最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

183 / 183
第180話 聖なる竜(聖王騎士団第一席・獅子王レグロス視点)

 念願の白銀の(エンシェント)ドラゴンに出会えたというのに、私は彼女の美しさに圧倒されて口を開くことが出来なかった。

 

 そんな私を見て、白銀の(エンシェント)ドラゴンは呆れた様に口を開く。

 

「おい。お前は私に逢う為に何時も此処を訪れていたんだろう?せっかく出てきてやったというのに、ダンマリとはどういうことだ?」

 

 半目で私を睨みながら言う白銀の(エンシェント)ドラゴンに、呆然としていた私の頭はようやく働き始める。

 

「あ……お……俺は……エルセリオ王国から……来ました……!あ……貴女の力を……お借りしたくて……!!」

「ほう?」

 

 しどろもどろになりながらも、私は何とか口を開く。そして私は今、私の国で何が起っているのかを何とか説明した。

 

 焦ってしまって所々要領を得ない説明になってしまったが、白銀の(エンシェント)ドラゴンはそんな私の言葉を最後まで黙って聞いてくれた。

 

 そして私の説明が終わり、少し沈黙した後……彼女は口を開いた。

 

「……お前の話は分かった。そして……先に謝っておこう。私自身直接アズライールをどうこうする事は出来ない」

「!!!」

「これは私の……私達の神としての在り方の問題なのだが、天界に住まう神も、地上に留まっている私の様な神も、直接この地上に手を出すことは出来ないのだよ」

「で……でも邪神は……!!邪神は神では無いのですか……!?」

 

 聖王様の話によれば、邪神もかつては神であったらしい。

 あの邪神が元神で、あれだけ地上で好き勝手出来るのであれば、白銀の(エンシェント)ドラゴンだって……!!

 

 その想いも籠めて白銀の(エンシェント)ドラゴンに懇願するが、彼女は申し訳なさそうに目を伏せ……首を横に振った。

 

「アズライールが地上で好き勝手出来るのは、依り代に乗り移っているからだ。つまり奴自身が手を下しているのでは無く、あくまで依り代の人間……お前の国の王がやっているという事なのだ」

「あ……そ……そん……な……!」

「私は人間を乗っ取る事など出来ないし、出来てもやる気にはならない。……だが……だからといって、アズライールを放置する事も出来ない」

「!!!」

 

 絶望して顔を伏せる私だったが、白銀の(エンシェント)ドラゴンの最後の言葉にバッと顔を上げる。

 

「かつて私が見出した剣の勇者の血族も失われてしまったのだ。そんな強大になるまで力をつけたアズライールを打ち倒す事は……正直言って不可能だろう。だが……奴を封じ込める事は出来るかもしれない」

「ほ……本当ですか!!?」

「……ああ。……まぁ、そもそもアズライールは神の時から非常に優れた闘神だったから、例え私が手を出せたとしても、普通に敗北していただろうし……最早方法は封印以外無いだろうな」

 

 そう言って白銀の(エンシェント)ドラゴンは、手をかざすと……そこから眩い光が溢れ、私は咄嗟に目を覆った。

 

 そして光が収まると、白銀の(エンシェント)ドラゴンは手に、美しい装飾があしらわれた鏡を持っていた。

 

「……九錠(くじょう)ノ鏡……とでも名付けておこうか?この神器を使って、アズライールを封じる事が出来ると思う……」

「この神器で……!!」

「ああ。この鏡が効力を発すれば、たちまちその者を九つの魂に分け……そして鏡に封じる事が出来る神器だ。分けられた九つの魂は、鏡の装飾にあしらわれた八つの宝石に封じ籠められて……最後の一つの魂……これが本体となるのだが、それを鏡に封じる事が出来るのだ」

「そ……そんな事が……!!」

「……ただし、この鏡の力を発するには、アズライールにこの鏡を持たせて……自ら力を発動させなければならないというリスクがある。だがまぁ……そこは口八丁でなんとかするしかないな!!そこまでは私でもどうしようもない!」

 

 そう言ってあっけらかんと笑うと、白銀の(エンシェント)ドラゴンは私に鏡を渡してくれた。

 

「あ……ありがとうございます!!白銀の(エンシェント)ドラゴン様!!」

「ああ。……さぁ、もう国に戻るがいい。……私のせいで、お前はかなり足止めを食らってしまっただろう。正直その神器を渡したのも、そのお詫びも兼ねてだ……」

「いえ……。これを授けて下さっただけでも、感謝しております……!!」

 

 正直に言ってしまえばまだ不安は残る。

 この神器は邪神自身が発動させねばならない故、どうやって邪神にこの神器を発動させるか……その方法は、私の頭では到底考える事は出来なかった。

 

 しかし、こちらには聖王ヨハネ様がいる。

 あの方ならば、この神器を使い必ずや邪神を封じ込める事出来るはずだ!

