最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
黒騎士による、聖騎士団壊滅という悪夢の様な一件から一夜が明け……私は改めて、この有様に頭を悩ませていた。
早朝から警備隊に頼んで、街に倒れている聖騎士達を聖女教会へと運んでもらった。
幸いなことに、一人を除いて後は誰も欠ける事なく無事だったのは、偏に黒騎士の手心が完璧だったからだろう。
その証拠に、称号持ちの聖騎士達は何人かは既に回復しており、レグロスを含む数人は私と共に聖王騎士協会へと戻れた程だ。
……因みに、黒騎士と話している時に感じた急激な胸の痛みはもう無くなっており、聖女教会のシスター達に調べてもらったが……特に問題は無かった。
しかし………その欠けた一人……黒曜騎士アバンは……件の女性、シスタ・フランソワの両親と共に、黒騎士により惨殺されてしまったらしい。
その情報は、現場を目撃したという警備隊から聞いた情報なので、間違いは無いと思うのだが……私はどうにも信じられなかった。
なぜわざわざ黒騎士は、アバンとシスタ女史の両親を……フランソワ卿達を殺害したのだ?
そもそもアバンはシスタ女史を殺害する為に、フランソワ卿の自宅を襲った筈だ。
それを守る為に駆け付けた筈の黒騎士が、アバンを殺すのはまだ分かるが……シスタ女史の両親を殺す意味が分からない。
考えられる可能性としては、黒騎士が到着した時には既にシスタ女史の両親が殺されており、そしてアバンがシスタ女史を襲おうとした所を……黒騎士が、アバンを殺す事で止めた……というシナリオだ。
これなら辻褄が合うが……そこでまた頭を悩ませる情報が入ってくる。
何とシスタ女史は現在、パイモン宰相に保護されているらしい。
ここでパイモン宰相が出てくるとなると……話の辻褄が合わなくなってしまうのだ。
何故ならどのタイミングで、パイモン宰相がシスタ女史を保護したかが分からないからだ。
というのも、黒騎士を発見した警備隊達の話だと、黒騎士が殺人を犯してその場から逃げた際……既にその場にシスタ女史の姿は無かったらしい。
だとすると……シスタ女史は何時パイモンに保護されたのだ?
シスタ女史が帰宅と同時に、パイモンが現れシスタ女史を保護。
その後アバンがフランソワ卿の自宅を訪れ、シスタ女史がいないことに逆上してフランソワ卿達を殺害……その後黒騎士が現れ、アバンを殺害した……?
もしパイモンが、我々聖王騎士団がシスタ女史の命を狙っていると知って、シスタ女史を保護したのならば……その考えも間違いでは無い筈だが、そうだとしたらシスタ女史の仕事が終わるまで学園で待って、そのまま保護した方が早い気もするのだが……。
シスタ女史が聖騎士団に襲われて、そこを助けた黒騎士によって警備隊へ一度行った時に、パイモンがその話を知ったとなると……余りにも行動が早すぎる。
もしそうだとしても、パイモンほど頭の回る男なら、フランソワ卿達の身の危険も考えて……家族全員を保護してもよさそうだというのに……。
考えても考えても答えは出ないというのに、私は一人悶々と考えてしまう。
まぁ真実がどうであれ、今シスタ女史はパイモン宰相に保護されているのだ。
流石に相手が宰相ともなれば、レグロス達も簡単には手を出すことは出来ないだろうし……暫く様子を見るのも一つの手なのかもしれない。
そう思い、息をつき椅子の背もたれに身を預けた時……私の部屋の扉がノックされた。
「……はい。何かね?」
「聖王様にお客様です。……恐らく学園の学生さんなのですが……、コウ……という名前を出せば、聖王様にお会いできるはずと言っていますが……いかがしますか?やはり相手は学生ですし学園に「今すぐ会う。お通ししてくれ」……え!?あ……はい!承知しました!」
やはり……お越しになったか……。
昨日黒騎士から出た名前……コウ様。
かの方こそ、かつて私に力を授けて下さった、
この老いぼれをわざわざ訪ねて下さったという事は……私達の罪を、今ここで捌かれるおつもりなのだろう。
私は直ぐに立ち上がり、これからどうするか復帰した聖騎士達で話し合っているレグロスを訪ねた。
「レグロス……一緒に来なさい……」
「ヨハネ様……?申し訳ありませんが、今は……」
レグロスは次なる作戦を考える為に手が離せないのだろうが、今はそれ所では無い。
「
「!!!?エ……
レグロスが慌てふためき取り乱すが……その後強く目を瞑り……手を震わせながら声を絞り出した。
「わ……私達を……あのお方は……断罪する為に……来られたのでしょうか……?今まで……学園で生活されていたのは……私達の……あまりの罪の深さを……確認する為……だったのでしょうか……?」
「……………恐らく……な……」
私の肯定にレグロスは一度目を見開き……そして項垂れて、震えながら言った。
「…………罪を受け入れる覚悟はあります。しかし……しかしそれでも……!!邪神の可能性の芽をつまなければ!!何のために私達は……!!!」
「それも踏まえて、
「……?ヨハネ様?」
断罪されるというのに、最後に笑ってしまった私を、レグロスがいぶかしげに見るが……こんな状況だというのに、私は少し嬉しかったのだ。
「くく。ははは……。いや……済まないレグロス……。行こうか……」
「…………はい……。ヨハネ様……」
他の騎士達も、私がついに狂ったかという目で心配げに私を見るが……別に気がふれた訳じゃ無い。
ただ……小さい時から神の声が聴こえず、結局聖王になっても神の声を聴くことが出来なかった私が……こんな状況だというのに、神に直接声を掛けて頂けるなど……思っていなかったのだ。
事実神器を授かった時、
それが例えどんな罵倒雑言だったとしても……私は恐らく、最初で最後の神の声を聴くことが出来るこの状況を、心から感謝しているのだった……。