最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第163話 チャンス到来(ソフィア視点)

「人間関係って……難しいね……ソフィ……」

「キー……」

 

 ベットに横になり、キーちゃんを抱っこしながら、沈んだ声でそう言ったコウに……私の心は踊った。

 だってそれは……私が待ち望んでいたチャンスだったからだ……!

 

 

 コウとの学園生活は、最初は私が思った以上に楽しいものだった。

 寮の部屋はコウと一緒の二人部屋なので、毎日二人で起きて……寮での朝食をとって、二人で準備して……そしてつまらない授業を受ける。

 

 人間の勉学は非常に退屈だが、それもコウと一緒に体験出来るという部分が私にとっては大きかった。

 

 何せ今は、勇者エイシャも勇者ミリヤも聖女マリフィセントも居ないのだ!!

 コウのとって大切な仲間は私一人……この状況は私にとって非常に都合が良かった。

 

 今こそコウとの距離を更に詰めるチャンスなのだ!!

 

 でも……コウと二人っきりだと思っていた学園生活は、予想外の邪魔者が入って来た。

 

 それがティファとアンナだ。

 あの二人は私達の転入当初から私達を気にかけてくれていて、親切にしてくれるのだが……正直私にとってはありがた迷惑である。

 

 せっかくコウと二人っきりだと思っていた学園生活は、彼女達二人の介入により、いつの間にか四人での生活になってしまっていたのだ!

 ……でもまぁ正直、右も左も分からなかった私達を助けてくれた二人にはちょっと感謝はしている。

 

 特にティファは、コウに勉強などを熱心に教えてくれていて、コウは勉強が苦手の様だが……とても助かっているみたいだ。

 ……え?私は、って?……勉強が苦手云々以前に、やる気がゼロなので授業も補習も全て寝ている。

 

 まぁともかく、最初はお邪魔蟲だと思っていた二人も、二週間経つ頃にはまぁ別に側に居てもいいかな?程度の存在にはなっていた。

 

 でも……やっぱり私としては、コウともっともっと親密になりたい!

 せっかく勇者御一考が居ない学園生活なのだ!このチャンスを生かさないなんて……勿体なさ過ぎる!

 

 私は今、コウに一度だけ、何でも言う事を聞いてもらえる権利を得ている。

 

 最初はこの権利を、自分の欲望のままに使おうと思っていたけど……私はそれをグッと抑えて我慢する事にした。

 何故なら一時の感情に身を任せ、大局を見る事が出来ない者は愚か者だからだ。

 

 私はこの権利を……コウの為に使おうと決めていた。

 どういう意味かって?……それは……。

 

 

「コウ……どうしたの?何か悩み事?」

 

 私は出来るだけ声を優しくして、コウに問いかける。

 するとコウは、椅子に座っている私に顔を向けて……眉をハの字にして答えた。

 

「いや……ちょっと失敗しちゃったな……てね……」

「失敗?」

「……うん。例えばね……私にとって大切な人……お姉ちゃんとか……マリィ様とかソフィアとか。そういう人達が、時間が経って変わってしまった時に……私はその人達の事を嫌いになれるのかっ……て」

 

 今何気に私がコウにとって大切な人に入ってた!その喜びをかみしめつつ、私は黙ってコウの話を聞く。

 

「多分だけど……私はその人の事……変わってしまっても好きなままなんだろうなって。何時か元の優しくて大好きなその人に、戻ってくれるって……信じちゃうんだろうな……て。例えその人が、どんな悪人になってしまってたとしても……」

「………」

 

 多分だけど……コウはティファの事を言っているのだろう。

 

 私は他人に全く興味がない。コウが傍に居てくれればそれでいいと思っているからだ。

 

 でも……この学園で、私達に親切にしてくれる、ティファとアンナには……久々に人間に対して心をちょっと開いていると、客観的に私は思う。

 もう人間とあまり深く関わる事を辞めた私だけど……多分ずっと一緒に居てくれる、コウという存在を得た事で、私の中で人間に対する感情も変って来たのだと思う。……いい方向に。

 

 故に私としては意外と、ティファの話を聞いているのだ。

 

 ティファはあの男……名前を忘れた……ダン?だっけ?いや違う……ルー……クス?と幼馴染で、昔は仲が良かった様だ。……しかし暫く会わないうちに、あの男は変わってしまった。

 

 でも、それでもティファは未だにあの男を信じている様だ。口にも態度にも出さないけど……間違いなく未だにあの男の事を強く想っているのが分かるからだ。

 

