最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
キーちゃんに煙幕頑張って貰ったら、俺も煙にまかれた件。
うーん。
正直手を引いてる女子生徒が居なかったら、ここで黒騎士に変身して、煙に紛れてあいつらフルボッコ出来るんだけど……ま!連れてきちゃったものはしょうがない!!
「ちょっと!!何も見えないんだけど!!アンタ見えてんの!?」
「いや?みえてないよ?」
「は!!?馬鹿なの!!?馬鹿よね!!?馬鹿だったわね!!」
んな!?失敬な!!そこまで馬鹿連打する必要無くない!?ちょっとへこむんだけど!?
そんなコントを繰り広げつつ、俺達は取り合えず男子生徒達の叫び声と反対方向へ手探りで歩いていく。
まぁ辺りが見えないのは奴らも一緒の筈なので、多分移動スピードは変わんない筈!!っと、そこで俺に名案が閃く。
何もこのまま逃げる必要なんてないのかも!
「そう言えば……貴女名前は?」
「は!?それ今聞くこと!?ったく!ナーサよ!」
「そっか。じゃあナーサ。違う教室入って……そこで隠れててくれる?あいつらは私が引きつけるから」
「は!!?な……何でそこまで……。!!!あ……あんたまさか一人で逃げる気なんじゃ……!!」
ん??何言ってんだこいつ??
だからあいつらを引きつける為に一人で逃げるって言ってんじゃん??
「え??そうだよ??私があいつら引きつける為に、一人で逃げるから……ナーサは違う教室で隠れてて?この煙の中でも、壁伝いなら教室行けるよね?……多分」
「あ……え……だ……だからなんで……何でそこまでして……私助けるのよ!!」
えー。ここでそう言った押し問答したくないんですけど。時間ないし。
「時間無いから後でいい?じゃ!頑張ってね!」
「あ!!ちょっと!!!」
俺はナーサから離れて、未だに喧しく叫んで俺達を探している男子生徒達の声の方へと向かう。
「キーちゃん。もっと頑張れそう?」
「キー!!」
余裕!!って感じで鳴いてくれるキーちゃんを頼もしく思いながら、俺はバックからキーちゃんを抱き上げて飛び立たせる。
キーちゃんはそのまま大きく息を吸って……!!
「キーーーー!!!」
更に濃い煙幕を張ってくれる!!……濃すぎてマジでなんも見えない!!
「わ!!何も見えない!!」
俺は奴らの気を引くために、ワザと大声を上げる。
「お!!今のコウちゃんの声じゃね!?この近くにいるぞ!!」
「よおおし!さぁコウちゃん?逃げんなよぉ!?」
正直奴らの気を引く必要無かったかも?でもまぁ……よし!!これで準備は整ったな!!
じゃあ……反撃開始かな?
◆
俺はジョン。……ジョン・ロッシ!
この学園の普通科の王様、ルーカス君の一番の親友だ!
正直義務教育で学園に入学させられた時は……唯々面倒だったけど、ルーカス君と知り合って……俺にとって、この学園はパラダイスになった!!
ルーカス君は凄い!!
何かお偉いさんの息子らしく、この学園でルーカス君に逆らう人間なんて誰もいない!
それは当然教師も同じ事で、誰も彼もルーカス君の顔色を窺っている!!
そしてルーカス君の力は普通科に止まらず、貴族科、騎士科といったこの学園の上級の科の連中にまで顔が効く!!
流石に上級の科で好き勝手出来る訳じゃないけど、だからといって何時も偉そうな貴族科の連中もルーカス君には一目置いてるし、ルーカス君の傍に居れば奴らに偉そうな顔をされないのだ!!
そして……ルーカス君と一緒に居れば、そのおこぼれを貰うことだってできる!!
昨日までルーカス君の恋人だったクラスの可愛い子が、今日からは俺の彼女……なんてことはザラにあるし、ルーカス君が一言いえばクラスで……それ所か、普通科全体で好きな女子をつまむ事だって出来るのだ!!……委員長とその親友のアンナ以外は……。
何でもクラスの委員長ティファはルーカス君の幼馴染らしく、あいつだけはルーカス君も手を出さないらしい。あいつ……眼鏡とったら結構美人なので、ちょっと欲しいと思ってたけど……それを言った他の奴が、次の瞬間ルーカス君に顔面殴られて血まみれになってた。
それ以降誰も委員長が欲しいなんて言わなくなった……。
アンナはクラスの中心的な女子で、健康的な美少女なので誰しも彼女を狙っていたのだが……委員長の親友という以外にも、彼女には手を出せない理由があるらしく、死にたくなければアンナには手を出すな……とルーカス君に言われた。……くそ!!狙ってたのになー!!
ともかくそれに目を瞑れば何だって出来るし、ルーカス君の傍に居れば他の連中に絡まれる事だってない!!
