最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
ミリヤと別れて一人、
俺の威嚇射撃を足元に受け、幼体は想像通り自分の巣へと戻って行った。
しかし決定的に違うのはその巣の規模だ。
地竜の成体の数倍の大きさになる巨獣刃竜は、当然その巣の規模も数倍あり超巨大な巣穴を作る。そしてその巣穴の出入り口は基本的に一つである。
つまり今から特定する巣への入り口の場所さえ解ってしまえば、それ以外の出入り口は無いのだ。
最悪そこから一方的に内部への攻撃で、
万が一がある可能性も考慮して、やはり万全を期した作戦を練ってから奴らを狩った方がいいだろう。
そこそこ知能の高い
そして………。
「……想像より巣への入り口が小さいな………」
俺は幼体を追って奴らの巣へと辿り着いていた。
成体ともなれば十数メートルはする巨体が出入りするとは考えられないような、小さな巣への入り口は周りの木々でカモフラージュされており、ぱっと見はそこに巣への入り口がある様には見えない様になっている。
なるほど……これなら簡単に
まぁどちらにせよ、巣への入り口を探り出す事は出来た。
俺はそれに満足して、その場に印となる魔術を埋め込み立ち去ろうとした瞬間……信じられないものを目撃した。
なんと
基本的に
故にかの竜の巣穴から魔族が出入りするなど、普通では考えられない。
その魔族は頭に一本の角を持ち、右側だけに羽を持ち、左腕は肩から巨大化しており赤黒く染まっている。だが何より目を引くのは……その瞳だ。
燃えるような真っ赤な瞳は、卓越した戦士をも震え上がらせる力を秘めている様に見える。事実俺自身あの瞳を見た瞬間、感じた事も無い様な恐怖心を感じてしまった。
つまりあの瞳には何かしらの魔術が込められており、恐らくその魔術で相手を威圧出来るのだろう。
そしてその立ち振る舞いから、見るからに百戦錬磨と解る。
恐らく今まで戦ってきた魔族……九天王と呼ばれる魔族と遜色ない力を持っているに違いない。
もしかしたら奴自身も九天王なのかも知れない。
そう思えるほど、力とプレッシャーを持った魔族であった。
あの魔族が
何故なら奴は無傷であり、返り血の様なものも浴びていない。
つまり巣穴では全く戦闘をしていないという事だ。
ならば奴は
だが、そのどちらにせよ
つまり俺達は、
これは思った以上に面倒な事になった……。
俺はそう思い、その場で瞬間移動を発動して一度旅館に戻ろうとして……瞬間移動が発動しない事に気が付いた!
「……!?」
「……俺の瞳を見たのか……人間よ……」
「!!!」
瞬間移動が発動せずに一瞬驚いた時、魔族は俺をその瞳で真っすぐに捕らえて口を開いていた。
「俺の瞳を見たものは、暫く魔術は使えん……。そして……俺のかわいい家族を追い回したのはお前だな……?」
「!!?」
次の瞬間魔族は俺の目の前に立っていた。
それに俺は驚愕して体を強張らす。
何故なら俺は瞬間移動が使えなくなったからといって、油断などしていなかったからだ。つまり気配は消したままであり、そんな俺を確実に捉える事が出来るものなど、今まで黒騎士を置いて他に居なかった……!
「去れ……人間。俺は無益な殺生は好まん……」
「……!そうはいかん……!俺はここに巣食っている
「……そうか……ならば問答は無用だな。俺は家族を守る為にお前をここで倒す」
そう言うが否や目の前の魔族はその左腕を振るってきた!
圧倒的な圧力を感じながらも、俺は懸命にその場から後ろ跳びで瞬時に距離をとる。
そして轟音が鳴り響き、俺が元々いた場所は周りの木々と共に吹き飛び、クレーターが出来ていた。
「っち!!馬鹿力が!!」
俺は咄嗟に聖弓を取り出し、魔族に向かって連射する。
すると魔族はその俺の連射を、左腕を高速で振るって叩き落す。
牽制の攻撃とはいえ、俺の攻撃を無傷で捌くとは……!!
そう歯噛みして俺は矢に渾身の魔力を籠めて弓を構えた時、俺の真上から鋭い斬撃が俺を襲った!
それは十数メートルの巨大な体を持つ、
「っちぃ!!」
すんでのところでその斬撃を避けるが………避けた先に先程の魔族が既に左腕を構えている……!!
「悪く思うな……人間よ……。だがこれも家族を守る為だ……」
その言葉と共に放たれた渾身の一撃を、俺は躱す事が出来ずにもろに食らってしまった……!!
「がっはぁ!!!?」
俺の体は踏ん張りさえする事は出来ず、魔族の一撃の勢いそのままに吹き飛んでしまう。
ぼろ雑巾の様に吹き飛んで転がっていく俺を、
「ぐう!!」
そして嚙みついたまま俺の体を持ち上げると、勢いよく地面へと何度も叩きつける!!
さすがの俺もその攻撃を耐える事は出来ず、なすが儘何度も地面に叩きつけられる。
そして最後に俺の体を投げ捨てると、今度はその鋭利な刃が付いた尻尾を大きく振り上げる。
その凶刃を目の前に、俺は心の中で自身の最後を悟る。
………まさかこんな所で……俺が終わるとは……。
済まない……ミリヤ……マリフィセント……すまない…………コウ…………!!
「待て……アイーダ!殺すな……!」
そんな魔族の言葉を遠くに感じながら、俺は意識を手放すのであった……。