最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
シスタさんの実家に辿り着いた時、全てが終わっていた。
無残にバラバラになっている鎧と……死体。
その中には……シスタさんのお父さんとお母さんがいる。……だが、どうやら死体の中にシスタさんは居ないみたいだ。
正直今黒騎士で本当に良かったと思う。
もしコウのままこの現場に出くわしたら……今ほど冷静じゃ居られなかったと思うから。
しかしこれは……一体何があったんだ?
バラバラの鎧と中身は、多分あの黒騎士Bだろうけど……だとすると、こいつは一体誰に殺られたんだ?
そして無残に殺されてるシスタさんの両親。
ここで一体何が……。
「う……動くなぁ!!!あ……あひぃ!!?」
「ちょ!!何やってるんですか!?って!!黒騎士!!それに……これは……!!!」
何があったのか、暫く呆然と思案していた為、他の侵入者に気が付かなかった。
彼らは……警備隊の人か……。
どう考えても此処で逃げるのは得策じゃないけど……かといってここで警備隊に捕まる訳にもいかないので、俺は体を霧状に変えてその場を去る。
「ま!!まて!!黒騎士ぃ!!!」
警備隊の人の叫び声を聞きながら、これは本当に大変な事になったなぁ……と、他人事の様に思い……一人でため息をつくのであった……。
◆
悪夢の様な惨状から一夜が明け、俺は何事も無かった様に学園に通学した訳だが……予想通り、教壇にはシスタさんの姿は無かった。
「えー、シスタ先生は、えーっと、体調を崩された為、えー暫くお休みとなります」
シスタさんの変わりに教壇に立っている教師が、頬をかきながら説明しているが……多分だけど、ちゃんとした説明なんて出来ないんだろうな……。
「シスタ先生……どうしたんでしょうか?」
「ねー!昨日までは元気そうだったけど……だいじょーぶかなぁ?」
休みの時間になり、ティファとアンナが先生の安否を心配する。
「つーか働かせすぎでしょ?新人いびりについに耐えかねたんじゃないのぉ?」
その言葉にナーサが手をヒラヒラとさせながら答えるが……そんな皆の会話を、俺は聞き流しながら窓の外を眺めつつ、考え込んでいた。
「……コウ?」
昨日の死体の中にシスタさんは居なかった。
まぁ正直バラバラになって確認出来ないような死体があったから……あれがシスタさんだった場合もうどうしようも無いけど……多分あれは黒騎士Bだ。
「コウ?」
だとすると、シスタさんはあの場から連れ去られたって事になる。
でも……シスタさんを連れ去ったのは聖王騎士協会では無いだろう。
そもそも黒騎士Bは彼らの仲間の筈だし聖王騎士達は、シスタさんを亡き者にする為に行動していたのだから……。
まぁどちらにしろ今日の放課後、聖王様(仮)を訪ねてみよう。何か知っているかもしれないし、聞きたい事もたくさんある。
「コウ……!」
でも流石に一人で行く訳にはいかないので、ホズムさんでも連れて行こうかな?
あの人が居ると聖王様(仮)との話もスムーズに行きそうだし……。
「コウ!」
「わ!!あ……え?……ソフィ……!?」
考え事に夢中になり過ぎていたせいか、ソフィアに呼ばれていた事に気が付かなかったみたいだ。
気が付けば、さっきまでシスタさんの事について喋っていた皆も、全員俺の方を見ている。
「コウ……。大丈夫?今朝からずっと心ここにあらずだけど……何かあったの?」
心配そうに覗き込んでくるソフィアに、申し訳なくなりながら俺は苦笑いして答える。
「ソフィ……ごめんね?ちょっと考え事してて……」
「はぁ?コウが考え事ぉ?アンタおバカなんだから、考えるだけ無駄じゃない?」
俺の言葉にナーサが口を挟むが……失礼だな!!無駄じゃ無いし!!
「まぁまぁ。でも……コウも前のライブの疲れがまだ残ってるみたいですし、無理をしちゃだめですよ?」
「そーだよ!……ふふ。またライブ思い出しちゃった!!すごかったなぁ……あの時のコウ!!」
ティファとアンナも俺を心配してくれる。
確かにまだライブの疲れは抜けきって無いけど……今はそれ所じゃ無いしなぁ……。
苦笑いをしつつ、どーしたもんかと考えてると、急に教室の扉が音を立てて強く開かれた。
何事かとクラス中の皆が扉の方を見ると……そこには意外な人物が立っていた。
「……おや?どうしたんだ?物珍しそうに俺を見て……。まさか君達、俺を忘れた訳じゃ無いよねぇ?」
「る……ルーカス君!!?」
そこに立っていたのは、普通科きっての問題児、ルーカスだったのだ。
ルーカスはニヤリと笑い、そのままズカズカと教室に入ると、そのまま自分の席へと移動して着席する。そして、驚愕に目を見開いているクラスメイトをぐるりと見渡すと、口を開いた。
「くく。なんだよ?本当に俺を忘れちゃったのか?自己紹介……したほうがいいかい?」
子馬鹿にした様にクラスメイト達に言うルーカスに、クラスメイト達は戸惑う。
そんなルーカスに、ティファは一歩前に出て言った。
「ルーカス君……怪我はもう……大丈夫なんですか……?」
「……ああ……。一応は大丈夫だよ……。それにしても……はは!ティファにはかっこ悪い所見られちゃったね……」
「それは……まぁ……はい……」
ルーカスは頬をかきながら苦笑いすると、急に真剣な表情をしてティファに言う。
「ティファ。……後で君に……君たちに話したい事があるんだ」
「……え?」
驚くティファを余所に、ルーカスは俺達の方に向き直り続ける。
「コウちゃん。……君には迷惑をかけたね?……本当にごめん」
「「「!!!?」」」
俺の謝罪をしてきたのだが、その謝罪に驚くけど、それよりもクラスメイト達の方がもっと驚く。
まぁ気持ちは分からんでもない。
だってあのルーカスが謝罪するなんて思ってもみなかったからだ。
……まぁ座りながらの謝罪だから、本当に申し訳ないと思ってるのか分からないけどなぁ!!……でも正直俺はもう気にしてないので、どっちでもいいのである。……今それ所じゃ無いしね!
「別に……構いませんよ?だって……貴方は酷い目にあったでしょ?それで満足です」
なので適当に謝罪の返事を返しておく。
何度も言うけど、今俺の頭の中はルーカスどころじゃないのだ。まじで!
「はは……。ありがとう……。……ティファと一緒に、コウちゃんにも話があるんだよ……。大事な……話がさ……」
神妙な顔で俺の返事を受けてルーカスが、少し言いにくそうに言うが……俺に話ってなんだろ?
ティファに話があるのは何んと何となく分かるけど、俺に話したい事なんて無いと思うんだけど……。
でもここで嫌ですって言うのもなんか感じ悪いし、ティファと一緒なら別にいいかなぁ……?
そう思い、コクリと頭を下げる俺だったのだが…………このルーカスの話で、事の展開が更に加速するとは、この時の俺は思ってもみなかったのである………。