ルーカス君の家は、この国一番のギャング……ラ・ローザ・ネーラとも繋がりがあるらしく、ラ・ローザ・ネーラと言えばこの国で誰もが恐れるギャングなので、それも踏まえて誰も逆らえねぇのだ!!……まぁラ・ローザ・ネーラは最近潰れちまったみたいだけど……。
お陰で最近ドラッグがこっちに回ってこない!!キャンディ型ドラック・ハッピーは裏ルートからルーカス君が買って来てくれて俺達にも売ってくれてたんだけど……あれが最近あまり手元に回ってこなくなっちまったらしい!!
……話が随分脱線しちまった。
ともかくこの学園で怖いものなんてねぇし……いや、学園じゃ無くて、この国でか!!
ルーカス君の傍に居りゃこの国で怖い者なんて一つもねェ!!まじで!!最高だぜ!!……そう思っていた……あの瞬間までは……。
◆
逃げ出したコウちゃんを追って、俺は煙が立ち込めて前が見えねェ廊下を仲間たちと進む。
コウちゃんはつい二週間前に転入してきた子で……こう言っちゃなんだが、彼女を見た瞬間俺が今まで見てきた美少女なんて全て忘れちまうぐらい……それ位引き込まれる美少女だった!!
あの銀髪にさわりてぇ!!あの肌に触れてぇ!!好き勝手犯してぇ!!!
もう一人の金髪の美少女ソフィアちゃんも一緒に、あの子達を自分たちの物にしてぇ!!!
ただ……コウちゃん達は委員長とべったりになっちまって、委員長は彼女達をルーカス君から守る様に何時も立ち回っていたので……なかなか彼女達だけになる事はなかった。
だが……今日は珍しくコウちゃん独りだったらしく、何故か女子生徒に囲まれていた。
ルーカス君もコウちゃんは欲しかった様で、昨日は適当な銀髪のウィッグを今の彼女(?)の一人につけさせて遊んでたんだけど……それをクラスメイトに見られて、もしかしてそのせいでもめてんのかな?
ルーカス君は顔もいいので、かなり横暴だけど……滅茶苦茶モテるのだ!!
ていうか女子も、ルーカス君の取り巻きポジに居れば安心だから……なるべき傍にいたいのだ!
じゃねぇと、生贄にされちまうからなぁ……。
ルーカス君が言う生贄とは、まぁ簡単に言うと奴隷で、流石に表立ってはできねぇけど……ルーカス君の別荘という名の奴隷小屋で、攫った女たちを飼って好き勝手してる訳だ。
まぁ生意気な男とかも連れて行ってそこでリンチとかしてるけどな!!
最初それを見た時は……流石の俺もかなりビビったけど、警備隊も見て見ぬ振りをしている様だし……何でもルーカス君の兄が始めたことらしく、ルーカス君の兄貴は別の小屋を建てたから譲って貰ったそうだ。
流石に学園の生徒に奴隷は居ない……訳でもねぇけど少ないから、コウちゃんみたいな目立つ子は完全に生贄にはされねぇだろうけど……一度奴隷小屋で調教するんだろうな。
見た目に反して意外と気が強いコウちゃんが折れるのが今から楽しみでならねぇ……!!
「ったく!!なんなんだよこの煙!!魔法か!?コウちゃんは魔法を使えたのかよ!!ソフィアちゃんみたいによぉ!!」
俺と一緒にコウちゃんを探しているマテオが文句を言うが……まぁ俺も気持ちは同じだ。
つーか早くコウちゃん捕まえねぇと、委員長と合流されちまうじゃねぇか!!多分コウちゃんの目的はそうだろうし……!!
「コウちゃーーーん、隠れてねェで出て……あ?……ああ?ひあ……ひあああああぁぁぁぁぁ!!!!?」
なんだ!?いきなりマテオの叫び声が廊下に木霊する!!
何かあったのは間違いねぇけど……煙が濃すぎて何があったのか解らねぇ!!
「おい!!マテオ!!どうし………」
その瞬間、俺は今まで見た事も感じた事も無い程の恐怖を全身で感じた。
何も見えねェ……ちょっと先も解らねぇ様な煙中で、はっきりとその輪郭が見える。
黒い……黒い……何よりも黒い……この世のどの黒よりもどす黒い漆黒が……俺に近づいて……!!!!
「あ……ああああ……あひぃああああああ!!?」
怖い怖い怖いこわいコワイコワイコワイィイイイ!!?
俺が今まで感じてきた恐怖心なんて、本当に子供だましだったんだと……心の奥底から湧き上がる恐怖を感じながら、俺は今出る物全てを体からまき散らし……その場で気絶するのであった。
気絶する瞬間……俺はドス暗いくぐもった声を聴いた。
「……おいおい。見ただけで気絶するなんて、なんて情けない連中なんだ?……お前たちは……」