最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
念願の
そんな私を見て、
「おい。お前は私に逢う為に何時も此処を訪れていたんだろう?せっかく出てきてやったというのに、ダンマリとはどういうことだ?」
半目で私を睨みながら言う
「あ……お……俺は……エルセリオ王国から……来ました……!あ……貴女の力を……お借りしたくて……!!」
「ほう?」
しどろもどろになりながらも、私は何とか口を開く。そして私は今、私の国で何が起っているのかを何とか説明した。
焦ってしまって所々要領を得ない説明になってしまったが、
そして私の説明が終わり、少し沈黙した後……彼女は口を開いた。
「……お前の話は分かった。そして……先に謝っておこう。私自身直接アズライールをどうこうする事は出来ない」
「!!!」
「これは私の……私達の神としての在り方の問題なのだが、天界に住まう神も、地上に留まっている私の様な神も、直接この地上に手を出すことは出来ないのだよ」
「で……でも邪神は……!!邪神は神では無いのですか……!?」
聖王様の話によれば、邪神もかつては神であったらしい。
あの邪神が元神で、あれだけ地上で好き勝手出来るのであれば、
その想いも籠めて
「アズライールが地上で好き勝手出来るのは、依り代に乗り移っているからだ。つまり奴自身が手を下しているのでは無く、あくまで依り代の人間……お前の国の王がやっているという事なのだ」
「あ……そ……そん……な……!」
「私は人間を乗っ取る事など出来ないし、出来てもやる気にはならない。……だが……だからといって、アズライールを放置する事も出来ない」
「!!!」
絶望して顔を伏せる私だったが、
「かつて私が見出した剣の勇者の血族も失われてしまったのだ。そんな強大になるまで力をつけたアズライールを打ち倒す事は……正直言って不可能だろう。だが……奴を封じ込める事は出来るかもしれない」
「ほ……本当ですか!!?」
「……ああ。……まぁ、そもそもアズライールは神の時から非常に優れた闘神だったから、例え私が手を出せたとしても、普通に敗北していただろうし……最早方法は封印以外無いだろうな」
そう言って
そして光が収まると、
「……
「この神器で……!!」
「ああ。この鏡が効力を発すれば、たちまちその者を九つの魂に分け……そして鏡に封じる事が出来る神器だ。分けられた九つの魂は、鏡の装飾にあしらわれた八つの宝石に封じ籠められて……最後の一つの魂……これが本体となるのだが、それを鏡に封じる事が出来るのだ」
「そ……そんな事が……!!」
「……ただし、この鏡の力を発するには、アズライールにこの鏡を持たせて……自ら力を発動させなければならないというリスクがある。だがまぁ……そこは口八丁でなんとかするしかないな!!そこまでは私でもどうしようもない!」
そう言ってあっけらかんと笑うと、
「あ……ありがとうございます!!
「ああ。……さぁ、もう国に戻るがいい。……私のせいで、お前はかなり足止めを食らってしまっただろう。正直その神器を渡したのも、そのお詫びも兼ねてだ……」
「いえ……。これを授けて下さっただけでも、感謝しております……!!」
正直に言ってしまえばまだ不安は残る。
この神器は邪神自身が発動させねばならない故、どうやって邪神にこの神器を発動させるか……その方法は、私の頭では到底考える事は出来なかった。
しかし、こちらには聖王ヨハネ様がいる。
あの方ならば、この神器を使い必ずや邪神を封じ込める事出来るはずだ!
私は
◆
三年ぶりの故郷は、邪神の影響のせいか、以前より益々酷い有様であった。
街に蔓延るマフィア、横行する犯罪、市場に出回る麻薬。
最早この国は、地上の地獄と化していたのだ。私はそんな現状に、目を瞑りたくなりながらも、急いでヨハネ様の元へ急いだ。
三年ぶりにあったヨハネ様は、前より随分とやつれていて、三年という月日以上に年月が流れたかのように老け込んでいた。
だが、それもその筈だ。
本心とは全く違う、やりたくも無い邪神が求める非道な行い。そして腐っていく街を、見て見ぬ振りをしなければいけないという苦痛。
そんな苦行を十年以上続けていれば、やつれるのも当たり前だ。
ヨハネ様は、三年ぶりに故郷に戻った私を見て………出会って初めて、一筋の涙を流された。
そして強く、強く私を抱きしめたのだ。
「……レグロス……!正直もう君は死んだと思っていた……!よく……よく無事で戻って来てくれた……!!」
私は邪神に私の動向を探らせないために、ヨハネ様含む誰にも手紙を書いてはいなかった。
故にこの三年間、私が何処で何をしているのか……、本当に生きているのか、それとも死んでいるのか……誰にも解らなかったのである。
私はヨハネ様に深く謝罪し、そして
神器を手にするとヨハネ様は、それをまじまじと眺め……そして深く、深く息をつかれた。
「私が邪神に気に入られる様に、嫌われない様に……私の言葉を信じる様に……、心を殺して、本心を殺して……奴に仕えてきた事は、決して無駄ではなかったのだな……。
そしてヨハネ様は、これまでの苦労を露払いする様に……晴れやかな顔で私に言った。
「ありがとう、レグロス。……希望を持ち帰ってくれて。……私は
その後ヨハネ様の言葉通り、邪神は封じられる事となる。
言葉で言えばとても簡単で、実際邪神は驚くほどあっさりと封印された。
だが、それをなす為にヨハネ様は………十年以上耐えぬかれたのだ。
邪神の信頼を勝ち取り、その本心を奴に悟らせなかったヨハネ様の孤独な戦いが……ようやく実を結んだのだ。
こうして、我が国を襲った未曽有の災害……邪神アズライールは、完全に封印され、この国はこれから平和になっていく筈……。
そう思っていた。……その時はまだ……。