 

 私は白銀の(エンシェント)ドラゴンに再度礼を言うと、希望を胸に、三年ぶりの故郷へと戻るのであった。

 

 

 三年ぶりの故郷は、邪神の影響のせいか、以前より益々酷い有様であった。

 街に蔓延るマフィア、横行する犯罪、市場に出回る麻薬。

 

 最早この国は、地上の地獄と化していたのだ。私はそんな現状に、目を瞑りたくなりながらも、急いでヨハネ様の元へ急いだ。

 

 三年ぶりにあったヨハネ様は、前より随分とやつれていて、三年という月日以上に年月が流れたかのように老け込んでいた。

 

 だが、それもその筈だ。

 本心とは全く違う、やりたくも無い邪神が求める非道な行い。そして腐っていく街を、見て見ぬ振りをしなければいけないという苦痛。

 

 そんな苦行を十年以上続けていれば、やつれるのも当たり前だ。

 

 ヨハネ様は、三年ぶりに故郷に戻った私を見て………出会って初めて、一筋の涙を流された。

 そして強く、強く私を抱きしめたのだ。

 

「……レグロス……!正直もう君は死んだと思っていた……!よく……よく無事で戻って来てくれた……!!」

 

 私は邪神に私の動向を探らせないために、ヨハネ様含む誰にも手紙を書いてはいなかった。

 故にこの三年間、私が何処で何をしているのか……、本当に生きているのか、それとも死んでいるのか……誰にも解らなかったのである。

 

 私はヨハネ様に深く謝罪し、そして白銀の(エンシェント)ドラゴンから授かった神器をヨハネ様に渡した。

 

 神器を手にするとヨハネ様は、それをまじまじと眺め……そして深く、深く息をつかれた。

 

「私が邪神に気に入られる様に、嫌われない様に……私の言葉を信じる様に……、心を殺して、本心を殺して……奴に仕えてきた事は、決して無駄ではなかったのだな……。白銀の(エンシェント)ドラゴンよ、感謝します。……ようやく……ようやく私の苦行は……意味を成しそうです……」

 

 そしてヨハネ様は、これまでの苦労を露払いする様に……晴れやかな顔で私に言った。

 

「ありがとう、レグロス。……希望を持ち帰ってくれて。……私は白銀の(エンシェント)ドラゴンから授かったこの神器をもって、邪神を封じ……この永い戦いに終止符を打つ……!」

 

 その後ヨハネ様の言葉通り、邪神は封じられる事となる。

 

 言葉で言えばとても簡単で、実際邪神は驚くほどあっさりと封印された。

 

 だが、それをなす為にヨハネ様は………十年以上耐えぬかれたのだ。

 邪神の信頼を勝ち取り、その本心を奴に悟らせなかったヨハネ様の孤独な戦いが……ようやく実を結んだのだ。

 

 こうして、我が国を襲った未曽有の災害……邪神アズライールは、完全に封印され、この国はこれから平和になっていく筈……。

 

 そう思っていた。……その時はまだ……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ラスボスに使い捨てられる悪役中ボスにTS転生したけど、原作キャラを観察しに行きます!(作者:恥谷きゆう)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

普通の男子大学生だった主人公は、漫画「Souls light nobly」の悪役中ボス、ブルームに転生してしまった。▼ ブルームはラスボスに使い捨てにされて悲惨な死を迎える運命のキャラクターだ。▼ ▼ 「そんな運命を辿るくらいなら、推しの姿を観察していた方がいい!」 と奮起したブルームはラスボスの組織には入らず独自に行動する。▼ 計画通りに原作キャラを影から…


総合評価:2187/評価:7.73/連載:58話/更新日時:2026年06月12日(金) 17:12 小説情報

強い想いで魔法少女が生まれる世界に現れてしまったモンスターTS転生ロリ(作者:暁刀魚)(オリジナル現代/冒険・バトル)

安城コトは、強い意思が魔法少女を生む世界に生まれてしまったTSロリだ。▼赤ん坊の頃に前世の記憶があったせいで、相対的に普通の人間より強い意思を持っていたコトは、バカみたいな魔力の魔法少女になってしまった。▼しかも男が魔法少女になれないのに、前世は男。▼バグの塊みたいな存在になってしまったのである。▼これはそんなコトが、有史以来魔法少女と魔物が争い、疲弊した魔…


総合評価:13855/評価:8.74/連載:29話/更新日時:2026年03月19日(木) 18:05 小説情報

強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました(作者:ユーラ@Yura0628)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ミサイルの爆発に巻き込まれた強化人間イーグル1。目覚めた先は、魔法少女が戦う過去の地球だった…!▼自身の体が女性に成っている事に困惑しつつ、元の世界に戻るため、イーグル1は魔法少女として戦う事の対価に、この世界の組織に協力を取り付ける。だが、襲いくる強力な魔獣を相手していく上で、身体的損傷を許さざるを得ない状況に追い込まれ…彼女に救われた魔法少女達は、目から…


総合評価:2068/評価:8.52/連載:37話/更新日時:2026年05月09日(土) 11:11 小説情報

TS魔法少女は光堕ちしたい!!(作者:布団から出られない)(オリジナル現代/冒険・バトル)

魔法少女モノが大好きな広井大介(ひろいだいすけ)は、とある魔法少女アニメの敵が光堕ちする回を見て尊死し、魔法少女の存在する世界に、光千夜(ひかりちよ)として転生を果たした!と思ったら悪の組織に拉致されて流れで悪の魔法少女をやることに!?▼「これ、光堕ちするチャンスじゃね!?」そして千夜は、悪役魔法少女ロールプレイを開始することにする。全ては、最高の光堕ちのた…


総合評価:8128/評価:8.07/連載:164話/更新日時:2026年08月08日(土) 15:01 小説情報

デメリット有りの能力で、可愛い子達を曇らせたいぞ!(作者:片桐きな粉)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

「契約のエリュジーン」▼深夜帯の大人気アニメ。少年少女その他が契約モンスターと悪を倒していく...王道のファンタジー。▼そんな世界に転生してしまった。女の子として。▼見渡そうとしても動けないし、死ぬ直前だったけど、契約をすることによって免れました。自らデメリットを背負って。▼全ては可愛い子が可愛い子に愛されたいという欲望のために▼尚、契約モンスターからは『も…


総合評価:6832/評価:8.4/連載:42話/更新日時:2026年06月16日(火) 18:38 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>