最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第180話 聖なる竜(聖王騎士団第一席・獅子王レグロス視点)

 念願の白銀の(エンシェント)ドラゴンに出会えたというのに、私は彼女の美しさに圧倒されて口を開くことが出来なかった。

 

 そんな私を見て、白銀の(エンシェント)ドラゴンは呆れた様に口を開く。

 

「おい。お前は私に逢う為に何時も此処を訪れていたんだろう?せっかく出てきてやったというのに、ダンマリとはどういうことだ?」

 

 半目で私を睨みながら言う白銀の(エンシェント)ドラゴンに、呆然としていた私の頭はようやく働き始める。

 

「あ……お……俺は……エルセリオ王国から……来ました……!あ……貴女の力を……お借りしたくて……!!」

「ほう?」

 

 しどろもどろになりながらも、私は何とか口を開く。そして私は今、私の国で何が起っているのかを何とか説明した。

 

 焦ってしまって所々要領を得ない説明になってしまったが、白銀の(エンシェント)ドラゴンはそんな私の言葉を最後まで黙って聞いてくれた。

 

 そして私の説明が終わり、少し沈黙した後……彼女は口を開いた。

 

「……お前の話は分かった。そして……先に謝っておこう。私自身直接アズライールをどうこうする事は出来ない」

「!!!」

「これは私の……私達の神としての在り方の問題なのだが、天界に住まう神も、地上に留まっている私の様な神も、直接この地上に手を出すことは出来ないのだよ」

「で……でも邪神は……!!邪神は神では無いのですか……!?」

 

 聖王様の話によれば、邪神もかつては神であったらしい。

 あの邪神が元神で、あれだけ地上で好き勝手出来るのであれば、白銀の(エンシェント)ドラゴンだって……!!

 

 その想いも籠めて白銀の(エンシェント)ドラゴンに懇願するが、彼女は申し訳なさそうに目を伏せ……首を横に振った。

 

「アズライールが地上で好き勝手出来るのは、依り代に乗り移っているからだ。つまり奴自身が手を下しているのでは無く、あくまで依り代の人間……お前の国の王がやっているという事なのだ」

「あ……そ……そん……な……!」

「私は人間を乗っ取る事など出来ないし、出来てもやる気にはならない。……だが……だからといって、アズライールを放置する事も出来ない」

「!!!」

 

 絶望して顔を伏せる私だったが、白銀の(エンシェント)ドラゴンの最後の言葉にバッと顔を上げる。

 

「かつて私が見出した剣の勇者の血族も失われてしまったのだ。そんな強大になるまで力をつけたアズライールを打ち倒す事は……正直言って不可能だろう。だが……奴を封じ込める事は出来るかもしれない」

「ほ……本当ですか!!?」

「……ああ。……まぁ、そもそもアズライールは神の時から非常に優れた闘神だったから、例え私が手を出せたとしても、普通に敗北していただろうし……最早方法は封印以外無いだろうな」

 

 そう言って白銀の(エンシェント)ドラゴンは、手をかざすと……そこから眩い光が溢れ、私は咄嗟に目を覆った。

 

 そして光が収まると、白銀の(エンシェント)ドラゴンは手に、美しい装飾があしらわれた鏡を持っていた。

 

「……九錠(くじょう)ノ鏡……とでも名付けておこうか?この神器を使って、アズライールを封じる事が出来ると思う……」

「この神器で……!!」

「ああ。この鏡が効力を発すれば、たちまちその者を九つの魂に分け……そして鏡に封じる事が出来る神器だ。分けられた九つの魂は、鏡の装飾にあしらわれた八つの宝石に封じ籠められて……最後の一つの魂……これが本体となるのだが、それを鏡に封じる事が出来るのだ」

「そ……そんな事が……!!」

「……ただし、この鏡の力を発するには、アズライールにこの鏡を持たせて……自ら力を発動させなければならないというリスクがある。だがまぁ……そこは口八丁でなんとかするしかないな!!そこまでは私でもどうしようもない!」

