最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「シスタ!!無事で良かった!!山賊に襲われたと聞いた時は、肝を冷やしたぞ!!」
「お父様!!ご心配おかけしました!!」
三年ぶりの再会を果たした大好きな父と強く抱き合う。
帰省途中いきなり山賊に襲われて……もうダメかと思っていたけど、命からがら救われてこうやって父と再会出来たのは、私を助けてくれたミリヤさんと……私を癒して(心も体も!!)くれたコウちゃんのお陰だ!!
「怪我は……無いんだな?もしどこか痛むなら病院に……」
「それは大丈夫です!コウちゃんが私の怪我を癒してくれましたから!」
「コウ……?それは……」
「感動の再会の所悪いが、待たせている人たちがいる。故に積もる話は後にしてくれ」
そう言って現れたのは……凄まじいイケメンさんだった!!このお方は……!?
「申し訳ありませんエイシャ様。シスタ……悪いが話は後だ……。一度家に戻ろう」
エイシャ……その名前って、まさか勇者エイシャ!!?
隣国の王子様にして聖弓に選ばれた勇者様が、なんでこんな所に!?
私は混乱しながらも父の言う通りについて行くと……そこにはコウちゃん達が私達を待ってくれていたのだ!
「待たせたな」
「ほんとよ!待ちくたびれて、コウ寝ちゃってたんだからね!」
そう言ってニヤリと笑うミリヤさんと……その隣で、少し眠そうに眼を擦ってるコウちゃん!!可愛い!!
「では……一度我が家に皆さまを案内しましょう。娘を助けて下さったお礼も兼ねて、今日は我が家に泊まって下さい」
「そうか……。それはありがたい。……ミリヤ達もそれでいいな?」
「もちろん!ありがとうございます……フランソワ卿」
そう言って父に頭を下げるミリヤさんに続いて、コウちゃんも慌てて頭を下げる。可愛い!!
コウちゃんの可愛さに悶えそうになっている私を余所に、エイシャ様含め皆さんは父が用意した馬車に乗り、三年ぶりの我が家を目指すのであった。
こうして私は、山賊に襲われるというアクシデントはあったけど……無事に故郷に帰省する事が出来たのだ!!
◆
さて、今回の私の帰省の理由はもう説明した通り、急遽諸事情で教鞭を取れなくなったというマクシエル先生に替わって、フォストニア学園の普通科四年生の臨時教師として抜擢された為だ。
私の夢はフォストニア学園の教師になる事だったので、突如降って湧いたチャンスに私は大喜びだった。
このチャンスをものにして……いずれ臨時では無く、正式に教師としてフォストニア学園に席を置きたい!!……だからこそ、私は全力でこの臨時教師としての仕事をやり切ってみせる!!!
ちなみに……フォストニア学園はこの街……いや、この国一番の学園だ。
王都の中心部だというのに、広大な敷地を持つこの学園には様々な学科が存在する。
その中で普通科とは、いわゆる庶民向けの学科なのだ。
貴族向けの学科である、貴族科とは違い誰でも入る事の出来る学科なので、生徒の数も非常に多く、全部で八組もあるのだ。因みに私が受け持つのは三組である。
その普通科で優秀な成績を収めたものは、庶民でありながらそのまま騎士課や進学課……その他様々な分野へと羽ばたける可能性がある為、こう言ってはなんだが、特に勉強もせず貴族課に入っている生徒達と比べてやる気のある生徒が多いのが特徴でもある。……まぁ私は在学中貴族課だったので、他から見ての感想なのだが……。
ともかくそんな頑張っている生徒達のサポートをする為に私達教師は居るのだ!!臨時とはいえ……全力で彼らを支えないと!!
そう思うと……明後日から教壇に立つのだが、今から気合が入る!!
馬車に揺られながら実家へと戻る道中……私は既に明後日の仕事の事を思い、気合を入れ直していた!!
そしてこれは私の悪い癖なのだが……頭の中で何かに没頭すると、他の声があまり聞こえなくなる癖がある。
だから馬車の中で父から色々聞かれたり、言われたりしていたのだが……私は全て生返事をしていたのだ。
そしてこの生返事したことが……後になって色々大変な事になってしまうのだが、私はその時明後日の事で頭がいっぱいいっぱいで、あんな事になるなんて……思いもしていないのである。
◆
その後、無事我が家に到着して、母との再会も済ませた私は……違う馬車から降りてきたコウちゃん達を案内する為に、一度意識を切り替える。
ああ……それにしても……まさか生コウちゃんがこんなに近くに居るなんて……。不謹慎だけど、たまには山賊に襲われるというイベントも悪く無いかもしれない!
今夜は何としても私の部屋にコウちゃんを招いて……コウちゃんとパジャマパーティしちゃったり!?もしくは……一緒に寝ちゃったり!!!?
なんて思っていた私なのだが、その思惑は父によってあっさり打ち砕かれる。
私はもう疲れているだろうと、父は家に帰ってすぐに使用人に言って私をお風呂へ連れて行かせて……そしてそれが終わったら寝室へ行く様に言ったのだ!!
その間にお客様達……つまりコウちゃん達は使用人達によって案内されて……私とは別々の部屋を用意されていた!!酷い!!
結局コウちゃんとあんまりおしゃべりする事は叶わず、私は寝室に叩き込まれ……今日はもう仕事の準備も禁止だと、無理やりベッドに寝かされたのだ!!
今日は色々ありすぎたし、明後日の仕事の事もあるし……コウちゃんの事もあるしで、眼が冴えてそう簡単に寝れる訳ないでしょ!?
そうして私はベットの中で悶々と不満を募らせる事になるのである!!…………すやぁ。
◆
「アナスタシア……お前が我が王族最後の希望だ……。モンルミエールはまだ滅んでなど居ない。いずれ奴らの悪事を明るみにして、必ずまたこの国を……奴らの手から取り戻す事が出来る……」
燃え盛る業火の中、一人の男性が私に言っている……。この人は……誰……?
「この国を救う事が出来るのはお前だけだ……アナスタシア。モンルミエール無くして我が国は無し。我々の力は神々の授かった非常に希有なものだ。だが……奴らはそれを求めてお前の命を狙ってくるだろう……。赤子のお前にこんな事を言ってもまだ解らないだろうが……お前の記憶は……潜在意識はきっとこれを覚えている。……お前はこれから私の友人の娘として、奴らの目を欺いて過ごして行くだろう……。だが忘れるな!お前は神に選ばれしモンルミエールの血筋!!いずれ必ず……この国を救う光なのだ……!!」
……突然そんな事言われても困ってしまう。
私にそんな凄い力なんて無い。だって……私は……私は………………………私は一体誰なんだ?
◆
「……………こっわ……」
私はガバリとベッドから飛び起き、冷や汗を拭った。辺りを見渡すとまだ暗く、どうやら今は夜中の様だ。
何、今の夢……。悪夢?それとも……私の記憶??
なんだろ。でも……今の夢の事はあんまり考えない方がいい気がする。
だって……今の夢の事を考えれば考える程……頭の奥がチリチリと痛むのだ。だから………私は……。
◆
そうしているうちにまた寝てしまった私は、今度目が覚めた時はちゃんと朝になっていた。
そして……夜中に見た悪夢の事などすっかり忘れてしまっていたのだ。
それは唯々寝ぼけていただけからか……それとも……………………………。何故か頭の片隅に靄がかかったような……そんな気がした。