 そして……コウはそんなティファを、少し疎ましく思ってしまったのかもしれない。

 

 何故なら先程、私が何故か教師に怒られていた時、コウは一人で教室で待っていてくれて……そこであの男の一派に襲われたらしい。

 キーちゃんのお陰で何とか逃げ出せたらしいが、それはそれはコウにとって不愉快な経験だっただろう。

 

 そして、そんな不愉快な思いをさせたあの男を、未だに想っているティファに対しても……いい感情が湧かないのは解る。

 

 しかしコウは優しい子だ。

 そんな事を思ってしまった自分を恥じて……今落ち込んでいるのだろう。

 

 ……因みにコウが襲われた後、何故か黒騎士?が現れたらしく、今学園内は大騒ぎなのだが……まぁそれはどうでもいい。

 

 私は椅子から立ち上がると……コウのベットへと移動して、悲しそうに項垂れるコウを抱きしめた。

 

 因みにキーちゃんは何かを察してか、私がコウの傍に移動した時にコウの腕の中から飛び立って、用意されている自分ベッドへと移動してくれた。何とも察しの良い魔物である。

 

「ソフィ?」

「……コウ……そう言えば私、コウへのお願いまだしてないよね?」

「あ……う……うん!そうだね?……えっと、何がいい?」

 

 突然話を変えた私に、コウは戸惑いながらも答えてくれる。

 

「じゃあ……このままコウも私を抱きしめて?」

「え……わ……分かった……」

 

 戸惑いながらも強く……私を抱きしめてくれるコウの頭を撫でながら、私は口を開いた。

 

「コウ……私だって、コウが変わってしまっても何時までも好きだと思うの。……それはその時コウがとっても悪い子になってしまってたとしても……」

「……ソフィ……」

「でもね、それは他の人達からしたら、知った事では無いのも確かでしょ?だから……コウがティファをちょっと嫌になるのもしょうがないよ……」

「!!!……ソフィはお見通しなんだね……」

 

 そう言ってコウは私の腕の中で小さくなると、ポツリと言った。

 

「私……今ティファと顔を合わせて、今まで通りに出来るか分からないんだ……。ティファは悪く無いのに……」

「そうかな?客観的に見て、あんな男を想うティファもどうかと思うけどね?さっきも言ったけど、昔の事なんて私達にとっては知った事じゃないでしょ?だってあの男、かなり最低みたいだしね」

「……はは。そう……かな……」

 

 大切なのは、コウを否定しない事。コウの意見に寄り添って、尚且つコウが満足のいく答えを一緒に導き出してあげる事が大切なのだ。

 そうする事で……コウはこれかも、何でも私に打ち明けてくれる事になるだろう。

 

 何でも言う事を聞かせる約束すら、コウの為に使う私にコウ今まで以上に心を許してくれる筈だ。

 

「……ありがとう。ソフィ……。なんか……吐き出すのも大切だね!ちょっともやもやしてたのが、ソフィのお陰でちょっとすっきりしたかも!……確かにこれはティファとルーカスの話だし、私があの二人の事でもやもやするのも……なんか違うよね?」

「そうだよ……コウ。私としては、ティファに苦言してもいいと思うよ?だって……何度も言うけど、ルーカスとティファの問題は私達には関係無いんだしね」

「っぷ……はは!確かに!……うん!私ちょっとティファと話してみるよ!だって……今回は私、ルーカスに迷惑かけられた訳だしね!」

 

 そう言って腕の中で、すっきりした様に笑うコウを見て……私は自分の作戦が大成功したと確信する。

 一歩前進所か、今回は二歩も三歩も進んだのではないだろうか!?

 

「ソフィ……本当にありがと。でも……なんでも言うこと聞くのは、今回のじゃなくていいよ!だって……今回は結局私の話聞いてもらっちゃったから!」

 

 そう言って朗らかに笑うコウを見て、口元が怪しくニヤ付きそうになるのを必死で堪える。

 

 耐えろ……!!ここで不審な表情をしたら台無しだ……!!

 

 そう思い、何とかコウの言葉に答えようとした時……部屋の扉が勢いよく開かれた。そして肩で息をしながら、アンナは口を開いた。

 

「大変だよ!!コウ、ソフィ!!!ティファが……ティファが何処にも居ないの!!!」

 

 こうして物語は、行方不明になったティファを巡って新たな局面を迎える。

 

 でもその前に一つだけ。………あとちょっと空気読んでよ!もっとコウと抱き合って(愛し合って)たかったのに!

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