルドラゴン)

 成体ともなれば全長十メートルはくだらない巨竜。

 

 火山を根城にし、マグマを吸って力を蓄えるの生態は地竜に似ているが、その力は地竜とは似て非なるものである。

 なぜなら地竜は、竜と名がついているが決してドラゴンでは無い。

 

 しかし巨獣(ギガント)刃竜(サーベルドラゴン)はれっきとしたまごう事なきドラゴンであり、人の言葉を理解する古代のドラゴンと違う現代のドラゴン。

 知能は低俗な魔物同様に左程高くなく、人間などとコミュニケーションは取れないが……戦闘能力はまぎれもなく最強クラスの魔物。

 

 十メートルの巨体からは考えられない俊敏さで獲物に近づき、尻尾の鋭利な刃でどんな鎧も切り刻む。

 さらには体内にため込んだマグマも放射可能であり、古代竜の様なドラゴンブレスは使えないがそれに類似した事は出来るのである。

 

 先ほど知能は左程高くは無いと言ったが、それはあくまで言葉を理解するなどといった知能であり、狩りを行う狩人としての知能は非常に高く、獲物を捕まえる為にトラップなども用いる器用さも持ち合わせている。

 

 直接戦闘、搦め手……すべてに精通したこの怪物は、人間及び魔族をも獲物として食い尽くす、恐ろしいハンターなのだ。

 

 故に……どんな名声を持った冒険者も巨獣(ギガント)刃竜(サーベルドラゴン)を前にしたらこう言う。

 

「一目散に逃げるね。……え?戦わないのか?……だって?はは!よしてくれよ!まず逃げ切れる事すら普通は無理なのに、戦おうだなんて……。取り合えず逃げながらこう祈るね!『お願いだから、殺すなら首を一発で切って楽に殺してくれ!』……ってね!」

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