 

 そう言ってあっけらかんと笑うと、白銀の(エンシェント)ドラゴンは私に鏡を渡してくれた。

 

「あ……ありがとうございます!!白銀の(エンシェント)ドラゴン様!!」

「ああ。……さぁ、もう国に戻るがいい。……私のせいで、お前はかなり足止めを食らってしまっただろう。正直その神器を渡したのも、そのお詫びも兼ねてだ……」

「いえ……。これを授けて下さっただけでも、感謝しております……!!」

 

 正直に言ってしまえばまだ不安は残る。

 この神器は邪神自身が発動させねばならない故、どうやって邪神にこの神器を発動させるか……その方法は、私の頭では到底考える事は出来なかった。

 

 しかし、こちらには聖王ヨハネ様がいる。

 あの方ならば、この神器を使い必ずや邪神を封じ込める事出来るはずだ!

 

 私は白銀の(エンシェント)ドラゴンに再度礼を言うと、希望を胸に、三年ぶりの故郷へと戻るのであった。

 

 

 三年ぶりの故郷は、邪神の影響のせいか、以前より益々酷い有様であった。

 街に蔓延るマフィア、横行する犯罪、市場に出回る麻薬。

 

 最早この国は、地上の地獄と化していたのだ。私はそんな現状に、目を瞑りたくなりながらも、急いでヨハネ様の元へ急いだ。

 

 三年ぶりにあったヨハネ様は、前より随分とやつれていて、三年という月日以上に年月が流れたかのように老け込んでいた。

 

 だが、それもその筈だ。

 本心とは全く違う、やりたくも無い邪神が求める非道な行い。そして腐っていく街を、見て見ぬ振りをしなければいけないという苦痛。

 

 そんな苦行を十年以上続けていれば、やつれるのも当たり前だ。

 

 ヨハネ様は、三年ぶりに故郷に戻った私を見て………出会って初めて、一筋の涙を流された。

 そして強く、強く私を抱きしめたのだ。

 

「……レグロス……!正直もう君は死んだと思っていた……!よく……よく無事で戻って来てくれた……!!」

 

 私は邪神に私の動向を探らせないために、ヨハネ様含む誰にも手紙を書いてはいなかった。

 故にこの三年間、私が何処で何をしているのか……、本当に生きているのか、それとも死んでいるのか……誰にも解らなかったのである。

 

 私はヨハネ様に深く謝罪し、そして白銀の(エンシェント)ドラゴンから授かった神器をヨハネ様に渡した。

 

 神器を手にするとヨハネ様は、それをまじまじと眺め……そして深く、深く息をつかれた。

 

「私が邪神に気に入られる様に、嫌われない様に……私の言葉を信じる様に……、心を殺して、本心を殺して……奴に仕えてきた事は、決して無駄ではなかったのだな……。白銀の(エンシェント)ドラゴンよ、感謝します。……ようやく……ようやく私の苦行は……意味を成しそうです……」

 

 そしてヨハネ様は、これまでの苦労を露払いする様に……晴れやかな顔で私に言った。

 

「ありがとう、レグロス。……希望を持ち帰ってくれて。……私は白銀の(エンシェント)ドラゴンから授かったこの神器をもって、邪神を封じ……この永い戦いに終止符を打つ……!」

 

 その後ヨハネ様の言葉通り、邪神は封じられる事となる。

 

 言葉で言えばとても簡単で、実際邪神は驚くほどあっさりと封印された。

 

 だが、それをなす為にヨハネ様は………十年以上耐えぬかれたのだ。

 邪神の信頼を勝ち取り、その本心を奴に悟らせなかったヨハネ様の孤独な戦いが……ようやく実を結んだのだ。

 

 こうして、我が国を襲った未曽有の災害……邪神アズライールは、完全に封印され、この国はこれから平和になっていく筈……。

 

 そう思っていた。……その時はまだ……。

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