最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「がっはぁ!!?」
赤髪聖騎士の鳩尾に拳を叩き込み完全に沈黙させると、辺りは先程までの戦闘が嘘の様に静かになった。
周りを見渡せば死屍累々、死体の山だ。……まぁ誰も死んでねぇけどな!!多分!!!
これでシスタさんを狙う奴の中で強そうな奴は……あと一人を除いて居なくなったかなー?っと思い、俺は体を霧状に変えてシスタさんの元へと行こうとして……こいつらこのまま放置する訳にもいかないな、と考え直す。
とりあえず警備隊に突き出してやろうと思ったけど……そういやホズムさんが、警備隊と騎士団ってズブズブだと言ってた様な気がする。……言ってたっけ?言ってなかったっけ?
つまりこのままこいつら警備隊に突き出しても、特にお咎めが無い可能性が高い。
でも……なんで聖騎士団がシスタさんの命狙うのかは知らないけど、少なくと警備隊の人達はシスタさんの命狙ってはないだろう。前ちゃんと保護してくれたし。
一応シスタさんの命を狙った連中は聖騎士団だって解る証拠みたいなのを拝借して、こいつらは……聖騎士団の協会の前に吊るしてくれるわ!!!
こいつら一応聖騎士団の中じゃ強い方なんだろうし(多分)、そんなこいつらが無様に聖騎士団の教団の前に吊るされてたら……多分警戒してそう簡単にシスタさん襲わなくなるんじゃね?知らんけど。
という事で、一応の証拠として……なんかこれ見よがしにつけてるペンダントを拝借しておく。めっちゃ綺麗なペンダントだし、きっと大切な物なんだろう!!
んで、吊るすのは後にして、取り合えず手ごろなロープ(その辺にあったワイヤー)でこいつら四人を縛りあげて……今度こそ俺は体を霧状に変えてシスタさんの元へと向かおうとして……。
「な……何があったんですか!?ガンドロフ殿まで……!!ば……馬鹿な!!?」
遅れて最後の一人がやって来た訳だ。
なんか見た目がいかにも主人公です!!って感じの金髪青年は、縛り上げられた四人を見て愕然としている。
正直今にもシスタさんを襲い掛かろうとしている雑魚達がいるので、こいつに構ってる暇はない。
なので俺は体を霧状にしたままそいつの背後に周り、姿を現すと同時に裏拳でそいつを殴り飛ばしておいた。
「あぐ!!?」
突然背後から殴り飛ばされた青年は、そのままゴロゴロと転がって……動かなくなった。……今度から背後には気を付けようね?
ていうか、仲間が縛り上げられてるんだったら、それした犯人がまだいるかもって思って行動しようよ、驚愕してる暇があったらさ。
俺は気絶しているそいつからもペンダントを拝借して、仲間と一緒に縛り上げる。
そして直ぐに加速魔法を使い、シスタさんの元へと急ぐのであった。
◆
加速魔法を使い、シスタさんを狙っているであろう騎士達を始末しつつシスタさんの元へと急ぐ。
探索魔法で刺客の場所を確認しつつ撃破していくと……丁度加速魔法が切れると同時にシスタさんの元へと辿り着いた。
「!!あ……貴方様は!!!」
「あ……現れたな!?黒騎士!!!」
シスタさんを襲おうとしている最後の騎士達とシスタさんが、突然現れた俺に驚愕の声を上げる。
「よし!!……一時撤退だ!!……黒騎士!!追いつけるものなら追いついてみろ!!」
そう言って駆け出していく騎士達なのだが……あれってほっといてもいいかな?
正直あいつらが最後の雑魚達なので、ほっといても問題は無い気がするんだが……まぁ一応頑張って逃げてるみたいだし、……後で追って行ってあげるかぁ……追って欲しそうにしてるし。
俺は一応まだ潜んでいる奴が居ないか探索魔法を使い、本当にあの雑魚達以外いない事を確認して、シスタさんに話かける。
「さて……よく暴漢に襲われるお嬢さんだ。これで……三回目かね?」
「え!?……確かに襲われたのは三回目ですけど……貴方が助けてくれたのは二回目ですよね!?な……なんで王都に来たと同時に襲われた事を知っているんですか!?」
「……ふ。さぁ?なんでだろうなぁ?」
ひえー!!めっちゃ余計な事言っちゃった!!
