最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第156話 黒騎士(シスタ視点)

「はぁ……はぁ……はぁ……!!!」

 

 真夜中の王都を私は今、自分の持てる力全てを使って全速力で走って逃げていた!!

 何から逃げてるかって?それは……!!

 

「無駄だ……。この黒騎士から逃げられた者など……一人も居ない……!」

 

 それはエルセリオ王国始まって以来、最強最悪の犯罪者……黒騎士からだ!!!

 

 

 私が臨時教師として教壇に立って、早二週間が経過した。

 

 この二週間、本当に大変だった!!

 元々私は田舎で実習生として働いていたが……やはり王都の学園は一味も二味も違う!!

 

 基本的に学園の四年生とは、年齢が十五~十六歳ぐらいの少年少女達なのだが、思春期真っ盛りの子供達はやはり一筋縄にはいかないし、何より王都は田舎と違って学校に通うのは義務教育だ。

 田舎で学校に通う子供たちは、自分たちの意思で学校に通うので、皆勉強熱心だし真面目な子供達がほとんどだ。

 

 しかし……義務教育で強制的に通わされている子供というのは、やはり勉強など嫌いな子供も多くいる訳で……そんな子供達に勉強を教えるというのはなかなかに難しい。

 

 私は四年三組の臨時の担任と、それに加えて自分が専門としている歴史の勉強を四年全体の生徒達に教えているのだが……これが本当に大変だ!!

 どうすれば皆真面目に授業を聞いてくれるのか……それを毎日考えない日は無いし、そのせいで徹夜をした日など、この二週間で既に多くある。

 

 しかも……私が受け持っているクラスは、何と問題児が居るクラスで……日夜他のクラスの生徒や、他の学部……学年の生徒達に絡んでは問題を起こしているのだ!!

 ルーカス君という、サタノニア公爵家の三男坊を中心とした男子グループなのだが……彼らがまぁ問題を起こす起こす!!本当に勘弁してほしい!!

 

 サタノニア家は王都でもかなり権力と力を持っている公爵家で、王都の五大公爵家の一つなのだが……その権力をひけらかしてまぁ好き勝手してるの!!

 

 ていうか、公爵家出身なら貴族課に行ってよ!!

 ……なんて言える訳も無く、他のクラスの担任の先生からの文句や苦情などを一心に受けて……たった二週間で私は心が折れそうになっていた……。

 相手は公爵家とはいえ生徒なのだから、もちろん私も何度も注意したのだが……当然ルーカス君はどこ吹く風、それ所かあんまりうるさい様だと私の家……つまり学園長である父に直接文句を言うと、逆に脅されちゃった!!……なんて子なの!?

 ……前の担任のマクシエル先生が諸事情で休まれてるのって……このルーカス君のせいじゃない?もしかして……。

 

 でもそんなルーカス君も、何故かティファさんの言う事だけは、素直とは言えなくともちゃんと聞く。

 忘却武人な彼がなぜあんなにティファさんの言う事を聞くのか非常に疑問だが……そんなティファさんも、クラス内以外で起こしている彼の問題には一切口出ししないので、結局問題は全部私に降りかかってくるのだ……。

 

 まぁ幸いルーカス君は、クラスではそこそこ……本当にそこそこ大人しいので、そのお陰でコウちゃんは快適に学園生活を送れているのではないだろうか!?最初に絡んでた時、ティファさんにくぎ刺されて以降、ルーカス君はあんまりコウちゃんに絡んで無い様だしね!

 

 ……はぁ……。

 せっかくコウちゃんがあんなに近くに居るのに……私は最初に日以降、余りコウちゃんとお話出来ていないのだ!!悲しすぎる!!

 忙しすぎるのも原因だが、コウちゃんはこの二週間で、既にクラスメイトにお友達を作っている様で、ティファさんとアンナさん……そしてソフィアちゃんと行動している事が多いので、私が話かけるタイミングが無い!!

 

 なんかクラスで困っている事とかあったら何でも相談して欲しいのだが……それもティファさんが居るから私に相談に来てくれない!!

 

 せめてもの癒しは、授業中頭に疑問符浮かべて私の話を聞いてるコウちゃんを見て癒される事ぐらいで、解らないところとかも後でティファさんと補習している様で……私の所に来てくれないの!!本当に悲しいわ!!

 

 ともかくそんな感じで、私の憧れの学園での教師生活は……想像以上に波乱万丈に過ぎて行くのだった……。

 

 

「はぁ……今日も日付が変わりそう……」

 

 今日の仕事を終え、とぼとぼと帰路に就く。最近毎日日付が変わりそうな時間に帰ってる気がするわ……。

 

 周りの教師や父はそんな私を心配して、余り無理はするなと言ってくれるが……無理しないとやってられないぐらい大変なのだ!!あのクラス!!ていうか授業も!!

