最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
問題児であるルーカス君が、暴漢に襲われて入院する事になって、私のクラスは随分と平和になった。
彼には悪いが……正直もう戻ってきてほしくない!!……教師がこんな考えするのは最低だけど!!
それと、あの時帰宅時に突然襲われた私だが……黒い騎士様に助けて貰った以降、襲われる事は無くなっていた。
警備隊に説明しても、その男がこの国一番の犯罪者である黒騎士だと言って聞かなかったが……そんな訳あるか!!
犯罪者の黒騎士は私を襲って来た奴で、私を助けてくれた黒い騎士様は全く別の方だと私は確信している!!
あの少し低くでも優しい声……。
兜の奥から怪しくも、温かく光る眼光……。
そして……私のピンチに爽快と現れた御姿!!!そしてその強さ!!!かっこよすぎ!!!
嗚呼……あのお方は一体何者なのだろうか!!?
不謹慎だがあの瞬間、私は物語のヒロインにでもなった気がしていた!!
本当に……かっこよかったなぁ……。
で、話を戻して、そんな感じで平和になったクラスに反して、私の仕事は一向に減る事は無かった!
だってルーカス君が居なくなったからといって、授業が楽になるかというとそういう訳でもないし、後二週間程で学園では、年に一度の一大イベントが行われるのだ!!
それは何かと言うと……なんと学園でのライブパフォーマンスである!!
二カ月とちょっと前にセントラリアで行われた夢のアイドルフェス、セントラルステージで優勝したグループが、この王都でパフォーマンスを行うのだ!!
これは毎年の恒例行事で、セントラルステージで優勝したアイドルグループは、優勝後、国の主要都市を幾つか周ってパフォーマンスを行うのだが、その始めはこの王都からスタートする。
そしてその場所がこのフォストニア学園なのだ!!
私はその実行役員に選ばれて、ただでさえ忙しいのに……更に忙しくなってしまったのだ!!
……まぁ今年来るアイドルグループは、私の最推しのグループ
もう流石に限界!!って事で、私は溜まりに溜まった疲れとストレスを癒す為、コウちゃんにダメ元でデートをお願いしたら……意外にもコウちゃんはあっさりと承諾してくれた!!嬉しすぎる!!
それにしても……コウちゃんどうするのかしら?
二週間後のライブ……やっぱりコウちゃんは参加しないのかしら?……体調は治ったって言ってたけど……どうなんだろ?……気になり過ぎる。
まぁデートの時にそれとなく聞いてみようと思っていたのだが……運命の女神はそんな私達に、またもや運命的な出会いをさせてしまったのである!!
◆
「コウキ!!本当に……コウキなのよね!?なんでここに!?体は……腕は、大丈夫なの!?」
そう言ってコウちゃんに駆け寄るのは、何を隠そう
特徴的なピンクの髪を、今は大きな帽子で隠しているが……そんなものでは私の目は誤魔化せないのだ。
「う……うん。一応は良くなったよ?」
「そうなの!?よ……よかったぁ……!!」
そう言って涙を流しながらコウちゃんに抱き着くクルミちゃん。
……今私の手元に映像記憶魔導具が無いのが凄まじく悔やまれる。
あれは非常に高価だし、持ち運びできる代物じゃないけど……なんか将来コンパクトになって持ち運べる様にならないかしら!!?
「コウちゃん!?わぁあ!!コウちゃんだ!!」
抱き合っているコウちゃんとクルミちゃんの後ろから、彼女達に抱き着いたのは……
「わ!!あ……アイスさんも……ど……どうしてここに!?」
コウちゃんは未だに事態を把握できていないのか、目を白黒させながら困惑してるけど……そっか!コウちゃん二週間後に学園で、
学園ではもう結構話題になってるけど、コウちゃんってそういう話題とかあんまり興味がないのか、結構ボーっとしてるし……知らなくても無理はないかも!
「私達近々、王都の学園でパフォーマンスするのよ!」
「え!?そ……そうなの!?」
「うんうん!そうだよー!!毎年センステで優勝したグループは王都でもパフォーマンスするんだけど……今年は私達だからね!」
クルミちゃんとアイスちゃんがコウちゃんから少し離れ、笑顔で言葉を続ける。
「後二週間あるけど、街の雰囲気とか知っときたいし……もう学園にスフィアとか持ち込まれて、今からステージ作るだろうからね!私達も王都に滞在するのよ!」
「そういうこと!!っていうか……コウちゃん体良くなったんだったら……もしかして!!……ね!クルミちゃん!!」
アイスちゃんのその言葉に、笑顔のクルミちゃんの表情が更に明るくなる!
「確かに!!コウキ!!アンタもう体調は大丈夫なのよね!!?」
そう言ってコウちゃんに詰め寄るクルミちゃんに、コウちゃんはしどろもどろになりながら答える。
「え?う……うん。ま……まだ万全じゃ無い……けど……。!!!……ミ……ミルク……あ!!人前じゃクルミの方がいい?」
「うーん。どっちでもいいけど……そうね!混乱するしお互い前の呼び名で呼びましょっか!コウ!!……ていうか、アンタ今はぐらかそうとしたでしょ!?」
「う……!!そ……そんな事……!!」
目を逸らして冷や汗を垂らすコウちゃんを、クルミちゃんはジト目で睨むと言った。
「逃げようとしても無駄なんだから!!てゆーか今更恥ずかしがってんじゃないわよ!!……こうしちゃ居られないわ!!アイス!!一回もどって社長に報告よ!!」
「オッケー!!ふふ!嬉しいなぁ!!私、ずっとコウちゃんと一緒に歌いたかったんだよねー!」
「あ……ま……待って二人とも……」
コウちゃんの制止も聞かず、二人は駆け出そうとして……クルミちゃんが振り返り、コウちゃんに言った。
「そうだ!コウ、アンタ今王都で何してんの?ミリヤさん達は……」
そう言って、クルミちゃんはようやく私の存在に気が付いたみたいだ。
「あ……ごめんなさい。コウの……お知り合いですか?」
「ああ!私の事は気にしないで!?その辺の壁とでも思って!?」
「え?いえ……そういう訳には……」
バツが悪そうな顔で言葉を濁すクルミちゃんだが……私としては、私の存在を完全に無視してくれてもよかったのだ。
むしろ三人の微笑ましいやり取りを眺めているだけで、仕事の疲れも癒されていたのだが……むしろ気付かれてしまった事が三人に申し訳ない。
「え……と、この人は学園の先生だよ、クルミ。……何で私がここにいるか……説明するね?」
そんな微妙な雰囲気になってしまったクルミちゃん達に、コウちゃんは冷や汗をかきながら事の経緯を説明するのだった。