最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第12話

 俺は今、緊張の面持ちで市長の部屋で立っていた。

 後数分もすれば、この部屋に勇者がやってくるのだ。

 

 あれからあっという間に時は過ぎ、とうとう今日という日を迎えてしまった。

 

 はぁぁぁぁ、やだなーーー。

 

 正直今にも逃げてしまいたい気持ちを懸命に抑えている。

 

 俺は今、皆の協力のおかげ(怒)でめいっぱいおめかしして勇者を待っているのだ。

 それはそれは気合を入れて俺をコーディネートしてくれた皆には、感謝と血の涙が止まらないね。

 そんな俺を見てだろうか?隣で立っているミリアも大変上機嫌だ。

 

「コウ。そんなに緊張しなくても大丈夫よ?天弓の勇者は結構いいやつみたいだし、多分悪い様にはならないわ」

 

 絶賛今現在悪いようになってるんですけど、そこんとこどうなんですかね?

 などと下らない事を考えつつ勇者を待っていると、市長の部屋の扉がノックされた。

 

 多分勇者御一行だ!

 やばいなんかめっちゃ緊張してきた!お腹痛い!!ついでに頭もちょっと痛い気がする!!

 

「どうぞ!!お入りください!!」

 

 市長の言葉と共に扉が開かれる。

 

「っつ!!」

 

 そこに立っていた勇者を見てミリヤが驚いたように反応するのが分かった。

 まぁ無理もない、だってそこに立っていたのはどえらいイケメンだったからである。

 

 お忍び(?)で教会に来た時と違い、黒い髪をオールバックにセットしており、顔を更にメイクしてんのかな?あの時より更にイケメンに見える。

 カッコイイ装備を身に纏い、他者を寄せ付けない圧倒的オーラを放ちながら勇者はゆっくりと市長の部屋に入室しようとして……俺を見て固まった。

 

 なんぞ俺に何かついてるか?

 

 最初の会った時の様に硬直して目を見開く勇者に、俺は当然として周りの人達も困惑する。

 そしてそんな勇者に合わせて周りまで沈黙してしまう。

 

「あの……勇者様……?」

 

 その沈黙を破るべく市長がおずおずと勇者に話しかけると、勇者はハッとしたように市長を見た。

 そして目を閉じ頭を振ると、改めて市長の部屋へ入室したのだ。

 

「すまない……少々取り乱したな」

「いえいえ!お待ちしておりました勇者様!さぁさぁそこにお座りください!!」

「ありがとう……」

 

 うーん。

 やっぱりこの勇者はいいやつっぽいな!

 俺はちゃんとお礼を言ったり謝ったりできる奴はいいやつだと思ってる。

 

 勇者は市長に促され、ソファに座ると俺達を見据えた。

 勇者に見つめられると、何か全てを見透かされてるみたいで落ち着かない。

 

 俺はそわそわしながら勇者から目を逸らし周りに目をやった。

 

 ん?

 そういやこの勇者って仲間いないのかな?

 一人で部屋に入ってきたけど、部屋の外で待機している兵士の人達が仲間なのだろうか?

 

 それともまさかのボッチ勇者だったりするのだろうか?

 

「……仲間……は?」

 

 あ……あほーーー!!

 

 思ってたことすぐ口にする性格でもないのに、何でこういう時だけ口から出るのだろうか!!?

 案の定、市長室は俺の一言で完全に固まってしまった。

 ミリヤは目を見開き俺を凝視し、市長は口から泡を吹き白目を向いて気絶していた。兵士の人達は俺を射殺さんとするほど睨みつけている。

 

 ……泣きたい。とゆうか少し泣いた……。

 

「く……くく。あはははははは!!」

「ゆ……勇者様!!申し訳ありません!!この子に悪意はないのです!!どうか……!!」

「くくく……。いや市長、何の問題もない」

「勇者様……?」

 

 一瞬の気絶から覚めた市長が勇者に詰め寄り懇願するが、それを手で制して勇者は立ち上がり俺の前へと立った。

 ミリヤが俺を守るために動こうとするが、それよりも早く勇者がミリヤを手で制する。それだけでミリヤは威圧されて動けなくなってしまった。

 

