最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「なるほど……確かに引っかかりますね……」
休日。王都の中でもお洒落で雰囲気の良いと評判(アンナ曰く)で、俺はホズムさんと向かい合って座っていた。
「まぁそのティファさんの言う通り、事件の当事者或いは目撃者しか事件の概要を詳細に把握する事は出来ないでしょう……。とはいえ、少し調査を進めればその状況は自ずと見えてくるものなのですよ」
「??……どういうことですか?」
「ふふ。何も全てを把握している人間が居る必要は無いのですよ。その事件が起きたのはつい最近なのでしょう?」
「はい……そう言ってました」
「そのつい最近というのが味噌でしてね。つい最近と言っても数日前から一週間ほどの間位をつい最近と言うでしょう。そして、それ位の期間があれば、警備隊に行方不明届けが出されて……そこから調査していけば、少しずつですが状況が把握できる場合がある」
そう言ってホズムさんは人差し指を立てる。
「大勢の男たちがどこかに行くのを見た。そういえばそいつらは女性を連れていたような……。など、少しずつ調査を進めれば答えに辿り着く。ましてや夜とはいえ犯人グループは大勢の男性達だった……。大勢で行動するとなると、それなりに目立ちますし……少しは目撃情報があるでしょう」
「……なるほど……」
「コウさん達は、それをお友達に伝えた教師ないし教師の情報源を疑っている様ですが……まぁ正直あまり関係ないかもしれませんよ?警備隊へ取材した新聞記者などから情報が一般人に漏れるケースなんてザラにありますからね!!まだ記事にしていなくても!!」
ううむ。ホズムさんの言う通りかもしんない。
だって結局俺達だってアンナからの又聞きだし……それで勝手にその教師を怪しいなんて推理ごっこするのは良くないよな!!
「ですがまだ行方不明というのは少々気になりますね。……分かりました!その事件、私も少し調査してみましょう!」
「!!……ありがとうございます!」
「いえいえ。まぁ正直私も暇ですしね!」
そう言って朗らかに笑うホズムさんを見て、俺は少し安心する。
ホズムさんは俺が今まで出会ってきた大人の中で、言動は怪しいし、何でも見透かしてそうでちょっと怖い事は多々あるけど……それでも頼れる大人だと思う!
それに自称だけど名探偵だし、事実前回の旅館の事件だって見事解決してみせたのだ!!
だからそんなホズムさんが事件を調査してくれるって言ってくれると、何だかもうその事件も解決するんじゃないか?って思えるのだ!!
俺が安心して息をつくと、それを見てホズムさんも満足げに頷く。
「コウさん、貴女達は今、仮にとはいえ学生だ。学生がこんな危険な事件をあまり気にする事はないですよ。……あ!!当然気にするなと言っても、事件ではなく夜道を女性だけで歩かないってのは気にしてくださいね?お友達に事件を教えた教師も、とにかく夜道を危険だから出歩くなって意味でお友達に伝えたんですからね?」
「はぁい。わかりました」
「……貴女は少し危なっかしい所がありますからねぇ……。普段ボーっとしているのに、思い立ったら突拍子もない行動をしてしまうというか……」
な!!失礼な!!そんな事ないぞ!!……無いよね?
その後取り合えず事件の話はそれまでとなり……話はホズムさんが俺に話したかった事についてになった。
「さて……エイシャ殿達も交えてお話するつもりだったのですが……まぁ彼らも急用ですし、しょうがないですね。この話はどちらかと言うとコウさんの方が関係ありますし、貴女に先にお話ししましょう」
そう言うと、ホズムは改まって俺に向きなおり……真剣な眼差しで言葉を続けた。
「実は私は折り入ってコウさんにお願いがあるのですよ」
「お願い……ですか?」
なんだろ?ホズムさんから俺にお願いなんて……。
「前エイシャ殿も言った様に、私は元・槍の勇者をしておりました……。そして、私は聖槍を奪われたんですよ……双子の弟……マキシムに……ね」
「奪われた……!!」
そういやそんな事言ってな!!
