最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第130話 誰も彼も怪しい現場(聖女マリフィセント視点)

 突然だが私は人の嘘を見抜くことが出来る。

 心を読む訳では無く、その人が言った言葉が嘘は誠かがなんと無しに解る力を持っているのだ。

 

 例えばエルフの使命などと言って、私達について来たソフィアさんの嘘も当然解っている。彼女にエルフの使命など無い様だ。

 しかし彼女の場合コウ様を慕っているのは間違い無いので、適当な理由を付けてコウ様と離れたくなかったのだろう。……少しドロッとした感情をコウ様に向けている様だが、それは私も同じ事なので見て見ぬふりをしている。

 

 さて、話を戻すが私は人の嘘を見抜くことが出来る。

 つまり……今この旅館にいる人物で、誰が嘘をついているのかが解っているのだ。

 

 まず一番の嘘つきが自身を名探偵と名乗る男、ホズム・エドワード。

 名探偵と自分で名乗っているが、それ自体が自分に対する嘘であり、彼の正体は探偵では無い様だ。

 

 しかし彼は事件の犯人ではない。

 何故なら彼と最初に行動を共にする時に、被害者を殺した犯人に心当たりはあるかと聞いた時、彼は何人か心当たりはあるが、まだはっきりとは解らない……と本心で私に告げたからだ。……それと自分が犯人では無いと。

 

 次に嘘つきなのが、シトリーさんだ。

 ただ彼女の場合、余りちゃんと話せた訳では無いので彼女が事件の犯人かどうかまではまだ解らない。

 それに……何やら彼女は強力な呪符の様な物を所持している様で、それにより少し彼女の感情が読みにくい。

 

 そして……もう一人嘘つきが居た訳だが……その人は、自殺してしまったホランさんだ。

 

 ホランさんが亡くなったシャーロットさんを想っていたのは間違いないが、彼女が殺される理由を何一つ解らない……という訳では無かった様だ。

 しかしそのホランさんも自殺してしまった為、結局彼女が何を知っていたのかまでは解らずじまいとなってしまった。

 

 他にも直接お話していないだけで、嘘をついている人もいるかもしれないが……私としては一番怪しいのはやはりシトリーさんだ。

 やはり一度彼女と面と向かってちゃんと話す必要があるだろう……。

 

 そう思い、ミリヤさんとホズムさんに声を掛けようとした時………私達に声を掛けてくる人物に、私はこれまでに無いほどの警戒心を抱いた。

 

 その人物とは……!

 

「お前たちはこんな所で一体何をしているんだ?」

 

「あ!!エイシャ!!戻って来てたのね!!こっちも大変な事になったのよ!?ね?マリィ!」

 

 そう……。

 私達三人がエントランスで事件の話し合いをしている時に現れた男……エイシャ。

 

 彼を見てミリヤさんは駆け寄るが……私は一目で解った。

 この男は……勇者エイシャなどでは無い!

 

 だから偽者のエイシャに駆け寄るミリヤさんを止めようと声を上げようとして……

 

「待ってくださいマリィさん」

 

 私の肩を掴み、小声で私を制するホズムさんに止められてしまった。

 

「!!?な……!」

「おっと慌てないで。あの偽物に私達が気付いていると悟らせないで」

「!!!」

「大丈夫です。あの偽物がミリヤさんに危害を加える心配はありませんよ……まだ……ね?」

 

 この男!

 今現れたエイシャが偽物と解っておきながら、放置するというのだろうか!?

 

 何故ホズムさんが、あれを偽物か解ったのかはさておき、勇者になり替わろうとする危険な人物を放っておいていい訳がない……!!

