最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
そうだ。
俺達はこうして深夜、モンルミエール討伐作戦を開始したのだった。
計画はこうだ。
モンルミエールが深夜、仕事を終え帰宅する所を襲う。
すると彼女を守る為、黒騎士が現れる。
俺達は現れた黒騎士を引きつける為に逃亡して……その隙にモンルミエールを叩く。
非常にシンプルな作戦だが、今までと違いいきなり大勢の人数を使った、黒騎士の虚を突く作戦だ。
しかもこの作戦には、聖騎士団で称号持ち……つまり序列がついている騎士が、何と五人も参加するのだ。
聖王騎士団の中でも、選りすぐりの十三人からなる最高騎士達。
それが五人も作戦に参加するなんて……少々オーバーな気もするが、それだけ黒騎士は脅威というとこだし、何よりこの作戦で決着を付けるつもりなのだ。
最悪この作戦で俺達は命を落とす事になるかも知れないが……世界を救う為ならそれも本望だ!!
そう思っていた……そう思っていたんだ……本当に……!!
◆
「おいおい……なんて情けないんだ……。お前……」
黒騎士の声に、俺はハッと現実に立ち返る。
そうだ……俺達は作戦通り、こうして黒騎士を引き連れる事が出来た……。
つまり作戦は大成功なのだが……俺は今、死を目前として、作戦の事も、自分の決意も忘れこうして泣き叫び取り乱していたのだ。
正直死ぬのはそう怖くはない。……それは本当だ。
聖王騎士団に入隊した時から、世界の為に命を賭す事は名誉な事であり、それを実行出来ると心の底から思っていた。
でも……目の前の存在。
こいつだけはダメだ。
この世のあらゆる不吉と不幸が混じった様などす黒い魔力に、見る者に恐怖しか与えない漆黒のフルプレートの鎧。
漆黒のランスは死神の鎌の様に見えるし、実際このランスに刺し殺されて、俺は天に上る事が出来るのだろうか?
……魂を囚われて、永遠の苦しみを与えられる……そう確信出来る禍々しい存在だった……黒騎士は……!!
こいつを目の前にして……俺は恐怖で取り乱してしまっていたのだ。
でも……極限の恐怖状態が続くと、逆に大分冷静になって来た。
そうだ。俺達は作戦を成功させることが出来たんだ!!
今ごろ他の聖王騎士達が、モンルミエールを亡き者にしているだろう!!
つまり……俺の死は無駄なんかじゃ無く、世界の平和の礎となれたんだ!!!
そう思うと、心の奥底から勇気が湧いて来た!!
「ふ…ふへ!!や……やれよぉ黒騎士!!俺の死は無駄じゃない!!邪神に取りつかれたモンルミエールの血筋を……倒す礎となって、俺の魂は天に浄化されるだろう!!!さぁ!!!やれよぉ!!!」
やった!!!この悪鬼に言ってやったぞ!!
涙と鼻水を流しながら、俺は黒騎士に言ってのけた!!
俺にもう……悔いはない!!
後はもう、友たちの元へと……俺も逝くだけだ!!……例えその先が、黒騎士に魂を囚われた地獄の業火だったとしても……俺達は嘲笑ってやる!!!お前は負けたのだ……と!!!
「……そうだな……。お前で最後だし、さっさと終わりにするか……」
「!!!……はは……ははは……はははははははは!!!」
その言葉を聞いた瞬間……俺は心の奥底から可笑しくなった。
俺で最後!!?はは!!!こいつは何もわかっちゃいない!!
別に教えてやる必要も無いが……最後の最後でこいつが慌てふためくのを見たくなった!!
「俺で最後!!?っは!!お前は間抜けだぜ!!」
「……ほう?」
「今頃モンルミエールは、聖騎士様達が討っている!!!お前が俺達なんか追ったせいでなぁ!!!ばーか!!お前はまんまと作戦に嵌ったんだよぉ!!間抜けやろお!!!!!」
ははははっははは!!!マジで痛快だ!!
俺のその言葉に、黒騎士は目に見えて慌てふためき……慌てふためき?
……??な……なんで全然慌てて無いんだ!!?こ……こいつ俺の言葉を信じてないのか!!?
「お……お前俺の言葉を信じてねぇな!!?嘘じゃない!!本当に……」
「ふうむ。と、すると、俺が今夜仕留めた大層な称号を持った騎士達が何人か……五人ぐらいだったか?……と、それに追従する騎士共……それとお前達以外に、まだ刺客が居たという事か?」
「……はえ……?」
黒騎士は顎に手をやって、言葉を続ける。
「一応他に刺客が居ない事を確認したのだが……もし他にいたとしたら、何とまぁ大したものだ……。この俺の包囲網を潜りぬけたのだから、それはそれは大層な奴だろうなぁ?……しかしお嬢さんは一応警備隊に送り届けたし……、お前の話が本当なら、今頃警備隊が襲われているのかね?……お前達聖騎士に?」
「………うそだ……称号持ちの聖騎士様が……お前なんかに……」
そもそもなんでその人たちが称号持ちだって解るんだ?
……やっぱりこいつは嘘を……。
そう思い、俺がゆるゆると首を振っていると……黒騎士はそんな俺に、何かを放り投げてきた。
それは……それは……。
「別に全員が名乗った訳じゃなかったがね。……一人喧しい奴がいて、そいつが自分が序列何位だのなんだの言っていたから……多分そうなのだろうと思ったのだがね?……それが称号か何かなんだろ?」
上位十三騎士に任命されると、彼らはその称号と共にペンダントが与えられる。
一つ一つ最高純度の魔公石で作られたペンダントは、その魔力を見ただけで本物と解るようになっているのだ。
「ははははは!!うら若き女性を襲う暴漢の分際で、大層なものを持っているから……つい持ち帰ってしまったよ!!……で?それで全部なのだが……他にいるなら教えて欲しいなぁ?……なぁ?おい」
俺はそれが本物だと確信すると同時に、そのまま意識を手放すのであった……。
◆
最後の暴漢が、なんか勝手に気絶しちゃった。
俺が投げ渡したペンダントを見て、勝手に気絶しちゃった暴漢を見て……俺は呆れてため息をついた。
めっちゃ綺麗なペンダントだったから、ちょっと拝借しちゃったけど……これって実はすごいものだったのかな?
てゆーかさっきは勢いで取ってっちゃったけど、これって普通に盗みだよね?
まぁ後で警備隊に渡して、こいつらがシスタさん襲いました!!って証拠にしようと思ってたのも事実だけど……。
しかし、なーーんで聖騎士達が突然シスタさんの命狙ってんだろ??
つーかこいつ、他に刺客が居るっていってたけど……ほんとかなー?
一応他に居ないか、探索魔法全開にして確認したけど……まぁもし本当なら、一度戻った方がいいかもね。
それにしても……何でこんな事になってんだろ?
俺は気絶してしまった男とその仲間達を取り合えず手頃なロープで縛って、体を霧状に変化させシスタさんの待つ警備隊に戻りながら……何でこんなことになったのか経緯を思い返すのであった……。