何かあの時色々ありすぎて、スルーしてたけど……聖槍奪われたって大事件じゃね!?ていうか奪える物なの!?聖槍って!!
「我々は一卵性双生児 でしてね。ぱっと見ではどちらか判断できない程似ているのです。……まぁ見た目だけですけどね……。……それを利用して、マキシムは私から聖槍を盗み……そして見事、聖槍の勇者となったのです」
「えええええぇ……」
なにそれぇ……。
いや言いたい事は解るけど、そんなガバガバなシステムなの?聖なる武器に選ばれるのって。
いくら一卵性双生児 だからって……ていうかこの世界に普通に一卵性双生児って言葉あんだな……。まぁいいや!いくらそっくりに双子だからって、聖槍も間違えるって事あるの!?DNAで判断してるの!?
「そ……そうなんですか……。でも、それなら普通に奪い返せばまた、聖槍を取り戻せるんじゃないですか?」
「はは!コウさんの言う通りなんですけどねぇ……。それがそうもいかなかったんですよ。いくら私が本物のマキシモだよ言って聖槍を奪い返しても……何故か聖槍は反応しない所か、奴に……マキシムの元へと戻った」
「ええ!?な……なんでですか!?」
「まぁ魔術による呪いの類なんでしょうが……ともかく私はそれで、名前も地位も……そして仲間も全て奪われた……」
「ホズムさん……」
悔しそうに肩を震わせるホズムさんに……正直かける言葉が見つからない。
だって……ホズムさんは普段飄々としているけど、そんなホズムさんが本気で悔しがってる姿をみて、軽はずみな言葉をかける事なんて出来ないからだ……。
どうしよう……。
そう思い、かける言葉を探していると……今まで俺の隣で、話に興味なさそうに黙って座って、スイーツを食べていたソフィアが口を開いた。
「で?そんなわざと同情を引くような言い方をして、貴方はコウに何をしてほしいの?」
「ちょ!?ソフィ!?そんな言い方……!」
「コウ……この人別に悲しんでないと思うよ?ただコウに同情引いて、話を有利に進めようとしてるだけでしょ?」
そう言って気だるげにホズムに目を向けるソフィアだが……そんな筈ないだろ!?
聖槍も地位も仲間すらも奪われて、悲しくも悔しくも無いなんて事ある筈ない!!
そう思いホズムに目をやると……ホズムはパッと表情を変え口を開いた。
「バレましたか?いやぁ迫真の演技だと思ったんですけどね?……まぁ正直私は聖槍を奪われてたのは大して気にしていなかったんですよ」
「な……な……!!」
「だって勇者の使命とか面倒でしょ?元々地位はあんまり気にしていませんでしたし、恐ろしい魔族と先頭切って戦う戦う必要も無くなったし……逆に良かったんですけどね?」
あっけらかんとそう言ってのけるホズムに、俺は開いた口が塞がらない!!
な……なんて奴だ!!同情して損したじゃん!!
「ですが……最近のあの男の行動は余りにも目に余る。必要以上に横暴になり、地位にふんぞり返って遊び惚ける弟を、これ以上見て見ぬ振りは出来なくなってしまったのです」
「……そうなんですか……?」
「ははは!そんな目で見ないでくださいよ!コウさん!……これは本当に本心です。流石に血のつながった兄弟の横暴をこれ以上放置はできない。故に……コウさんにして欲しいのは……勇者の選定のやり直しなんですよ」
「……!!!」
勇者の選定のやり直し……。
それってシェンがクロスから聖剣を取り上げて、ミリヤを新しい勇者に選んだあの……!!
って事は……この人、俺が
俺は真意の読めない目で、にこやかに笑うホズムさんを見て、戦々恐々と体を震わすのであった……!