最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
第145話
エルセリオ王国の王都エルセリオ。
首都であるセントラリアよりも少し西側に位置するこの王都は、かなり発展しているセントラリアと違って、エルセリオ王国の歴史的建造物が立ち並ぶ古い町並みが特徴の都市だ。
正にファンタジーど真ん中!!って感じの中世ヨーロッパ(多分)っぽい街並みの中心には、これもかと目立つ王城が聳え立っている。
その王城から少し離れた場所に、王都一の学園、フォストニア学園という大きな学園がある。
古い歴史を持つこの学園は、勉学はもちろんの事、騎士を育成する場所、警備隊へ入隊する為の施設、そして魔法を学ぶ事も出来る、正に王都だけとは言わずこの国一番の学園なのだ。
そんな学園の普通科の四年教室の教壇に……何故か俺とソフィアは立っていた。
「はい!急遽前任のマクシエル先生がお休みになった為、今日から皆さんのクラスを受け持つ事になった、シスタ・フランソワです!新任なんで色々と至らない所はあると思うけど……どうぞよろしくね!!」
俺達の隣に立ってクラスメイト達に話しかける、ちょっとウェーブがかかった茶髪が特徴のすらっとした女性……シスタ・フランソワの言葉を聞きながら、俺は未だに混乱していた。……なんでこうなってるの?
だが……そんな俺の混乱などお構いなしに、彼女は横に立っている俺とソフィアに向かって言った。
「そして……今日から君たちのクラスメイトとなる二人を紹介するわね?コウさんとソフィアさんよ!二人とも、挨拶してくれるかしら?」
シスタさんに促される様に、俺は一歩前に出て…… 興味津々に俺達を見つめるクラスメイト達に緊張しながら言った。
「えっと……コウです……。よ……よろしくお願い……します……」
めっちゃどもっちゃったよ。そんな俺に続くように、ソフィアも口を開く。
「ソフィアです。よろしくお願いします……」
ソフィア……俺と違ってまったく緊張してないな!?すごくない!?
そんな俺達の挨拶に、クラスメイト達は口々に言う。
「銀髪!!綺麗な髪!!」
「この時期に編入なんて……二人とも一体何処からきたのー?」
「いやっほう!!二人とも美少女だぜ!!賭けは俺の勝ちぃ!!」
「ちょっと何言ってんのよ!?二人ともごめんね!!この馬鹿が!!」
「へぇー。なんか男に媚びてそうな奴らね。私は嫌いだなー」
「ねー。今まで顔だけで苦労無く生活してましたって感じで……気に入らないわよねー」
「君達彼氏とかいるんですかー!!」
「それめっちゃ重要じゃん!!どーなの!?二人とも彼氏いんの!?」
「あの銀髪の子……まさか!!
「え!!?まじで!!?あのちょっとしか居なかった伝説の!?」
うえええええええ。
誰が何言ってんのか分かんないけど……なんかカオスな状況になってきたな……。
「皆さん!!質問はいっぱいあると思うけど……取り合えず後にしてくれるかしら!?話を進めたいから!!」
そんなクラスメイト達にシスタさんは声を上げるが……シスタさんが新任だと舐めているのか、誰も言う事を聞いてくれない所か……ますますなんかヒートアップしていく!!
そんなカオスな状態になった教室に、突如パンッ!!と乾いた音が鳴り響く。それは一人の女子が、クラスメイト達に聞こえる様に手を叩いた音だった。
「皆さんお静かに。彼女達への質問は、後で私が取り仕切りますので話を進めましょう」
眼鏡をかけたいかにも委員長!!って感じの女の子が、静かな声で言う言葉に……それまで騒いでいたクラスメイト達は鳴りを潜める。
おお!!すごい!!
彼女がこのクラスのリーダーなのかな!?
そんな委員長(仮)にシスタさんが少し涙目になりながらお礼を言う。
「ありがとう……えっと」
「ティファです。このクラスの委員長のティファ・ドーモンです」
「ありがとうティファさん!!……ごほん!では……改めまして、今日からよろしくお願いしますね?皆さん!!」
そう言って頭を下げるシスタさんに釣られる様に、俺達も頭を下げる。
しかし……何でこんな事になってんだ?
何を血迷って俺達が学生なんてやることになったんだ?……てゆーか取り調べとかどうなった??
俺は興味津々のクラスメイトの視線に嫌気がさしながらも、何故こんな事になっているのか、経緯を思い返すのであった……。
◆
結局ゆっくり温泉に入る事が出来なくなって、泣く泣く旅館を離れる事になった俺達は、警備隊の人達が用意してくれた馬車に揺られて王都を目指していた。
因みに俺達勇者御一考+ホズムさんは結構な人数なので二つに分かれて馬車に乗っている。
先頭車がエイシャ、マリィ、そしてホズムさん。次の二号車が俺、ミリヤそしてソフィアだ(あとキーちゃんとジャバ君)。
あとその後ろに旅館の従業員除く残りの旅館のお客さん(スティーブさん御一考)が乗っている馬車がついて来ている。
そして警備隊の人達が駆る馬に先導されながら、俺達の馬車は王都へと向かっていた訳なのだが……ここでちょっとしたトラブルが起こる。
なんと俺達が乗車していた馬車の車輪が、山の峠の途中で……スポーン!!っと外れちゃったのだ!!
いやいやいやいや!!何やってんの!?メンテとかちゃんとやってたの!!?
これじゃ山を越える事なんて出来なくなった俺達は、急遽別の馬車に乗せてもらう事になったんだけど……四人乗りの馬車が後二つしかないので、どう頑張っても一人余っちゃうって事になった。……まぁ詰めて乗ればなんとかなるかもしんないけど……。
んで、そんな無理する必要も無いし、その峠抜ければ直ぐに王都だったので、隊長の人が王都で待っている別の警備隊の人にすぐに連絡してくれて、別の馬車を寄こしてくれてる事になった。
そもそもこっちにいる俺達三人のうち、ミリヤを除いて取り調べはしない予定だったそうなので(やった!!まさかの黒騎士バレの危機がもう終わった!!)ミリヤだけ前の馬車に乗って俺達は警備隊の人達に護衛してもらって残ろっか?って話になったんだけど、流石に俺とソフィアだけは危険すぎるということで……ミリヤ含めて三人でこの場所に残る事になった訳だ。
ならば自分たちもとエイシャとマリィも残ろうとしたが……流石にそれはホズムに説得される形でしぶしぶ先に行くことになった。
なのでここには今、俺達三人(とキーちゃんとジャバ君)と、一緒に残ってくれた警備隊の人二人の計五名が、替えの馬車がやってくるのを待っているのである!
そしてミリヤとソフィア、そして警備隊の人の一人……女性の隊員のセシルさんを含めて四人で談笑していると……突然雨がぽつぽつと降ってきたのだ!!
慌てて雨宿りする為、山を下っていると……発見してしまったのだ!!山賊に襲われている馬車を!!
すぐさまミリヤと警備隊の人達は剣を抜き、襲われている人を守る為山賊達へ向かって行った。
そして……その時、俺は襲われている女性と目が合ったのだ。
その彼女こそ、後に俺達が編入させられる事となるフォストニア学園の学園長の娘、シスタ・フランソワで、彼女と関わった事で……陰謀渦巻く王都エルセリオの事件へと巻き込まれていくのだが……この時の俺は、そんな事になるなんて思いもしていなかったのである……。