最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
第174話 討ち滅ぼさなければならない者
俺は今、脇目も振らずに逃げていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!!!」
どうしてこうなった?
なんで俺は……逃げているんだ!?
「うわ!!?」
なりふり構わず逃げていたせいで、足元がおぼつかなくなり、俺は壮大に転んでしまった。
何やってるんだ!?このままじゃ……奴に追いつかれる!!!
俺は慌てて周りを見渡して………誰もいない事を確認する。
「………はぁ…」
そして俺は息をつき、改めて周りを確認すると……どうやらここは、王都の外れにある小さな集落の様だ。
いつの間にこんな所まで………。
またため息をついて、俺はゆっくり立ち上がる。
とにかく皆が心配だ。なんとしてでも合流しないと………。
そう思いまた駆けだそうとする……俺の近くでドサリっと何かが落ちてくる音が聞こえた。
「………なんだ?」
俺はその落ちてきたものを確認する為目を凝らすと……それは、無残な姿になってしまっている、俺の友達だったのだ!!
「ひ!!ひぃあああ!!?」
俺は悲鳴を上げ、その場で尻もちをついてしまう。
彼も
だとすると……これを投げ捨てたのは!!!
「くくく。深夜の鬼ごっことは、なかなか洒落た事をするなぁ……。俺も思った以上に熱が入ってしまったよ……。だが……どうやらそれも終わりみたいだな?何故なら……お前で最後だからだ……。なぁ?」
「あ……ああ……ひぃ……。た……助けて……たすけてぇえええええ!!!!」
客観的に見て、俺は何とも今無様で情けない姿をしていると思う。
でもしょうがないだろう?
だって……俺の目の前に現れたのは、この世で最も不吉で恐ろしい……世界最恐の悪鬼……!!
「さて……では……ゲームセットだ……」
そう言って漆黒のランスを俺に突き立てるのは、紛れもなく最強の最悪の犯罪者、黒騎士に他ならなかった……!!
どうしてこうなった??
何故……俺達は黒騎士に襲われているんだ!!?
俺は何故こうなってしまったのか、走馬灯の様に思い返していた……。
◆
「時は来た。今こそ我ら聖王騎士団としての責務を全うする時だ……」
騎士団長である聖王騎士団第一席、獅子王レグロス様の言葉が教団内に響く。
「かつてこの国を襲った未曽有の災害。それを引き起こしたかつての王族、モンルミエールの血筋をここで断つ必要がある!!!」
握りこぶしを振るわせて、団長の言葉は続く。
「かの血族がまだ存在していたことは巧妙に隠されていた!!だが、何時までも我らの目を欺くことは出来ない!!!そして……彼女はまだ力に目覚めていない!!邪神アズライールに見いだされ、この国を飲み込もうとした力は!!!」
団長は一度言葉を切り、俺達聖王騎士団を見渡し目を伏せて言った。
「確かに何も知らない、今は一般人として生きている女性を手にかける事は、我ら騎士団として本来あってはならないものだ……。故に貴君らの剣が鈍るという事も重々承知している……」
そして、目を開き手を振り上げて団長は言葉を続ける!!
「しかし!!例え蔑まされようとも!!例え罵倒の雨にさらされようとも!!我らはこの国を……否!!世界を守らねばいけないのだ!!!故に!!!同胞たちよ!!!我らは茨の道を行く!!!何故ならこれは……今だけでなく、未来をも守る戦いだからだ!!!共にいこう!!!邪をもって蛇を討つのだ!!!!」
「うおおおおおおおおお!!!!」
教団全体が、団長の言葉を受けて揺れる!!!
確かに始めこの話を聞いた時は……正直一般女性を手にかける事に、疑問を感じていた。
例え邪神に見いだされた血族であろうと、何も知らない女性を殺すなんて……酷いと思ってしまっていた。
でも!!
それは結局自分が手を汚したくないが為の良い訳に過ぎなかったのかも知れない!!
そうだ!!
例え蔑まされようとも、例え石を投げつけられようとも、邪神の血族は討ち滅ぼさなければいけない!!!