 

 しかし……私は直ぐに冷静さを取り戻し、肩の手を払う。

 

 そして心の中の憤りを隠しながら、声を潜めてホズムさんに話しかけた。

 

「どういうおつもりですか?」

「っふ!流石マリィさん!!もう犯人が解ってしまうとは!!!」

「………は?」

 

 いきなり大声を上げたホズムさんに私は面を食らう。

 

「ですが私も名探偵として、負けられませんなぁ!!それに!!どうやら勇者エイシャ殿が帰還なされて役者も揃った様だ!!!」

 

 芝居がかった仕草で大きく手を広げると、ホズムさんは偽のエイシャに言った。

 

「こうしてちゃんとお話しするのは初めてですな?勇者エイシャ殿!!私は名探偵ホズム・エドワード!!どうぞ、よろしくお願いします……!」

 

 そう言って、ウインクするホズムさんに偽エイシャはうんざりした様に答えた。

 

「貴様などどうでもいい。それより俺は今からやらなければいけない事がある。……ミリヤ、コウは今部屋か?」

「え?……ええ。今部屋で待ってもらってるけど……」

「そうか……なら話は早い。コウに少し手伝ってもらいたい事が出来てしまった」

「手伝ってもらいたい事?一体何よ?」

 

 訝しげに聞き返すミリヤさんに、偽エイシャは大きく頷くと言った。

 

「どうやらあの刃竜は一筋縄ではいかない様でな……。コウの力があればなんとかなるかもしれん」

「………は?……あんた……本気で言ってんの……?」

「……?白銀の(エンシェント)ドラゴンであるコウの力を借りたいという事が、そんなに可笑しいか?」

 

 偽エイシャが疑問げに首を傾げるが……普通にあり得ないだろう。

 

 こう言っては非常に……非常にコウ様に失礼だが………、今までの出来事でコウ様の白銀の(エンシェント)ドラゴンとしての力が役に立ったのは、アイドルの娘達を癒してあげた時と、コウ様の中の白銀の(エンシェント)ドラゴンが表に出た時ぐらいの筈だ。

 

 コウ様の私たちでの絶対的な立ち位置は、白銀の(エンシェント)ドラゴンとしての力では無く、私たちのメンタル向上と安定が主なのだ。

 可愛らしいコウ様に癒されて私たちはやる気を出し、結果戦う気力と活力が生まれるのだ。

 

 そしてそんな事は勇者エイシャも百も承知の筈なので、この偽物は勇者エイシャの記憶は持っていないということになる。

 

 そんな偽物に、ミリヤさんは食って掛かろうとして……

 

「ちょうどいい!!コウさんだけと言わず、皆さんを集めましょう!!もう日も暮れてきましたし、これ以上事件を長引かせるのも忍びない!!何故なら……ここで私が事件を解決せねば、また次の犠牲者が出てるかもしれませんからな!!」

 

 ハイテンションで偽エイシャとミリヤさんの間に割り込み、身振り手振りを踏まえてホズムさんは言葉を続ける。

 

「外の刃竜(サーベルドラゴン)を早めに対処せねばいけないのは百も承知。しかしまずは旅館の殺人事件を解決するのが先決!!んなぜならぁ!!今、旅館の人達に最も近い危険はこの旅館で起きている殺人事件なのですから!!……勇者殿ともあろうお方なら、それ位お分かりの筈ですよね!?」

 

 そう言ってホズムさんは挑発的に偽エイシャに言うと、偽エイシャは顔を顰めて答えた。

 

「俺はこの旅館で殺人事件が起きているなんて知らなかった。……だが……貴様の言う事も一理あるな……。事件が解決するなら、先にそっちを先決すればいいだろう……」

「流石は勇者殿!!!物わかりが大変よろしい!!んでは、善は急げ!!マリィさん!ミリヤさん!申し訳ありませんが、旅館にいる皆さまをエントランスに集めていただけますかな??……私はまだ少し勇者殿とここでお話がありますからな!!」

「はぁ?ちょっと私も「分かりましたわ。ミリヤさん……行きましょう?」ちょっとマリィ!?」

 

 私はミリヤさんの言葉を遮って、踵を返し客室に向かう。

 そんな私をミリヤさんも抗議の声を上げながらついて来てくれた。

 

 今、あの偽エイシャを自由にさせるのは危険だ。

 故にホズムさんは偽エイシャをエントランスに引きつけ、私達に旅館の人間を集めるよう指示したのだろう。

 

 本物の勇者エイシャの消息も気になるが、彼ならば大丈夫だと一先ず結論づけておく。

 それよりも……この旅館での事件解決と、あの偽勇者をどうするか……だ。

 

 私は客室へ向かいながら、あの名探偵が本当に事件を解決してくれるのを心から願うのであった……。

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