 勇者を除く誰もが緊張していた。かく言う俺も、小鹿みたいにプルプル震えている。

 

 終わった……。

 

 いくらこいつが横暴じゃない勇者とは言え、今のはないだろ。

 お前ぼっちなの?って言われたようなもんだ。俺が勇者ならブチ切れるね。

 

「ご……ごめんなさい……!」

 

 きゅっと目を閉じ必死に謝る。

 正直謝って許されるかどうかは分かんないが、謝るしかもうない。

 

 すると、目を閉じ震えている俺の頬に何かが触れた。

 驚いて目を開けると、それは勇者の手だった。

 

「何も謝ることはない……。お前の言う通り俺は仲間を持っていないからな。だからそんなに怯えなくても大丈夫だぞ?コウ」

「……っあ……」

「お前たちもそんなにコウを睨むな。怯えてしまってかわいそうだろうが」

 

 勇者は兵士たちを睨みつけると、兵士たちは慌てて俺に頭を下げた。

 

「申し訳ありません!!」

「い……いえ!悪いのは私です……!ごめんなさい!」

 

 正直完全にこっちが悪いので謝られても困る!!

 それにしても懐の広い勇者様だ。マジでこいついい奴だな。

 

 それはそうとそろそろ顔に置いた手をどけて欲しいのだが、俺が悪いから文句も言えない。

 ついでにミリヤが勇者を射殺さんばかりに睨みつけてるのもどうにかしてほしい。

 

「コウ」

「は……はい!」

「俺の名前はエイシャだ。……次に会った時に名乗ると言っただろう?俺の事を呼ぶときは名前で呼んでほしい」

「え……エイシャ様?……」

「様はいらない。エイシャと呼べ」

 

 は?無理に決まってんだろ何考えてんだ?

 

「無理です……!」

「む?なぜだ?」

「恐れ多いです!……私なんかが呼び捨てで……呼べません!」

 

 マジで勘弁してくれ。

 この人勇者で王子様なんだろ?そんな人を呼び捨てにするなんて、例え本人が許しても周りが許さないだろう。

 

「……ふむ。まぁ君からしたらそうか……。仕方がない、君を困らせたいわけじゃないから様付けでもかまわない」

「……ありがとう……ございます」

 

 はぁぁぁぁあ。

 心の中でデカイため息が出る。

 

 この勇者はいいやつだが、滅茶苦茶なプレイボーイと言う事は分かった。

 素行は悪くはないのだろうが、多分行く先々でエイシャガールを作ってると見た。現地妻というやつだ。

 そしてこの街で栄えあるエイシャガールに選ばれたのが、俺だというわけだ。多分。知らんけど。

 

 勘弁してほしい。

 正直体が女になって早二年、他の女性の裸とかにもう興奮することは無くなった。

 なんか性欲が一気に萎んだというか、女性を見ても同性と感じるからか女性に対して欲情とかしなくなったのだ。

  ミリヤとかとお風呂に一緒に入るのも、最初は罪悪感とか恥ずかしさとかでやばかったが、今ではちょっとハズイだけで一緒にお風呂にだって入れる!!

 

 だが、だからと言ってだ!!別に!!男が好きになった訳じゃねぇ!!!

 それだけは声を大にして言いたい!

 

 勇者の事はイケメンだと思うし、カッコイイとも思う。

 しかしだ!!だからといってトキメクかと言えばノーである!!

 ……ここまで考えて、全部俺の勘違いだったらめっちゃ恥ずかしいな。

 

 そもそもこんな心が男なのか女なのかよくわかんなくなってる奴を好いても百害あって一利なしだ。

 

 またぐるぐるよくわかんない思考になってきた。正直もうキャパオーバーなのだ。

 なんだか目も回ってきてる気がする。ぐるぐる……ぐるぐると……

 

「コウ……?おい……大丈夫か?」

「……!!!どいて!!」

 

 勇者とミリヤの声が遠くに聞こえる。

 

「コウ!!コウ!!……大変!!すごい熱だわ!!……コウ!コウ!しっかりして!」

 

 ミリヤの声を遠くに感じながら俺の意識はフェードアウトした。

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