シスタさんが最初に襲われたの見ているのはコウであって、黒騎士じゃなかった!!
これってめっちゃ怪しくない!?
見ようによっちゃ俺が……裏で噛んでるって思われてもおかしく無くない!?
「何でもお見通しの漆黒の騎士様……!!す……素敵すぎます!!?」
俺が内心めっちゃ焦っていると、口に手を当ててシスタさんが震えながらそう言った。
………これは……大丈夫なのかな??
「あの!!漆黒の騎士様!!お名前を……お名前を教えて頂けませんか!!?これで助けて下さるのは二回目ですし、せめてお礼もしたいですし!!」
「……っふ。俺に名前などない。……皆からは黒騎士と呼ばれているがな……。それに礼はいらないよ。別に大したことをした訳でも無いからな」
あれ?
シスタさん黒騎士知らないのかな?そういやあの時は名乗らないでおいたっけ?
うーん。
前回助けた時、黒騎士が二人!!?みたいな反応してたから、黒騎士知らない事は無いと思うけど……。
「貴方が黒騎士!?……では……この国で犯罪者となっている黒騎士とは、また別の方なのですね?」
そう言って首を傾げるシスタさんに、内心苦笑いする。
そう言って貰えるのは嬉しいけど、残念ながらこの国で指名手配されてるのは俺なんだよなぁ……。
「……っふ。さぁ?どうだろうなぁ?……さて、無駄話をする暇はないな。一応君を警備隊まで送り届けよう。……ただ、前も言ったが、流石に夜の一人歩きは感心しないな?」
「あう。……すみません……。どうしても、仕事が忙しくて……」
そう言って項垂れるシスタさんに同情しつつ、俺はふと疑問を感じた。
一度ならず二度襲われてるのに、シスタさんのお父さんってなんでそれを放置してんだろ?
最初襲われた時、血相変えて警備隊に飛び込んで来たから、かなりシスタさんの事を大切に想っている筈なんだけど……。
せめて護衛をつけるなり何なりすればいいのに………。
このままじゃまたシスタさん夜道を襲われるんじゃないかな?
まぁ今回襲って来た騎士達は、俺の予定通り騎士団の前に吊るしてやるつもりだから、それがちょっとは脅しになりゃいいけど……。
そんな疑問を感じつつ、俺はシスタさんを警備隊まで連れて行く。
当然警備隊に黒騎士が現れたら大問題になるだろうから、警備隊が見える場所まで送り届けて……そこでシスタさんとはお別れだ。
「ではな。まぁ仕事も忙しいだろうが自愛したまえ」
「ふふ……。ありがとうございます、黒騎士様……。二度も助けて下さって……私、感謝のしようもありません!このご恩は必ず返して見せます!!」
「はは!!気にするな。……ではな」
「はい……黒騎士様……」
そう言って瞳を揺らすシスタさんを見て、やっぱり三度も襲われると精神的にきついだろうなぁと思いながらも、俺は体を霧状に変化させその場を去るのであった……。
◆
んで、冒頭の鬼ごっこ(第175話)に戻る訳なのだが……雑魚達と鬼ごっこを終え、警備隊に戻ると……丁度シスタさんのお父さんが迎えに来ていた所だった。
とりあえずこれで一安心だな!!ってことで、縛り上げてた五人の騎士たちの元へ飛ぼうと踵を返すと、突然背後から俺に向かって斬撃が襲いかかってきた。
それを無造作にキャッチして、犯人を確認すると……そこにはさっきボコって縛り上げた筈の、金髪騎士君だったのだ!!
「ほう?お目覚めが早いな?」
そういいつつも、またダウンさせる為拳を振るうと……金髪騎士君は手から剣を放して一足飛びに距離を取る。
そしてキッと俺を睨みつけると言った。
「さっきは不意を突かれました……!!ですが、今度は負けません!!」
さいですか。
まぁそれはいいんだけど……流石に今日は疲れたし、もう帰って寝たいんだけどなぁ……。
聖王騎士団の悪夢(と俺の苦労)の夜は、まだまだ続くのである……。