 

 ともかく今は頑張りまくって……自分の限界を超えるぐらいの力を発揮して、なんとか乗り切らないと!!

 

 気合を入れ直し……さぁ!!ともかく家に帰ろう!!と足を速めていると……突如なんか誰かが私の後ろをついて来ているのを感じた。

 

 ……気のせいよね……?

 

 そう思い、更に足を速めると……それに合わせて後ろの気配も足を速めるのが解った……。

 

 その時私は、今王都で話題になっている女性達が大勢の男に取り囲まれて、連れ去られてという事件を思い出した……。

 

 ……いやいやいや、そんな事ないわよね?大丈夫よね……??

 

 私は嫌な予感に体を突き動かされる様に足を速め……そのまま全速力で走り出す!!

 そして走りながら後ろを振り返ると……そこには漆黒のフルプレートに身を包み、暗闇だというのに圧倒的な威圧感と存在感を放つ人物を目にする事になる……!!

 

 あれは!!まさか黒騎士!!?

 

 セントラリアで行われてたセントラルステージの裏側で街を破壊して、更にはこの国の勇者クロスを殺害した、最強最悪の犯罪者!!黒騎士その人が私の後を追って来ていたのだ!!

 

「いやぁ!!!?」

 

 その姿を見た瞬間、私は今まで無いほどの力を振り絞り駆け出す!!

 

 なんで!!?なんで黒騎士が!!?

 

 混乱する頭に鞭打って、私はともかく全力疾走する!!

 頭の片隅で、私ってこんなに早く走れたんだ……なんて馬鹿な事を思いながら……道も確認せず唯々闇雲に走る!!

 

 だが……そんな疾走空しく……ついに私は、何時の間にか入り込んでしまった裏路地の突き当りで……黒騎士に追い詰められてしまったのだ!!

 

「無駄だ……。この黒騎士から逃げられた者など……一人も居ない……!」

 

 その言葉と共に、体から圧倒的な魔力と殺意を纏わせ……黒騎士は一歩一歩私に近づいてくる。

 

「な……なんで!?何が目的なの!?私を……どうするつもり!!?」

 

 思わず私は黒騎士に問いかける!!なんで……黒騎士が私の後を追って来るの!?

 

「……さてな……。理由……目的……そんなものはこの黒騎士には無い……。私の目的は唯々破壊。……そしてアナスタシア・モンルミエール……お前を破壊する……!」

 

 またアナスタシア・モンルミエールか!!だから私はアナスタシア・モンルミエールじゃなくて……!!

 

「シスタ・フランソワよ!!私はアナスタシア・モンルミエールじゃ無いわ!!」

 

 私は喉が千切れるかって程大声で黒騎士に言ってやる!!

 この声に気付いて誰かが……私を助けに来てくれるって期待も込めて!!

 

 だがそんな私に黒騎士は、クツクツと嗤いながら……一歩一歩距離を詰めていった……!

 

「本当の自分を知らないのは愚かでみじめだな……。なぜ自分が死ぬのか理由が解らないのは哀れだな……。だが……もうそんな事関係ない……死ね……アナスタシア・モンルミエール……!!!」

「きゃ……きゃああああああ!!!」

 

 そうして漆黒の死の刃を私に振り上げる黒騎士に私はもうだめだと叫び声を上げて目を瞑る!なんでこんな理不尽に私が殺されなければならないんだ!!という憤りと、それでもどうしようもないという絶望の叫び声を上げ……。

 

 次の瞬間金属が弾けるような激しい音を聞いて、驚いて目を開けてしまう!!

 

「うぐわぁ!!?」

 

 くぐもった悲鳴を上げ、私を殺そうとしていた黒騎士は、円状で漆黒の盾に弾き飛ばされてしまっていた様だ……!!一体誰がこの盾を……!?

 

 そう思い辺りを見渡すと……私達の頭上の建屋から、私達を見下ろす黒い鎧が目に入った。

 

「くくくくく。随分とまぁ恰好のいい鎧だなぁ?まさか俺と似たような鎧を目にする事が出来るとは……正直思わなかったぞ?だが……それは随分と安物みたいだな?たった一撃でそこまで弾き飛ばされるとは……」

 

 そう言って黒い鎧の男は、一瞬で消え……いつの間にか私の目の前に、黒騎士に立ちはだかる様に立っていた!!

 

「さて……この女性を襲おうとしたのを邪魔したのは謝るが、深夜に女性を襲うのはどうかと思うぞ?黒騎士君?」

「貴様は……黒騎士……!!」

 

 馬鹿にしたような嗤いを含み黒騎士に言ってのけた漆黒の騎士……黒騎士が、私を襲った黒騎士にそう言ってのけるのであった……。

 

 ……えええ!!?黒騎士が二人!!?

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