最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第128話 一体何が起ってるの?(ソフィア視点)

 一体何が起っているだろうか?

 この旅館で起きている事件に関して、一番理解出来ていないのは自分だとはっきり断言出来る。

 

 何人か人間が死んでしまったらしいのだが……正直全然興味が無い。

 

 大体にしてこの旅館には、コウの体を癒す為に来たのではないのだろうか?

 なぜ聖女や勇者達はコウをそっちのけで狩りや、推理ごっこに興じているのだろうか?

 

 本当に……人間ってよく解らない……。

 

「なんだか大変な事になっちゃったね……ソフィ……」

 

 部屋でキーちゃんを抱きしめて、項垂れているコウに心が締め付けられる。

 この旅館に着く前はあんなに楽しそうだったコウだが、今や見る影もない……。

 

 正直な事を言ってしまえば人間が何処で何人死のうと興味が無いので、さっさとコウと温泉へ行きたいのだが……何やらそれすらできない状況の様だ。

 

 そもそもの話、この旅館で起こっている事件も自分を迷探偵だと名乗った……名前を忘れたあの男に任せておけばいいのではないのだろうか?

 

 勇者ミリヤは、私達が部屋を出た時にばったり会った迷探偵を殴り飛ばした後、聖女と共に迷探偵を引きずってまたどこかに行ってしまった。

 

 そんなに探偵ごっこが楽しいのだろうか?

 こんなに悲しんでいるコウを放っておいてまで興じる事なのだろうか?

 

 やっぱりそんな人間達に私の伴侶……コウを任せてなんておけない……。

 

 私は項垂れているコウの頭を優しく撫でると言った。

 

「コウ……悲しまないで?きっと勇者ミリヤ達が……事件を解決してくれるよ。そしたら……一緒に温泉行こうね?だから……元気出して?」

「ソフィ……。うん!……そうだね!いつまでもうじうじしててもしょうがないよね!……ありがとう!ソフィ!」

「ふふ。全然大丈夫だよ?コウ……」

 

 私のちょっとした一言で少し元気を取り戻すコウが愛おしい。

 正直事件解決など本気でどうでもいいが、その言葉だけでコウが元気になるなら私は心にもない事を羅列することに抵抗なんて無い。

 

「だから……気分転換に、ちょっと部屋のお風呂に入ろうか?癒しの湯じゃ無いからコウの腕と体力は治ら無いだろうけど……気晴らしにはなるかもよ?」

「うえ!?流石にこの状況でお風呂なんて入っていいのかな!?事件もまだ解決してないし……さっき新しい事件が起きたばっかりだし……」

「……??何か問題があるの??」

 

 うーーん。

 コウの感覚は本当に人間寄りだ。

 

 私としてはコウもゆっくりお風呂に浸かれば本当に気晴らしになると思って提案したのだけれど……どうやら今はそのタイミングでは無い様だ。

 

 さてどうしたものか……。

 

 どうやってコウの気晴らしと、私の欲望(コウと一緒にお風呂に入る事)を網羅しようかと考えていると、部屋の扉がノックされた。

 

「??……誰だろ?」

 

 コウが立ち上がり、扉へ向かおうとするが……私はそれを手を引いて止める。

 

「コウ、部屋の外に居るのは聖女と勇者じゃない。誰か解らないと危険だから、私が対応するよ」

 

 そう言って私は立ち上がり、扉を開けた。

 

 扉を開けた先には初めて見る女が立っていた。……さっきエントランスに皆で集まっている時に居たのかもしれないけど、当然私は覚えていない。

 

 女は私を見ると、笑顔を作り口を開いた。

 

「今、大丈夫?マリフィセントさん居るかしら?さっきの事……ちょっと謝りたくてね」

「???」

 

 いきなり訳の解らない事を言い出した女に私が疑問符を頭に浮かべていると、私の後ろからコウがひょっこりと顔を出して言った。

 

「あれ?シトリーさん?」

「???」

「あら……コウちゃんだっけ?ごめんなさいね?こんな時に……。でも何と言うか……どうしても気になっちゃって。ほらさっき私マリフィセントさんをちょっと悪く言っちゃったでしょ?部屋に戻って冷静になったら、悪い事言っちゃったなぁってね」

「そうだったんですか……。ごめんなさい、今マリィ様はちょっと出てまして……。あと、マリィ様の部屋は隣ですよ?」

「え?そうだったの?貴女達と部屋に入っていくのを見たから、てっきりこの部屋だと思ってたわ」

 

 私そっちのけで会話を進めるコウと女。

 

「そうだったんですか……えっと……しばらくしたら戻ってくると思うんですけど……どうしますか?」

「ふふ。それだったらまた尋ねるわ。ありがとね?コウちゃん……あら?可愛らしい魔物ね?その子……」

 

 そう言ってコウが抱いているキーちゃんを見る女。

 コウはその言葉に嬉しそうに笑顔を作ると言った。

 

「はい!とっても可愛いんです!……あ!魔物ですけど、とってもいい子なので……」

「……キー……」

「ふ……あはは!大丈夫よ!私……魔物に対して偏見とか無いから!それより意外だわぁ……。貴女みたいな子が魔物を嫌がらないなんて……」

「???……私は別に魔物嫌いじゃないですよ……?」

「ああ!別に嫌味とかじゃないのよ?ただ単純に、魔物を嫌う人って多いから……ちょっと意外だっただけよ!それにしても……本当に可愛いわね……その子……」

「キー……」

 

 女は意味ありげにキーちゃんを見ると、少しだけ目に魔力を籠める。

 

 こいつ……何かマインドコントロールの類の力を使う気か?……と思ったが、どうやら念話の類のようだのだ。

 この女、実はキーちゃんの知り合いなのか?随分とねちっこい魔力を籠めているけど……まぁコウに害もなさそうだし放っておくか……。

 

「???……どうしました?」

「う…ふふ。何でもないわ?じゃぁ……私一回部屋に戻るわね?聖女様が戻った頃に……また来るわね?コウちゃん……」

「えっと…はい!」

 

 女は満足したのか、踵を返して去って行った。

 

「シトリーさん……意外と律儀だね。さっき嫌な人かと思ったけど、実はいい人なのかな?」

 

 そう言って可愛らしく首を傾げるコウだが……どうやら私の伴侶の人見る目は絶望的みたいだ。

 

 そもそも違和感だらけなのだ。

 このタイミングで現れること自体違和感だし、キーちゃんに意味ありげに念話を送るし……。

 

 そもそも聖女マリフィセントが私達と一緒にこの部屋に来たのは、エントランスで皆が解散した後だ。

 つまりあの女、先に部屋に戻ったと見せかけて私達を監視でもしていたのか?後、聖女マリフィセントは確かエントランスでの自己紹介で、自分が聖女などと名乗っていない。

 

 何のためにこの部屋を訪ねたのか解らないが……あんな違和感だらけの女が良い奴なはずが無い。

 ……でもそれも正直、コウに被害さえなければどうでもいい事だ。

 

「キー……」

「ん?どうしたのキーちゃん?」

 

 少し声を低くして鳴くキーちゃんを、コウは優しく撫でながら問う。

 

 そんな可愛いコウを見ながら私は、本当にどうでもいいこの旅館の事件が一刻も早く解決する事を心から願うのであった……。

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