それが……我ら聖王騎士団の務めなのだ!!!
俺はこれまで感じた事も無い程の使命感が、心の奥底から湧き出てくるのを全身で感じているのであった……!!!
◆
「でもさぁ……そのモンルミエールの血族の女性って、団長も言ってたけど只の一般人なんだろ?なんでこんな騎士団全体で対処するような事になってるわけ?」
決起集会を終え、それぞれの配置に戻っている時に、友人のラザロがポツリと口にするが……まぁ気持ちは分からないでもない。
確かに相手はまだ力が目覚めてもいない一般女性だ。
それを寄ってたかってというのは、流石にどうかと思うのだが……。
「そういう訳にもいかないさ。なんたって彼女を殺害する為に既に騎士団で多くの犠牲者が出ている」
「ええ!!?な……なんでだよ!?」
ラザロの疑問に、もう一人の友人、通称眼鏡のショーンが答える。
「最初彼女を亡き者にする為、暗部が彼女を襲ったのだが……そこに乱入してきた新しい剣の勇者によってそれは阻まれた」
「ああ……でも……その剣の勇者は、聖女教会の聖女様から洗礼受ける為にラヴァダイ王国に行ったんだろ?だったら……」
「そう……しかしモンルミエールはそれを見越してか……新たなボディガードを雇ったみたいなんだ」
新たなボディーガード?一体それは……。
疑問に首を傾げる俺とラザロを見て、ショーンはニヤリと笑って言った。
「黒騎士……さ……!」
「く……黒騎士!!!」
この国最大の犯罪者にして、先代剣の勇者クロスを殺害した最恐の怪物……!!!
「今モンルミエールはフランソワ一族が守っている。そして彼らはモンルミエールを守る為密かに多くの腕利きを雇っていて、騎士団の暗部を返り討ちにしていたんだ。フランソワ卿はこの国一番の学園、フォストニア学園の学園長だから、騎士団も流石に表立ってフランソワ卿と敵対する事も出来ないから……騎士団はモンルミエールを叩くために、第十席の黒曜騎士アバン様と第六席、
「!!!?……聖騎士様が二人も……!!?」
それは……正直初耳だ。
モンルミエールを亡き者にする為の作戦が、そんな事になってたなんて……。
「かのお二人は、フランソワが雇っていた護衛を全て打ち倒し、あと一歩でモンルミエールを殺害できそうだったのだが……そこに現れたんだよ……黒騎士が……ね……」
「まさか!!!?」
まさか!!?黒騎士は聖騎士様二人を相手にして、退けたと言うのか!!?
二人も揃えば勇者をも超えると言われている聖騎士を、二人相手に!!?
「そのまさか……さ。黒騎士はお二人を退け……撤退に追いやった。ゲイル様によれば、黒騎士の実力は……もしかしたらレグロス様をも凌ぐかも知れないらしい……」
「ば……そんな馬鹿なことあるか!!?レグロス様より強いなんて……ありえねぇ!!!」
ラザロが声を上げるが……正直俺もそれは無いと思う。
レグロス様の強さは、ともすればかつての剣の勇者クロスにも勝るとも劣らない程の実力者だ。
確かに黒騎士は勇者クロスを殺害したそうだが、それは何か卑怯な手を使ったに違いないし、正面から勇者クロスを打ち倒す事など不可能だ。
まぁ剣の勇者クロスはかなり堕落していて、その実力を落としていたとも聞いたが……。
故に……今この国で最強なのは紛れもなくレグロス様だ。……セントリアの斧の勇者ギーツは……置いといて……。
「まぁそれは僕自身……というか、教団全体で誰も信じてはいないが、もしかすると黒騎士の実力はレグロス様に近いのも確かなのかもしれない」
「……俄か信じられねぇなぁ……」
「ふっ。そこで……今回この大規模な作戦が行われる事になったんだよ。……そう、今度こそ確実にモンルミエールを亡き者にする為の作戦が!!」
ショーンは眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ……ニヤリと笑ってそう言うのであった。